中枢神経系の構造
中枢神経系は脳と脊髄で構成される。延髄と脊髄の境界は大後頭孔である。
神経系の構成細胞
| ニューロン(神経細胞) | 情報の処理・伝達を行う。 | 
| グリア細胞(神経膠細胞) | ニューロンを物理・代謝的側面から支持・保護する。 | 
| ①アストログリア ②オリゴデンドログリア ③ミクログリア ④上衣細胞 | ①星状膠細胞:栄養や代謝の管理を行う。 ②乏突起膠細胞:中枢神経の髄鞘を形成する。 ③小膠細胞:変性した神経細胞を貪食し、抗原提示する。 ④上衣細胞:脳室の表面を覆う。 | 
大脳の構造と機能
右利きの場合は言語中枢がほぼ左にあるため、優位半球は左大脳半球。左利きの場合は優位半球がどちらもあり得る。前頭葉と頭頂葉を分ける中心溝、前頭葉と側頭葉を分けるシルビウス裂がある。
【脳機能障害】
| 脳回単位の障害で多く見られる | 脳葉単位の障害でみられる | 
| 失語・失行・失認 | 遂行機能障害、記憶障害 | 
| 機能 | ||
| 大脳新皮質 (6層) | 前頭葉 | 運動野:錐体路の出発点で、随意運動を実行(ホムンクルス参照) 【障害】 ①錐体路障害:障害半球反対側の片麻痺(運動麻痺) | 
| 前頭連合野:モノを考え、理性を司り、最終的な遂行機能(自分で情報を整理し、計画を立てて実行する機能)を実行 【障害】 ①遂行機能障害 ②脱抑制による人格変化(ふざけ症) ③常同行動、保続、発動性低下など | ||
| Broca野(優位半球のみ):運動性言語(発話) 【左前頭葉障害】 運動性失語(Broca失語) | ||
| 側頭葉 | 聴覚野(→Wernicke野):聴覚 【障害】 皮質聾、環境音失認 | |
| Wernicke野(優位半球のみ):感覚性言語(言葉を理解) 【左側頭葉障害】 感覚性失語(Wernicke失語) | ||
| 頭頂葉 | 感覚野(ホムンクルス参照) 【障害】 障害半球反対側の感覚障害 | |
| 体性感覚連合野:感覚情報の統合と認知 【障害】 構成失行(図形の模写できない)、身体部位失認 【右脳障害(劣位半球)】 半側空間無視、着衣失行など | ||
| 角回:読み、書き、計算 【左脳障害(優位半球)】 ゲルストマン症候群(失算・失書・手指や左右失認)、失読、観念運動性失行(習慣的動作できない)、伝導性失語 | ||
| 後頭葉 | 視覚野(→側頭連合野で物体認知、頭頂連合野で空間認知) 【障害】 同名半盲、視覚性失認、皮質盲(Anton症候群) | |
| 大脳辺縁系 (旧皮質) | 扁桃体 海馬 | 扁桃体:快・不快・恐怖などの判断を行い本能的行動や情動反応を起こす。 海馬:数週間記憶を保持し、必要な記憶だけ新皮質に送る。 【障害】 扁桃体の障害:易刺激性・怒り、恐れの欠如 海馬の障害:近時記憶障害 | 
| 大脳基底核 | 線条体 淡蒼球 黒質 | 線条体(尾状核+被殻)、淡蒼球、黒質は大脳皮質の随意運動の細かいコントロールをしている。 【障害】 随意運動の障害(無動・多動) 筋トーヌス亢進(筋強剛) 不随意運動(安静時振戦) | 
| 間脳 | 視床 視床下部 下垂体 松果体 | 視床:感覚の中継路(外側膝状体は視覚、内側膝状体は聴覚) 視床下部:本能の中枢(性行動・満腹空腹など)、自律神経の中枢(体温調節など)、ホルモン分泌 視床上部:松果体は性成熟の抑制作用 | 
