①身体診察

症候学

バイタルサイン

意識状態 JSC、もしくはGCSで評価
①血圧(BP) 120/80mmHg前後
橈骨動脈(手首)で触知不良:80mmHg以下
大腿動脈(鼠径部)で触知不良:70mmHg以下
頸動脈(頸部)で触知不良:60mmHg以下
②脈拍(HR) 60~99/分。100回以上は頻脈、60回未満は徐脈。
体温1℃上昇→脈拍10回/分増加(例外的に増加しない=相対的徐脈)
120回以上は拡張期短縮により心不全となる
呼吸数(RR) 12~20/分(3〜5秒に1回)。25回以上は頻呼吸、12回未満は徐呼吸
④SpO2
(経皮的動脈血酸素飽和度)
95%以上。通常98%程度以上。
SpO2 97%=PaO2 90Torr、SpO2 90%=PaO2 60Torr
90%未満で呼吸不全。経皮的に2種類の吸光度を測定してSaO2を算出。
Hb値が低下している場合は運搬酸素量も低下するため、SpO2が95%以上でも低酸素状態となる。その結果、せん妄など生じる可能性がある。
【SpO2が測定不可の場合】
①末梢循環不全(脱水・低体温など)→マッサージ、加温が必要
②マニキュア、爪の汚れ → 爪の汚れを取って測定
③CO中毒、メトヘモグロビン血症など異常Hb→動脈血ガス測定
体温(BT) 36~37℃。通常、腋窩体温で測定する。小児は成人より概ね0.5℃高い。
直腸温>口腔温>腋窩温の順に体温が高い。
※体温の異常は発熱を参照
瞳孔径 2.5~4mmの左右対称。2mm以下は縮瞳、6mm以上は散瞳
毛細血管再充満時間 (CRT) capillary-refilling timeとも言う。爪床を5秒間圧迫し解除後、爪床の赤みが回復するまでの時間。2秒未満なら循環に関しては問題ない。
尿量 1〜2L/day

【脈拍の異常】

左右差 脈拍の左右差がある場合は血圧で左右差を確認する。
大動脈解離、末梢動脈疾患、大動脈縮窄症、高安動脈炎、胸郭出口症候群など
大脈・速脈 収縮期血圧と拡張期血圧の差(脈圧)が増加する状態を大脈という。
左室の一回拍出量が増大するARPDAで出現する。
小脈・遅脈 脈圧が減少する状態を小脈、脈の経時的変化の遅いもの遅脈という。ゆっくり脈が大きくなりゆっくり小さくなるASで出現する。
交互脈 大脈と小脈が交互に出現する状態で、左心機能の著しい低下を意味する。
重度の心不全で出現する(心筋が休みながら脈打ってるため)。
奇脈 呼気時収縮期血圧ー吸気時収縮期血圧が10以上低下する場合(吸気時に収縮期血圧が大きく低下して小脈になる=吸気時に触知している動脈の拍動が減弱)。吸気時に静脈還流が増えるが、その際右心系の容積が増加し左室を圧迫するため、左室からの心拍出量が減少する。
心タンポナーデ、収縮性心膜炎、緊張性気胸などの拡張障害で出現する。
予想血圧 橈骨動脈(手首)で触知不良:推定sBPは80mmHg以下
大腿動脈(鼠径部)で触知不良:推定sBPは70mmHg以下
頸動脈(頸部)で触知不良:推定sBPは60mmHg以下

頭頸部診察

頭部・顔面

確認ポイント
顔貌の視診 顔面の浮腫の有無
①満月様顔貌:Cushing症候群
②浮腫様顔貌:クレチン病
表情の異常
①仮面様顔貌:パーキンソン病、精神疾患
頭髪の視診 ・脱毛の有無
①円形脱毛症
・毛髪量の減少
→甲状腺機能低下症、抗癌剤服用、悪性貧血
頭皮の視診 ・皮疹、瘢痕、腫瘤の有無
頭蓋の触診 ・変形、腫瘤、圧痛の有無

