産科総論・各論

産婦人科

  1. 発生
  2. 妊娠中の検査
    1. 妊娠時(可能性を含む)に禁忌となる検査
    2. 超音波検査
    3. ★エコーを用いた胎児の大きさの測定(超音波胎児計測所見)
    4. エコーを用いた胎児の重さの測定
    5. 胎児心拍数陣痛図(NST、CST含む)
    6. ★BPS(Biophysical Profile Score)=Apgarスコアの胎児版
    7. 出生前診断
      1. 確定的検査(検査に伴う流産リスクあり)
      2. 非確定的検査(検査に伴う流産リスクなし)
  3. 妊娠の成立
    1. ★妊娠の全体像
    2. 分娩予定日の決定法
    3. 卵膜・胎盤・羊水・胎便
  4. 妊娠の維持
    1. ★★妊娠維持に関与するホルモン
    2. ★妊娠中の母体の変化
  5. 妊娠中の異常
    1. つわり・妊娠悪阻
    2. ★★流産 abortion
    3. 不育症(反復流産、習慣流産を含む)
    4. 異所性妊娠
    5. ★胎児発育不全 FGR:Fetal Growth Restriction
    6. ★切迫早産・早産
      1. 絨毛膜羊膜炎 CAM:chorioamnionitis
    7. 前期破水 PROM:Premature rupture of menbranes
      1. 破水の分類
    8. ★★妊娠高血圧症候群 HDP:Hypertensive Disorders of Pregnancy
      1. ★子癇・HELLP症候群
    9. ★★糖代謝異常合併妊娠
    10. ★常位胎盤早期剥離(ソウハク)
    11. ★★前置胎盤
    12. ★癒着胎盤
    13. 胎児水腫
    14. ★★Rh式血液型不適合妊娠
    15. 羊水量異常
    16. 双胎妊娠(ハイリスク妊娠!)
      1. ★★双胎間輸血症候群 TTTS:twin-to-twin transfusion syndrome
    17. 合併症妊娠で問題となる代表的な疾患
    18. ★妊婦健診で行う感染症スクリーニング検査
    19. ★TORCH症候群
  6. 正常分娩
    1. 分娩3要素
    2. ★★分娩第1〜3期
    3. Bishopスコア(内診所見による子宮頸部成熟度の採点法)
    4. Friedman曲線
  7. 異常分娩
    1. ★★★分娩の異常
    2. 予定帝王切開
    3. ★急速遂娩
    4. 仰臥位低血圧症候群
  8. 産褥
    1. ★産褥期に起こる現象
    2. 子宮復古不全
    3. 産褥乳腺炎(うっ滞性乳腺炎・化膿性乳腺炎)
    4. 産褥熱(産褥期子宮内感染)
    5. マタニティーブルーズ
  9. 胎児循環→新生児循環

発生

精子・卵子の発生、受精までの流れは発生学を参照。

妊娠中の検査

【妊娠期別検査】

初期 ①尿中hCG定量:妊娠4週から
②エコー:胞状奇胎、異所性妊娠、流産の鑑別、黄体囊胞の有無、胎芽・胎嚢・心拍の確認、妊娠週数の推定(GS、CRL)
中期 ①エコー:多胎妊娠の鑑別、胎盤の位置、胎児発育(BPD、FL、腹囲)、子宮頸管長の測定、羊水量の測定(AFI)
②血中AFP濃度:Down症候群
後期 ①エコー:胎児発育(BPD、FL、腹囲)、胎盤の位置、羊水量の測定(AFI)、子宮頸管長の測定
②ノンストレステスト:胎児well-beingの判定
③胎児胎盤機能検査:尿中E3測定、血中CAP、hPL測定
④L/S比測定、シェイクテスト、マイクロバブルテスト〔胎児肺成熟度〕

妊娠時(可能性を含む)に禁忌となる検査

①すべてのX線検査
(骨盤X線撮影を除く)
・子宮卵管造影 ・胸腹部単純X線 ・尿路造影
・胃透視、腸バリウム造影検査 ・シンチグラム 
・腹部CT検査 ・骨盤アンギオグラフィ
②子宮内膜細胞診 or 組織診  
③Rubinテスト(卵管疎通性検査)  

超音波検査

初期は経法、中期以降は経法が多い。羊水量の評価は妊娠16週頃以降に可能となる!

①羊水量測定
ポケットニヤニヤコニシ死す
【羊水ポケット(羊水深度)】正常:2〜8cm
羊水腔が最も広くなる断面で胎児を含まずに描ける最大の円の直径。
【羊水指数(AFI)】正常:5〜24cm
子宮腔を4分割し、各部位の最大羊水深度:MVP(2〜8cm)を合計したもの。
②パルスドプラ法による血流測定 【臍動脈】
胎盤機能不全や胎児機能不全があれば、胎児→胎盤への血流が悪化し、臍動脈の抵抗係数(RI)が上昇する。
【中大脳動脈】
胎児の貧血や不均衡型の胎児発育不全があれば、脳などの重要臓器へ血流再分配が起こり、中大脳動脈の抵抗係数(RI)が低下する。
中等度以上の貧血の場合、血液粘稠度の減少と心拍出量の増加が起こることから血流速度が上昇する。
羊水検査
(エコーガイド下)
【診断的羊水穿刺】
妊娠15週以降に20mLの羊水を採取し、染色体異常などの出生前診断、マイクロバブルテスト、母子感染、溶血性貧血の有無を確認する
【治療的羊水穿刺】
妊娠22週以降、羊水過多による早産回避のための羊水除去を行う

★エコーを用いた胎児の大きさの測定(超音波胎児計測所見)

  計測部位 大きさ(cm)
妊娠4~7週 胎囊(GS) 妊娠週数−cm
胎嚢の直径2cmなら、妊娠6週とわかる!
※ただし、胎囊の3方向の平均を評価に用いることが必要。1断面の胎囊径からの予定日算出は正確性に欠けるため推奨されない。
妊娠~12週 頭臀長(CRL)
CRL=妊娠週数−cm
CRLが2cmなら、妊娠9週とわかる!
【妊娠週数の修正】
CRLからの計算で7日以上ずれがある場合、CRLからの分娩予定日に修正する(特に月経不順の場合)
妊娠12週以降 児頭大横径(BPD) BPD=妊娠週数÷4cmだいおうも悪よのう

エコーを用いた胎児の重さの測定

児頭大横径(BPD)、大腿骨長(FL)、腹囲(AC)から推定児体重が計算できる

  推定体重(エコーで測定) 3週間で500g増加する
24週未満    
24週 500g −500g
27週 1000g −500g
30週 1500g(児頭大横径75㎜、身長40cmが目安) 基準
33週 2000g +500g
36週 2500g +500g
39週 3000g +500g

胎児心拍数陣痛図(NST、CST含む)

母体に胎児心拍数計+陣痛計を装着し、超音波ドプラ法にて胎児の状態を評価する検査。検査法はNSTとCSTの2通りがある。

ノンストレステスト:NST ハイリスク妊娠の妊婦健診では、まず、子宮収縮がない状態(ノンストレス)で胎児心拍を観察して胎児の状態を評価する。妊娠末期に行う。半座位で20〜40分測定する。禁忌はなし。
コントラクションストレステスト:CST 胎児胎盤機能不全が疑われる場合に行う。
NSTで胎児状態が不明の場合はオキシトシンを投与して人工的に子宮収縮を起こし胎児心拍を観察し、胎児が分娩に耐えられるか評価する。
【禁忌】早産・子宮破裂を起こす可能性のあるもの:切迫早産、多胎妊娠、前置胎盤、前期破水、既往帝切、頸管無力症など