| 脳幹 | 中脳 橋 延髄 | 中脳:動眼・滑車の核 橋:三叉・外転・顔面・内耳の核 延髄:舌咽・迷走・副の核 脳幹網様体:意識の維持・覚醒、呼吸循環の中枢 | 
| 小脳 | 半球 虫部 片葉小節葉 | プルキンエ細胞から抑制性ニューロンが発せられ、運動野、前庭N核、赤核などを制御して運動、深部感覚、平衡感覚に関与している。 【障害】 虫部障害:深部感覚の異常による酩酊様歩行、姿勢保持失調 半球障害:協調運動失調による企図振戦、断綴性言語 片葉小節葉障害:平衡・眼球運動の調節障害 | 


ホムンクルス

脳血管
脳血流量は心拍出量の15%である(750mL/min)。脳組織はブドウ糖しか利用できない。また、脳動脈のPaCO2が上昇すると、脳血管拡張が起こり、頭蓋内圧上昇となる。
※内頸動脈は起始部に頸動脈洞とよばれる軽度の膨らみがあること、近位側(頸部領域)には分枝がみられないことがポイント。
| ACA障害 | 下肢を中心とした運動・感覚障害が出現 | 
| MCA障害 | 上肢を中心とした運動・感覚障害が出現 | 

脳室・髄液
髄液(CSF:Cerebrospinal fluid)は側脳室、第3脳室、第4脳室の脈絡叢で髄液産生(140mL/day)される。髄液循環の障害によって水頭症になる。
| ① | 側脳室 | 
| ② | Monro孔(モロに第三脳室に行く) | 
| ③ | 第三脳室 | 
| ④ | 中脳水道 | 
| ⑤ | 第四脳室(橋の後方に存在) | 
| ⑥ | Luschka孔(左右)+Magendie孔(中心)(L:ラテラール、M:真っすぐ!) | 
| ⑦ | 脊髄中心管 | 
| ⑧ | 孔から大槽→くも膜下腔→上矢状静脈洞のくも膜顆粒から静脈へ | 
末梢神経系の構造
末梢神経系は脳神経と脊髄神経で構成される。
| 上位ニューロン | 大脳→脳幹までの神経。脳幹でシナプスを作る(神経核)。 | 
| 下位ニューロン | 脳幹→末梢器官までの神経。脳から直接出るものを脳神経という。 | 
脳神経
嗅いで見る動く滑車の三の外、顔・耳・のどに迷う福舌!(2-2-4-4)で暗記する。
| 核 | 感覚神経 | 運動神経 | 副交感神経(港区) | 穴 | |
| 嗅Ⅰ | 大脳 | 嗅覚 | ー | ー | 篩板 | 
| 視Ⅱ | 大脳 | 視覚 | ー | ー | 視神経管 | 
| 動眼Ⅲ | 中脳 | ー | 眼球運動、開眼(上眼瞼挙筋) | 縮瞳(瞳孔括約筋) | 上眼窩裂 | 
| 滑車Ⅳ | 中脳 | ー | 眼球運動(上斜筋) | ー | 上眼窩裂 | 
| 三叉 Ⅴ1(眼) | 橋 | 顔面上部 テント上の硬膜 | ー | ー | 上眼窩裂 | 
| 三叉 Ⅴ2(上顎) | 橋 | 顔面中部 | ー | ー | 正円孔 性交は2人で | 
| 三叉 Ⅴ3(下顎) | 橋 | 顔面下部(舌前2/3の感覚含む) | 咀嚼運動(翼突筋、側頭筋、咬筋など) | ー | 卵円孔 乱交は3人で | 
| 外転Ⅵ | 橋 | ー | 眼球運動(外直筋) | ー | 上眼窩裂 | 
| 顔面Ⅶ | 橋 | 舌前2/3の味覚(鼓策神経) | 顔面運動 | 涙液・鼻水・唾液(顎下腺、舌下腺) | 内耳孔 | 
