原虫(単細胞)
ヒトに寄生すると好中球やマクロファージによる貪食によって排除されることが多い。また、血清中のIgMやIgG抗体の上昇が認められる。ギムザ染色される。
根足虫類⇒アメーバ状、無性生殖
赤痢アメーバ原虫
疫学 | 5類感染症。旅行者、性感染症(特に男性同性愛者)。原虫感染で最多。 |
病態 | 糞便中の嚢子が陰茎に付着し、それをオーラルセックスすることで経口摂取し、大腸粘膜に寄生増殖してアメーバ赤痢(病名)を発症する。血流にのって肝で膿瘍を形成したものをアメーバ性肝膿瘍という(約5%)。 |
症状 | ほぼ無症状。症状がある場合は、 ①大腸炎:イチゴゼリー様粘血便、下痢、腹痛 ②肝膿瘍:単発性で右葉に多い、症状は発熱、上腹部痛、肝腫大、膿瘍の内容はアンチョビペースト状 |
検査 | 【便検査】虫体を直接確認 【血液検査】 血清アメーバ抗体(+) 直接塗抹検査:赤血球の貪食像 【画像検査】 腹部エコー、CT:肝膿瘍の有無を確認 大腸内視鏡:多発するびらんや潰瘍を認める |
治療 | 初期にはメトロニダゾール、チニダゾールを投与(囊子には無効)。 その後、嚢子除去のためフロ酸ジロキサニド、パロモマイシンを投与。 |
カステラーニアメーバ
疫学 | ソフトコンタクトレンズ使用者に多い |
病態 | 自然界に広く分布しており、コンタクト保存液などを介して眼に寄生し、アカントアメーバ性角膜炎を起こす。また、アメーバが外傷から侵入し中枢神経系へ拡散することでアメーバ性肉芽腫性脳炎(GAE)が起こることがある。 |
症状 | ①片眼性の眼痛(激痛)かつ難治性 ②毛様充血 |
検査 | 【細隙灯顕微鏡検査】 円板状浸潤 |
治療 | 特効薬はなく、ミコナゾールを点眼するくらい。 |
鞭毛虫類⇒鞭毛+、無性生殖
ランブル鞭毛虫
疫学 | 5類感染症。旅行者、免疫力低下者に好発する。亜〜熱帯の発展途上地域に多い |
病態 | 糞便などで汚染された飲食物の中の嚢子を経口摂取し、小腸粘膜に寄生増殖してジアルジア症を起こす。糞口感染のため肛門性交歴を確認すべき。 |
症状 | 1~2週間の潜伏後、 ①慢性下痢:軟便〜水様性下痢まで様々 |
検査 | 【便検査】新鮮な便を採取し、顕微鏡下にランブル鞭毛虫の栄養型や囊子型を検出 |
治療 | メトロニダゾール、チニダゾール |
膣トリコモナス原虫
疫学 | 性感染症 |
病態 | 性交渉時に栄養型が膣や尿道に感染する(組織侵入性はない) |
症状 | 性交後5日〜1ヶ月、 【女性】 ①外陰部掻痒 ②膣炎:悪臭を伴った黄色〜淡灰色の泡沫状の帯下の増加。腟内のグリコーゲンを摂取して増殖して腟内のpHが中性になり、雑菌が繁殖して膣壁の発赤。 【男性】 無症状:男性は寄生期間が短く伝播者の役割 |
検査 | 腟分泌物や尿沈渣を鏡検:白血球よりやや大きい原虫が運動する様子を確認 |
治療 | メトロニダゾール、チニダゾール経口投与(ただし、妊娠3ヶ月以内は投与しない) |
胞子虫類⇒運動器官を持たず細胞内寄生、無性+有性生殖
クリプトスポリジウム原虫
5類感染症。
疫学 | 日和見感染症。 |
病態 | 汚染された飲料水中のオーシストを経口摂取し、小腸粘膜に寄生増殖してクリプトスポリジウム症を起こす。クリプトスポリジウムは強い塩素耐性がある(水道水汚染)。 |
症状 | 免疫不全者では激しい下痢 |
検査 | |
治療 | ニタゾキサニド、パロモマイシン |
予防 | 煮沸 |
