月経異常

症候学

月経の異常

月経の正常と異常

正常 異常
開始 10〜14歳
12±2
早発月経:10歳未満で初経
遅発月経:15歳以上18歳未満で初経
閉経 40〜54歳
47±7
早発閉経:40歳未満で閉経
遅発閉経:55歳以降で閉経
20〜140mL
(80mL)
過多月経:出血量が140mL以上
過小月経:出血量が20mL以下
持続期間 3〜7
5±2
過短月経:出血日数が2日以内
過長月経:出血日数が8日以上
周期 25〜38
ニコニコ散髪
無月経:月経がない状態
頻発月経:24日以内で発来する月経
稀発月経:39日以上90日以内で発来する月経
続発性無月経:90日以上月経が停止
随伴症状 月経困難症:月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状
月経前症候群:月経前に起こる病的症状で月経と共に軽減

子宮からの出血パターン(膣や卵管からの出血ではない)

消退出血
Pあり
主にPによって維持されてきた分泌期内膜が、Pの急激な低下によって内膜が維持できずに脱落する時に見られる出血。
破綻出血
Pなし
Eのみで維持されている増殖期内膜が、Pの作用がないため内膜が維持できなくなり、内膜が不規則に脱落する時に見られる出血。多くは無排卵周期症に生じる。

月経血量の異常

過多月経(レバーの塊のような凝血が混じる)

①子宮筋腫 特に粘膜下筋腫。
②子宮腺筋症
③子宮の腫瘍
④機能性出血
⑤血液凝固障害

過小月経

①Asherman症候群 子宮内操作の既往
②子宮内癒着 子宮内膜炎の既往
③子宮発育不全

月経の持続期間の異常

過長月経・過少月経

過長月経は過多月経と、過短月経は過少月経と疾患が類似している。

月経周期の異常

無月経(生理的無月経は除く)

原発 続発
視床下部性 Kallmann症候群
Prader-Willi症候群
Chiari-Frommel症候群
体重減少性無月経
下垂体性 先天性ゴナドトロピン欠損症 Sheehan症候群
リンパ球性下垂体炎
高PRL血症(プロラクチノーマ)
卵巣性 Turner症候群 早発卵巣不全(早発閉経)
子宮性 MRKH症候群※(子宮+腟欠損)
子宮形態異常
Asherman症候群(子宮腔癒着症)
子宮内膜炎による癒着
膣性 処女膜閉鎖症
その他 副腎性器症候群
アンドロゲン不応症
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
放射線、ストレス、肥満

※MRKH症候群=メイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群

無月経

生理的無月経 初経前、閉経後、妊娠、産褥、授乳期
病的無月経 原発無月経:18歳を過ぎても初経なし(卵巣性が最多)
続発性無月経:90日以上月経が停止(視床下部性が最多:体重減少が約半数)

【原因部位】

原発 続発
視床下部性 Kallmann症候群(GnRH産生障害嗅覚異常
Prader-Willi症候群(GnRH合成異常+筋緊張低下)
Chiari-Frommel症候群(分娩後の高PRL血症)
体重減少性無月経(病識がない場合は神経性食欲不振症)
下垂体性 先天性ゴナドトロピン欠損症 Sheehan症候群(分娩時大量出血)
リンパ球性下垂体炎(妊娠後期の発症)
高PRL血症(プロラクチノーマ)
卵巣性 Turner症候群 早発卵巣不全(早発閉経)
子宮性 MRKH症候群※(子宮+腟欠損)
子宮形態異常
Asherman症候群(子宮腔癒着症)
子宮内膜炎による癒着
膣性 処女膜閉鎖症
その他 副腎性器症候群
アンドロゲン不応症
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
薬剤性高PRL血症
原発性甲状腺機能低下症(高PRL血症)
放射線、ストレス、肥満

※MRKH症候群=メイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群

【原発無月経の鑑別】

原発無月経は遺伝的要因が多く、家族歴・血縁者の月経状況・身体的特徴を確認すること!