| 内耳Ⅷ | 橋 | 聴覚、平衡感覚 | ー | ー | 内耳孔 | 
| 舌咽Ⅸ | 延髄 | 舌後1/3の味覚、舌後1/3の感覚 | 嚥下・構音 軟口蓋挙上運動 | 唾液(耳下腺) | 頸静脈孔 | 
| 迷走Ⅹ | 延髄 | 内臓感覚 | 嚥下・構音 軟口蓋挙上運動 | 骨盤より上の内臓運動 | 頸静脈孔 | 
| 副Ⅺ | 延髄 | ー | 胸鎖乳突筋+僧帽筋運動 | ー | 頸静脈孔 | 
| 舌下Ⅻ | 延髄 | ー | 舌を突き出す運動 | ー | 舌下神経管 | 
脊髄神経
| 頸髄神経 | C1〜C8 | C1は第1頚椎の上から出る。C8は第7頚椎と第1胸椎の間から出る。 | 
| 胸髄神経 | T1〜T12 | 交感神経の側角がある(脊髄外に出て交感神経幹を形成)。 | 
| 腰髄神経 | L1〜L5 | 脊髄はL1で終わり馬尾を出す。交感神経の側角がある(同上)。 | 
| 仙髄神経 | S1〜S5 | 副交感神経を発し、膀胱、直腸、性器に分布する。 | 
| 尾髄神経 | Co1 | ?? | 
デルマトーム
整形外科の総論を参照。
運動・感覚の伝導路(神経伝導路)
| 障害部位 | 症状 | 
| 錐体路 | 大脳皮質→放線冠→内包後脚→中脳大脳脚→橋腹側→延髄で錐体交差→反対側の側索、この経路の途中に異常があれば症状が出る。 中枢性:病変が錐体交差より上なら反対側の麻痺、下なら同側の麻痺 末梢性:病変と同側の麻痺(側索に病変) | 
| 温痛覚・触覚 | 中枢性:病変の反対側の温痛覚・触覚の障害 末梢性:病変と同側の温痛覚・触覚の障害(側索に病変) | 
| 振動覚・位置覚 | 中枢性:病変が延髄下部より上なら反対側の障害、下なら同側の障害 末梢性:病変と同側の振動覚・位置覚の障害(後索に病変) | 

脳神経の障害
動眼神経麻痺(3)
| 原因 | 中脳被蓋内側→脚間槽→海綿静脈洞→上眼窩裂→眼窩内のいずれかの部位での障害 全身症状のない成人の動眼神経麻痺は特発性>虚血性>動脈瘤>外傷性>腫瘍性で生じる。 原因として糖尿病、脳腫瘍、脳動脈瘤(IC-PC動脈瘤)、下垂体卒中など。 特に脳ヘルニア(鉤ヘルニア)によって生じている場合は緊急対応が必要! | 
| 症状 | ①複視:眼球運動障害により外方 or 外下方へ向く ②散瞳:糖尿病性では瞳孔不同は認めない! ③眼瞼下垂: ④直接対光反射消失:糖尿病性では認めない! ※糖尿病では神経線維への血流障害のため、内側にある眼を動かす筋のみ障害される | 
三叉神経痛(5)
| 原因 | 特発性:原因不明 症候性:上小脳動脈の血管拡張、または、多発性硬化症や髄膜腫のより三叉神経根が圧迫される。 40歳以降の女性に多く、片側性で第2枝・第3枝領域に多い。 | 
| 症状 | 発作期:激痛が数秒から数分続き、洗顔・食事・歯磨きなどの動作で誘発される。 間欠期:無症状 V3(下顎枝)に起こると歯痛(→カルバマゼピン投与) | 
外転神経麻痺(6)
| 原因 | 頭蓋内圧亢進時 | 
| 症状 | 複視:眼球運動障害により内側へ向く | 
顔面神経の障害(7)
【顔面神経の走行】全て内耳孔を通過する!!顔面N支配はかみある:顔、味覚、あぶみ筋、涙腺
| 感覚神経 | 孤束核(延髄)←内耳孔←内耳道←顔面神経管←鼓索神経←前2/3の味覚 | 
