医療倫理(IC、薬害・治験、終末期医療、移植)

公衆衛生

医療倫理

ジュネーブ宣言 1948年 現代版ヒポクラテスの誓いといわれ、人命尊重を基本理念とした医師の職業倫理に関する宣言。
ヘルシンキ宣言 1964年 ニュルンベルク綱領をもとに、ヒトを対象とする医学研究の倫理を規定した宣言。IRB(治験審査委員会)、IC、プロトコルなど含む。ヘルシーな研究
リスボン宣言 1981年 患者の権利に関する宣言。良質の医療を受ける権利、選択の自由、自己決定の権利(幸福追求権)などを含む。患者のけんりすぼん

薬害

薬害名 詳細 薬害が契機となった法律 年代
サリドマイド事件 睡眠薬の副作用で四肢奇形の新生児が産まれる。   1959〜64年
クロロキン 抗マラリヤ薬の副作用で網膜症   1969年頃
SMON事件 胃腸薬のキノホルムの副作用で歩行障害や視力低下が生じた 医薬品副作用被害救済基金法 1955〜70年
薬害エイズ事件 血液製剤の汚染で血友病患者の約4割が感染   1982〜85年
薬害C型肝炎 汚染フィブリノーゲン製剤の使用により感染 薬害肝炎救済法、
薬害肝炎救済特別措置法
1987年頃
MMRワクチン おたふくかぜワクチンの副作用で無菌性髄膜炎 予防接種健康被害救済制度 1992年頃
ソリブジン事件 5-FUと帯状疱疹薬の併用で死亡事故   1993年
クロイツフェルト・ヤコブ病 病原体に汚染されたヒト乾燥硬膜移植でプリオン感染   1997年頃
B型肝炎ウイルス感染 予防接種時の注射針使い回しなどで感染   1948〜88年
子宮頸癌ワクチン 四肢麻痺、アナフィラキシーなどの副作用   2010年頃

新薬の研究開発

臨床研究の違い

臨床研究
(Clinical research)
観察研究、疫学研究などを含むヒトを対象とするすべての研究
臨床試験
(Clinical trial)
治療と並行して介入を伴う臨床研究
治験 新薬承認のための臨床試験。GCPを遵守して行なわなければならない。
【企業主導治験】治験にかかる費用を企業が負担して行う治験。
【医師主導治験】治験にかかる費用を医師が負担し、承認申請は企業にサポートしてもらう治験。主に企業が治験を積極的に行わない薬について治験をする。

治験(新薬開発)の流れ

創薬研究 標的分子同定 評価系を構築
  スクリーニング 候補化合物の探索と最適化
前臨床試験 動物実験 薬効薬理試験、毒性試験、安全性試験を実施
臨床試験 第1相試験
(臨床薬理試験)
少数の健常人を対象に安全な投与用量、薬物動態を確認する。
【SAD試験:単回投与用量漸増試験】治験薬を単回投与し、安全用量域の絞り込み、薬物動態を調べる。
【MAD試験:反復投与用量漸増試験】治験薬を反復投与し、SAD試験と同様に安全用量域の絞り込み、薬物動態を調べる。
  第2相試験
探索的試験)
少数の患者を対象に安全性・有効性を確認し、用法を設定する。
【前期(P2a)】治験薬を初めて患者に投与し、有効性と安全性を確認し、開発に値するか評価する(POC)。
【後期(P2b)】薬物動態、適応症を明らかにする。また、用量を設定する。
  第3相試験
検証的試験)
多数の患者を対象にⅡ相で決定された用量をもとに安全性・有効性を最終確認する。
数百人の症例登録が必要なため、通常は国際共同試験を行う。承認された場合は海外でも使えるメリットがある。
承認申請 PMDAに申請 ※PMDAは承認申請だけでなく、医薬品の安全対策や健康被害救済も行なっている。
市販後調査
(第4相試験)
市販直後調査 販売後半年間、安全性・有効性をGVPに則り調査する(義務)。
  使用成績調査 販売後3年間、安全性・有効性をGPSPに則り調査する。全例調査を義務的に行うため、患者の同意は必要ない。
  特定
使用成績調査
小児、高齢者、妊婦など特定の患者を対象に行う使用成績調査のこと。
  製造販売後
臨床試験
第Ⅳ相試験とも言われる。承認後の薬について、安全性情報などを集積するため、GCP+GPSPに則り実施する。この結果を踏まえて再審査が行われる。調査には患者の同意が必要である。
  安全性定期報告 承認後2年間は半年毎、その後は1年毎に安全性情報をPMDAに報告するもの。再審査・再評価のデータとして使用される。

【治験をサポートする人々】

  病院側 製薬企業側
団体 SMO(CRC派遣会社) CRO(CRA派遣会社)
スタッフ CRC(患者対応) CRA(カルテやCRFで治験進行の確認)

