婦人科 総論

産婦人科

生理

基礎体温(BBT)

基礎体温は基礎代謝のみを反映しており、起床前に舌下で測定する。

正常なBBT ①高温期の持続が11〜16日(黄体の寿命は約14日)
②高温期と低温期の差が0.31度以上
③排卵期に温度陥落あり、高温期に温度陥落なし
BBTからわかること 排卵の有無:無排卵では1相性(無排卵ではプロゲステロン分泌がないためダラダラとした出血が起こる=破綻出血
黄体機能の推定:高温期が10日以内、または高温期と低温期の差が0.3度以内では黄体機能不全の疑い(着床障害により不妊となる)
③妊娠の早期診断:高温期が17日以上持続すると妊娠の疑い

ホルモンの分泌機構

子宮内膜の厚さは閉経前では15mm以上、閉経後では5mm以上で異常を疑う!

卵胞期
(月経期+増殖期
①視床下部からGnRHがパルス状に分泌される(持続的分泌されると前葉のGnRH受容体がダウンレギュレーションする)
②下垂体前葉から分泌されたLHは、卵巣の卵胞莢膜細胞に作用してコレステロール→アンドロゲンに変換させる
③下垂体前葉から分泌されたFSHは、卵巣の顆粒膜細胞に作用してアロマターゼが活性化されることで、アンドロゲン→エストロゲンに変換させる。もう一つの作用として、FSHは二次卵胞を成熟卵胞にする(直径20mm)
アクチビンインヒビンは卵胞の顆粒膜細胞から分泌され、前者は卵巣のFSH作用を促進し、後者は下垂体に作用してFSH分泌を抑制する。このように、FSH分泌と作用の調節を行っている
④エストロゲンの作用によって子宮内膜の機能層(海綿層+緻密層)が増殖・肥厚し、らせん動脈が増生する
排卵期 ①エストロゲン濃度一定以上になると(Eのピーク)、GnRHがサージ状に分泌
②LHサージが起こり(2日間)、ピークの10〜12時間後に排卵
③排卵後、卵胞壁に残存した顆粒膜細胞と莢膜細胞が黄体に変化
黄体期
分泌期
①LHは黄体に作用してプロゲステロン(P)が産生され、またエストロゲン(E)も黄体から産生される。その結果、子宮内膜が分化する(子宮内膜腺細胞の核下にコラーゲン蓄積による空胞、機能層の脱落膜様変化、らせん動脈の更なる増生)
②妊娠成立しなければ黄体が白体化してE・Pが低下し、子宮内膜の虚血性変化によって脱落膜様に変化した機能層が壊死・剥離して、基底層以外は子宮外に排出される(消退出血=排卵性周期によって起こる出血)

エストロゲンの作用

①E1(エストロン):閉経後にメインとなる(脂肪細胞で産生)
②E2(エストラジオール):最も活性が強い
③E3(エストリオール):妊娠中に作られる(妊娠中の胎児・胎盤機能の評価に使用)

乳房 乳腺の発達、乳汁分泌抑制(プロゲステロンと同じ作用)
子宮 子宮内膜の増殖・肥厚
頸管粘液の分泌量↑牽系性↑粘稠度↓:排卵前のエストロゲンのピークで顕著
妊娠時子宮 子宮筋の発育・増大、頸管熟化
膣粘膜の角化・肥厚:コラーゲン合成促進
膣内pH↓:デーデルライン桿菌はエストロゲン作用によって作られたグリコーゲンを分解して乳酸を生成する(小児や高齢者ではE↓により膣炎起こりやすい)
皮膚 コラーゲン合成促進
その他 女性の第二次性徴発現:乳房の発育、脂肪沈着、子宮や膣の発育促進
脂質代謝 LDL低下作用:肝LDL受容体数を増加させ、LDL取りこみ増加により血中LDL濃度を低下させる
HDL増加作用:肝性TGリパーゼ(HTGL)活性を抑制し、肝臓のHDL取りこみを促進する。HTGL活性の抑制により血中HDLは上昇する
骨代謝 骨吸収抑制作用:カルシトニンの分泌促進、活性型ビタミンDの合成促進により骨吸収抑制
血液・血管 凝固系亢進作用:経口避妊薬内服開始4ヶ月以内に生じやすい
血管拡張作用:エストロゲンは肝で代謝される。肝機能障害により体内に蓄積し、血管を拡張する。その結果、手のひらの血管拡張により手掌紅斑が、顔面あるいは前胸部の血管拡張によりクモ状血管腫がみられる

プロゲステロンの作用

プロゲステロンは妊娠の維持に働く!

