形成外科手技(皮膚縫合)

手術

皮膚縫合に必要な手術用具

医療用メス

No.11 先端が鋭利な直線状。膿瘍(粉瘤など)の切開排膿や穿刺に適している。
No.15 小さな曲線を持つ刃先。精密な皮膚切開や形成外科手術で汎用される。

鑷子(セッシ)

鑷子は組織を把持する器具。つかむ対象により先端の形状を選択する。

名称 先端 特徴
セッシ 有鉤、無鉤 有鉤は皮膚・皮下組織を把持、無鉤は腹腔内・胸腔内組織を把持(把持力は弱い)
アドソン 有鉤、無鉤 皮膚・皮下組織を把持、先端が細くピンポイントで把持
マッカンドー 有鉤、無鉤 軟部組織を把持
異物セッシ 無鉤 棘抜きに使用、細かな作業に使用

剪刀(せんとう、ハサミ)

切る、組織を剥離する。

名称 特徴
直剪刀 切断対象は糸、テープ、ドレーンなど術野外
クーパー 切断対象は縫合した時の糸、筋膜・靭帯など比較的硬い組織
メイヨー 比較的固い組織の剥離や切離に使用される、クーパーより先端が細い
眼科剪刀 糸切りや布切りに使用
メッツェンバーム 比較的柔らかく、繊細な組織の剥離や切離(血管周囲、リンパ管周囲)

鉗子(カンシ)

柄の部分に把持を維持するための鉤(ラチェット)がついている。

名称 先端 特徴
ペアン 無鉤、横溝 コッヘルとの違いは無鉤であること、柔らかい組織の把持
コッヘル 有鉤、横溝 ペアンとの違いは有鉤であること、硬いものの把持
モスキート 有鉤、無鉤 ペアン、コッヘルの小さい版
ケリー 無鉤
リスター 無鉤

その他の手術用具

鋭匙(えいひ) 骨や軟らかい組織を掻き出す際に使用
記載途中

縫合糸

メリット デメリット
素材 自然素材 感染しやすい
合成素材 感染しにくい
形状 単糸 張力に強く、細菌も付着しにくい 結び目がほどけやすい
編糸 結び目がほどけにくい 感染源になりやすい
太さ 3-0〜7-0 3-0は太い 7-0は細く切れやすい

【代表的な合成素材糸の商品名】

吸収糸 非吸収糸
単糸 PDSモノデュオックス、モノクリル
(抜糸できない皮下・真皮に使用)
プロリンナイロン、エチロン
(皮膚表面に使用)
編糸 バイクリル
(粘膜に使用、皮下での縫合)
サージロン、エチポンド
(皮下での縫合に使用)

縫合針の選択

メリット デメリット
角針 持針器で把持しやすい 針が組織を貫通するとき組織が裂けやすい
粘膜など裂けやすい組織に使用しやすい 持針器で把持しにくい

皮膚縫合前の説明

術後、創は赤く硬くなり、時に痛みや痒みを伴う。それが術後2〜3ヶ月後をピークにして赤み、硬さなどが取れていき、個人差はあるが半年〜1年で白く正常皮膚と同じくらいの軟らかさの創痕になる。創痕が全くなくなるわけではないが、シワに沿った傷跡は目立ちにくく、化粧で隠せるくらいがゴールになる。もしも目立つ場合はより綺麗にする手術もある。

皮膚縫合

皮膚の緊張を確認

皮膚の厚み:背部>臀部>腹部>>>そのほかの部位>>>>眼瞼部・陰部

皮膚の緊張が強い部位 前胸部三角筋部肩甲部恥骨上部(ケロイドになりやすい)
縫合方法
(赤線)
緊張が強い部位は縫合部が引き離される力がかかり、傷の幅が広がるようになる。これを防止するため、真皮縫合で盛り上げる縫合を行う。針先は創縁から離れた真皮をすくい、創縁では真皮深層から皮下脂肪組織に出てくるようにすると、縫合線は盛り上がる。
皮膚の緊張が弱い部位 顔など
縫合方法
(緑線)
緊張が強くない部位は創縁皮膚に平行に通るように縫合を行い、縫合直後に平坦な形になるようにする。

