麻疹ウイルス(Measles virus)

微生物学

麻疹(はしか) Measles

5類感染症で、診断後直ちに届出が必要。学校保健安全法により解熱後3日間経過するまで登校停止。

病態 主に母体からの受動免疫がなくなった生後6ヶ月以降の幼児に感染し、 初感染で95%以上が発症する。空気感染(飛沫核感染)によって気道上皮から侵入し、気道周囲のリンパ節から全身のリンパ系組織に広がる(血漿を介さない)。
修飾麻疹:麻疹に対して不完全な免疫を持つ人が感染した場合、軽症で非典型的な麻疹を発症する。
症状 約10日間の潜伏期間の後、
【①カタル期】発熱、眼脂、咳嗽、鼻水、結膜充血などのカタル症状→コプリック斑(口腔頬粘膜にできる白色斑)が出現し、感染力が高い時期である。
【②発疹期】1〜2日後に解熱した後再び高熱となり(2峰性発熱)、 癒合して汚い皮疹(褐色)が全身に広がる。
【③回復期】皮疹は退色するが、しばらくは色素沈着する。
合併症として、細胞性免疫の低下による麻疹巨細胞性肺炎、中耳炎、脳炎、クループ症候群がある。また5~10年を経て発症する亜急性硬化性脳炎(SSPE)が10万人に1人の頻度でみられ、これはワクチン投与によっても起こる。
検査 PCR法:血液・尿・咽頭ぬぐい液
血液検査:急性期の麻疹IgM抗体陽性
ペア血清:急性期・回復期の血清を比較して麻疹抗体4倍以上増加
治療 対症療法
<患者接触者>
麻疹患者に接触した場合、72時間以内(3日以内)であれば緊急ワクチン接種、4〜6日以内であれば免疫グロブリン製剤注射すれば発症を予防、もしくは軽症化することが可能。
予防 生ワクチンであるMR混合ワクチンを1歳と小学校入学前に2回接種(麻疹患者の減少により抗原刺激の機会が減少し終生免疫は得られなくなってきた)。

亜急性硬化性脳炎(SSPE)

疫学 5〜14歳に好発
病態 麻疹ウイルスが脳内で変異して麻疹様ウイルス(SSPEウイルス)になる。麻疹罹患後5〜6年後に遅発性に発症する。
症状 ①初期症状は性格変化、周囲への無関心、意欲低下
②初期症状から数ヶ月後にミオクローヌスが出現
③数ヶ月から1年程度で昏睡状態から死に至る
検査 【髄液検査】
IgG著増、麻疹抗体増加、髄液の電気泳動でγグロブリン分画にオリゴクローナルバンド
【脳波】
徐波化:脳の活動性低下のため
周期性同期性放電(PSD):ミオクローヌスに一致
治療 イノシンプラノベクス経口投与

コメント

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