神経診察(神経局在診断)

症候学

認知機能の診察(大脳レベル)

わかること
見当識 時間・場所・人を認識できない場合は前頭葉障害が疑われる。
常識 「今の総理大臣は?」など常識が回答できない場合は前頭葉障害が疑われる。
計算 計算ができない場合は頭頂葉障害が疑われる。
近時記憶 「朝何食べた?」を回答できない場合は側頭葉障害が疑われる。
遠隔記憶 「卒業学校は?」を回答できない場合は大脳連合野の障害が疑われる。

脳神経系の診察

検査項目 わかること
①視野
→視N
周辺視野「片目を手で覆って視線を動かさず、動いた指を指差して」
中心視野「片目を手で覆って、この文字読んで」
視N→視交差→視索→後頭葉の病変 ※眼科の視覚伝導路を参照
②眼球運動・複視
→外転N
→動眼N・滑車N
②眼振
→前庭Nなど
「私の指を顔を動かさず目だけで指を追って」
<眼球運動障害>
眼の内転:外直筋←外転Nの病変
眼位の異常:外眼筋←動眼N・滑車Nの病変(斜視の可能性もある)
病側への共同偏視:被殻出血によりPPRFに伝わる神経線維が障害され、交差前の障害のため病側への共同偏視となる。
健側への共同偏視:小脳出血によりPPRF(橋)が圧迫され、交差後の障害のため健側への共同偏視となる。
鼻先凝視:視床出血により中脳のriMLFを圧迫し、上方視が障害され内下方の鼻先凝視となる。
正中位固定:橋出血により両側の神経線維が障害され正中位となる。
<眼振>
注視させて眼振あれば中枢性の可能性!
①水平・定方向性:内耳N(前庭N)
②水平・注視性:左右差なければ橋 or 左右差あれば小脳橋角部
③垂直・下眼瞼方向性:延髄下部
④垂直・上眼瞼方向性:中脳
⑤回転・定方向性:延髄または内耳N(前庭N)
⑥回転・注視性:小脳半球
③調節・輻輳反射
→視N・動眼N
「指先を見つめていて(寄り目になる?)」
調節反射:視N→中脳(動眼N核)→瞳孔括約筋収縮により縮瞳
輻輳反射:視N→中脳(動眼N核)→内直筋収縮により内転
④対光反射
→視N・動眼N
④眼裂
→動眼N・交感N
「遠くの方を見ていて、目に光が入るよ」
対光反射:視N→中脳(動眼N核)→瞳孔括約筋収縮により縮瞳
眼瞼下垂:動眼N障害 or 交感N障害(Horner症候群)
閉眼障害:顔面N障害
⑤顔面の感覚
→三叉N
「額・頬・顎で左右差はある?(ティッシュ:触覚、爪楊枝:痛覚)」
末梢性:3領域いずれかに感覚障害で三叉N一枝に病変
※V3は咀嚼運動や舌前2/3の感覚も司る
中枢性:3領域すべてに感覚障害で橋→対側の感覚野に病変
⑥顔面筋の筋力
→顔面N
中枢性:片方の口角のみ上がらない (橋←運動野に病変)
末梢性:しわ寄せ× 閉眼× 口角×(3つ全て×は顔面Nに病変)
【しわ寄せ試験】「眉を挙げて額にシワを作って」
【まつげ徴候:閉眼運動】「目をギュッと閉じて」
重度は兎眼、軽度は睫毛の隠れ方に左右差あり
【口角挙上試験】「イーってして」
片方の口角だけ上がる、ほうれい線に左右差あり
構音障害によりパ行(口唇音)が言いにくい
⑦聴力
→内耳N(蝸牛N)
【Rinne試験】
振動させた音叉を乳様突起にあて、骨伝導で音が聴こえなくなったらすぐに外耳孔付近に移す。聴こえた場合はRinne陽性で正常or感音難聴、聴こえない場合はRinne陰性で伝音難聴
【Weber試験】
振動させた音叉を前頭部にあて、どちら側の音が大きいか確認。正中なら正常、健側なら感音難聴、病側なら伝音難聴。
⑧軟口蓋・咽頭壁運動
→舌咽N・迷走N
【カーテン徴候】「口を開けてアーって言って」
片側の軟口蓋が挙上せず偏位があれば舌咽N・迷走Nの病変
(両側支配のため延髄←運動野の病変は少ない)
構音障害によりガ行(喉音)が言いにくい
⑨舌運動
→舌下N
「舌を前に突き出して、左右に動かして」
舌偏位で舌下N←延髄←対側の運動野の病変
構音障害によりラ行(舌音)が言いにくい
⑩胸鎖乳突筋
⑩僧帽筋
→副N
「横を向いて or 肩をすくめて、力くらべ」
抵抗が少なく左右差がある場合は副Nの病変
(両側支配のため延髄←運動野の病変は少ない)
(眼底検査) 視神経乳頭の浮腫で頭蓋内圧亢進