眼鏡をはずしてもらい診察する。

確認ポイント
眼瞼周囲の視診 ・浮腫の有無
→腎不全などの体液貯留
・皮疹の有無
①ヘリオトープ疹:皮膚筋炎
②眼瞼黄色腫:脂質異常症に伴う場合あり
・眼瞼下垂の有無
→動眼神経麻痺、Horner症候群、重症筋無力症など
眼瞼結膜の視診 ・充血の有無
→結膜炎、川崎病
・貧血の有無(下眼瞼結膜外側縁の色調が薄い場合、貧血を疑う)
→様々な貧血
眼球結膜の視診 ・充血の有無
①結膜充血(眼瞼結膜充血あり):結膜炎
②毛様充血(眼瞼結膜充血なし):ぶどう膜炎、角膜実質炎
・黄染の有無
→胆汁うっ滞、血液疾患、薬剤性
眼球突出の視診 ・眼球突出を側面 or 後上方から確認
両側性:バセドウ病
片側性:眼窩腫瘍・炎症、内頸動脈海綿静脈洞瘻(拍動あり)
瞳孔の視診 ・対光反射、眼球運動を確認(神経診察を参照)
  ・角膜輪の異常
→Wilson病、脂質異常症、加齢変化(虹彩外側が少し黄色がかる)

確認ポイント
耳介・その周囲の触診 ・耳介牽引による痛みの有無
→耳介の炎症、乳様突起炎
・耳介前後の圧痛の有無
→耳介リンパ節の腫脹
聴力検査 ・閉眼してもらい、指こすり音(高音)と音叉(低音)で聴力を評価
→Rinnne試験、Weber試験
外耳道・鼓膜の視診 ・耳鏡を用いて観察

確認ポイント
鼻の視診 ・変形の有無
①鞍鼻:Wegener肉芽種
副鼻腔の打診 ・上顎洞、前頭洞の圧痛・叩打痛の有無
→副鼻腔炎
鼻閉塞の確認 ・鼻翼を片方ずつ押さえて確認
両側性:慢性副鼻腔炎、上咽頭癌
片側性:鼻中隔彎曲症、急性副鼻腔炎、鼻腔異物など

口唇・口腔・咽頭

口唇・口角の視診 ・口角びらんの有無
→VB2欠乏、亜鉛欠乏、胃炎、感染症
・小水泡の有無
→HSV-1
・色素沈着の有無
→Addison病、ポイツイェガース症候群
・チアノーゼの有無
歯の観察 欠損、齲歯、歯垢・歯石、歯列異常の有無
歯肉の観察 暗発色の腫脹、易出血性、色素沈着、歯肉増殖の有無
頬粘膜の観察 色素沈着、潰瘍、白板症、出血班、耳下腺管開口部の閉塞の有無
舌の視診 発赤、腫瘤、潰瘍、舌乳頭萎縮、舌苔、巨舌の有無
口腔底の視診 腫瘤、舌小帯短縮、顎下腺管開口部の閉塞の有無
硬口蓋の視診 発赤、腫瘤、潰瘍、出血斑の有無
咽頭後壁・軟口蓋の視診 発赤、腫瘤、出血、後鼻漏の有無
口蓋扁桃の視診 腫脹、左右差、発赤、白苔の有無

唾液腺

耳下腺の触診 ・圧痛の有無
→流行性耳下腺炎
・腫瘤の有無
境界明瞭:多形腺腫
硬、境界不明瞭:悪性腫瘍
顎下腺の触診 ・圧痛の有無
硬、境界明瞭:唾石症、腫瘍

頭頸部リンパ節

後頭部
耳介後部 風疹、乳様突起炎、流行性角結膜炎
耳介前部 流行性角結膜炎
下顎角直下 化膿性扁桃炎
顎下部 口腔内・歯肉の炎症、舌癌
オトガイ下部
後頸三角 甲状腺癌や咽頭癌の転移、伝染性単核球症、悪性リンパ腫
胸鎖乳突筋浅層
胸鎖乳突筋深層
鎖骨上窩 Virchow転移(左鎖骨上窩)