【胎児心拍陣痛図の結果】

胎児心拍陣痛図の上段の波形が胎児心拍数を、下段の波形が子宮収縮圧(陣痛)を表す。陣痛は10分に5回を超えないのが正常。

正常 異常
基線が正常範囲内
110160bpm:正常心拍はいい色
※妊娠初期は頻脈、迷走Nの発達により心拍数↓
・110bpm以下:胎児低O2血症アシドーシスの可能性
・160bpm以上では感染症貧血、心不全などの可能性
※心拍数は妊娠5週頃に90〜100bpmで確認が可能となり、その後9週までほぼ直線的に増加し、この時期をピーク(MAX175bpm)として妊娠9週以降漸減する
基線細変動が正常
6bpm〜25bpm)
基線細変動が減少している場合(=中枢神経系、つまり胎児の脳が機能していない)は胎児低O2血症アシドーシスの可能性
胎児心拍数基線そのものが規則正しい正弦波を示す(サイナソイダルパターン)は、胎児貧血や重症低酸素状態を疑う。
一過性頻脈がある
32週頃から交感神経が発達し胎動により出現)
一過性頻脈がない
一過性徐脈がない 【早発一過性徐脈】→胎児well-being
徐脈と子宮収縮の波形が対称的に出現する。原因は子宮収縮による児頭の圧迫により迷走神経が刺激され徐脈になる。
【変動一過性徐脈】
徐脈の波形が鋭く形も変動する。原因は羊水過小などで臍帯の圧迫により迷走神経が刺激され徐脈になる。
【遅発一過性徐脈】→NRFS
徐脈の波形が子宮収縮に遅れて出現する。原因は過強陣痛常位胎盤早期剝離、低酸素血症などで胎盤の機能不全により胎盤循環不全が起こり迷走神経が刺激され徐脈になる。
【遷延一過性徐脈】
基線より15bpm以上の低下が2分以上続く。原因は様々で、胎盤循環不全が多い

【以上の結果より】

胎児well-being
(胎児状態良好=reassuring fetal status)
胎児機能不全
NRFS(Non Reassuring Fetal Status)
①〜④が全て正常(reactive) ①〜④が1つでも欠ける場合(non-reactive)

★BPS(Biophysical Profile Score)=Apgarスコアの胎児版

超音波検査や胎児心拍数陣痛図からBPSを計算し、胎児の状態を確認する。

BPS(10点満点)で経過観察か分娩した方が良いか判断する。正常で各2点、8点以上かつ羊水量正常でOK、7点未満または羊水量減少で分娩を考慮、6点以下は分娩を行う(胎児状態が良ければ分娩誘発、悪ければ帝王切開)。

簡易版BPSであるmodified BPS(BPSと同等の感度)ではNSTとAFIで胎児評価する。

A:エコーで羊水量確認 正常:羊水ポケットが2cm以上
異常:羊水ポケットが2cm未満
P:NSTで心拍確認 正常:15bpm以上、15秒以上の一過性頻脈が2回以上→reactive
異常:上記が2回未満→non-reactive(NRFS)
G:エコーで胎動確認 正常:エコーで約30分観察して全身四肢の動きが3回以上
異常:2回以下
A:エコーで筋緊張 正常:胎動躯幹、四肢伸展・屈曲、手の把握が少なくとも1回ある
異常:緩慢な伸展と不十分な屈曲、脊柱の伸展、手掌開いている
R:エコーで呼吸様運動確認 正常:30分間に少なくとも30秒以上続く呼吸様運動が1回ある
異常:なし

出生前診断

確定的検査(検査に伴う流産リスクあり)

父さん色々気になる毛羊10週、16週

絨毛染色体検査 妊娠10〜14週頃に行う。
羊水染色体検査 妊娠16〜18週頃に経腹的に行う。羊膜や胎児皮膚などに由来する細胞を培養し検査する。

非確定的検査(検査に伴う流産リスクなし)

無侵襲的出生前遺伝学的検査
(NIPT)
妊娠10〜22週に行われる。母体血にわずかに含まれる胎児DNA/RNA(cell free DNA/RNA)の濃度を計算して染色体いじょうの確率を求める検査。21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーが対象。
母体血清マーカー検査
(クワトロ検査)
妊娠15〜20週に行われる。母体血を採取し、AFP、hCG、インヒビン、非抱合型エストリオールを測定して胎児の21トリソミー、18トリソミー、開放性神経管障害の確率を算出する。
胎児後頸部浮腫超音波検査
(NTエコー)
妊娠11〜13週に行われる。妊娠色に胎児後頸部に認められることがある皮下浮腫(NT)を検査し、異常肥厚があると、染色体異常や心奇形などのリスクが上昇する。

妊娠の成立

妊娠分娩歴の表記:○妊○産(○G○P)

★妊娠の全体像

  妊娠
月齢
妊娠
週数
胎生期 主なイベント
妊娠初期
早期流産
1ヶ月 0週   最終月経開始日=妊娠0日
分娩予定日は280日後(満40週0日)
    2週 胚子前期 排卵〜受精
    3週 (胚盤胞) 着床して絨毛形成開始
  2ヶ月 4週 二層性胚盤 エコーで胎嚢(GS)を確認
妊娠反応陽性(尿中hCG陽性は4〜5週)
    5週 三層性胚盤
胚子期
器官形成期妊娠5〜10週=妊娠2ヶ月目
つわり開始(少しずつ食べる)
    6週   胎芽・卵黄嚢、心拍動を全例に確認
    7週   心臓の主な中隔形成、胎盤形成開始
(7週までに心拍動なしで流産と診断、hCGも↓)
  3ヶ月 8週   生理的臍帯ヘルニアが観察される(小腸脱出)
    9週   頭臀長(CRL)を測定し予定日を修正
心拍数が最大となる(170-180bpm)
    10週   四肢の運動が見られる、尿中hCG最高値
つわり5〜15週くらい)
    11週 胎児期 外陰部の性差が決定する
後期流産 4ヶ月 12週   排尿行動あり(腎の成熟↑で羊水を排出)
(12週以降の死産は届出が必要)
妊娠中期   14週    
    15週   胎盤完成
  5ヶ月 16週   体表から児頭を触知
嚥下様運動あり(羊水を吸収し蠕動運動)
  6ヶ月 20週   胎動を感じる、妊娠線+
肺サーファクタント産生開始
呼吸様運動あり(羊水を吸収し肺の成熟↑)
    21週   (人工妊娠中絶は22週未満まで可:22週未満は胎児は体外で生存できない)
早産   22週    
    26週   肺の構造が完成
妊娠後期 8ヶ月 28週    
    34   肺が機能的に成熟し、肺サーフォクタント十分(胃液でマイクロバブルテスト→泡沫、羊水穿刺によるL/S比測定、shakeテスト)
  10ヶ月 36週    
正期産   37週   正期産(みなよい:37〜41週
    40週   分娩予定日
    41週    
過期産   42週    

【造血の場の推移】

血液内科の造血機構を参照。

分娩予定日の決定法

正確な順 詳細
①体外受精-胚移植の移植日からの算出 推定排卵日を妊娠2週0日として計算
②排卵日(LHサージ)からの算出  
③基礎体温からの算出 推定排卵日を妊娠2週0日として計算
④CRLからの算出 CRL=妊娠週数−7
⑤最終月経開始日からの算出 最終月経日から14日目に排卵したという仮定
+9+7の法則:1月1日最終月経なら10月8日出産

卵膜・胎盤・羊水・胎便

卵膜=脱落膜+絨毛膜+羊膜

胎盤
(約500g
胎盤は妊娠15週頃に完成し、厚さは約2cmで、
①ホルモン産生(胎盤自体がホルモン産生するまでは10週頃まで栄養膜合包体層からhCGが分泌され、妊娠黄体からE・Pを分泌させる)
②代謝物質の輸送・ガス交換(栄養素、IgG、老廃物)
羊水
=胎児の尿
特徴:アルカリ性、淡黄色透明、無菌、衝撃の干渉作用
産生
・肺(羊水量は胎児の腎機能を反映)
→ 腎機能障害で羊水減少
吸収消化器(小腸) → 食道閉鎖で羊水過多
羊水の機能:肺の成熟作用(取り込みと排出で成熟する)
胎便 胎児は便を体内に蓄積し、生後48時間以内に暗緑色の便(胆汁を含む)を排泄される。胎便は基本的に無菌であり、羊水には含まれない。
子宮内で胎児が低酸素状態に陥ったときなど、便失禁すると羊水が混濁し、肺に害を及ぼす(胎便吸引症候群)。