マラリア原虫 Plasmodium
疫学 | 4類感染症。再興感染症。アフリカを中心に流行。 |
病態 | ハマダラ蚊(は?マラリアだらけ)の吸血時にオーシストが血液中に侵入し、中間宿主のヒト(無性生殖)の赤血球内で増殖した後、再度吸血時に終宿主の蚊(有性生殖:カーセックス)へ戻るという生活環を繰り返す。 |
症状 | 発熱(周期的な赤血球の破壊)、脾腫(慢性期)、貧血(赤血球の破壊)の3徴。熱帯熱マラリアでは脳障害、腎障害も生じる。 |
検査 | 血液塗抹標本をMay-Giemsa染色し検鏡(赤血球に寄生するため) |
予防 | ①蚊に刺されないようにする(殺虫剤・防虫剤・衣服・蚊帳) ②クロロキン+ドキシサイクリンorメフロキンの予防内服 ③ワクチン接種 |
【マラリアの種類】
マラリアの種類 | 発熱周期 | 特徴 | 生殖母体の形 | 治療薬 |
熱帯熱マラリア | 不規則 | マラリアの中で最多 重症化して悪性マラリアとなる |
三日月型 | メフロキンor塩酸キニーネ+アドバコン・プログアニル 重症:グルコン酸キニーネ注射+メフロキン |
四日熱マラリア | 72時間(3日間) | 慢性化しやすい | 円型 | クロロキンorメフロキン |
三日熱マラリア | 48時間(2日間) | マラリアの40%を占める | 円型 | クロロキンorメフロキン+プリマキン |
卵形マラリア | 48時間(2日間) | 三日熱マラリアと症状が類似 | 円型 | クロロキンorメフロキン+プリマキン |
トキソプラズマ
疫学 | 10人に1人が本虫を保有しているが、多くは不顕性感染。免疫力低下で発症。 |
病態 | 終宿主である猫の糞便中のオーシストを中間宿主のヒトが経口摂取することで筋肉・眼・脳などに寄生する。初感染の多くは無症状で潜伏感染するが、免疫力が低下する後天性トキソプラズマ症を発症する。 【先天性トキソプラズマ症】 妊婦がトキソプラズマに初感染すると胎盤を介して胎児に感染して疾患を引き起こす。 |
症状 | 先天性:ぶどう膜炎、水頭症、脳内石灰化像、精神運動発達遅延(4徴)、小眼球 |
検査 | |
治療 | ピリメタミン+スルファジアジン(妊婦禁忌)、妊婦にはスピラマイシン。骨髄抑制を予防するために葉酸製剤のロイコボリンを服用。 |
予防 | 妊娠前に抗体検査を行い、陰性女性は羊・豚の生食を控え、猫の糞便に注意を払う。 |
繊毛虫類⇒繊毛+、無性+有性生殖
蠕虫(多細胞)
基本的に有性生殖を行い、虫卵→幼虫→成虫と発育する。
ヒトに寄生すると好酸球やIgEによって排除されることが多い。
線虫
主な線虫 | 中間宿主 | 感染経路 | 概要 | 治療 |
蟯虫 | なし | 虫卵を経口摂取 | 日本で最も高率な寄生虫。掻痒のため睡眠障害を起こす。 夜間、肛門周囲に産卵→掻痒で手に付着→経口摂取→盲腸に寄生を繰り返す。家族全員の検査が必要。 |
①ピランテル・パモエイト ②メベンダゾール |
回虫 | なし | 虫卵を経口摂取 | 虫卵が付着した有機野菜・輸入野菜を生食して小腸に寄生。 好酸球性肺疾患の一種であるレフラー症候群や急性腹症を発症。 |
ピランテル・パモエイト |
糞線虫 | なし | 幼虫が経皮感染 | 九州南部・奄美・沖縄地方の高齢者に多い。 日和見感染を起こす。 |
イベルメクチン |
アニサキス | ①サバ・アジ | 幼虫を経口摂取 | 以下参照 | 以下 参照 |