甲状腺

頸動脈・頸静脈

肺の診察

視診→打診→聴診の順

肺の視診(呼吸のリズム異常)

Kussmaul呼吸 ゆっくりとした深く規則的な呼吸
代謝性アシドーシスの呼吸性代償として起こる。
糖尿病ケトアシドーシス
Kussmaul:トアシ)
尿毒症
Cheyne-Stokes呼吸
(交代性無呼吸)
無呼吸→過呼吸→減呼吸の繰り返し。
延髄の化学受容器がPaCO2変動に対して過度に敏感なることが原因。
重症心不全高齢者脳出血・脳腫瘍による呼吸中枢の圧迫や血行障害
Biot呼吸 不規則に早く深い呼吸→突然無呼吸。の繰り返し。呼吸リズムは不規則。 脳出血、脳腫瘍による呼吸中枢の圧迫や血行障害(予後不良サイン)

肺の打診

清音(肺) 正常
濁音(含気量の減少) 胸水貯留、肺水腫、肺の浸潤性病変、無気肺
鼓音(含気量の増加) COPD、気胸、肺気腫
肺肝境界下降 COPD、気胸、肺気腫
肺肝境界消失 消化管穿孔(フリーエアーのため)

肺の聴診

【正常呼吸音】

意義 聴診部位
気管呼吸音
(高音)
吸気:呼気=1:1で聴取 胸:頸部
背:なし
気管支呼吸音
(中音)
吸気:呼気=1:1〜2で聴取
末梢気道で増大:浸潤性病変、胸膜癒着
呼気延長:閉塞性肺疾患
胸:胸骨角の両サイド
背:肩甲骨の間
肺胞呼吸音
(低音)
肺胞の音ではなくもっと上流の音
吸気時のみ末梢気道で聴取
減弱:無気肺、肺気腫、胸水貯留
胸:胸骨角以下
背:肩甲骨の間以下

【副雑音(正常呼吸音以外の音)】

病態 疾患
連続性ラ音
(呼+吸)
rhonchi
(低音のいびき音)
比較的中枢の気道の炎症によって生じた水分ため狭窄し、呼吸時にいびき様のグーグー低い音が聞こえる 肺癌、気管支炎、気道異物、気管支喘息、COPD(慢性気管支炎)
wheezes
(高音の笛音)
比較的末梢の気道閉塞によって呼気時にヒューヒュー高い音が聞こえる。重症の場合は吸気時にも聞こえる。 気管支喘息、COPD、心不全
断続性ラ音
(吸のみ)
coarse crackles
(水泡音)
肺胞に溜まった水分が吸気時にブツブツ低い音として聞こえる 肺炎、肺水腫、DBP、COPD(慢性気管支炎)
fine crackles
(捻髪音)
間質の線維化により吸気時にパリパリ高い音が聞こえる 間質性肺炎
その他
(呼+吸)
friction rub
(摩擦音)
断続的な握雪音
深呼吸すると痛みが増強
胸膜炎
(吸のみ) stridor 上気道閉塞によって吸気時に喘鳴が頸部のみで聞こえる→気管挿管! クループ症候群、甲状腺腫瘍、心臓喘息など

※クループ症候群:急な検査に苦しむ気性喘鳴、吠様咳嗽、声、クループ症候群)