治験で使われる用語

有害事象
(AE:Adverse Event)
薬を投与した患者に生じたあらゆる好ましくないもので、薬との因果関係は問わない。
副作用
(ADR:Adverse Drug Reaction)
有害事象のうち、薬との因果関係が否定できないもの。
CTCAEグレード 有害事象の医学的重症度を示すもので、Grade1〜5に分類される。
MedDRA 国際的に統一された有害事象名。
重篤な有害事象
(SAE:Serious Adverse Event)
規制当局(PMDA)に報告が必要な有害事象のこと。医学的な重症度(Severity)とは異なる。
治験安全性最新報告(DSUR) 治験中、1年ごとに治験薬の安全性情報をまとめてPMDAに報告するもの。
医薬品リスク管理計画
(RMP:Risk Management Plan)
医薬品のリスクを最小限にするための取り組みを文書化したもの。PMDAに提出された後、公開される。
定期的ベネフィット・リスク評価報告
(PBPER)
製造販売後、市販後調査によって収集された医薬品のベネフィット・リスクが評価され文書化されたもの。かつて、定期的安全性最新報告(PSUR)と呼ばれていた。

代表的な三次資料(医薬品情報)

発行者 名称 概要
製薬企業 添付文書 最も基本的な医薬品情報を記載した文書
  インタビューフォーム 添付文書を補完する資料
  イエローレター 緊急安全性情報を記載した資料
  ブルーレター 迅速に医療従事者に注意喚起を図る資料
  患者向医薬品ガイド 患者向けのお薬ガイド
  薬のしおり シンプルな患者向けの薬ガイド
  医薬品リスク管理計画 開発から市販後まで一貫したリスク管理を記載した資料
厚生労働省 オレンジブック 溶出試験結果などの品質情報をまとめた資料
日本製薬団体連合 医薬品安全対策情報
(DSU)
添付文書の「使用上の注意」の改訂情報を記載した資料
各学会 診療ガイドライン エビデンスに基づいた標準的な治療法を記載した資料
米国企業  UpToDate 診断・治療・予防について記載された臨床支援ツール

医療機器の分類

国際分類 医薬品医療機器法の分類 具体例
クラスⅠ 一般医療機器 メス・ピンセット
クラスⅡ 管理医療機器 MRI装置、超音波装置、消化器用カテーテル
クラスⅢ 高度管理医療機器 透析器、人工骨、人工呼吸器
クラスⅣ 同上 ペースメーカー、人口心臓弁、ステントグラフト

脳死と臓器移植

通常の死は心臓死である。心臓死は①心拍動の停止、②呼吸の停止、③瞳孔の散大(死の三徴)によって行われる。しかし、心臓死では心臓移植はできない。そのため、臓器移植法を制定し、移植を目的とする場合のみ脳死と言う死の概念を導入した。

臓器移植法

  臓器摘出の要件のまとめ
ドナーの生前の書面による意思表示と遺族の拒否がないこと
ドナーの意思が不明な場合は遺族の書面による承諾があること
家族の承認があれば15歳未満の脳死臓器提供も可能
公平性確保のため日本臓器移植ネットワークが一元的に管理
(ただし、書面による意思表示がある場合は親族へ優先提供できる)

【臓器移植の分類】

摘出から再灌流までの許容時間は、心臓:4時間、肺:8時間、肝臓:12時間、膵臓&腎臓:24時間である。

    心臓 肝臓 膵臓 腎臓 小腸 角膜 皮膚
脳死 阻血に脆弱な臓器も可能    
心停止後 阻血時間に余裕ある臓器        
生体移植 例えば父→息子など      

法的脳死判定

脳死とは、脳幹を含む全脳の不可逆的機能停止である。

  脳死除外項目(脳死と類似することがある項目)
低体温(直腸温が成人で32℃未満
急性薬物中毒内分泌代謝疾患(肝性脳症、尿毒症性脳症など)
収縮期血圧90未満(13歳以上)
生後12週未満の者(在胎週数40週未満の場合は出産予定日から12週未満の者)

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  脳死判定の基準 
脳死の兵士の児童館脳死/坦脳波/睡/発呼吸消失/孔散大/脳射消失
深昏睡の確認(JCS300:顔面への痛み刺激に無反応)
瞳孔固定の確認(左右瞳孔径4mm以上の散大)→中脳・橋の廃絶
脳幹反射消失の確認(1対光反射、2角膜反射、3毛様脊髄反射、4眼球頭反射、5前庭反射、6咽頭反射、7咳反射)※毛様脊髄反射と脊髄反射は違うものなので注意!
かくメモ前にのせた膜/球頭/様脊髄/庭/頭//
平坦脳波の確認→大脳の廃絶
自発呼吸消失の確認(無呼吸テスト)→延髄の廃絶

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判定間隔 6時間以上経過した後に2回目を実施(6歳未満は24時間以上経過した後)
脳死の判定 移植医以外の2名以上の判定医の判断の一致で脳死と認定。
死亡時刻は2回目の脳死判定時刻を採用

再生医療

移植医療に代わる次世代の医療。

  利点 欠点
体性幹細胞 皮膚幹細胞、角膜幹細胞、造血幹細胞などは成人の組織中に存在して採取しやすい。自己細胞を用いれば拒絶反応もなく、腫瘍化しにくい。 分化できる組織の種類、培養の継続可能性が大幅に制限される。
ES細胞 分化能が高い、培養の無限性がある 生殖補助医療で生じた余剰胚を用いる
iPS細胞 入手しやすい
倫理的な問題が少ない
遺伝子導入に伴うリスクやがん化しやすい可能性がある。

個人情報保護法

第15・16条 個人情報の利用目的の特定と目的外利用の制限
第19条 データ内容の最新性、正確性の保持
第20条 安全管理と漏洩防止の義務
第23条 第三者への提供の制限
第52条 取り扱いに関する適切かつ迅速な苦情処理

 

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