妊娠の維持

★★妊娠維持に関与するホルモン

ホルモン 産生細胞 作用
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン) 合胞体栄養膜細胞 時期:妊娠4週から尿中に出現し、妊娠8〜10週にピークとなる(hCGが2000IU/L以上で胎囊確認できる)
①妊娠黄体からのE・Pの分泌促進
※妊娠初期の卵巣の嚢胞はhCG刺激によってできたルテイン嚢胞であり、胎盤完成に伴い消失する。
※hCGはTSH受容体と弱い親和性があるため、妊娠初期に妊娠時一過性甲状腺機能亢進症(GTH)をきたす
hPL(ヒト胎盤性ラクトーゲン) 合胞体栄養膜細胞 時期:分娩に向けて徐々に増加、分娩で低下
①TG分解促進:母体のエネルギー源↑
インスリン抵抗性↑:母体のGlu利用を抑制(胎児のGlu利用↑)
エストロゲン 妊娠初期:黄体
12週以降:胎盤
時期:分娩に向けて徐々に増加、分娩で低下
①妊娠維持:子宮筋の肥大、子宮血流量↑
②分娩準備:妊娠末期に子宮頸管熟化を促進
③乳汁分泌準備:乳管発育、プロラクチン分泌促進(妊娠中の乳汁分泌抑制する。分娩後に胎盤からのエストロゲンが急激に減少すると乳汁分泌が開始される)
プロゲステロン 妊娠初期:黄体
12週以降:胎盤
時期:分娩に向けて徐々に増加、分娩で低下
①妊娠中の排卵抑制:LH分泌を抑制
②乳汁分泌準備:オキシトシン分泌低下
プロラクチン 下垂体前葉
12週以降:胎盤
時期:分娩に向けて徐々に増加、分娩で低下
①乳腺発育の促進

★妊娠中の母体の変化

凝固系亢進 妊娠初期はエストロゲンによりプロテインSが低下する
出産時の出血に備えてフィブリノゲン↑赤沈↑
循環血漿量↑ 出産時の出血に備えて血漿↑(RBC・WBCといった血球も↑)
血漿↑に伴い腎血漿量・糸球体濾過率↑によりCre・BUN↓
血漿↑に伴い血液が希釈され、Hb・Ht↓して貧血様症状(水血症)
血圧↓ Pgの作用で平滑筋が弛緩し、末梢血管抵抗↓させ胎児への血流↑
※正確には、妊娠中期に向かって緩やかに降下し、妊娠20週付近で最低値となる。その後出産に向けて緩やかに妊娠前血圧まで上昇する
インスリン抵抗性↑ hPL分泌により母体のGlu使用を防ぎ、胎児のGlu使用↑させる
妊娠後期になるにつれ、胎児のGlu使用量↑して、母体は低血糖となりインスリン分泌↑
コレステロール↑
TG↑
胎児は主に母体からのグルコースに依存して成長するため、母体はグルコースの利用を抑制し、脂質代謝を亢進させる
膣内pH↓ 元々膣内は酸性だが、更にpH↓して産道を除菌
消化管運動↓ 腹圧上昇により生理的GERDが起こりやすい
機能的残気量↓ 子宮増大による横隔膜挙上、代償的に呼吸数増加、胸式呼吸
皮膚色素沈着 ホルモンの影響で、乳輪や陰部などが黒ずむ
乳房発育 E・Pの増加による
子宮底長 妊娠23週には恥骨結合上縁〜子宮底が臍を超えて21cmとなる
16週〜30週ではその週数の数字に相当する長さ(cm)と覚えておく(30週=30cm)
正確には、19週目までは妊娠の月数×3(cm)、20週目以降は妊娠の月数×3+3(cm)で計算できる
体重増加 7〜12kg増加する

妊娠中の異常

    症状
妊娠初期 異所性妊娠 下腹部痛、性器出血
  流産、切迫流産 22週未満の下腹部痛・性器出血
  妊娠悪阻 悪心嘔吐、脱水、DVT
妊娠中期 胎児発育不全 妊娠18週以降に胎児体重増加↓を確認
〜後期 切迫早産、早産 22週以降の下腹部痛・性器出血、絨毛膜羊膜炎
  前期破水 陣痛発来前の羊水流出感、絨毛膜羊膜炎
  妊娠高血圧症候群 20週以降の高血圧、子癇、HELLP症候群
  子癇 妊娠高血圧+けいれん発作
  HELLP症候群 妊娠高血圧+突然の上腹部痛、ときにDIC
  糖尿病異常合併妊娠 羊水過多、巨大児、新生児低血糖、RDS
  常位胎盤早期剥離 突然の下腹部痛、板状硬、DIC、フリーエコースペース
  前置胎盤 24週以降に突然の無痛性の少量出血→大量出血、内診禁忌
  癒着胎盤 胎盤剥離徴候がない、剥離時に大量出血
  胎児水腫 胎児心不全、中大脳動脈の血管抵抗↓
  血液型不適合妊娠 間接Cooms試験陰性、抗Dヒト免疫グロブリン各2回投
  双胎妊娠 双胎間輸血症候群
  産科DIC 子癇、羊水塞栓症、常位胎盤早期剥離、弛緩出血、敗血症性ショック、死胎児症候群(子羊、常に弛んで敗北死

つわり・妊娠悪阻

疫学 全妊娠の約1%に発症、初産婦に多い
病態 つわりとは、妊娠によって起こる悪心嘔吐など消化器系の症状を中心とする症候。
hCG分泌量に比例して妊娠悪阻は発症するので、9〜10週前後がピーク、12週以降改善して15週でほぼ軽快する。
妊娠悪阻はつわりが悪化して食事摂取困難となり、栄養障害を起こして治療が必要になった状態。摂食障害によるケトン体産生により代謝性アシドーシス、頻回嘔吐による代謝性アルカローシスとなる場合がある。重症例ではWernicke脳症となることもある。
症状 ①悪心嘔吐
<以下の症状があれば治療必要>
②脱水:頻回嘔吐による、皮膚乾燥
③5%以上の体重減少:摂食障害による飢餓状態のため
④Wernicke脳症:眼球運動障害、歩行障害、意識障害
検査 【尿検査】尿中ケトン体+
治療 【食事指導】
好きなものを少量かつ頻回に分けて摂取
【薬物療法】
ブドウ糖を含む輸液(脱水+妊娠で凝固能亢進し深部静脈血栓症のリスク↑)
ビタミンB1添加(Wernicke脳症予防)

★★流産 abortion

疫学 自然流産の発生頻度は妊娠の15であり、そのほとんどが早期流産である。
リスク↑:加齢、糖尿病、子宮奇形、甲状腺機能低下症、抗リン脂質抗体症候群など
病態 妊娠22週未満の妊娠中絶を流産と言い、妊娠12週未満の早期流産(約90%)と妊娠12週以降の後期流産に分けられる。早期流産は胎児側に問題(70%が染色体異常)があることが多く、後期流産は母体側に原因(絨毛膜羊膜炎、頸管無力症、子宮形態異常など)があることが多い。後期流産は死産として扱われるしざん→4×3=12)。
【流産の分類】
流産の種類は以下の5つに分けられ、多くは不全流産である。
切迫流産:流産発生の危機がある状態(5つの中で唯一妊娠継続が可能)
②進行流産:流産が進行している状態
③不全流産:流産が進行した結果、胎児やその附属物が一部残留した状態
④完全流産:胎児やその附属物が完全に排出された状態
稽留流産:胎児が子宮で死亡し、停滞している状態
症状 【切迫流産】少量性器出血・軽度下腹部痛があり、心拍あり、子宮口は未開大
【進行流産】多量性器出血・陣痛様下腹部痛があり、心拍なし、子宮口は開大
【不全流産】性器出血・腹痛持続しており、胎嚢or心拍なし、子宮口は開大
【完全流産】症状消失しており、胎嚢なし、子宮口は閉鎖
【稽留流産】無症状のことが多く、胎嚢あり+胎芽心拍なし、子宮口は未開大
検査 【画像検査】エコー:心拍や状態を確認、膣鏡で子宮口を確認
【血液検査】hCG低下
治療 流産に有効な治療法はない
頸管無力症による反復流産:妊娠12週以降の場合は頸管縫縮術を考慮
稽留・進行・不全流産の場合は早期に子宮内容除去術を行う(胎児成分が母体血中に侵入しDICを起こすことがあるため)