| 運動神経 | 顔面神経核(橋)→内耳孔→内耳道→顔面神経管→茎乳突孔→顔面の表情筋 顔面神経核(橋)→内耳孔→内耳道→顔面神経管→アブミ骨筋(反射) | 
| 副交感神経 | 上唾液核(橋)→内耳孔→内耳道→顔面神経管→大錐体神経→涙・鼻水 上唾液核(橋)→内耳孔→内耳道→顔面神経管→鼓索神経→唾液(顎下腺・舌下腺) | 
【顔面神経の障害部位による症状の違い】
| 障害部位 | 顔面麻痺 | 聴覚障害 | 味覚障害 | 唾液↓ | 涙液↓ | 
| 内耳道の以前 | + | 難聴 | + | + | + | 
| 顔面神経管の膝神経節 | + | 聴覚過敏 | + | + | + | 
| 顔面神経管の大錐体神経分岐以降 | + | 聴覚過敏 | + | + | ー | 
| 茎乳突孔の以降 | + | ー | ー | ー | ー | 
【顔面神経の障害の原因・症状】
| 原因 | 【顔面神経麻痺の原因】 ①ベル麻痺(最多):HSVの再帰感染。ほとんどは一側性。 ②ラムゼイハント症候群(2番目):VZVの再帰感染。ベル麻痺と異なり、耳介・外耳道の水疱形成、同側の内耳障害(感音難聴、平衡障害)を併発する。 ③その他:中耳炎、腫瘍、外傷による側頭骨骨折、耳下腺腫瘍など | 
| 症状 | 【顔面神経麻痺】 ①まつげ徴候・兎眼:軽症の眼輪筋麻痺のため閉眼が不完全のためまつげ徴候(閉眼しても睫毛が十分に隠れない現象)が起こる。兎眼は閉眼不能な状態。重症の眼輪筋麻痺のため起こり、乾燥性結膜炎となり眼球結膜が充血する。 ②発話困難:パ行・マ行が言いにくい。水が口からこぼれるなどが挙げられる。 ③聴覚過敏:アブミ骨筋反射↓ 【顔面神経の感覚障害】 ①味覚異常:舌前2/3 【顔面神経の副交感神経異常】 ①唾液分泌障害:舌下・顎下腺 ②涙液分泌障害:シルマー試験で涙分泌↓ | 
 【顔面神経麻痺の分類】
【顔面神経麻痺の分類】
| しわ寄せ | 閉眼 | 鼻唇溝 | 口角上昇 | |
| 中枢性(上半分は動く) | ○ | ○ | × | × | 
| 末梢性(麻痺側が全て動かない) | × | × | × | × | 
聴神経の障害(8)
内耳道以前で障害が起こると難聴、顔面神経管以降で障害が起こると聴覚過敏が起こる。
舌咽神経の障害(9)
| 原因 | 【舌咽神経の感覚障害】 血管による舌咽神経の圧迫で生じる。50〜60歳代に好発。 | 
| 症状 | 【舌咽神経麻痺】 ①カーテン徴候:「アーッ」と発声した時、患側の軟口蓋が挙上しないため健側にのどちんこが引かれる現象。カ行が言いにくい。 【舌咽神経の感覚障害】 ①発作的な激痛が数秒続き、間欠期は無症状 | 
迷走神経麻痺(10)
| 原因 | |
| 症状 | ①カーテン徴候:同上 ②嗄声:反回神経麻痺によって声帯麻痺をきたす。発声持続時間も短縮。 | 
副神経麻痺(11)
筋萎縮:胸鎖乳突筋の萎縮によって健側に向けない、僧帽筋の萎縮によって患側の肩を上げられない。
舌下神経麻痺(12)
| 原因 | 交代性麻痺+延髄の障害=舌下神経麻痺(Dejerine症候群〔延髄内側症候群〕) | 
| 症状 | 舌の偏位:患側の舌の突き出し運動ができないため、患側に舌が偏位する。 タ行・ラ行が言いにくい。 | 
球麻痺(9・10・12核麻痺)
| 球麻痺 | 偽性球麻痺 | |