心臓の診察

視診→触診→聴診の順

聴診しやすい5領域
①大動脈弁領域(2RSB 第2肋間胸骨縁(前傾座位で聴取↑)
→A弁の閉鎖音がよく聞こえる
②肺動脈弁領域(2LSB 第2肋間胸骨
→P弁の閉鎖音がよく聞こえる
③エルブ領域(3LSB 第3肋間胸骨左縁
→ARの拡張期の灌水様雑音がよく聞こえる
④三尖弁領域(4LSB 第4肋間胸骨左縁=心室中隔
→T弁の閉鎖音がよく聞こえる
⑤僧帽弁領域(5LMCL 鎖骨中線と第5肋間の交点=心尖部(左側臥位で聴取↑)
→M弁の閉鎖音がよく聞こえる

心臓の聴診(心音・心雑音)

【正常心音・異常心音】

正常
心音
Ⅰ音 房室弁が閉じる音で、収縮期の始めに聴こえる。(Ⅰ音〜Ⅱ音=収縮期
Ⅰ音は心室収縮による内側からの力で弁が閉まる音。
Ⅱ音 半月弁が閉じる音で、Ⅱ音は高音。(Ⅱ音〜次のⅠ音=拡張期
Ⅱ音は心臓に戻ってくる外側からの力で弁が閉まる音。
Ⅱ音
分裂
吸気時に胸腔が拡大して静脈還流量が増加するため右室の駆出量も増加し、Ⅱa音よりⅡp音が遅れる(a→pの順に閉鎖)が、ヒトの耳ではわからない!
異常
心音
Ⅰ音
亢進
I音亢進は心室側の力が増加した時に大きくなる!
①房室弁の石灰化による狭窄で亢進(主にMSやTS)
②心拍出力増加で亢進(運動時・発熱時・甲状腺機能亢進症・貧血など)、完全房室ブロックの場合は時々巨大なⅠ音(大砲音)が聴こえる。
Ⅰ音
減弱
I音亢進の逆!
①房室弁の閉鎖不全で減弱(主にMRやTR)
②心拍出力低下で減弱(心筋症・心筋炎・心筋梗塞・心膜液貯留・甲状腺機能低下症など)、第1度房室ブロックの場合も減弱
Ⅱ音
分裂
①病的分裂:吸気時に広く分裂する。これは、右脚ブロックによって右室の駆出が遅れる、PSによって弁の閉鎖に時間がかかることでⅡpが遅れる。または、VSDによって左室の血液が減少して左室収縮時間が早くなる、MRによって左房に血液が逃げてⅡaが早まることが原因。
②固定性分裂:呼吸に関係なく一定間隔で分裂する。これは、ASDによって卵円孔からの血液が増加し、右室の仕事量が常に増加し、呼気時のⅡpも遅れることが原因。
③奇異性分裂:呼気時に却って分裂する。これは、AS左脚ブロックにより左室の駆出が遅れるためⅡaが遅れることが原因。
Ⅱ音
亢進
Ⅱ音は動脈側の力が増加し、弁が閉じにくく逆流が増加した時大きくなる!
①Ⅱa亢進は逆流によるAR高血圧で亢進
②Ⅱp亢進は逆流によるPR肺高血圧で亢進
Ⅱ音
減弱
①Ⅱa減弱は最初から閉まり気味のASで減弱
②Ⅱp減弱は最初から閉まり気味のPSで減弱
過剰
心音
Ⅲ音 流入期(拡張早期)に心室へ急速流入する血液が心室壁にぶつかる衝撃音(左側臥位にして胸壁に近い心尖部で聴取しやすい)。ただし、30歳以下では過半数で認め、必ずしも病的とは限らない。高齢者の場合は病的。心不全の早期徴候。
①MR、AR、VSDなどで心拡大して拡張期の容量負荷↑が原因
②心筋症、心筋炎、心筋梗塞など心筋が傷んでいるのが原因
あら(AR)、まあ(MR)、ブスだわ(VSD)、あそんでる(ASD)パンダ(PDA)さん(Ⅲ音)。
Ⅳ音 心房収縮期(拡張末期)に心室へ急速流入する血液が心室壁にぶつかる衝撃音。全て病的。流入期に心室に十分な血液が充満されないことが原因で、心筋拡張不全を意味する(心不全の前兆)。Ⅰ・Ⅱ音+Ⅲ音 and/or Ⅳ音による3部調律=馬が駆けているような奔馬調律(gallop rhythm)を聴取することがある。
①肥大型心筋症、高血圧、ASなどで心肥大して拡張不全による圧負荷↑が原因
②心機能が低下した陳旧性心筋梗塞も拡張不全を生じる原因
その他 ①僧帽弁開放音(Mitral Opening Snap):MSの際に、Ⅱ音の直後に石灰化した僧帽弁が開く高調音。
②心膜ノック音:収縮性心膜炎の際に、Ⅱ音の直後に肥厚した心膜が拡張し始めた心筋をブロックする高調音。
③駆出音:AS・MSなど弁狭窄症の際に、収縮期に生じる過剰心音で、駆出音に引き続き駆出性雑音が聴こえる。
④収縮中期(後期)クリック:僧帽弁逸脱症の際に、僧帽弁が左室から左房にはみ出した時に生じる音。

