梅毒トレポネーマの特徴
試験管内培養できない、人工培地で培養できない。
後天性梅毒(トレポネーマ)
5類感染症(全数)。
病態 | 性行為によって感染。HIVとの重複感染も多い。 経胎盤感染による先天性梅毒は現在ではまれ。 |
1期:局所感染 ⇨1週間〜3ヶ月 (平均3週目) |
性交によって粘膜の小さな傷口から侵入したトレポネーマは3週間後、 ①咽頭と性器に無痛性の初期結節 ②その結節表面が潰瘍化した硬性下疳(こうせいげかん) ③鼠径部の無痛性リンパ節腫脹を呈するが、次第に自然消退する。 |
2期:全身感染 ⇨3ヶ月~3年 (平均6週目) |
トレポネーマが再増殖すると感冒様症状を呈し、血流にのって全身に拡散。 皮膚:バラ疹(全身の淡い紅斑)→数週間後に丘疹性梅毒疹、手掌や足底に梅毒性乾癬、頭部には多数の小型脱毛斑。 粘膜:粘膜疹(梅毒アンギーナ)、口角炎、肛門外陰部扁平コンジローマ。 全身:全身リンパ節腫脹、全身倦怠感、微熱、髄膜炎、ぶどう膜炎 |
3期、4期 ⇨3年以降 |
無治療の約1/3はトレポネーマ排除に失敗し、感染後3年以上経過すると皮膚・骨・肝などにゴム腫(梅毒性肉芽腫)がみられ、10年以上経過して4期になると中枢神経や血管(心血管梅毒)が侵される。ただし、現在では3期、4期の患者はまれである。 <中枢神経症状=神経梅毒> ①人格変化を伴う認知症 ②脊髄癆:後索障害による深部感覚障害 ③両眼縮瞳+対光反射消失するArgyll Robertson瞳孔:あ、蛾がいる目がテン! |
治療 | ①ペニシリンG経口投与(第一選択) ②ペニシリンアレルギー:テトラサイクリン系、セフトリアキソン ③妊婦:マクロライド系(アジスロマイシン) ※抗菌薬の治療開始後、菌体の崩壊によって一過性に症状悪化や発熱を伴うことがあるが、通常24時間以内で軽快する(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)。 ※梅毒の治療効果にはRPR定量検査を用いる。治療後6ヵ月でRPR定量検査が1/4以下に低下することが治療効果判定の基準である。 |
【検査】
梅毒の確定診断は、STSとTP抗原試験を併用して行う。
【STS(脂質抗原試験)】→3文字は活動性を意味する! 感染による組織破壊で遊離した脂肪成分(カルジオリピン)に対する抗体を検出する方法で、実施法として主にRPRカードテスト法が使われている(STS≒RPRと考えてよい)。感染2〜4週で陽性となり、治癒すると低下するため効果判定に使用できる。RPR(STS)法16倍以上ではペニシリンによる治療を行う。 感度が高いが、偽陽性が多い。STS陽性、TPHA陰性の時を生物学的偽陽性(BFP)といい、抗リン脂質抗体症候群、SLE、肝硬変、妊娠などで認められる。 |
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【TP(Treponema pallidum)抗原試験】 →TPHA法とFTA-ABS法があり、陽性ならば結核の既往と考えて良い 以下どちらも感染初期は陰性だが、4~6週で陽性となり(=第1期の終わり頃)、その後低下しない。感度は低いが、特異度が高い。 ①TPHA試験(TP抗体法) 血球にTP抗原を吸着させたものに、患者のTP抗体が反応して凝集する方法。 ②FTA-ABS法 スライドにTP抗原を吸着させたものに、患者のTP抗体が反応して蛍光抗体法で確認する方法。 |
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STS | TPHA | 意義 |
– | – | 感染なし or 感染後2週未満 |
+ | – | 感染後2~4週 or 生物学的偽陽性(BFP) |
+ | + | 梅毒感染4週以降(要治療!!) |
– | + | 治癒(陳旧性梅毒) |
先天性梅毒
病態 | 経胎盤感染によって伝播される多臓器感染症。 妊娠13週までは梅毒は胎児への感染率は低いため、診断後は速やかにペニシリン投与 |
症状 | ①骨軟骨炎: ②梅毒性天疱瘡 ③Parrot仮性麻痺など |
検査 | 後天性梅毒と同じ |
治療 | ペニシリン投与 |
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