小児の診察

小児科

小児の診察の概要

①待合の様子 耳を澄ませて、元気そうか?咳は?
②母子手帳 ・低出生体重など疾患の重症化に関わるリスク因子
・発達歴など、本人の病歴や身体所見の信頼度に関わる情報
・VK2シロップ投与や予防接種によるリスク軽減の度合い
・身長体重曲線
③聴取 ・まず、母親の話から受診理由などを聞く。5歳頃から本人にも聴取可能。
・時系列、sick contactは必ず聴取
・周産期の異常、成長発達の異常、予防接種、家族構成は確認
④重症度 ・2食以上続けて食事できているか?
・よく寝ているか?
・遊べているか?
親がいつもと何か違うと言う場合は超注意
⑤診断 虐待を疑うケースは養育者が嘘をついている可能性があるため、その証拠を揃える

トリアージ(バイタルサイン)

【呼吸数、心拍数】 ※新生児・乳児のHRは聴診、それ以上は橈骨Aで測定が確実

【血圧】

新生児 乳児 幼児 学童期
生後28日未満 1歳未満 6歳未満 12歳未満
sBP/dBP 60-90/20-60 80-100/30-60 90-100/60-65 100-110/60-70

乳児・小児GCS

問診

母子手帳

妊娠中〜主に小学校就学前まで使用し、成長やワクチン接種歴など記載あり

ワクチン接種歴

注射生ワクチン接種後に、異なる注射生ワクチンを接種する場合のみ27日以上間隔をあけなければならない。小児は37.5℃以下であればワクチン接種は可能。

四種混合ワクチン(DPT-IPV):ジフテリア+百日咳+破傷風+不活化ポリオ

標準的な接種時期 合計
B型肝炎ワクチン 0歳(2・3・8ヶ月) 3回
Hibワクチン(インフルエンザ菌b型感染予防) 0歳(2・3・4ヶ月)+1歳 4回
肺炎球菌ワクチン(13価) 0歳(2・3・4ヶ月)+1歳 4回
ロタウイルスワクチン(5価)(経口) 0歳(2・3・4ヶ月) 3回
四種混合ワクチン(DPT-IPV) 0歳(2・3・4ヶ月)+1歳 4回
BCGワクチン(結核感染予防)  0歳(5〜8ヶ月) 1回
MRワクチン:麻疹+風疹  1歳+小学校入学前 2回
水痘ワクチン  1歳 2回
日本脳炎ワクチン 3歳+9歳 4回
子宮頸癌予防ワクチン(HPV) 小6〜高1 3回
おたふくワクチン  1歳 1回

【ワクチンの注意点】

四種混合ワクチン 接種3〜5年で減弱し、12年で消失するため接種後でも罹患する
MRワクチン 現在日本は麻疹排除状態であり、接種あれば麻疹は鑑別から除外

身体診察

新生児・乳児の場合、大泉門・胸部(特に心音)→腹部→頭頸部(咽頭、眼、鼓膜)の順に診察する。大泉門は啼泣時膨隆し、脳圧亢進症状と誤る可能性があるので最初にみる。ずっと機嫌が悪い、すぐに寝てしまう、啼泣が弱いなどの場合は重症を示唆する。

PAT(第一印象)

A:外観 ぐったりしているか
B:呼吸状態 呼吸の異常はあるか:多呼吸、徐呼吸、無呼吸、陥没呼吸・鼻翼呼吸などの努力呼吸、聴診器なしでも聞き取れる異常な呼吸音
C:皮膚への循環 非重要臓器である皮膚への灌流が減少→蒼白、まだら模様、チアノーゼ

ABCDアプローチ

A 異常な呼吸音がする場合は鼻腔・口腔内吸引、背部叩打法・腹部突き上げ法、エアウェイ留置
B SpO2が90%未満ならO2投与開始、吸気性喘鳴にボスミン・呼気性喘鳴にベネトリン吸入
C CRT2秒以上なら異常(四肢を心臓より高い位置に持ち上げた状態で四肢の皮膚を押す
D GCS、TICLSなどで評価
E 点状出血、紫斑、外出血、打撲痕、骨折、発疹など全身を確認

身体所見の注意点

肝臓 新生児・乳児において肝臓を2cmまでは触知しても異常ではない
ただし、2横指(約3cm)を超える場合は腫大と判断する
大泉門 大泉門の大きさは1.5cm×1.5cm程度が正常で、1歳半ごろに閉鎖する
リンパ節 生理的リンパ節腫大しており、1cmまでは正常