乳房 乳腺の発達、乳汁分泌抑制(エストロゲンと同じ作用)
子宮 子宮内膜の分泌期様変化、頸管粘液の分泌量↓牽系性↓粘稠度↑
エストロゲンの子宮内膜増殖を抑える働きを持つ!
妊娠時子宮 子宮筋の収縮抑制、子宮内膜の脱落膜様変化
卵巣 排卵抑制
膣粘膜の菲薄化
その他 基礎体温の上昇、妊娠維持に必須、一時的体重増加

体毛(多毛)

①男性毛 精巣由来の高濃度テストステロンが支配 前頭部・頭頂部、あご、前胸部、背部、恥毛上半分、手足の体毛
②両性毛 副腎や卵巣由来の低濃度アンドロゲンにより支配 腋毛、恥毛下半分の体毛
③非性毛 アンドロゲンの影響を受けず,成長ホルモンや甲状腺ホルモンが関与 眉毛、睫毛など

【多毛症】

男性性毛型多毛症(剛毛) Cushing症候群、多囊胞性卵巣症候群(PCOS)
非性毛型多毛症(うぶ毛) 神経性やせ症(神経性食思不振症)

性分化と性器形態の異常

性分化疾患 DSD:Disorders of sex development

代表的疾患
①性染色体異常DSD Turner症候群、Klinefelter症候群
②46,XX DSD 先天性副腎皮質過形成(21-OH酵素欠損症、11β-OH酵素欠損症)
③46,XY DSD アンドロゲン不応症
②③共通のDSD Kallmann症候群

Turner症候群・Klinefelter症候群は小児科の先天異常を参照。

先天性副腎皮質過形成(21-水酸化酵素欠損症)

疫学 1/20000人に発症
病態 染色体性遺伝によって、副腎皮質や性腺でホルモン生合成に関与する酵素が欠損する先天性疾患。男性化症状が出るものが大部分である。
先天性副腎皮質過形成のうち約90%は21-水酸化酵素欠損症であり、新生児マススクリーニングで判明する。21-水酸化酵素欠損症では、酵素欠損によりAld・コルチゾール低下となる。その結果、ACTH↑により副腎皮質過形成、アンドロゲン過剰となる。
症状 アンドロゲン過剰症状(男性化症状)
女児:陰核肥大、多毛など男性化徴候、原発無月経
男児:陰茎肥大、恥毛発現などの思春期早発症状
②コルチゾール欠乏症状
哺乳力低下や嘔吐
③アルドステロン欠乏症状
低血圧脱水、ショック
④ACTH過剰症状
色素沈着
検査 【血液検査】
Ald低下により低Na血症、高K血症、代謝性アシドーシス
コルチゾール低下によりACTH↑
【新生児マススクリーニング】
17-OHP↑
治療 乳児期からヒドロコルチゾン補充(発熱時には通常の2〜3倍投与)、NaCl補充

【鑑別】十の位が1のやつはAld作用一の位が1のものはアンドロゲン作用

21水酸化酵素欠損 17α-水酸化酵素欠損 11β-水酸化酵素欠損
上昇 アンドロゲン↑
女性:男性化
男性:思春期早発症
Ald↑(K↓)
高血圧・筋力低下
アンドロゲン↑
女性:男性化
男性:思春期早発症
低下 Ald↓、CORT↓
低血圧・低血糖・低Na血症
アンドロゲン↓
男性:女性化
Ald↓、CORT↓
高血圧(DOC↑のため)

アンドロゲン不応症

病態 性遺伝によるアンドロゲン受容体の異常のため、染色体は男性型46XYで停留精巣からテストステロンが分泌されるにもかかわらず、テストステロンが作用できないため外見や心は女性となる。
症状 【身体的特徴】
比較的高身長、腋毛・恥毛ほぼなし、乳房発育はあり
【症状・合併症】
不妊:原発無月経のため
検査 腹部 or 経直腸エコー:卵巣・子宮を認めない、膣は盲端(抗ミュラー管ホルモンが分泌されるため卵巣・子宮・腟上部は形成されない)
②血液検査:テストステロンは正常男性と同等値、LH↑FSH↑
③染色体検査:46XYで確定診断
治療 癌化予防のため停留精巣摘出、摘出後は第二次性徴誘発のためエストロゲン補充

性器形態の異常

処女膜閉鎖症 初経がなく、月経血貯留のため激しい下腹部痛あり(月経モリミナ)
膣欠損症 MRKH症候群は卵管を除くミュラー管の発生異常で膣欠損を生じる
子宮形態異常 中隔子宮では不妊・習慣流産をきたすことがある

性器の炎症・STI

※骨盤腹膜・付属器・子宮体部の炎症をまとめて骨盤内炎症性疾患(PID)という。クラミジアや淋菌感染は子宮体部→付属器→骨盤腹膜と上行してPIDを引き起こす。

骨盤腹膜の炎症※ 骨盤腹膜炎
付属器の炎症※ 卵管炎、卵巣炎(腹腔に露出しており骨盤腹膜炎に移行しやすい)
子宮体部の炎症※ 子宮内膜炎、子宮筋層炎、子宮傍結合織炎
子宮頸部の炎症 子宮頸管炎
膣や外陰の炎症 膣炎、外陰炎、バルトリン腺炎→腺閉塞でバルトリン腺膿瘍

性感染症

疾患 病原体
細菌 淋菌感染症 ナイセリア・ゴノレア
梅毒 梅毒トレポネーマ
性器クラミジア感染症 クラミジア・トラコマチス
性器マイコプラズマ感染症 マイコプラズマ・ジェニタリウム
ウイルス 性器ヘルペス HSV
尖圭コンジローマ HPV
B型ウイルス性肝炎 HBV
HIV感染症 HIV
真菌 カンジダ外陰膣炎 カンジダ菌
原虫 膣トリコモナス症 膣トリコモナス原虫

 

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