フィラリア | 蚊 | 幼虫を経口摂取 | ぼぼアフリカに存在し、日本には存在していない。 フィラリア=糸状虫類。リンパ組織に寄生し、慢性期に象皮症+ |
様々 |
東洋眼虫 | メマトイ | 幼虫が眼に付着 | 西日本に多い。無症状だが、長期寄生によって角膜混濁。 | 虫体を除去 |
【消化管アニサキス症】
病態 |
アニサキス線虫の幼虫を含む魚介類を生食した後、幼虫が消化管壁に刺入することにより発症する。アニサキスによるアレルギー反応であり、初回感染時は無症状であるが、以前にアニサキスに曝露されていると即時型反応を起こす劇症型となり激しい腹痛をきたす。 |
胃 症状 |
生食後2~8時間後、 ①心窩部痛、悪心・嘔吐 |
腸 症状 |
生食後数時間〜数日後、 ①激しい下腹部痛 |
検査 | 【血液検査】好酸球↑ 【画像検査】内視鏡検査で肥厚した胃粘膜と白い糸状のアニサキス虫体を確認 |
治療 | 内視鏡検査時に生検鉗子などでアニサキス虫体を摘出 |
吸虫
主な吸虫 | 中間宿主 | 感染経路 | 概要 | 治療 |
日本住血吸虫 | ミヤイリガイ | セルカリアが経皮感染 | ミヤイリガイがほぼ絶滅したため日本ではみられない寄生虫。血管に寄生し、門脈圧亢進症を起こす。小蓋なし! | プラジカンテル |
肝吸虫 | ①マメタニシ ②鯉科淡水魚 |
メタセルカリアを経口摂取 | 鯉やモツゴの生食を介して小腸→総胆管→胆嚢・肝臓に寄生。胆管炎、肝機能障害、肝硬変を起こす。虫卵に小蓋あり+なすび型。 | プラジカンテル |
横川吸虫 | ①カワニナ ②鮎・シラウオ |
メタセルカリアを経口摂取 | 鮎や白魚の生食を介して小腸に寄生し、腹痛・下痢を起こす。虫卵に小蓋あり+楕円形。 | プラジカンテル |
ウェステルマン肺吸虫 | ①カワニナ ②モクズガニ |
メタセルカリアを経口摂取 | 小腸→腹腔→横隔膜→肺の順で移動して寄生。胸膜炎、胸水、気胸などを起こす。モクズガニ=上海蟹のため、酔蟹には注意。虫卵に小蓋あり。 モクズマン! |
プラジカンテル |
宮崎肺吸虫 | ①ホラアナミジンニナ ②サワガニ |
メタセルカリアを経口摂取 | 小腸→腹腔→横隔膜→肺の順で移動して寄生。 胸膜炎、胸水、気胸などを起こす。糞便中に虫卵検出できない。虫卵に小蓋あり。 サワサワおさわり大好き宮崎県民! |
プラジカンテル |
条虫
主な条虫 | 中間宿主 | 感染経路 | 概要 | 治療 |
日本海裂頭条虫 | ①ケンミジンコ ②鮭・鱒 |
幼虫を経口摂取 | いわゆるサナダムシ。成虫が小腸に寄生するが無症状が多い。 頭がサケマス~で覚える。 |
①プラジカンテル ②ガストログラフィン |
無鉤条虫 | 牛 | 幼虫を経口摂取 | 牛肉の生食を介して感染して腹痛を起こす。日本での発症は極めて稀。 | ①プラジカンテル ②ガストログラフィン |
有鉤条虫 | 豚 | 幼虫を経口摂取 | 豚肉の生食を介して感染するが、日本での発症は稀。 ただし、発症すると嚢虫症を起こし危険! |
①プラジカンテル ②ガストログラフィン |
多包条虫 | げっ歯類、ヒト | 虫卵を経口摂取 | 第4類感染症。 終宿主のキツネとの接触で感染し、エキノコッカス症を生じる。 特に北海道に多い。症状は肝嚢胞、肝不全。 |
早期に包虫を摘出 |
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