不育症(反復流産、習慣流産を含む)

病態
症状
妊娠はするものの、流産や死産を繰り返すもの。
自然流産が2回連続することを反復流産、3回以上連続することを習慣流産という。
【原因】
染色体異常、抗リン脂質抗体症候群、子宮形態異常、甲状腺機能異常、糖尿病
検査 【血液検査】
・夫婦間染色体検査
・自己免疫学的検査(抗リン脂質抗体、凝固系検査)、内分泌検査
【画像検査】
子宮卵管造影:子宮形態異常を確認
治療 基礎疾患の治療など
抗リン脂質抗体症候群:ヘパリン皮下注(ヘパリンは胎盤移行性ない)

異所性妊娠

病態 受精卵が子宮体部位外に着床するもので、ほぼ卵管妊娠(約80%が卵管膨大部)である。
【原因】
クラミジア感染による卵管狭窄、子宮内膜症、体外受精、胚移植、手術の既往
症状 ①無月経
②少量の性器出血下腹部痛:卵管流産による
急性腹症卵管破裂→性器出血・大量の腹腔内出血→出血性ショック
※頸管妊娠の場合は突然の大出血を起こす(タンポンで止血→動脈塞栓か子宮全摘)
検査 【血液検査】hCG(+)の持続(流産の場合はhCG低下してくる)
【画像検査】エコー:子宮外に胎嚢確認
【生検】子宮内膜掻爬で脱落膜様変化あり
治療 【卵管未破裂時】
腹腔鏡下で卵管線状切開術(妊孕性温存)or 卵管切除術(根治術)
メトトレキサート投与(妊孕性温存)
【卵管破裂時】
ショック予防に輸液+緊急の卵管切除術

★胎児発育不全 FGR:Fetal Growth Restriction

FGR:推定体重が胎児体重基準値の-1.5SD以下に相当するもの→発育曲線は妊娠18週以降について作成されるため、妊娠18週以降に診断される。

  均衡型 不均衡型
状態 全体的に小さい 頭部は正常の大きさ、体幹は痩せている
時期 妊娠初期 妊娠中期以降
割合 約20% 約80%
原因 胎児因子:染色体異常、先天奇形、胎内感染、胎児アルコール中毒 胎盤・母体因子妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、多胎妊娠、前置胎盤、喫煙など
検査 【画像検査】
エコー:羊水量確認
超音波ドプラ法:中大脳動脈の抵抗係数↓(脳、心臓、副腎の血流↑)
治療 原因の除去+BPSを行なって適切な分娩時期を決定
胎児推定体重の増加が2週間なければターミネーション(人工的に分娩)
左に同じ
予後 悪い 比較的良好

★切迫早産・早産

疫学 自然早産の発生頻度は妊娠の5である
病態 妊娠22週〜36週(夫婦をみろ)の分娩を早産といい、早産の危険が高い状態を切迫早産という。特に32週未満の早産は合併症のリスクが高い。
【自然早産の原因】
絨毛膜羊膜炎(最大のリスク因子)などの感染症、頸管無力症(子宮頸管の強度が弱い)、多胎妊娠、羊水過多、喫煙、早産の既往がある。
【人工早産を行う理由】
母体合併症(常位胎盤早期剥離、前置胎盤、重篤な妊娠高血圧症候群)や胎児機能不全であり、ターミネーション(分娩誘発か帝王切開)を行う。
症状 下腹部痛、性器出血、腹部緊満感、破水
【合併症】
低血糖・高Bil血症(肝機能未熟)、動脈管開存症(PG代謝未熟)、脳内出血・未熟児網膜症・壊死性腸炎(32週未満出生)、RDS(34週未満出生)
検査 【画像検査】
エコー:切迫早産では内子宮口開大して楔形頸管短縮25mm未満
【血液検査】
早産マーカー陽性(顆粒球エラスターゼ活性↑、癌胎児性フィブロネクチン↑)
【胎児心拍数モニタリング】
遅発一過性徐脈:胎児の低酸素血症
治療 ①顕性絨毛膜羊膜炎の場合
羊水感染がある場合はターミネーション。不顕性絨毛膜羊膜炎なら、抗菌薬+β2刺激薬を投与し妊娠継続を図る。
②未破水の場合
β2刺激薬(塩酸リトドリン)または硫酸Mg投与して子宮収縮抑制して妊娠継続を図る。34週未満の場合は肺の成熟を促進するためステロイドを筋注
③破水している場合
34週未満は抗菌薬投与し、肺の成熟を待つため妊娠継続を図る。34週以降は分娩OK。

絨毛膜羊膜炎 CAM:chorioamnionitis

病態 卵膜への細菌感染によって生じた炎症性疾患。
細菌性膣炎によってラクトバシラス(デーデルライン乳酸桿菌など)が減少し、防御機構破綻により細菌が上行性に子宮頸管炎→絨毛膜羊膜炎→胎児感染となる。子宮内感染すると早産の原因となる。
症状 38℃以上の発熱かつ
②下腹部痛(子宮に圧痛)、母体100bpm以上の頻脈、膣分泌物の悪臭、WBC15000以上のうち1つでも認める。
白イチゴ100杯CAME ON血球15000以上、100bpm以上、子宮に痛、CAM、悪露(悪臭のある)

前期破水 PROM:Premature rupture of menbranes

疫学 全分娩の約10%
病態 陣痛発来前の破水のこと。
絨毛膜羊膜炎、子宮壁の過伸長、頸管の脆弱などが原因で羊膜が破れ、羊水過小となる。その結果、臍帯圧迫(→変動一過性徐脈)、四肢変形・関節拘縮肺低形成が生じる。
症状 水様帯下、羊水流出感、卵膜を触知しない
検査 【膣鏡】児頭確認、羊水流出(水様帯下の持続的流出)
【膣内貯留物で検査】BTB試験紙法で青色(水様帯下が弱アルカリ性)
【血液検査】AFP、IGFBP-1、癌胎児性フィブロネクチンなどが検出
治療 ①顕性絨毛膜羊膜炎の場合
羊水感染がある場合はターミネーション
②感染はなく、胎児が安定している場合
34週未満は抗菌薬投与し、肺の成熟を待つため妊娠継続を図る。34週以降は分娩OK。