①皮膚の消毒

イソジン 禁忌:ヨウ素アレルギー。禁忌ではないが原則、には使用しない
長時間皮膚に付着すると接触性皮膚炎を生じるため、使用後は水やアルコールでしっかり拭き取る
クロルヘキシジン 禁忌:結膜嚢以外の粘膜(内耳・中耳・外耳)
外陰部・外性器皮膚・結膜嚢:0.02%を使用+使用後に滅菌水で洗浄
創傷部位:0.05%を使用
創傷のない手術野:0.5%を使用

②(ドレープ後)切開線をマーキング

ピオクタニンは手術部位のマーキングとして使用されている(海外の動物実験において、経口摂取した場合の発がん性や遺伝毒性が指摘されているため限定的に用いる)

縫合してできる縫合線は、皮膚のシワの向きに沿わせる線にする。基本的に、屈曲部陥凹部は陥凹に沿った方向、体幹は横方向、四肢は筋走行に直行する方向がシワのラインとなる。シワに沿った縫合線は術後、シワに隠れて目立たなくなる。

皮膚切開

局所麻酔 注射針を皮膚にほぼ平行に進めて皮膚直下に注入する
皮膚切開 ①メスを持たない手で皮膚に緊張をかける
②皮膚面に対して垂直に切開し、皮下脂肪が見える真皮深層の深さで切開して創が1〜3mm開く程度が良い
③切開する範囲が切開できたら、次に皮下脂肪まで切開する
皮下剥離 創縁が容易に寄せられるために、または真皮縫合を容易に行うために皮下剥離することがある
止血 術後に血腫が生じると感染や炎症による創治癒遷延や線維化して硬い瘢痕になるためしっかり止血する
モノポーラ:微小無鉤鑷子で出血点をつかんで、その鑷子に電気メスの先端を当てる
バイポーラ:バイポーラのピンセットで出血点を挟んで電気凝固させる
血管結紮:直径1mm以上の血管を無鉤曲モスキートペアン鉗子でつかみ、糸で結紮する

表皮縫合

創面がずれないようにするため行う。皮膚に食い込まないよう緩く縫合する。

縫合糸 商品名
(針付き)非吸収性モノフィラメントナイロン糸

埋没縫合(皮下縫合、真皮縫合)

縫合糸 商品名
(針付き)非吸収性モノフィラメントナイロン糸
(針付き)モノフィラメント吸収糸

創治癒後の瘢痕には瘢痕を広げる方向に張力がかかるため、瘢痕が開大しないように真皮縫合が必要になる。

針を皮下脂肪に刺入して、真皮をすくうようにして針を真皮から抜く
対側の真皮に同じ深さ刺入して、真皮をすくうようにして針を皮下脂肪から抜く
糸を結ぶと創縁が揃い、創縁が隆起する(結び目の糸は短く切る)
顔面・頸部:隆起の高さは0〜3mm
四肢体幹:隆起の高さは5〜1mm
ケロイドになる可能性が高い・緊張が強い箇所:隆起の高さは10〜15mm
手掌・足底:術後に角質肥厚を生じる可能性があるため真皮縫合しない
眼瞼・包皮:皮膚が薄く緊張がないため真皮縫合しない
頭髪部:毛根を損傷して脱毛の可能性があるため真皮縫合しない

真皮縫合術後1〜3ヶ月で平坦になる。必ず抜糸後3ヶ月〜半年、縫合部位を観察する。

ドレッシング材

縫合創の創縁に血餅が固着しないよう、滲出液を吸収する被覆材を貼る(もしくはワセリンなどを塗布してガーゼを置く)。

抜糸

真皮縫合した部位 抜糸時期
顔面 術後4日目
四肢体幹 術後7日目
指や関節の伸側、下肢 術後10日目

術後合併症

①術後出血 症状:血圧低下、頻脈、尿量減少
検査:ドレーン排液が血性、血液検査でHb低下、エコーで貯留血液あり
②縫合不全 症状:術後数日〜10日の間で発熱、腹痛、炎症反応の増悪
検査:CTで吻合部周囲のairや液体貯留、膿瘍の有無を確認
④術後感染症 手術部位感染(SSI):術後30日以内に手術操作部位に生じる感染
→SSI予防のため術直前、術後3時間に抗菌薬投与する
遠隔部位感染(RI):手術操作に直接関係しない部位に生じる感染

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