| 障害部位 | 延髄(舌咽・迷走・舌下神経の下位運動ニューロン障害が起こる) | 大脳〜内包〜橋(延髄より中枢の障害、両側性麻痺) | 
| 舌萎縮 | あり | なし | 
| 軟口蓋反射 | 正常 | 消失 | 
| 嚥下反射 | 消失 | 正常 | 
| 咽頭反射 | 消失〜正常 | 亢進 | 
| その他 | 構音障害・嚥下障害 | 強迫泣き、強迫笑い | 
神経血管圧迫症候群
| 責任血管 | その他 | |
| 三叉神経痛 | 上小脳動脈の圧迫が多い | 歯痛、カルバマゼピンで治療 | 
| 顔面けいれん | 前下小脳動脈の圧迫が多い | |
| 舌咽神経痛 | 後下小脳動脈の圧迫が多い | |
| めまい・耳鳴り発作 | 前庭神経の圧迫 | |
| 痙性斜頸 | 副神経の圧迫 | |
| 舌萎縮 | 舌下神経の圧迫 | 
交感神経の障害
Horner症候群
交感神経の遠心路が障害され生じる病態。
| 障害部位 | 原因 | 
| 1次ニューロン:視床下部→延髄→胸髄側角(C8~T3) (視床下部→胸髄側角の障害) | Wallenberg症候群 下部頸髄腫瘍 | 
| 2次ニューロン:胸髄側角(C8~T3)→交感神経管を上行 (交感神経の節前Nの障害) | Pancoast症候群 | 
| 3次ニューロン:上頸神経節→瞳孔散大筋などの効果器 (交感神経の節後Nの障害) | 内頸A動脈瘤、内頸A閉塞 (交感Nは内頸Aと並走するため) | 
| 症状 | ①一側の眼瞼狭小(眼瞼下垂、眼球陥凹とも表現される) ②一側の縮瞳 ③発汗減少 その他:血管拡張 | 

運動神経の障害(=麻痺)
【麻痺の分類】
| 単麻痺 | 1つの体肢に生じた麻痺 | 多くは下位運動ニューロン障害 | 
| 片麻痺 | 上下肢の麻痺 | 内包〜頸髄上部の障害 | 
| 交代性片麻痺 | 頭部と上下肢で反対の麻痺 | 脳幹の障害 | 
| 対麻痺 | 両下肢の麻痺 | 多くは脊髄の横断的な障害 | 
【障害部位による分類】
| 障害部位 | 上位運動ニューロン | 下位運動ニューロン | 骨格筋 | 
| 筋力 | 低下 | 低下 | 低下 | 
| 萎縮 | なし(抑制がはずれて持続的に筋収縮するため) | あり(不動のため) 遠位筋優位に萎縮 | あり(不動のため) 近位筋優位に萎縮 | 
| 筋トーヌス (筋緊張) | 亢進(カチカチ)=痙性麻痺 錐体路障害→痙縮(折りたたみナイフ現象) 錐体外路障害→強剛(歯車現象) | 低下(ぐにゃぐにゃ) =弛緩性麻痺 | 低下(ぐにゃぐにゃ) =弛緩性麻痺 | 
| 腱反射 | 亢進 | 低下 | 低下 | 
| 特徴 | 病的反射+ 表在反射消失 | 線維束性収縮(筋がピクピクと勝手に収縮) 表在反射消失 | 収縮なし、CK↑ | 
【例外】
| 下位運動N障害は遠位筋優位に萎縮 | 骨格筋障害は近位筋優位に萎縮 | |
| 例外 | <近位筋優位に萎縮> ・脊髄性筋萎縮症(SMA) Werdnig-Hoffmann症候群 Kugelberg-Welander症候群 ・球脊髄性筋萎縮症(BSMA) | <遠位筋優位に萎縮> ・筋強直性ジストロフィー ・遠位型ミオパチー | 
生理
対光反射
意識障害があっても評価できることがメリット。
ポイントは視神経×なら両方散瞳、動眼神経×なら瞳孔不同!
