呼吸困難、SpO2低下、喘鳴

症候学

呼吸困難・息切れ・呼吸苦

呼吸困難の6部位別鑑別

部位 症状 身体所見
①上気道 食事中/後・薬剤投与後に発症 stridor、嗄声
②肺 呼吸音左右差、wheezes、crackles
③胸腔 胸痛、吸気時痛 呼吸音左右差
④心臓 労作時呼吸困難、起坐呼吸 頸V怒張、wheezes、crackles、Ⅲ音、下腿浮腫
⑤血管 胸痛 下腿腫脹、表在静脈怒張
⑥神経 奇異性呼吸

①超緊急性の呼吸困難を除外

A ③胸腔 緊張性気胸 吸気時に増悪、呼吸音低下
①上気道 killer sore throat
気道異物
アナフィラキシー
気管支喘息大発作 wheezes
B ②肺 COPD急性増悪 wheezes
肺塞栓症
C ④心臓 ショック RUSHエコー
⑤血管 大動脈解離

緊張性気胸

リスク因子 COPD、喘息、肋骨骨折
症状 呼吸困難、チアノーゼ、ショック
所見 皮下気腫、頸静脈怒張、頸部気管偏位
その他 BVMで呼吸中にバッグが硬くなった、挿管して人工呼吸すると悪化

②緊急性の呼吸困難を除外

A ①上気道 痰詰まり 吸引でSpO2改善
B ②肺 肺炎
間質性肺炎
肺癌
ARDS
③胸腔 胸膜炎
C ④心臓 急性心不全 wheezes
ACS
心筋炎

③準緊急性の呼吸困難を除外

B ③胸腔 胸水貯留
⑥神経 重症筋無力症
ギランバレー症候群
ALS
その他 腹水貯留
過換気症候群 SpO2はほぼ100%

ABCD

A 頸部聴診:Stridor・吸気性喘鳴(頭部後屈顎先挙上)、痰づまり音(吸引)
B SpO2低下→SpO2低下の項目へ
胸部聴診:wheezes聴取→wheezesの鑑別へ
必ず緊張性気胸を否定してCへ行くこと!
C チアノーゼ、頸静脈怒張
D

S

O ●突然発症(〜時〜分に発症)
AMIによる心不全、気胸、肺塞栓症、痰づまり、アナフィラキシー
●急性発症(数時間で徐々に発症)
うっ血性心不全、ARDS、間質性肺炎、喘息、COPD増悪
●亜急性発症(数日かけて発症)
肺炎、胸水貯留、胸膜炎、呼吸筋疲労、慢性血栓塞栓性肺高血圧症
P
Q
R
S 胸痛:AMIによる心不全、気胸、肺塞栓症、胸膜炎
T

O

血ガス SpO2低い場合、動脈血ガス採取を考慮
血液検査 BNP、トロポニン、CK、Dダイマー
心電図
胸部X線
エコー 心エコー、肺エコー

SpO2低下

SpO2低下を見たらサルも聴診器で準備

酸素 ショックの場合、十分な酸素投与
ルート 薬剤、輸液投与のため確保
モニター 急変時は必須
ちょう 超音波 ショックの原因を鑑別
しん 心電図 心筋梗塞による心原性ショックを鑑別
胸部X線 心拡大、無気肺、気胸、胸水など

①SpO2低下を見たらまず行うこと

測定環境の問題 体動が激しい、血圧測定中、測定器の向きが反対
測定部位の問題 末梢循環不全、マニキュア・爪が汚い、色素注入中
酸素投与下 酸素配管外れ・酸素OFFになっている、鼻カニュレ使用時の口呼吸、酸素マスクのずれ
背景疾患 CO中毒、睡眠時無呼吸症候群による一時的低下、メトHb血症
上記に該当しない ②へ

②上気道か下気道の判断

詳細 治療
上気道の問題 気道閉塞 :Stridor、痰づまり音(吸引) 気道確保
死戦期呼吸で呼吸パターンが不安定な場合
※死戦期呼吸:生命の危機的状況の場合、下顎呼吸→あえぎ呼吸→不規則呼吸→無呼吸→死亡となる
用手換気
下気道の問題 上気道症状なし(喘鳴など) ③へ