【心雑音:Cardiac murmur】

心周期のどこかで生じる比較的長い音のこと(心音は弁の開放・閉鎖に伴って生じる短い音)。血管という管を層流が通過しているが、血流が速くなったり、粘性が低下したりすると層流が崩れて乱流になると心雑音が生じる。

収縮期
駆出性雑音
心室→大動脈・肺動脈に駆出される時に生じ、収縮期を通じて漸増漸減する雑音(ダイヤモンド型心音図)。典型例としてAS、PS。他にも、粘性が低下する貧血、血流速度が増加する妊娠や甲状腺機能亢進症で聴取する。
収縮期
逆流性雑音
房室弁が閉まりにくく、収縮期に心室→心房へ逆流する時に生じる全収縮期性の雑音。典型例としてMR、TR。他にも、収縮期に左→右室に逆流するVSDでも聴取する。
拡張期
駆出性雑音
房室弁が狭く拡張期に心房→心室に駆出される時に生じ、拡張期のゴロゴロとした感じの雑音(拡張期ランブル)。典型例としてMS、TSで聴取する。
Carey Coombs雑音:房室弁を通過する血流増加によって(VSD、MRなど)、逆流が生じて僧帽弁口が狭くなり(機能的MS)、その結果生じた雑音。
Austin Flint雑音:ARで大動脈→左室に逆流した血流が僧帽弁を押し上げ、僧帽弁口が狭くなり(機能的MS)、その結果生じた雑音。
拡張期
逆流性雑音
A弁とP弁が閉まりにくく、拡張期に動脈→心室へ逆流する時に生じ、拡張期に漸減する雑音(灌水様雑音)。典型例としてAR、機能的PRで聴取する。
Graham steell雑音:MSを参照。
連続性雑音 収縮期と拡張期を通じて連続的に生じる雑音。Ⅱ音の前で途切れることはない。典型例としてPDA、Valsalva洞動脈瘤破裂、先天性冠状動脈廔で聴取する。
静脈コマ音:コマが回るような低調性の連続性雑音。粘性の低下する貧血、血流速度が増加する妊娠や甲状腺機能亢進症などで聴取する。内頸静脈の方が聴取しやすい(特に旧記事、立位・座位)。
往復雑音 収縮期雑音と拡張期雑音が同時に存在する雑音。Ⅱ音の前で途切れるため連続性雑音と区別する!典型例としてAR+機能的AS、VSD+ARで聴取する。
無害性雑音 心臓に器質的病変がないのに生じる心雑音は機能性雑音といい、その中でも良好な心収縮によって血流が増加するため生じる雑音を無害性雑音という。
無害性雑音は必ず収縮期駆出性雑音で、Ⅰ音から少し間を置いて生じる。特に下部胸骨左縁と心尖部でうなう様に聴こえる雑音をStill雑音という。

腹部診察

視診→聴診→打診→触診の順(両膝を立てて腹筋群の緊張がとれた状態で診察する)

【腹部9区分】縦は鎖骨中線(乳首)、横は肋骨弓下縁上前腸骨棘で区分する!

