高血圧の診察
①高血圧の診断
定義 | 診察室血圧が140/90以上、家庭血圧が135/85以上で高血圧(高血圧治療ガイドライン) |
注意 | 血圧は種々の原因で変動するため、少なくとも1〜2週間程度家庭血圧の記録を付けてもらい、その値を持って診断・治療方針を決定するのが望ましい。 |
②高血圧緊急症を除外
定義 | 高血圧とともに新たな or 進行した臓器障害がある場合(妊婦を除く) |
血圧 | sBP180 or dBP120以上であることが多い |
問診 | 脳卒中・脳症:頭痛、意識障害、めまい、悪心嘔吐、けいれん、視野障害、複視、麻痺 ACS・大動脈解離:胸部不快感、急性の激しい胸背部痛 心不全:呼吸困難 腎不全:尿量低下、体重増加、倦怠感 |
注意 | 臓器症状を伴わない場合は高血圧切迫症として20〜30分後に再検する |
③二次性高血圧の可能性を評価
定義 | 治療可能な原因を背景とした高血圧(高血圧の約10%を占める) |
概要 | ①腎性高血圧:腎実質性高血圧(二次性で最多)、腎血管性高血圧 ②内分泌性高血圧:原発性Ald症、偽Ald症、Liddle症候群、Cushing症候群(重症例のみ低K血症)、褐色細胞腫、甲状腺機能亢進症 ③血管性高血圧:大動脈炎症候群、大動脈狭窄症、AR ④その他:中枢神経系による高血圧、薬剤誘発性高血圧、睡眠時無呼吸症候群 (赤色は低K血症を伴いやすい) |
らしさ |
④本態性高血圧
病態 | 高血圧が持続すると脳卒中、心肥大・心不全・AF・心筋梗塞、腎硬化症・腎不全、高血圧性網膜症などの臓器障害が生じる。 原因不明だが遺伝的要因+環境要因で発症する。環境要因5つを以下に示す。 ①食塩過剰摂取、②肥満、③アルコール多飲、④喫煙、⑤運動不足 高齢者の高血圧の特徴を以下に示す。 ①低レニン性、②収縮期血圧上昇、③拡張期血圧低下、④血圧変動が大きい(起立時、食後は↓) |
症状 | 無症状 |
他覚 所見 | 【聴診】 Ⅱ音亢進:大動脈圧↑のため |
検査 | 【血圧測定】 1日2回、朝食前(or起床して排尿後)と就寝前に測定。30分以上カフェイン摂取、喫煙を禁止した状態で1回に複数回測定し、安定した値の2回の血圧の平均を求める(診察室血圧より家庭血圧を優先して判断)。 |
治療 | 原則、診察室血圧130/80未満に降圧 75歳以上、脳血管障害患者、蛋白尿陰性のCKD患者は140/90未満に降圧 二次性高血圧は原因除去 【薬物療法(予防を行なっても効果不十分な場合)】 ①Ca拮抗薬:左室肥大、頻脈、狭心症 ②ARB・ACE阻害薬:慢性心不全、CKD、心筋梗塞後、左室肥大 ③サイアザイド系利尿薬:慢性心不全、食塩過剰摂取 ④補助的にβ遮断薬やα1遮断薬を使う場合もある |
予防 | 減塩:1日6g未満 減量:カロリー制限してBMI25未満+運動(毎日30分以上の有酸素運動) 節酒:純アルコール20g/日以下 禁煙 |
高血圧緊急症(旧 悪性高血圧)
病態 | 高血圧緊急症とは、脳、心臓、腎臓、大血管などに急性の臓器障害を生じさせる病態。ICUに入院して、静注降圧薬による速やかな降圧が必要となる。 ※急性の臓器障害を伴っていない場合は高血圧切迫症と診断され、内服薬による緩徐な降圧を行う。無症状、または臓器障害を示唆する所見はない。入院の必要はない。 |
検査 | 頭部:CT/MRIで頭蓋内病変を確認 心臓:心電図でST変化、血液検査でトロポニン、胸部X線で肺水腫・胸水 血管:胸部X線で縦隔拡大の有無、胸部造影CTで大動脈解離を評価 腎臓:血液検査でBUN・Cre・電解質、尿検査で血尿・尿蛋白・円柱を評価 |
治療 | <緊急降圧> 急性脳梗塞、大動脈解離を除いて、平均血圧を最初の1時間は10〜20%、続く23時間で5〜15%低下させることを目標にする(急速な降圧は臓器の虚血性障害を引き起こす)。目標の血圧に達して8〜24時間経過したら、経口薬の内服を開始し、静注薬を漸減・中止する。 例:ニカルジピン25mg 2mL+生食225mL 15〜30mL/hrで開始 |
起立性調節障害 OD:Orthostatic Dysregulation
疫学 | 思春期に好発 |
病態 | 起立直後の交感神経が作動せず、静脈還流量が維持できないため血圧が低下し、脳や全身への血液循環が不足する疾患。貧血、心疾患、てんかんなどの器質的疾患は除外する。 |
症状 | 立ちくらみ、失神、朝起きられない、午前中は調子が悪い、立っていると気分が悪い、乗り物酔いしやすい |
検査 | 【起立負荷試験】10分間臥位→10分立位保持し、収縮期圧21以上低下、心拍数21回/分以上増加で陽性 |
治療 | 【自律神経鍛錬療法】時間をかけて起立する、運動で体を鍛える、塩分・水分を摂取するなどの生活改善を行う。成人すると症状は軽快することが多い。 【薬物療法】自律神経鍛錬療法で改善しない場合、ミドドリン、アメジニウム、ジヒドロエルゴタミンなどを投与する。 |
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