| 右目に光 →右目縮瞳 (右目直接反射) | 左目に光 →右目縮瞳 (右目間接反射) | 左目に光 →左目縮瞳 (左目直接反射) | 右目に光 →左目縮瞳 (左目間接反射) | |
| 右視神経障害 | × | ○ | ○ | × | 
| 右動眼神経障害 | × | × | ○ | ○ | 

眼球運動
眼科を参照。
脳局所の障害
詳細は大脳の構造と機能を参照。
高次脳機能障害
失語
失語症:言語の了解・表出の障害。優位半球である左半球障害(主に脳血管障害)に起因する。失語症は流暢性失語(ウェルニッケ失語、伝導失語等)と非流暢性失語(ブローカ失語等)に大別される。
※構音障害は大脳で言語構成されているが、語音の生成に異常がある状態で、失語症とは異なる。そのため、構音障害は話せないが書くことはできる!(左手で書くのは大変だけど・・・)
※錯誤:単語の一部の言い間違えること
| 聴・読→理解 | 発話・書字 | 復唱 | ||
| Wernicke失語 (優位半球側頭葉障害) | 理解はできず、意味不明なことを話す流暢性失語 | × | 錯誤 | × | 
| 超皮質性感覚性失語 (優位半球頭頂葉障害) | 理解はできないが、復唱だけ可能な流暢性失語 | × | 錯誤 | ○ | 
| Broca失語 (優位半球前頭葉障害) | 理解はできるが、うまく表出できない非流暢性失語 | ○ | × | × | 
| 超皮質性運動性失語 | 理解はできるが、うまく表出できない非流暢性失語 | ○ | × | ○ | 
| 伝導失語 | 復唱だけできない流暢性失語 | ○ | ○ | × | 
| 健忘性失語 | 認知症のように、簡単な物の名前がなかなか出てこない | ○ | ○ | ○ | 
| 全失語 | 聞くことも話すことも障害された非流暢性失語で、右片麻痺を伴う | × | × | × | 

失行(動きに関わる)
失行とは、運動障害がなく、理解も十分だが、以前にできた行為ができなくなること。多くは脳血管障害による左半球障害に起因する。
| 肢節運動失行 | 指で物がつかめない、口笛が吹けないなど四肢の運動をスムーズに行えない状態で、自発的・意図的行為の両方が障害される。 | 
| 観念運動失行 | 自発的にボールは握れるが、拳を作れと命令されるとできない意図的行為の障害。 | 
| 観念失行 | コインを挿入するという部分的な運動はできるが、コインを挿入してボタンを押すといった一連の複合的行為の障害。アルツハイマー病でよくみられる。 | 
| 拮抗性失行 | 企図された一方の手の運動に対し、対側の手が患者の意思に反して妨害的に動き、運動が中断するか行為が完遂できない。 | 
| 構成失行 | 絵を描けない、積木を組み立てられないといった空間的形態形成行為の障害。 | 
| 着衣失行 | 衣服の前後左右裏表を誤る、ズボンを頭にかぶる等の正しく着ることができない状態。衣服の空間的形態を自分の身体の空間的形態に当てはめれない。 | 
失認(感覚に関わる)
失認:五感を通して得られた対象を認知できない病態。
| 視覚性失認 | ある物を見ても、それがなんだかわからない状態。 物体失認、相貌失認、色彩失認、同時失認、Anton症候群など | 
| 視空間失認 | ある物とある物の位置関係がわからない状態。 半側空間無視、地誌的失認、Balint症候群など 半側空間無視は中大脳動脈梗塞に起因し、右半球障害により左側視空間を無視する。 | 
| 聴覚性失認 | 音や言語を聞いてもそれが何かわからない状態。 皮質聾、環境音失認、純粋語聾、失音楽 | 
| 触覚性失認 | 稀な疾患。形態失認、素材失認、触覚性失象徴など | 
| 身体失認 | 自分の手足の左右がわからない状態。 半側身体失認:バンザイをしてと命令しても片手しか挙げない Gerstmann症候群:手指失認、左右失認、失算、失書の4徴 | 
