不妊症

産婦人科

不妊症の概要

女性は35歳ぐらいで約90%の卵子を消費している。

不妊症の定義 生殖年齢の男女が通常の性交を継続しているにもかかわらず1年妊娠しない場合
試験管ベビー 日本では出生約20人に1人(約5%)が体外受精・胚移植による児である

不妊かなと思ったらすべきこと

①禁煙 喫煙は妊娠率を低下させ、妊娠後も胎児発育不全のリスクとなる
②肥満改善 BMI25以上ではPCOSを含めた排卵障害の原因となる
③高血圧治療 妊娠後に加重型妊娠高血圧腎症の発症や高血圧合併妊娠となる
④乳癌検診 40歳以上の場合、排卵誘発によるエストロゲン↑は乳癌発症のリスクとなる
⑤風疹ワクチン 風疹HI抗体価16倍以下の場合、接種推奨(接種後は2ヶ月避妊)
⑥子宮頸癌検診 2年以上検診を受けていない場合実施、妊娠後は検査できない場合がある
⑦サプリ 葉酸とビタミンDの摂取推奨
⑧基礎体温測定 排卵の有無の目安となり、低体温最終日が排卵日となる

不妊症の原因

原因が判明する不妊症のうち半数は男性由来とされているが、実際にはいくつかの要因が併存している場合もあり、男女のどちらに原因があり妊娠できないという判断は難しい。

【妊娠成立のための女性側の条件】

①排卵がある、②卵管の通過性がある、③子宮内腔に明らかな異常のない

不妊因子 原因 二次検査
女性
不妊
内分泌・排卵因子
(約30%)
視床下部→下垂体→卵巣→子宮系に異常が生じ、ホルモン分泌異常から排卵障害をきたす。
【スクリーニング検査】
・基礎体温
・ホルモン測定(LH、FSH、PRL、E、P)
・エコー
ゲスターゲン試験
GnRH試験
甲状腺機能検査
耐糖能検査
TRH検査
染色体検査
卵管因子
(約30%)
受精・卵割の場である卵管が、閉塞などで妊娠の妨げとなる。
【スクリーニング検査】
・子宮卵管造影、エコー下卵管造影
・クラミジア検査
腹腔鏡検査
子宮因子
(約20%)
子宮奇形、子宮筋腫、子宮内腔の癒着(Asherman症候群)、子宮腺筋症によって子宮に着床できない。
【スクリーニング検査】
・エコー
・子宮卵管造影
子宮鏡検査
CT
MRI
頸管因子
(約10%)
何らかの原因で正常では存在しない抗精子抗体が存在する場合に精子の進入を阻害し結果として受精を阻害する。
【スクリーニング検査】
・Huhnerテスト(精子と頸管粘液の適合性試験)
・頸管粘液検査
・精子不動化試験
・イムノビーズテスト
その他 子宮内膜症、黄体機能不全
男性
不妊
造精機能の異常 男性不妊の約90%を占める。原因の多くは特発性だが、精索静脈瘤、両側停留精巣、Klinefelter症候群などもある。
【スクリーニング検査】
・Huhnerテスト
・精液検査
内分泌検査
精管造影
精巣生検
染色体検査

無排卵周期症

病態 ほぼ規則的に月経様出血はあるが、排卵を伴わない病態。
視床下部・下垂体の障害によりGnRHのパルス状分泌の障害が原因と考えられている。
初経後・閉経前後の数年間は生理的に見られる(機能性出血)。
症状 ①月経周期・月経量・月経持続期間の異常
②不妊
検査 BBT:低温1相性
治療 第1度無月経の治療を参照

黄体機能不全

病態 黄体からのE・P分泌不全によって子宮内膜の発育不全が起こり着床障害をきたす。
原因として視床下部・下垂体・卵巣・子宮内膜の異常、加齢、高PRL血症がある。
症状 高温期が10日以内、高温期と低温期の差が0.3度以内
※卵胞期は19日±6日と個人差大きいが、黄体期は12日±2日と個人差が少ない
検査 【血液検査】黄体期中期のプロゲステロン濃度10ng/mL未満
治療 挙児希望なし:治療不要
挙児希望あり:黄体期にゲスターゲン投与、hCG投与による黄体刺激、クロミフェン投与による排卵誘発。潜在性高PRL血症を合併している場合はブロモクリプチン投与。

不育症(反復流産、習慣流産を含む)

病態
症状
妊娠はするものの、流産や死産を繰り返すもの。
自然流産が2回連続することを反復流産、3回以上連続することを習慣流産という。
【原因】
染色体異常、抗リン脂質抗体症候群、子宮形態異常、甲状腺機能異常、糖尿病
検査 【血液検査】
・夫婦間染色体検査
・自己免疫学的検査(抗リン脂質抗体、凝固系検査)、内分泌検査
【画像検査】
子宮卵管造影:子宮形態異常を確認
治療 基礎疾患の治療など
抗リン脂質抗体症候群:ヘパリン皮下注(ヘパリンは胎盤移行性ない)

不妊治療の流れ

④以降は生殖補助医療(ART)と呼ばれる。

①タイミング法 BBTから排卵日を予測して性交のタイミングを指導する
②卵巣刺激 タイミング法に合わせて排卵誘発剤を併用する
③人工授精(IUI) 採取した精液を洗浄濃縮して子宮腔内に注入(排卵誘発剤を併用)
<適応>
①頸管因子:頸管を物理的に回避できる
②性交障害:勃起不全などに対して
④体外受精(IVF) 排卵誘発剤に発育した卵胞から採卵し、運動良好な精子を用いて培養液中で卵子を受精させる。胚培養した後、胚移植(ET)する。
<適応>
①卵管因子:両側卵管閉塞
②男性不妊:乏精子症
③内分泌因子:子宮内膜症
⑤顕微授精(ICSI) IVFで受精障害がある場合、顕微鏡下で精子を卵細胞内に注入する。胚培養した後、胚移植(ET)する。

タイミング法

妊娠可能な期間 排卵日とその前5日間(最も妊娠率が高いのは排卵日前日と排卵日の2日間)
尿中LH測定法 陰性→陽性なった日その翌日に射精する
↑陽性から2日以内に排卵が起こる可能性は90%以上のため

コメント

タイトルとURLをコピーしました