破水の分類

前期破水(PROM) 早期破水 適時破水
陣痛発来前の破水 陣痛〜子宮口全開大前の破水 子宮口全開大後の破水

★★妊娠高血圧症候群 HDP:Hypertensive Disorders of Pregnancy

疫学 リスク因子:40歳以上、肥満、初産婦、高血圧、糖尿病、甲状腺機能異常、SLEなど
病態 妊娠高血圧(GH)
妊娠20週以降に初めて高血圧(140/90)を発症し、分娩後12週までに正常に戻る場合。160/110以上、母体臓器障害(+)胎盤機能不全(+)のものは重症HDPという。
正常の妊婦は、心拍出量↑だが末梢血管抵抗↓↓のため血圧は低下傾向である。しかし、HDPの妊婦では高血圧のため血管内皮障害が起こり、血管透過性亢進により循環血漿量が↓して心拍出量↓となるが、胎盤のらせん動脈が拡張不全のため末梢血管抵抗↑↑となり、高血圧となる。
  妊娠高血圧腎症(PE)
妊娠高血圧を生じ、かつ、尿蛋白(+)臓器障害胎盤機能不全が生じたもの。
  高血圧合併妊娠(CH)
元々高血圧のある人が妊娠したもの。尿蛋白(+)が生じたものは加重型妊娠高血圧腎症(SPE)という。
症状 【母体側】
①全身の浮腫、心不全:血管透過性亢進のため
合併症:子癇HELLP症候群常位胎盤早期剥離など→あればターミネーション!
【胎児側】
①胎児発育不全:胎盤の血流不足のため
②羊水減少:胎盤の血流不足のため
③胎児機能不全:胎盤の血流不足のため
検査 【画像検査】
子癇では、T2・FLAIRにて主に後頭葉に高信号(脳浮腫)を認める
【血液検査】
HELLP症候群では①溶血によるLDH↑・Bil↑、②肝機能障害によるAST・ALT↑、③血栓形成によるPLT↓・フィブリノゲン↓の3徴
治療 【薬物療法】
α2刺激薬(メチルドパ)、ヒドララジン、αβ遮断薬(ラベタロール)、Ca拮抗薬(妊娠20週以降の場合はニフェジピン内服、緊急な高血圧にニカルジピン静注が可能)
【ターミネーション】
重症HDPで児が成熟している、母体の状態悪化、胎児機能不全

★子癇・HELLP症候群

  子癇 HELLP症候群
病態 妊娠20週以降に初めてけいれん発作を起こし、てんかんが否定されるもの。血管攣縮により可逆性の血管原性脳浮腫が生じると考えられている。 Hemolysis:溶血(軽度でHb値変動少ない)
Elevated Liver enzyme:肝酵素上昇
Low Platelet:血小板減少
肝A攣縮+血管内皮障害により生じる。
症状 ①突然のけいれん発作→失神:血管原性脳浮腫 突然の上腹部痛:肝動脈攣縮
②ときにDIC→多臓器不全:血栓形成↑
検査 【画像検査】MRI:T2強調で後頭葉に高信号(PRES)、拡散強調像では低信号(脳浮腫のため) 【血液検査】溶血:LDH↑間接Bil↑、肝酵素:AST↑ALT↑、血小板↓
【末梢血塗抹標本】破砕赤血球
治療 【発作時】ABC確保+ジアゼパム投与
【発作予防】硫酸Mg持続静注
ターミネーション(HELLP症候群、子癇どちらも)

★★糖代謝異常合併妊娠

  糖尿病合併妊娠】妊娠前から糖尿病のもの
病態 妊娠糖尿病】妊娠後に空腹時血糖92以上、OGTT75gの1時間値が180以上、2時間値が153以上、いずれか1つ以上該当するようになったもの(糖尿病の一歩手前の状態)
急に人はお利口さんで覚える!
  妊娠中の明らかな糖尿病】妊娠後に糖尿病の診断基準を満たすもの
空腹時血糖126以上、HbA1c6.5%以上、随時血糖75gOGTTで200以上
※空腹時血糖126以上の場合は75gOGTTをせず、日内変動の測定を行う
症状 【母体側】
高血糖状態による血管障害:流産、早産、妊娠高血圧症候群
【胎児側】
妊娠初期:催奇形性
妊娠中後期:巨大児、胎児発育不全、子宮内胎児死亡、羊水過多(尿量増加のため)
分娩時:腕神経叢麻痺などの分娩外傷
新生児期:新生児低血糖(インスリン分泌亢進のため出生後糖供給が途絶えるため)、低Ca血症、高Bil血症(多血→出生後の溶血)、呼吸窮迫症候群(RDS:高血糖状態ではコルチゾール分泌が抑制され肺の成熟が進まないため)
検査 【耐糖能スクリーニング】
全妊婦に健診時に血糖値測定を行う。妊娠初期と妊娠中期(24〜28週)に行い、随時血糖100以上で陽性となる。陽性の場合は75gOGTTを行う。
【経口グルコース負荷試験】
OGTT75gの1時間値が180以上、2時間値が153以上
※ただし、空腹時血糖値126以上 or HbA1c 6.5%以上の場合は、75gOGTTは行わずに妊娠中の明らかな糖尿病と診断する。
治療 ①まずは食事改善(血糖の変動を少なくするため4〜6分割食)・有酸素運動を行い、早朝空腹時血糖95以下、食前血糖値100以下、食後2時間値120mg/dL以下を目標とする。
②目標血糖値を達成できない場合、インスリン療法(経口血糖降下薬は禁忌)妊娠中期以降はインスリン抵抗性増大によりインスリン必要量が増える。
※妊娠前から厳格な血糖コントロールがされていれば胎児奇形のリスクは上がらない

★常位胎盤早期剥離(ソウハク)

疫学 リスク因子:妊娠高血圧症候群腹部外傷、CAM、前期破水、喫煙など
病態 妊娠・分娩中に胎盤が子宮壁から剥離する緊急疾患。胎盤が剥離すると胎盤機能不全となり、胎児機能不全や胎児死亡となる。産科DICの原因として最大(約50%)。
症状 急激な持続性の下腹部痛・腹部板状硬:子宮の持続収縮のため
②少量の性器出血(ただし内出血は多いためDIC出血性ショックをきたしうる)
子宮胎盤溢血(クーブレール徴候):胎盤基底脱落膜内の出血により、子宮・胎盤のうっ血が起こる。重症の場合は壊死が子宮漿膜まで広がり、子宮は黒い溢血斑を呈する
血性羊水:子宮腔内への出血を反映
検査 【画像検査】エコー:胎盤と子宮壁の間にエコーフリースペース(胎盤後血腫)
【血液検査】貧血、DIC所見(フィブリノゲン↓FDP↑Dダイマー↑PT延長)
【胎児心拍数モニタリング】遅発一過性徐脈(胎盤機能不全のため)
治療 急速遂娩(緊急帝王切開、吸引・鉗子分娩)+DICやショックの治療

★★前置胎盤

疫学 リスク因子:多産婦帝王切開・子宮内容除去術の既往、癒着胎盤、高齢、喫煙など
病態 胎盤が正常より低い位置にあり、内子宮口を覆う疾患。過去に胎盤があったり、子宮内操作した部分に胎盤ができにくいため下方に胎盤ができると考えられる。
※24週未満であれば子宮拡大で前置胎盤でなくなる可能性がある
症状 ①突発性の少量の無痛性出血(警告出血)を繰り返す
大量出血(特に胎盤が内子宮口を完全に覆う全前置胎盤)
検査 【画像検査】妊娠24〜31週にエコーで確認
内診は出血を招く恐れのため禁忌、経膣エコーは可)
治療 ①出血がない場合:妊娠32週頃から入院し、37週頃に予定帝王切開
出血がある場合:直ちに入院し早産を予防する。出血少量の場合は子宮収縮抑制薬を投与し妊娠継続し37週頃に予定帝王切開、出血多量NRFSであれば緊急帝王切開する。
予備 自己血輸血:大量出血に備えて1週間前までにあらかじめ本人より採血