検査所見

血液検査

小児の臨床検査値基準 https://sogo-igaku.co.jp/lec_in_ped/0302.html

成人より低い RBC・Hb
TP 成人値よりやや低値
Cre 出生後は母体由来のCreがあるが、その後は筋肉量に比例
成人より高い WBC 出生時は17000と高値、生後1週で12000となる
生後2週まで、4歳以降は好中球優位
生後2週〜4歳頃まではリンパ球優位
Bil 生理的黄疸、母乳性黄疸により1〜2週間は高値となる
ALP 骨での新陳代謝が亢進しているため小児期は高値となる
AST 代謝が活発なため。徐々に低下し成人基準値に安定する
LDH 代謝が活発なため
AFP 胎児期に肝・卵黄嚢で産生され、何らかの機能を果たしている

発熱

概要

感染症 ウイルス性>細菌性 (周囲の感染状況を必ず確認
※細菌性:肺炎尿路感染症細菌性髄膜炎中耳炎の4つを先に除外すること
非感染症 川崎病、熱中症、予防接種後の発熱、新生児うつ熱

症状(発熱+α)

α α of α 鑑別疾患
咳嗽 喘鳴なしの咳嗽 上気道炎、インフルエンザ
扁桃白苔 溶連菌、アデノV、EBV、CMV
吸気性喘鳴 クループ(パラインフルV、インフルV、RSVなどが原因)
クラックル 気管支炎、肺炎、生後6ヶ月未満では細気管支炎
強い咳嗽 マイコプラズマ肺炎(4歳以上)、クラミドフィラ肺炎(5歳以上)
wheezes・rhonchi 感冒に伴う気管支喘息発作または喘息性気管支炎、肺炎、気管支炎
鼻汁 中耳炎
下痢 血便なし ウイルス性胃腸炎、エンテロV、ノロV、ロタV、アデノV
血便あり 細菌性腸炎(カンピロバクター属菌、サルモネラ属菌など)
嘔吐 胃腸炎、尿路感染症、細菌性髄膜炎、アセトン血性嘔吐症
発疹 咽頭・口腔粘膜・頭皮など 溶連菌、アデノV、手足口病、麻疹、風疹、伝染性単核球症、多形滲出性紅斑、水痘
咽頭水疱+咽頭痛 ヘルパンギーナ(7〜8月)
解熱後の発疹 突発性発疹、ウイルス性の中毒疹
頸部 頸部腫脹 流行性耳下腺炎、反復性耳下腺炎、化膿性リンパ節炎、川崎病

身体所見

咽頭 咽頭発赤が強い場合は溶連菌を鑑別
鼓膜 発熱+鼻汁の場合は必ず確認
脱水 CRT延長、口腔粘膜乾燥、大泉門の陥凹、哺乳量低下、尿量低下(オムツ)

検査

迅速検査 アデノV、インフルV、溶連菌、RSV、hMPV、ロタV、ノロV
血液検査 重症の発熱、72時間以上続く発熱(血液検査して細菌性を否定すべき)
尿検査・培養 UTIの既往あり、恥骨上部の圧痛あり、生後3ヶ月未満の発熱
髄液検査 新生児の発熱(うつ熱を除く)、WBC5000未満か15000以上、重症の発熱
胸部X線 クラックルなど肺雑音聴取時、生後3ヶ月未満の発熱、72時間以上続く発熱
特殊検査 マイコプラズマLAMP、クラミドフィラ・ニューモニエ抗体

咳嗽(発熱なし)

鑑別 or 詳細 対応
急性咳嗽 ウイルス性上気道炎(典型的には、初期は咽頭痛や乾性咳嗽で、2〜3日で湿性咳嗽・鼻症状が出現し、2週間で咳が治まる) 鼻吸引
遷延性咳嗽 繰り返す上気道炎、感染後咳嗽、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎 対症療法
慢性咳嗽 アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、遷延性細菌性気管支炎、気管支喘息、咳喘息、胃食道逆流症、心因性咳嗽 様々
気道異物 口にものを入れた後に突然の咳き込みや喘鳴が特徴 吸引
咳き込み嘔吐 嘔吐を伴う咳嗽 咳の原因検索
百日咳 発熱なく、ケンケンケンと息つぐ間も無く連続的に咳き込む 抗生剤
喘息発作 wheezesやrhonchiを聴取 吸入
副鼻腔炎 軽快傾向にない湿性咳嗽が10日以上続き鼻漏を認める 抗生剤

鼻汁のみ

アレルギー性鼻炎 通年性の症状
感冒後の鼻汁の遷延 溶連菌、RSウイルスなどが原因
副鼻腔炎 軽快傾向にない鼻漏が10日以上続く場合に疑う

不機嫌・なんとなく元気がない

Must rule out

尿路感染症
細菌性髄膜炎
腸重積
頭蓋内出血、骨折
心不全、呼吸不全
ターニケット症候群 末梢の浮腫・発赤
血液疾患、代謝疾患

※ターニケット症候群:身体の先端部に髪の毛などが巻きつき生じる循環不全症候群

頻度の高い疾患

中耳炎
便秘症
皮膚炎
乳児臍疝痛 毎日ほぼ決まった時間に啼泣、その時間以外は全く異常ない
非特異的な不機嫌
注意を引くための泣き

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