①外性器の診察 <男性型に近い>
副腎性器症候群
<膣の異常>
処女膜閉鎖症、MRKH症候群
<子宮膣部がない>
アンドロゲン不応症、MRKH症候群
②染色体検査 <45Xなどの異常>
Turner症候群
③血中LH、FSH <高値>
卵巣性無月経:卵巣形成不全
<低値〜正常>
視床下部性無月経:Kallmann症候群、Prader-Willi症候群
下垂体性無月経:先天性ゴナドトロピン欠損症
④上記の<低値〜正常>の場合、重症度の評価を行う <ゲスターゲン試験で消退出血あり>
第1度無月経
<エストロゲン+ゲスターゲン試験で消退出血あり>
第2度無月経
<上記2つで消退出血なし>
子宮性無月経

【続発無月経の鑑別】

続発無月経は排卵障害が原因の場合が多い。

①PRL測定 <PRL高値>
高PRL血症(プロラクチノーマ、Chiari-Frommel症候群など)
②血中LH、FSH測定 <LH、FSH高値>
卵巣性無月経:早発閉経
<LH高値、FSH正常>
PCOS
③GnRH試験(②でLH、FSH正常) <反応あり>
視床下部性無月経:体重減少性、ストレス(心因性)→腋毛・恥毛の脱落なし
<反応なし>
下垂体性無月経:Sheehan症候群→腋毛・恥毛の脱落あり
④障害部位が絞れたら、重症度の評価を行う <ゲスターゲン試験で消退出血あり(E分泌あり・P分泌なし)>
第1度無月経(子宮内膜の増殖あり):多くは視床下部性
<エストロゲン+ゲスターゲン試験で消退出血あり(E・P分泌なし)>
第2度無月経(子宮内膜の増殖なし):卵巣性、下垂体性、視床下部性
<上記2つで消退出血なし>
子宮性無月経:Asherman症候群など

【無月経の治療法】

挙児 第1度無月経(P分泌なし) 第2度無月経(E・P分泌なし)
希望
あり
排卵誘発法 クロミフェン療法※※※
(↑視床下部に対する抗E作用によりGnRH分泌促進)
ゴナドトロピン皮下注療法
(↑直接卵巣に作用するhMG-hCG療法※※など)
希望
なし
ホルモン療法※ ゲスターゲン(P)投与
(Holmstrom療法)
↑消退出血を起こせるようになる
前半E投与→後半E+P投与
(Kaufmann療法)
↑次周期の自然排卵を期待

※第1度無月経はエストロゲン依存性腫瘍(子宮体癌・乳癌)のリスクを低下させる目的として、第2度無月経は骨量維持・女性らしさを目的としてホルモン療法を行う。
※※hMG-hCG療法はゴナドトロピン療法の一つ(エッチな漫画とCGでゴー):hMGはFSH作用により卵胞発育、hCGはLH作用により排卵を誘発する。
※※※クロミフェンは抗E作用を有するので、排卵はさせても頸管粘液の粘稠度が低下しない。そのため、不妊治療の成績が満足いかないことがある。

頻発月経

ほとんどの場合は無排卵周期による破綻出血

排卵性 黄体機能不全
非排卵性

稀発月経

①無排卵周期症
②PCOS
③高PRL血症
④甲状腺機能低下症
⑤甲状腺機能亢進症
⑥肥満

多嚢胞性卵巣症候群 PCOS:Polycystic ovary syndrome

病態 視床下部-下垂体-卵巣系の異常により、LH優位や莢膜細胞におけるアンドロゲン過剰産生が生じる。また、糖代謝異常により肥満やインスリン抵抗性も生じる。
症状 初経から続く月経不順(希発月経)・無月経:約50%は無月経(BBT1相性)
②多毛・ニキビなどの男性化徴候(約25%):アンドロゲン過剰による
不妊:LHが常に高くLHサージが起こらないため無排卵となる
検査 【血液検査】
LH↑FSH正常(LH/FSH比↑)or テストステロン↑、GnRH負荷でLH過剰↑
【画像検査】
経腟エコー:両側卵巣のネックレスサイン(両側性に肥厚した卵巣白膜の下に多数の卵胞の嚢胞状変化)
【ゲスターゲン試験】
無月経の場合、ゲスターゲン投与で消退出血を認める(第1度無月経)
治療 【生活指導】
肥満の場合はまず減量(インスリン抵抗性を改善し排卵誘発)
【薬物療法】
挙児希望なし:無月経の治療法と同様(子宮体癌リスク↓)
挙児希望あり:無月経の治療法と同様(OHSSと多胎妊娠に注意!)
【手術療法】
腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD):クロミフェン抵抗性の場合に実施。肥厚した卵巣白膜を焼灼して排卵促進+莢膜細胞ダメージによるアンドロゲン産生を↓させる

不正性器出血

不正性器出血は月経以外の時期の出血全般を指す。このうち、異常子宮出血(AUB)は、不正性器出血から妊娠性出血と膣や子宮膣部の病変を除外した、子宮頸管または子宮内腔からの出血を指す。