運動系の診察

錐体路系&錐体外路(上肢)・小脳の診察

わかること
①不随意運動 「手を前に出してキープ」
錐体外路障害などで不随意運動が生じる
安静時振戦:大脳基底核に障害があると静止時に振戦が生じる
②バレー徴候 「指を閉じて手のひらを上にして。目をつぶってキープ」
中枢性の筋力低下
③筋トーヌス 「力を抜いて、私が腕を動かすよ(肘関節・手関節・回内回外)」
錐体外路障害:歯車現象や鉛管現象あり(固縮)
錐体路障害:折りたたみナイフ現象あり(痙縮)
④鼻指鼻試験 企図振戦:目標に近づいた時急に震えが大きくなり小脳協調運動障害あり
⑤回内・回外試験 反復拮抗運動障害:運動が遅い・回転軸が一定しない場合は小脳協調運動 障害あり
⑥上肢MMT 三角筋「手を横に広げてキープ」:C5→腋窩N
上腕二頭筋「力こぶ作って」:C5→筋皮N
上腕三頭筋「手をまっすぐ伸ばしてキープ」:C7→橈骨N
手根伸筋群「グーを上にしてキープ」:C6→橈骨N
手根屈筋群「グーを下にしてキープ」:C7→正中N・尺骨N

起立・歩行の観察(位置覚・関節覚)

わかること
①歩行 「普通に歩いて」「つま先と踵をくっつけて歩いて」
錐体路障害:はさみ歩行、ぶん回し歩行
錐体外路障害:小刻み歩行
小脳障害・前庭N障害:酩酊様歩行
腓骨N麻痺:鶏歩
②Romberg試験 「足を揃えて、目を閉じて」
脊髄後索障害:転倒(暗闇で倒れる)

錐体路系&錐体外路(下肢)・小脳の診察

わかること
①バレー徴候
①ミンガツィーニ徴候
「うつ伏せで両膝を90°曲げてキープ」:中枢性の筋力低下
「仰向けで両膝を90°曲げてキープ」:同上
②膝踵試験 「踵を反対の足の膝にトントン蹴って、踵を脛の上で滑らせて」
小脳協調運動障害:足の揺れ、不器用な感じ
③筋トーヌス 「力を抜いて、私が足を動かすから」
錐体外路障害:歯車現象や鉛管現象あり(固縮)
④下肢MMT 腸腰筋「ももを挙げてキープ」:L1-2→大腿N
大腿四頭筋「脚を伸ばしてキープ」:L3-4→大腿N
大腿屈筋群「脚を曲げて(踵を下に引く)」:S1→坐骨N
前脛骨筋「つま先を挙げてキープ」:L4→深腓骨N
下腿三頭筋「つま先を下に伸ばして」:S1-2→脛骨N

反射の診察(神経障害部位の診断)

反射の程度は個人差が大きく、健常者でも反射の亢進・低下がみられるため、左右差を見ることが大切!!

確認する神経 正常反射の反応(病的反射は病的反応)
下顎反射 三叉N 咬筋収縮により軽く口が閉じる
上腕二頭筋反射 C5→筋皮N 上腕二頭筋収縮により前腕が屈曲する
上腕三頭筋反射 C7→橈骨N 上腕三頭筋収縮により前腕が伸展する
橈骨反射 C6→橈骨N 腕橈骨筋収縮により肘関節が屈曲し、前腕が回外する
膝蓋腱反射 L3-4→大腿N 大腿四頭筋収縮により下腿が伸展する
アキレス腱反射 S1-2→脛骨N 下腿三頭筋収縮により足が屈曲する
バビンスキー反射 錐体路 母趾は背屈し、その他の指は全て扇状に開く
チャドック反射 錐体路 同上
ホフマン反射 C8以上の錐体路障害 手関節を軽度背屈位とし、患者の中指の爪の部分を掌側へと弾いたときに母指が内転すれば病的反射陽性。健常者にも認められることがあるので、片側に確認された時には診断に有用。
トレムナー反射 C8以上の錐体路 同上
口尖らし反射 橋以上の錐体路 上口唇の真上の正中部を軽く叩くと口を尖らす

感覚系の診察

神経根障害ではデルマトームに一致した感覚障害がみられる。

わかること
触覚 「ティッシュで触って左右差、腕と脚の差はあるか?」
病巣:一次Nから後角→同レベルで交差して脊髄前索を上行して視床へ→対側の感覚野
病巣:脊髄後索を上行→延髄で交差して視床へ(内側毛帯)→対側の感覚野
触覚は2つの経路があるため
温痛覚 「爪楊枝で突いて左右差、腕と脚の差はあるか?」
病巣:一次Nから後角→同レベルで交差して脊髄側索を上行して視床へ→対側の感覚野
振動覚 「(内果に当て)振動が止まったら教えて」
病巣:脊髄後索を上行→延髄で交差して視床へ(内側毛帯)→対側の感覚野
脊髄後索や糖尿病などの末梢神経障害で振動覚障害を生じる。
位置覚 「足元を見ずに、足の親指が上向きか下向きか教えて」
病巣:脊髄後索を上行→延髄で交差して視床へ(内側毛帯)→対側の感覚野
脊髄後索や糖尿病などの末梢神経障害で振動覚障害を生じる。

自律神経系の診察(問診)

問診
起立性低血圧 「立ちくらみはないか?」
発汗障害 「汗のかき方に変化はないか?」
排尿障害 「おしっこが出にくいか?」:S2-4からの副交感神経障害
蓄尿障害 「おしっこの回数は?失禁は?」:交感神経障害
排便障害 「下痢・便秘はあるか?」
性機能障害 「勃起不全はあるか?」

髄膜刺激徴候の診察

項部硬直
Kernig徴候

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