広範な脳機能障害
| 失外套症候群 | 大脳皮質の障害により、脳幹部との機能の分離が生じる病態 開眼しているが、発語・感情表出はない。睡眠と覚醒リズムは保たれている。 | 
| 閉じ込め症候群 | 橋底部の障害により、運動障害が生じるが感覚は正常である病態 眼球の垂直運動・眼瞼開閉でのみ意思疎通可能 | 
その他の症候
Romberg徴候
閉眼すると体幹の動揺が増強する徴候で、陽性の場合は、脊髄後索障害による深部感覚障害(位置覚障害)、前庭機能障害があると考えられる。動揺しない場合は正常。
| 開眼した状態で直立する | 動揺する場合は小脳障害が考えられる(Romberg徴候陰性) | 
| 閉眼した状態で直立する | 動揺する場合は末梢神経障害や脊髄後索障害が考えられ、Romberg徴候が陽性となる。ただし、前庭・半規管障害でも陽性となる。 | 
不随意運動
【大脳基底核の障害によるもの】
| 特徴 | 原因 | |
| 舞踏運動 | 不規則で唐突、落ち着かない素早い動き | 錐体外路障害 | 
| バリズム | 近位筋が突然収縮し、上下肢を投げ出すような激しい運動(ほとんど片側性) | 錐体外路障害 | 
| アテトーゼ | 上下肢などをゆっくりとくねるような運動で、姿勢を保持できない。手指は奇妙な肢位をとる。 | 錐体外路障害 | 
| ジストニア | 頸部や体幹のねじれるようなゆっくりとした運動、姿勢保持はOK(クネクネジストニア)。手指は奇妙な肢位をとる。 | 錐体外路障害 | 
| 安静時振戦 | 安静時に出現し、動作により減弱する。 | 錐体外路障害 | 
| アネキジア (寡/無動) | 動作が少なく鈍くなるもの。寡動、動作緩慢から進行すると動作が欠如して無動となる。 | 錐体外路障害 | 
【大脳基底核以外の障害によるもの】
| 特徴 | 原因 | |
| ミオクローヌス | ピクっとした電撃的な筋収縮 | 肝性脳症など | 
| チック | 顔面などのすばやい運動 | トゥレット症候群など | 
| ジスキネジア | 自分では止められない、または止めてもすぐに出現する動きの総称 | ? | 
| 遅発性ジスキネジア | 口をモゴモゴ、舌を出し入れなど口周囲にはじまる不随意運動であり、いったん生じると難治性。 | ドパミン感受性亢進 錐体外路障害 抗精神病薬の長期使用やその中止後 | 
| アカシジア | 静座不能。じっと座っていることができず、常に手足を動かしている状態 | 錐体外路障害 | 
【振戦がみられる疾患】
| 特徴 | 疾患 | ||
| 生理的振戦 | ー | 筋トーヌスを維持するため自律Nが筋を常時低頻度刺激 | 甲状腺機能亢進症、キサンチン誘導体投与により増強され出現 | 
| 安静時振戦 | ー | 安静時に生じる(丸薬まるめ様) | Parkinson病(左右差あり) | 
| 動作時振戦 | 姿勢時振戦 | ある一定の姿勢を保持した状態で起こる振戦 | 本態性振戦、尿毒症、CO2ナルコーシス | 
| 運動時振戦 | ある目標物へ向かう動きの最後の部分で起こる振戦 | 脳障害、Wilson病、多発性硬化症 | |
| 企図振戦 =小脳性振戦 | ある目標物へ向かう動きが引き金となって起こる振戦 | 小脳疾患 | 
検査
脳波 EEG:Electroencephalogram
脳波は、大脳の神経細胞全体の電気的活動を記録したもので、脳波を見ることによっててんかん、睡眠、意識障害、脳波所見が特徴的な疾患の鑑別に有用である。
| 脳波を速波化させる薬 | 抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン系 → けいれんをきたしにくい | 
| 脳波を徐波化させる薬 | 炭酸リチウム、抗精神病薬、抗うつ薬 → けいれんに注意が必要! | 
【導出法】