世代別の不正性器出血の鑑別

思春期 機能性出血 ホルモンバランス不安定、多くが無排卵性出血でBBT低温1相性
AUB 未分化胚細胞腫のhCG産生に伴う出血、顆粒膜細胞腫のエストロゲン産生に伴う仮性早発思春期などの可能性
性成熟期 妊娠 妊娠性出血
異所性妊娠 無月経に続く出血(妊娠初期の異常)
流産 無月経に続く出血(妊娠初期の異常)
胞状奇胎 無月経に続く出血(妊娠初期の異常)
性交後出血 子宮頸部浸潤癌
子宮腺筋症 月経過多、月経痛
子宮筋腫 月経過多、月経痛
子宮内膜増殖症
更年期 機能性出血 ホルモンバランス不安定、多くが無排卵性出血でBBT低温1相性
老年期 子宮体癌 子宮体癌患者の90%以上に認められ、初期症状として大事
萎縮性腟炎

不正性器出血の診察

①妊娠の有無を確認 陽性の場合、妊娠を契機とした出血
②出血部位の同定 膣や子宮膣部からの出血の場合、その鑑別を行う
①不正性器出血 or 水様性帯下、②下腹部痛、③腹部腫瘤の3徴がある場合は卵管癌の可能性があり、CA125の上昇を認め、画像ではソーセージ様腫瘤像を認める。
③AUBの評価 妊娠性出血、膣や子宮膣部からの出血を除外したら、子宮頸管や子宮内腔からの出血(AUB)と判断し、経膣エコーなどを用いて器質性疾患の有無を評価する。

不正性器出血の治療

器質性疾患 その疾患に基づいた治療
機能性疾患による子宮出血 ノルゲストレル・エチニルエストラジオール配合錠(プラノバール®)
機能性の月経過多 トラネキサム酸

月経困難症(いわゆる月経痛)

病態 月経に随伴して起こる病的症状により日常生活に支障をきたす病態。
子宮内膜症は冠動脈疾患や動脈硬化と関連が、卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)は上皮性卵巣悪性腫瘍と関連が示唆されているため積極的な治療が必要である。
分類 機能性:10代後半〜20代前半以降に多い>
明らかな器質性疾患を有せず、排卵性月経に伴って生じる。プロスタグランジンF2α過剰産生による子宮平滑筋の過収縮、心因性因子などが原因。機能性では、月経ごとに痛みの程度と持続日数は異なる傾向。
器質性:30歳以降に多い>
原因となる器質性疾患があり、無排卵月経でも生じる。子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、クラミジア感染、子宮形態異常などが原因。器質性は毎月症状がある。
症状 月経開始直前から月経中にかけて、
下腹部痛、腰痛:PGによる子宮平滑筋の過収縮、器質性疾患による増悪
鎮痛薬の使用頻度からも月経痛の程度を推測する
②随伴症状:頭痛、悪心、気分変調、下痢、便秘など
※不正性器出血があるか確認し、あれば不正性器出血の精査をする
検査 経膣エコー:正常所見なら機能性
血液検査:子宮内膜症ならCA125↑
治療 機能性:NSAIDs、ブチルスコポラミン、LEP、LNG-IUS(子宮内膜増殖抑制)
器質性:原疾患の治療、LEP、LNG-IUS、GnRH agonist/antagonist

月経前症候群 PMS:Premenstrual syndrome

病態 別名、月経前緊張症(PMT)。
月経前3〜10日(黄体期)の間に多彩な症状が出現し、月経発来とともに減退・消失する。
症状 精神症状:イライラ、抑うつ、易興奮性
身体症状:乳房痛、腹部膨満感、頭痛、顔面や四肢の浮腫
検査
治療 対症療法

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)

低用量ピル(LEP:Low dose Estrogen-Progestin) 月経困難症などの疾患の治療に用いる
ピル(OC:oral contraceptive) 避妊を目的とした自費診療に用いる

ピルの慎重投与と禁忌

主なピル製剤

特徴
ヤーズ®配合錠 月経前不快感気分障害(PMDD)に有効であり、月経前症候群(PMS)への効果も期待できる。
ドロスピレノン 抗アンドロゲン作用を持つため尋常性ざ瘡(ニキビ)に悩んでいる人に好まれる。また、多毛症が見られるPCOS患者の月経周期を整える場合にも適している。

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