気道確保:頭部後屈顎先挙上。舌根沈下がある場合はエアウェイを使用

【エアウェイの違い】

経鼻エアウェイ+安全ピン 経口エアウェイ
意識の有無 意識あっても使用可 意識ない場合に使用
注意点 頭蓋底骨折、抗凝固中の患者、脳出血の場合は経鼻的挿入禁忌 嘔吐や喉頭けいれんを誘発することがある
サイズ選択 鼻尖から耳たぶまでの長さ 下顎角から口角までの長さ
挿入方法 潤滑剤を塗布し、垂直に鼻腔に挿入する。完全に入り込まないように、鼻の外に出ている部分に安全ピンをつける 先端を口蓋に向けて挿入する。咽頭後壁に向ける時、180度回転させ、取っ手が唇にあたるまで挿入する

用手換気:バックバルブマスク or ジャクソンリース

【バックバルブマスクとジャクソンリースの違い】

バックバルブマスク ジャクソンリース
概要 バルブがあるため呼気が外部に排出されるため、ナルコーシスなどCO2を素早く排出させたい時に有効 PEEPをかけることが可能なため、気管支喘息やCOPD増悪などで有効。また、自発呼吸に合わせやすい
O2供給 不要 必要
PEEP かからない かかる
高濃度O2 リザーバーを接続すれば可能 可能

③酸素投与の方法

通常、SpO2 90%未満で酸素投与を開始し、SpO2 94〜98%を目標値とする(COPDや結核後遺症などの慢性肺疾患患者へのO2投与はナルコーシスに注意し、88〜92%を目標値とし必要最低限のO2投与を継続する)

純酸素100%を数時間吸入すると肺組織障害が起こると言われており、できるだけFiO2を60%未満で保つこと(リザーバー付きマスクで酸素6L以上はFiO2 60%以上となる)。

リザーバー付きマスクで酸素化が不十分な場合、高流量酸素療法を検討する。

低流量酸素療法 高流量酸素療法
特徴 供給する酸素と同時に周囲の大気も吸入する。呼吸状態で酸素濃度変わる。 吸気時に大気は吸入されず、患者の最大吸気流入量以上の酸素が供給される。
FiO2 患者の1回換気量の方が酸素供給より多いため、患者の換気状態でFiO2が変化する 設定している酸素濃度であり、患者の呼吸に左右されずFiO2を設定できる
デバイス 鼻カニュレ
フェイスマスク
リザーバー付きマウク
ベンチュリーマスク(加湿×)
ネーザルハイフロー
NPPV

【低流量酸素療法】

特徴 詳細
鼻カニュラ
(通常3L以下)
軽症〜中等症 酸素通常4L/分以下(FiO2 約4%上昇/酸素1L
1L/分→得られるFiO2 24%
2L/分→得られるFiO2 28%
3L/分→得られるFiO2 32%
4L/分→得られるFiO2 36%
酸素マスク
(通常4〜6L)
中等症 酸素5L/分以上
5L/分→得られるFiO2 40%
6L/分→得られるFiO2 50%
7L/分→得られるFiO2 60%
リザーバー付きマスク
(通常7L以上)
中等症〜重症 酸素6L以上(FiO2 投与量L÷10)
6L/分→得られるFiO2 60%(膨張しない)
7L/分→得られるFiO2 70%
8L/分→得られるFiO2 80%
9L/分→得られるFiO2 90%
10L/分→得られるFiO2 99%

【NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)】

原理 マスクにより上気道から陽圧を用いて換気する方法。PEEPによる肺胞リクルートメントで換気血流不均等の改善、肺うっ血の改善
条件 ・中等度〜高度呼吸困難で呼吸数25以上
・意識状態が悪くない
・排痰可能
・マスクが顔面にフィットして自発呼吸が可能
適応 ①COPD急性増悪、②心原性肺水腫など
禁忌 呼吸停止、マスクフィット不能、不穏・興奮・非協力的、気道確保困難、昏睡・意識障害、循環動体不安定、不安定狭心症、過剰な気道分泌、最近の腹部・食道手術後、多臓器不全、上部消化管出血、ドレナージされていない気胸・血胸