★癒着胎盤

疫学 リスク因子:前置胎盤帝王切開・子宮内容除去術の既往、子宮奇形、多産婦、高齢など
病態 脱落膜の欠損(主に子宮下部)により絨毛が子宮筋層に侵入し、胎児分娩後も胎盤剥離せず癒着する病態。
【分類】
狭義の癒着胎盤:胎盤の絨毛が筋層の表面のみに癒着し筋層内に侵入していないもの
嵌入胎盤:絨毛が子宮筋層深く侵入し剝離が困難な状態になったもの
穿通胎盤:絨毛が子宮壁を貫通し、漿膜面まで及んでいる状態
症状 胎盤剥離徴候が見られない:恥骨結合上部の圧迫で臍帯が膣内に戻る、子宮底に与えた振動が臍帯に伝わる、臍帯を掴む鉗子が外陰部から離れないなど
②一部剥離した部分から大量出血する
検査 【身体検査】胎盤剥離徴候を確認
治療 胎盤が剥離された場合:止血、出血コントロールできない場合は子宮全摘出術
胎盤が剥離されない場合:子宮全摘出術

胎児水腫

病態 胎児心不全のため胎児に2ヵ所以上の水分貯留(胸水、腹水、心嚢水、皮下浮腫)を認める状態で、全身の浮腫を認める。非免疫性は特発性が多く予後不良。
【原因】
免疫性:Rh式血液型不適合妊娠(溶血性貧血から高拍出性心不全となる)
非免疫性:心奇形(低拍出性心不全となる)、パルボウイルスB19感染・CMV感染により胎児貧血(高拍出性心不全となる)、染色体異常、双胎間輸血症候群、リンパ囊胞など
症状 胎児:胎児皮下水腫、胎児の腹水・胸水
母体:羊水過多
検査 【画像検査】
エコー:中大脳動脈の血管抵抗↓により胎児貧血を確認、皮下浮腫・胸腔・腹腔・心膜腔のecho free spaceあり
【胎児心拍数モニタリング】胎児頻脈、胎児貧血が重症化するとサイナソイダルパターン
治療 各疾患に対する治療?

★★Rh式血液型不適合妊娠

ABO血液型:規則抗体(抗A・抗B・抗AB抗体)、それ以外:不規則抗体(抗D抗体など)

病態
症状
Rh-の妊婦がRh+第1子の分娩時に分娩時に感作し、抗D抗体(IgM)をつくる。Rh+第2子を妊娠すると抗D抗体(IgG)が胎盤を通過し、胎児に溶血性貧血や胎児水腫が生じる疾患。また、その第2子は生後も高Bil血症や核黄疸などの新生児溶血性疾患を引き起こす。
検査 【不規則抗体検査】
妊娠初期に間接Cooms試験を行い陰性なら未感作、陽性なら抗D抗体を産生
【画像検査】
エコー:胎児中大脳A血流速度計測し胎児貧血を確認、胎児胸水・腹水など見て胎児水腫を確認する
治療 【未感作妊婦の場合】
妊娠28週と分娩後72時間以内に抗Dヒト免疫グロブリン各2回投与し、母体に抗D抗体が生じるのを防ぐ(流産、人工妊娠中絶でも同様)
【感作している妊婦の場合】
①胎外生活困難(未熟)な場合:胎児輸血
②胎外生活可能な場合:娩出(帝王切開)

羊水量異常

羊水量は100〜800mLが正常。MVPやAFIを用いて羊水量を評価する。

頻度:羊水過多>>羊水過小

  羊水過小(羊水量100mL未満) 羊水過多(羊水量801mL以上)
病態 ①胎児尿↓:妊娠高血圧症候群(HDP)→胎盤機能不全胎児機能不全、またはPotter症候群(腎低形成・無形成)より腎血流↓
②羊水↓:前期破水により羊水流出↑
主に特発性(約60%)、他の原因は以下
①胎児尿↑:妊娠糖尿病・DM合併妊娠
②胎児吸収↓:消化管閉鎖により嚥下↓
無脳症・二分脊椎など開放性病変による脳脊髄液の流出↑
症状 【主に胎児に症状】
臍帯圧迫による胎児機能不全、体内容積減少による肺低形成、子宮壁による圧迫で関節拘縮、四肢変形(内反足など)
【主に母体に症状】
腹部膨満感、悪心嘔吐、呼吸困難、切迫早産、前期破水による臍帯脱出・常位胎盤早期剥離、分娩後に弛緩出血や子宮復古不全
検査 エコーでMVP:2以下、AFI:5以下 エコーでMVP:8以上、AFI:24以上
治療 本質的な治療なし 入院安静し前期破水、切迫早産を予防
圧迫症状強ければ羊水除去

双胎妊娠(ハイリスク妊娠!)

詳細 2つの胎児が子宮内に存在する状態を双胎妊娠という。診断は膜性診断によって行われ、遅くとも妊娠14週までに行われる。
二絨毛膜二羊膜双胎DD:約70%):胎嚢・胎盤(絨毛膜)は2つ、胎芽は2つである。DDの予後が最も良好。λサイン(2絨毛膜)あり。
一絨毛膜二羊膜双胎MD:約29%):内細胞塊が分離した後に着床する。胎嚢・胎盤(絨毛膜)は1つ、胎芽は2つである。Tサイン(1絨毛膜)あり。
③一絨毛膜一羊膜双胎(MM:約1%):着床後に分離する。胎嚢・胎盤(絨毛膜)は1つ、胎芽は2つである。
合併症 【母体側】流産、早産、鉄欠乏性貧血、妊娠高血圧症候群、HELLP症候群、分娩時微弱陣痛、分娩後弛緩出血
【胎児側】双胎間輸血症候群、双胎一児死亡、胎位異常、胎児発育不全
分娩 第1児・第2児共に頭位なら経膣分娩(最多で45%)、第1児が非頭位なら帝王切開

★★双胎間輸血症候群 TTTS:twin-to-twin transfusion syndrome

疫学 一絨毛膜双胎の約10%に見られる
病態 一絨毛膜双胎において、胎盤上の吻合血管を介する循環血液量の不均衡が起こる症候群。
症状 受血児:羊水過多、循環血漿量の増加によるうっ血性心不全→胎児水腫
供血児:羊水過小、循環血漿量の減少による貧血・胎児発育不全
検査 エコーで受血児のMVP:8以上、供血児のMVP:2以下が同時に見られる(確定診断)
治療 胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)など

合併症妊娠で問題となる代表的な疾患

自己免疫疾患 抗リン脂質抗体症候群 胎盤に血栓ができて習慣流産の原因として重要
  SLE 抗SS-A抗体などのIgG抗体は胎盤を通過し、新生児ループス完全房室ブロックなど)を起こす。
  バセドウ病 TRAb(IgG)が胎盤を通過し、胎児の甲状腺機能↑
感染症 尿路感染症 妊婦は尿の鬱滞をしやすいため起こりやすい
  急性虫垂炎 妊婦は診断がつきにくく、かつ、重症化しやすいため診断したら開腹手術を行う
神経疾患 てんかん 抗てんかん薬は催奇形性があるが、発作により胎児に低酸素血症が起こるため服薬を継続する

★妊婦健診で行う感染症スクリーニング検査

  病原体 スクリーニング検査
妊娠初期 風疹ウイルス 風疹ウイルス抗体(HI)
  B型肝炎ウイルス HBs抗原
  C型肝炎ウイルス 抗HCV抗体
  HIV 抗HIV抗体/抗原
  梅毒トレポネーマ 梅毒血清反応(TPHA)
  サイトメガロウイルス CMV-IgG抗体(必要に応じて)
  トキソプラズマ トキソプラズマIgG抗体(必要に応じて)
妊娠中期 クラミジア クラミジアPCR法(30週頃までに)
妊娠末期
GBS 会陰部細菌培養(35〜37週)
陽性なら陣痛開始時にペニシリン投与開始!

★TORCH症候群

胎児や新生児に重篤な奇形や恒久的な臓器・神経・感覚器障害をきたす病原体の頭文字を取ったものをTORCH症候群という。TORC:胎盤感染、H(STD系):産道感染と覚える!