右季肋部 心窩部 左季肋部
右側腹部 臍部 左側腹部
右腸骨部 下腹部 左腸骨部

腹部の視診

腹部膨隆の視診 ・下腹部を中心とした皮膚のたるみとひだが有
→皮下脂肪型の膨隆(皮膚をつかめる)
・緊満時腹部表面の皮膚の光沢が有
→内臓脂肪型の膨隆(皮膚をつかみにくい)
・カエル腹で、臍の反転や突出が有(打診で皮下脂肪型と鑑別)
→腹水、腹腔内腫瘤
※腹水は仰臥位で鼓音から濁音になる境界がある

腹部の聴診

腸蠕動音の聴診 ・腸蠕動音の確認
①蠕動音を常に聴取(亢進):IBS、腸炎、単純性腸閉塞(金属音)
②30秒以内に蠕動音を数回聴取(正常)
③蠕動音が聴取されない(減弱、消失):麻痺性イレウス、複雑性腸閉塞
腹部血管音の聴診 ・腹部大動脈の血管雑音の有無(剣状突起と臍の間)
→大動脈炎症候群
・両側腎動脈の血管雑音の有無(剣状突起と臍の中点で分岐)
→腎血管性高血圧症
・両側総腸骨動脈の血管雑音の有無(仙腸関節付近で分岐)

腹部の打診

腹部全体の打診 9領域を患者の表情を見ながら打診
肝臓の叩打診 ①肝腫大による肝被膜の伸展:腫瘍、感染症、肝炎など
②肝周囲炎:フィッツヒューカーティス症候群など
脾臓の叩打診 脾腫、脾梗塞、脾出血、腫瘍など
腎臓の叩打診 ・CVA叩打(+)
腎盂腎炎、尿路結石、腎出血、脾梗塞、膵炎

腹部の触診

腹部の浅い・深い触診 ・浅い触診で圧痛や筋性防御を確認
→腹壁表面の異常、高度の腹腔内炎症、腸管の膨満
・深い触診で圧痛や腫瘤を確認(浅い触診で異常がない場合)
①圧迫した状態を維持すると軽減→胃腸管の緊満
②圧迫時よりも手前に引いた時に強い痛み→胃腸管の炎症
③常に強い痛み→腹膜炎
腹膜刺激症状の確認 ①咳嗽試験
②筋性防御:腹壁を押し下げ痛みが出現すると腹筋が緊張する
③反跳痛(Blumberg徴候):圧迫した後、手を離す瞬間に鋭い痛み→内臓の炎症が腹壁に波及している
④踵落とし衝撃試験
肝臓の触診 ・吸気時に肝臓を触知の確認
→肝腫大
脾臓の触診 ・右側臥位になり、吸気時に脾臓を触知の確認
→高度の脾腫
腎臓の触診

直腸の診察

直腸の視診

肛門の視診 ・裂肛、内痔核、外痔核、肛門周囲膿瘍、痔瘻を確認
直腸の触診 ・指を回しながら肛門の全周に狭窄、弛緩、硬結、圧痛を確認
①6時方向に裂傷+イボ、肛門括約筋の緊張亢進:裂肛
②3、7、11時方向に疼痛の少ない軟腫瘤:内痔核
・腫瘤の確認
①可動性あり・軟らかい:ポリープ
②可動性なし・硬い・血便:悪性腫瘍
前立腺の触診 ①弾性硬・表面平滑:前立腺肥大
②石様硬・表面不整:前立腺癌
便の確認 ①鮮血便:左側結腸〜肛門の出血
②赤色〜暗赤色便:上部消化管〜全結腸の出血
③タール便:上部消化管の出血

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