【HFNC(高流量鼻カニュラ、ネーザルハイフロー)】

原理 専用の鼻カニュラを使用し、30〜60L/分の酸素を経鼻的に吸入する方法。
適応 ①肺炎による低酸素、②COPD急性増悪、③心不全など
利点 加温加湿が可能で気道乾燥しない、会話や食事も可能

④S・OからSpO2低下の精査

【問診】問診ができなければ、まず血ガス・採血、心電図、心エコー、胸部X線を実施

発症様式 ●突然発症(〜時〜分に発症)
AMIによる心不全、気胸、肺塞栓症、痰づまり、アナフィラキシー
●急性発症(数時間で徐々に発症)
うっ血性心不全、ARDS、間質性肺炎、喘息、COPD増悪
●亜急性発症(数日かけて発症)
肺炎、胸水貯留、胸膜炎、呼吸筋疲労、慢性血栓塞栓性肺高血圧症
胸痛の有無 AMIによる心不全、気胸、肺塞栓症、胸膜炎
痰づまり 高齢者、嚥下障害、意識障害、慢性呼吸不全、気道感染症がリスク因子
喀痰吸引によりSpO2低下は改善する
気道閉塞 舌根沈下、あえぎ呼吸、Stridorの聴取

【検査所見】

動脈血液ガス 呼吸不全がある場合(SpO2 90%未満)は動脈血液ガスを採取する。アシドーシスがあれば危険で、呼吸不全があれば用手換気を人工呼吸を検討。
AaDO2から呼吸不全の原因を推定する。
血液検査 炎症反応、Dダイマー、BNP、トロポニン・CK
胸部X線 新規の浸潤影、気胸、肺うっ血、胸水
心電図 ST低下
心エコー 心不全、AMI、肺塞栓症の評価
CT

⑤P/F値

PaO2 動脈血酸素分圧(Aガスを採血)
FiO2 吸入気酸素濃度の割合(FiO2算出は③を参照)
P/F 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の重症度を示す基準
PaO2 100/FiO2 0.4=250 軽症のARDS

喘鳴とは

喘鳴とは、呼吸をするときに、ヒューヒュー、ゼーゼーなどと音がすること。聴診器を使用しなくても聞こえる

stridor(吸気性喘鳴)の鑑別

声門浮腫、上気道異物、腫瘍、急性喉頭蓋炎、クループ症候群(6ヶ月〜3歳)

wheezes(呼気性喘鳴)の鑑別

低酸素血症がある場合はまず酸素投与し、ABC安定化を図る。

まずは心不全を否定し(既往にCKD・心不全・冠動脈疾患・AFなどがあり、Ⅲ音聴取や頸静脈怒張を確認できれば心不全の可能性あり)、SABA吸入開始。

Wheezesの原因は他にも気管内異物、肺塞栓症、ARDS、腫瘍などが考えられる。

  喘息発作 COPD急性増悪 急性心不全
特徴 夜間早朝に増悪 呼吸器感染を契機に発症 夜間発作性呼吸困難
バイタル 発熱
視診 呼気延長 口すぼめ呼吸、呼気延長 起座呼吸頸静脈怒張
触診 下腿浮腫、四肢冷感
聴診 Ⅲ音・Ⅳ音
問診 喀痰の増加、体重減少 胸痛、体重増加、夜間咳嗽
内服 ステロイド吸入 抗コリン薬吸入 利尿薬、β遮断薬など
心エコー IVC拡張両肺B line
血ガス pCO2↑
胸部X線 異常なし 肺野拡大 心拡大、急性肺水腫
心電図 ST上昇など
胸部CT 肺炎像 感染契機なら肺炎像あり
喫煙 喫煙で増悪 長い喫煙歴
血液 BNP上昇
輸液 生食40mL/h以下

【重症者のサイン】

①発汗、チアノーゼ
②起坐呼吸
③会話不能
④失神・前失神
⑤呼吸補助筋の使用
⑥呼吸数30回以上
⑦脈拍120回以上
⑧治療抵抗性 1時間の治療で軽度改善、または改善なし
⑨気胸や縦隔気腫 喘息やCOPDでは気胸起こしやすい
⑩Silent chest wheezesの減弱

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