垂直感染経路 病原体
胎盤感染 (これらの病原体は胎盤を通過する)
T:トキソプラズマ原虫(脈絡網膜炎小眼球・発達遅延・脳内石灰化)
O:梅毒トレポネーマ(Parrot仮性麻痺、骨軟骨炎)、パルボウイルスB19
R:風疹V(白内障難聴心奇形風疹のはなし
C:サイトメガロV最多難聴・発達遅延・脳内石灰化・胎児水腫
※パルボVは先天奇形を生じない(赤芽球癆→胎児水腫を起こす)
産道感染 STD単純ヘルペスVB/C型肝炎V・HIV・淋菌、クラミジアなど
HSV→(脳炎小頭症・脈絡網膜炎)
その他:B群レンサ球菌、HPV6/11、カンジダ、VZV
VZV→(皮膚瘢痕・四肢低形成・網脈絡膜炎)
(産道感染防止には帝王切開が行われる)
母乳感染 HTLV-1、HIV、サイトメガロV
(HTLV-1抗体陽性の母親による母乳哺育の禁止)

正常分娩

分娩3要素

①娩出物 胎児 胎位】正常は頭位、逆子は骨盤位という。
胎向】胎児が右向き第一(最多)、左向きは第二という。
つまり、正常は第一 or 第二頭位となる。胎位胎向はエコーでもわかるが、上腹部→下腹部への触診(レオポルド触診法)でもわかる。
胎勢】正常は第一回旋で屈位となり先進部が小泉門となる後頭位、第二回旋で先進部の小泉門が母体の腹側(=前方)を向く前方後頭位となる。顎が下がらない反屈位となり、第二回旋で先進部の大泉門が母体の背側(=後方)を向く後方前頭位は異常である。
つまり、前方後頭位以外は帝王切開を考慮する!
  附属物  
②娩出力 陣痛 子宮口3cm以上開大するとActive phaseとなり、Sp0以下になり分娩が一気に進む。陣痛が有効かどうかは内診所見の進行により決まる。
→陣痛発作(持続時間約1分)+陣痛間欠=陣痛周期(約2〜3分
  腹痛  
③産道 骨産道
=小骨盤
入口部(Sp-5〜-4)】
正常:入口部は横長で、児頭がその形に沿って入ってくる
異常:児頭が縦向きのまま進入して第2回旋が起こらない(高在縦定位)

濶部かつぶ(Sp-3〜-1)】
正常:濶部は円形で広いため、第二回旋で児頭が回旋できる
異常:第2回旋で腹側へ逆回転する(後方後頭位)

峡部(Sp0〜+1)】
正常:峡部は縦長で、Sp0の坐骨棘は峡部の始まりを意味する
異常:第2回旋が起こらず横向きのまま下降して停止(低位横定位)

【出口部(Sp+2〜+3)】
  軟産道
=膣
分娩第1期に子宮頸部が柔らかくなるが、子宮頸部が軟産道のなかで一番抵抗が高い→Bishopスコアで頸管の熟化を評価

★★分娩第1〜3期

分娩所用時間:陣痛的開始から胎盤娩出までの時間

  分娩時間 イベント
妊娠末期   産徴(おしるし):子宮下部の開大に伴う卵膜剝離により、少量の血性粘液性の腟分泌物が出る
②前駆陣痛
③胎動の減弱
④子宮底の下降により頻尿、胃のスッキリ感など
頸管の熟化:子宮頸管柔らかくなる、Bishop scoreで評価
固定:児頭最大周囲径が入口部にはまり、指で押しても移動性を失った状態
分娩第1期
(開口期)
【初】12hr
【経】6hr
分娩陣痛6回以上/hr or 周期10分以内/回で規則正しい陣痛が起こり分娩開始(陣痛の有効:内診所見の進行で決定)
【第1回旋】
子宮収縮により児頭が顎を引いて前屈し、大泉門が見えなくなり、小泉門が頂点に来る
  陣痛増強! 【嵌入】児頭最大周囲径が入口部を通過し、児頭先進部がSp0より下にある状態
【第2回旋】児頭がゆっくりと90度回転しながら胎児が肛門側を向き下降する
分娩第2期
(娩出期)
【初】2hr
【経】1hr
子宮口全開大(10cm以上)
適時破水
    【排臨】陣痛発作時は児頭が見え、間欠時は見えない状態
【発露】間欠時にも児頭が常時見える状態
    【第3回旋】児頭が顎をあげて反屈しながら娩出される
【第4回旋】回転して腹側の肩を出しながら横に向く
分娩第3期
(後産期)
【初】20min
【経】10min
児娩出後から始まり、胎盤と卵膜の娩出

Bishopスコア(内診所見による子宮頸部成熟度の採点法)

13点満点9点以上で頸管成熟とみなし、1週間以内の陣痛発来が期待され、特に分娩誘発が成功しやすいことを示している。
・Bishopスコアのゴロ→美女の天体SHOP:Bishop、展退度、station、hard、open、position
・Bishopスコア1点のゴロ→天使のスイーツ唇にChu退度40、Station-2硬さは、子宮口開大2cm、子宮口の位置は

  2(全て満たせば成熟)
子宮口開大度(cm) 1〜2 3〜4(Active phase) 5〜6
頸管展退度(%) 0〜30 40〜50 60〜70(半分以下に短縮) 80〜
児頭の位置(Station) −3 −2 Sp−1〜0(固定) +1
頸部の硬度 硬(=鼻翼) 中(=唇) 軟(=マシュマロ)
子宮口の位置 後方 中央 前方

【定義】

子宮口開大度 頸管の10cm開大=子宮口全開大=分娩第2期の開始
頸管展退度 子宮頸管(約4cm)の短縮度として、展退何%と表現したもの
児頭の位置 坐骨棘間を結ぶ面をstation 0
頸部の硬度  
子宮口の位置 子宮が降りてくると同時に子宮口も前方に移動する

Friedman曲線

分娩開始からの時間経過と子宮口開大度、児頭下降度の標準的な関係をグラフにしたもの

異常分娩

★★★分娩の異常

★回旋の異常 <第2回旋異常>
低位横定位:第2回旋が起こらず横向きのまま下降して停止
後方後頭位:第2回旋で逆回転して停止
高在縦定位:児頭が縦向きのまま進入して第2回旋が起こらない
<第3・4回旋異常>
肩甲が恥骨結合に引っかかる(巨大児がリスク)
臍帯の異常 臍帯脱出
破水、臍帯が子宮口から脱出し、胎児機能不全に陥る。
<臍帯脱出のリスク>
胎位の異常:横位、骨盤位(特に足位)
胎勢の異常:顔位
骨盤と胎児の不均衡:狭骨盤による児頭下降の不良
双胎、羊水過多:前期破水
★骨産道の異常 【児頭骨盤不均衡(CPD)】
児頭>骨盤により、分娩前は児頭が浮動して固定しない、分娩中は分娩が進行しない。150cm以下の妊婦は狭骨盤のためリスク。
軟産道の異常 頸管に異常がある
陣痛の異常 微弱陣痛:①陣痛周期が延長、②陣痛持続時間が短縮、③児頭が下降しないことによって判断する。原因は多胎、羊水過多、子宮筋腫、遷延分娩などがある。子宮収縮薬で収縮力増強。
過強陣痛(医原性):子宮収縮薬の不適切使用により陣痛周期短縮、陣痛周期延長が起こり、胎児機能不全子宮破裂が生じる。子宮収縮薬を中止。
★分娩児出血
→正常500mL未満
子宮破裂
リスク:帝王切開や筋腫核出術の既往、子宮収縮薬の使用
突然の激しい腹痛少量の性器出血(多量の内出血)でショック・DICが生じる。緊急開腹術する。
【軟産道損傷(頸管裂傷)】
リスク:初産婦
胎児娩出直後より多量の外出血が持続。縫合止血する。予後は良好。
子宮内反症
リスク:臍帯牽引、胎盤娩出
胎児娩出直後より、激痛+大量の性器出血でショックが生じる。双合診で子宮底を触知しない。全身麻酔下で用手的子宮整復し、無理なら開腹にて整復する。
弛緩出血
リスク:子宮筋の疲労、胎盤遺残
胎盤娩出後も外出血が持続。子宮収縮不良のため子宮底は高く軟。子宮底輪状マッサージ、双手子宮圧迫法、子宮収縮薬のオキシトシン・PGF2αを投与。
★羊水塞栓症 破水した後、羊水成分(胎脂、胎毛、皮膚の扁平上皮細胞など)が母体血中に流入し、肺毛細血管が閉塞し、分娩中・分娩直後に突然の呼吸循環不全・ショック・DICをきたす疾患。死亡率20%以上。
分娩損傷 分娩により胎児が頭部損傷、骨折、末梢神経損傷(腕神経叢麻痺、Erb麻痺が多い)などを起こす。
【頭部損傷】
産瘤:産道の圧迫による皮下の浮腫。浮腫は波動性なし、骨縫合を超える。数日内に消失する。
頭血腫:吸引分娩などによる外力で生じる血腫。血腫は波動性あり、液体は骨縫合を超えない。数ヶ月で消失する(血腫吸引は禁忌)。
帽状腱膜下血腫:吸引分娩などによる外力で生じる血腫。血腫は波動性あり、液体は骨縫合を超える。輸血などでショック対策し、出血性疾患を検索する。
分娩時間異常 分娩第1期(分娩開始〜子宮口全開大):初12hr/経6hr以上
分娩第2期(子宮口全開大〜胎児娩出):初2hr/経1hr以上
分娩第3期(胎児娩出〜胎盤娩出):初20min/経10min以上
分娩所要時間の生理的限界は初30hr/経15hr以内(それ以上は遷延分娩