| 単極導出法 | 活性電極と耳たぶの不関電極(基準電極)との電位差を記録。脳波は心電図や筋電図もひろうため、不関電極で記録した心電図や筋電図で補正することで純粋な脳波をみれる。 | 
| 双極導出法 | 活性電極間の電位差を記録。各電極を比較することで、異常脳波の発生部位を特定できる。 | 
【脳波の正常と異常】
| α波(10Hz前後) | 安静閉眼時に後頭部優位にみられる優位律動(基礎律動) | 
| 棘波・鋭波 | てんかん性異常所見 | 
| 徐波 | なんらかの脳機能低下の所見 | 
| 左右差 | 脳梗塞などの局在性の異常を疑う | 
反射の検査
【腱反射】
| 叩打部位 | 正常反応 | |
| 下顎反射 | 顎先 | 伸筋反射により三叉神経運動核が興奮し閉口する | 
| 上腕二頭筋反射 | 上腕二頭筋腱 | C5前角細胞が興奮し肘関節が屈曲する | 
| 腕橈骨筋反射 | 橈骨遠位端 | C6前角細胞が興奮し肘関節が屈曲する | 
| 上腕三頭筋反射 | 上腕三頭筋腱 | C7前角細胞が興奮し肘関節が伸展する | 
| 膝蓋腱反射 | 大腿四頭筋腱 | L4前角細胞が興奮し膝関節が伸展する | 
| アキレス腱反射 | アキレス腱 | S1前角細胞が興奮し足が足底方向にが屈曲する | 
【表在反射】
| 正常反応 | |
| 角膜反射 | |
| 咽頭反射 | |
| 軟口蓋反射 | |
| 腹壁反射 | 爪楊枝で腹壁の皮膚を外側から正中に向かって擦ると、T6〜L1の前角細胞が興奮し腹筋が収縮する。 | 
| 精巣挙筋反射 | 大腿内側から下内側に向かって擦ると、L1〜2の前角細胞が興奮し精巣挙筋が収縮して精巣が挙上する。 | 
| 肛門反射 | 肛門周囲の皮膚を刺激すると、S4〜S5の前角細胞が興奮し肛門括約筋が収縮する。 | 
| 足底反射 | 足底の外側を踵から小指に向かって擦ると、L5〜S2の前角細胞が興奮し全部の足指が底屈する。 | 
【病的反射】
| 異常反応 | |
| Babinski反射 | 足底反射を行うと、母指は背屈し、2〜4指は扇状に開くことがある。機序は不明だが上位運動ニューロン障害(錐体路障害)でみられる。 | 
| Chaddock反射 | 足の外側のくるぶしの外側を擦ると、母指は背屈する。これも、上位運動ニューロン障害(錐体路障害)でみられる。 | 
運動失調の検査
| 指鼻試験 | 患者の鼻から検者の指先へ到達できず左右前後にずれる場合は小脳障害を考える。 | 
| 膝踵試験 | 仰臥位で一方の踵を他方の膝うまく乗せられない、また、脛骨に沿って移動させられず左右前後にずれる場合は小脳障害を考える。 | 
| 回内回外試験 | きらきら星をうまくできず回内から回外に時間がかかる場合は小脳障害を考える。 | 
神経・筋検査
| 針筋電図 | 筋肉に直接電極針を刺入し、自発的に筋収縮をした際の特定の筋線維の活動電位を測定する。局所の状態の観察に用いられる。 | 
| 表面筋電図 | 表面から多くの筋の活動電位を測定するため、不随意運動(振戦など)の観察に用いられる。 | 
| 末梢神経伝導検査 | 末梢神経に電気刺激を与え、誘発される活動電位を測定する。 | 
| 反復性誘発筋電図 | 反復刺激で発生するM波を測定し、神経筋接合部を評価する。 | 
高次脳機能検査(大脳皮質の機能検査)
| 認知症スクリーニング検査 | MMSE、長谷川式 | 
| 言語・行動の検査 | Wechsler成人知能検査(WAIS-Ⅲ) | 
| 記憶の検査 | リバーミード行動記憶検査(RBMT) | 
| 前頭葉の検査 | ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)、前頭葉機能検査(FAB) | 
 
  
  
  
  

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