予定帝王切開

帝王切開・子宮操作の既往  
児頭骨盤不均衡(CPD) 試験分娩する場合もある
前置胎盤・前置血管  
産道感染症(HIV、ヘルペスなど)  
横位・斜位・(骨盤位) 分娩の遷延、前期破水、臍帯脱出の可能性のため
多胎妊娠・巨大児  

★急速遂娩

分娩中に母児に危機的状況が生じた場合に、分娩を早めるために、帝王切開、鉗子分娩、吸引分娩などによって児を娩出すること。

吸引分娩・鉗子分娩 子宮口全開大Sp+2以上、頭位、既破水の場合に実施
緊急帝王切開 吸引分娩・鉗子分娩が難しい場合、リトドリン投与して帝王切開
補助薬 子宮収縮薬:オキシトシン、PGF2α・PGE2
頸管熟化薬:ラミナリア、メトロイリンテルなど

【例】

第1回旋異常 (前頭位)、額位、顔位などの反屈位であれば行う
第2回旋異常 分娩が進まなければ行う
第3/4回旋異常 分娩が進まなければ行う
臍帯脱出  
児頭骨盤不均衡(CPD) 分娩が進まなければ行う
常位胎盤早期剝離 産科的DICとなるため行う
子癇・HELLP症候群 重症妊娠高血庄症候群
胎児機能不全 判断したら行う

仰臥位低血圧症候群

病態 仰臥位時に子宮による下大静脈の圧迫により静脈還流量が減少し、低血圧となる病態。
症状 呼吸困難、悪心
治療 左側臥位、用手的子宮の左方移動

産褥

分娩後、妊娠前の状態に戻るまでの6〜8週間を産褥期という。産褥期は法律上働いてはいけない。

★産褥期に起こる現象

産褥期に起こる現象 詳細
子宮復古 【子宮の高さ(子宮底)】
分娩直後は臍下3横指だが、12時間後に臍の高さに上がり臍高さいこうで最高)となり(後陣痛)、分娩3日後に臍下3横指に戻る。
【子宮の大きさ】
退院する分娩1週間後に手拳大、産褥期が終わる6週間後には正常の鶏卵大に戻る。
【悪露(分泌物)】
分娩直後〜3日後は赤色、退院する分娩1週間後に褐色となり、2〜3週間は黄色、4週間後くらいに無色になる。オロオロするセカオワ(赤→褐→黄→白)
授乳 初乳は産褥3〜5日までみられる(最高の初乳を産生する:3〜5日、初乳、3週以降、成乳)
妊娠中の血中PRL濃度は高いが、エストロゲンが乳腺レベルでのPRLの感受性を低下させるため母乳は出ない。分娩後は胎盤性エストロゲンの減少して血中PRL濃度も低下するが、吸啜刺激によってPRL・オキシトシンの分泌が亢進し、母乳が出る。オキシトシンにより後陣痛も起こる。
産褥性無月経 プロラクチン分泌によりGnRH分泌が抑制され無月経となる。
産褥無月経の期間として非授乳婦では4ヵ月以内に月経が再来することが多いが、授乳婦であればPRL分泌が亢進して6ヵ月以上月経が再来しないことも珍しくない。
臍帯脱落 産後平均7日で脱落するため、過半数は退院までに脱落している

子宮復古不全

疫学 リスク因子:遷延分娩、子宮筋過度伸展(巨大児、多胎妊娠、羊水過多、子宮筋腫)、頻産婦、産科手術(帝王切開、吸引・鉗子分娩)、妊娠高血圧症候群など
病態 遺残物、子宮筋腫、帝王切開既往、子宮の過伸展・疲労によって子宮の収縮不全が起こり、子宮底が下がらない状態。
症状 ①子宮が大きくて柔らかい
血性悪露が持続
治療 ①授乳促進してオキシトシン分泌↑、子宮底マッサージ
②子宮収縮薬投与
③胎盤遺残があれば子宮内容物除去術(感染徴候あれば抗菌薬も追加)

産褥乳腺炎(うっ滞性乳腺炎・化膿性乳腺炎)

  うっ滞性乳腺炎 化膿性乳腺炎
病態 産褥3~4日に、乳管内に乳汁がうっ滞した状態。乳管発育が未熟な20歳代前半の初産婦に起こりやすい。   うっ滞性乳腺炎に続発して(産褥2~4週)主にブドウ球菌が感染。多くは褥婦自身の手指、新生児の顔面や口腔から感染。
症状 ①乳房の発赤・腫脹・疼痛
発熱なし(or 微熱)
  発熱・腋窩リンパ節腫脹
②乳房の発赤・腫脹・疼痛
検査 WBC・CRP正常   WBC・CRP↑
治療 授乳、搾乳、乳頭清拭、乳房マッサージ   授乳中止、抗菌薬、切開・排膿

産褥熱(産褥期子宮内感染)

病態 分娩終了から24時間以降〜10日以内(通常、産褥3~5日に発症する)に2日以上38度以上の発熱が持続する。ただし、腎盂腎炎や乳腺炎による発熱は産褥熱に含まない
原因は分娩時の創傷で、主に腟や子宮頸部に存在する大腸菌などのグラム陰性桿菌などが上行して子宮内膜に侵入し、子宮内膜炎(最多)などを生じる。
【重症型産褥熱】
①黄色ブドウ球菌が産生するエクソトキシンによる敗血症(TSS)
②劇症型A群連鎖球菌によるTSLSまたはSTSS  
症状 2日以上38度以上の発熱が持続
②悪臭を伴う悪露
③子宮体部の圧痛
治療 感染巣の除去(ドレーン留置、子宮内容除去術など)+抗菌薬

マタニティーブルーズ

疫学 産褥婦の約30%に見られる
病態 産褥3〜10日に発症する一過性の軽い抑うつ状態。
本症の約5%が産後うつ病に移行することがある(産後2〜3週間以降も持続)。
症状 ①抑うつ傾向で涙もろくなる
検査 【産後うつ病のスクリーニング】
エジンバラ産後うつ病質問票〈EPDS〉:9点以上でうつ病の疑い
治療 軽症なら経過観察(通常2週間ほどで消失

胎児循環→新生児循環

短絡経路があるため、心臓や脳に動脈血を大量に送ることができる!

Botallo動脈管=動脈管、Arantius静脈管=静脈管

 

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