せん妄の対応
せん妄とは
| 概念 | 病気・薬剤・環境変化などによる心身への負担が引き起こす可逆性の急性脳機能低下。脳の機能がもともと低下している認知症患者や高齢者に起こりやすい。また、夜間に悪化しやすい。 |
| 予後 | せん妄が生じた高齢者は1/3が24時間以内に、1/3が2ヶ月以内に改善するが、残り1/3は2ヶ月後も症状が残存する。 |
| 対応 | せん妄はライン抜去や転倒などのリスクがあり、安全を確保するため薬物療法、誘因の除去、環境整備を行う。 |
| 注意点 | せん妄は状態が悪い時に起こりやすいが、落ち着いている患者で突然発症する場合は何か新規の原因が加わっていることが多く、感染症・脳血管障害・薬剤性・電解質異常・血糖異常などが重要な原因となる。 |
| 認知症との違い | せん妄は急性の病態、認知症は慢性の病態 |
| 不穏との違い | せん妄は以下に該当する意識障害の一種、不穏は落ち着きがない行動の異常 |
| うつ病との違い | 低活動型せん妄は日内変動あり、うつ病は一日中症状あり |
入院時はせん妄ハイリスク患者か確認
背景因子や誘因が多くあるほどせん妄リスクが高く、積極的に治療介入
| 背景因子 | 誘因(促進因子・直接因子) |
| ・高齢(70歳以上) ・脳器質的障害 ・脳血管疾患の既往歴 ・認知症 ・アルコール多飲 ・せん妄の既往歴 ・視力障害、聴力障害 ・低栄養状態 ・ADL低下した患者 ・うつ病 |
●症状 感染症、発熱疼痛、低酸素血症、高CO2血症、尿閉、頻尿、夜間尿、便秘、脱水症、電解質異常、酸塩基平衡異常、血糖異常、悪性腫瘍、脳血管障害、心不全、呼吸不全、肝不全、腎不全、骨折・外傷 ●リスクとなる薬剤 BZ系、ステロイド、オピオイド、抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、抗パーキンソン病薬、三環系抗うつ薬 ●その他 ICU管理、全身麻酔術前後、身体抑制、モニター管理中、尿道カテーテル、点滴ライン中、終末期、施設入所者 |
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1つ以上該当するハイリスクの場合は環境整備を行う
【1分間動物スクリーニング(入院時に行う)】
「1分間でできるだけ多くの動物の名前を言ってください」
13匹以上で健常老年者、12匹以下でアルツハイマー型認知症の可能性
| ・昼夜のリズムをつける |
| ・カーテンを開けて景色が見えるようにして1日のサイクルを明確にする |
| ・カレンダー、時計などを置き、日時を明確にする |
| ・日中の覚醒を促し、リハビリなど活動度を高める |
| ・適切な排泄リズムを作る |
| ・メガネや補聴器を使用するなど視聴覚機能を整える |
| ・自宅の物を増やし、家族の写真を配置するなど、リラックスできる環境を作る |
| ・家族が付き添うなどして、継続的なコミュニケーションをとる |
| ・不要なデバイスは抜去する |
| ・不快な症状を積極的に緩和する |
| ・せん妄を悪化させる薬剤などを漸減・中止・変更する |
せん妄の予防薬
| 処方例① | ラメルテオン8mg 1錠 1日1回就寝前 |
| +不眠時 トラゾドン25mg 1錠 頓服 1日3回まで | |
| 処方例② | レンボレキサント5mg 1錠 1日1回就寝前 |
| +不眠時 トラゾドン25mg 1錠 頓服 1日3回まで | |
| 処方例③ | トラゾドン25mg 1錠 1日1回就寝前 |
| +不眠時 トラゾドン25mg 1錠 頓服 1日3回まで |
せん妄の種類と症状
24時間以内に過活動型と低活動型が交互に存在する混合型(1/3)もある。
| 過活動型(1/3) | 低活動型(1/3) | |
| 症状 | ・落ち着きのなさ、不穏 ・過覚醒、不眠 ・焦燥感 ・幻覚、妄想 ・興奮、易怒性、徘徊 |
・傾眠 ・無気力、活動性低下 ・自発運動低下 ・発語減少 ・食事摂取量低下 |
| 鑑別 | ・統合失調症 ・レストレスレッグス症候群 ・アカシジア |
・うつ病 ・認知症 |
せん妄を疑ったらスクリーニング(3D-CAM)
| ①見当識障害 | ・意識レベルの低下ではなく、意識変容が前面に出ることが多い ・時間→場所→人物の順に障害される 「今お昼か夜かわかる?」「ここどこかわかる?」「私誰かわかる?」 |
| ②注意力低下 | ・話に集中できない、会話の内容を覚えていない、怒りっぽい 「4つの数字の逆唱」「曜日の逆唱」 |
| 以上が急性に出現し、日内の変動が大きい場合はせん妄の可能性が高い ※普段の様子を知らない場合は看護師や家族などに普段の様子を確認する |
せん妄による不穏への対応(薬物療法)
低活動型せん妄は薬剤の効果が乏しく、環境整備を行い徐々に改善させるしかない場合が多い
せん妄症状が強い場合・夜間の場合は以下の鎮静剤を使用する
(抗精神病薬はQT延長がない、低K血症、低Mg血症がないことを確認して使用)
難治例では睡眠薬を併用して鎮静、それでも難しく安全を確保できなければICUで鎮静療法
| 内服できない場合 | |
| ①ハロペリドール (セレネース®) |
・QT延長に注意、パーキンソン病や重症心不全に禁忌 ・効果発現早い、半減期は14時間で作用遷延のリスクあり ・鎮静作用もあるが、抗幻覚作用が主 |
| 例)ハロペリドール2.5mg(0.5A)+生食100mL 100mL/hrで点滴 | |
| 例)ハロペリドール2.5mg筋注(必要に応じて30〜60分毎に投与) | |
| ②クロルプロマジン (コントミン®) |
・鎮静作用は強いが、半減期30時間と長く日中に眠気が残りやすい ・血圧低下することがあるためバイタル不安定な人には使わない ・口渇や便秘を起こしうる |
| 例)クロルプロマジン25mg+生食50mLを点滴 | |
| ③ブロナンセリン (ロナセン®) |
ブロナンセリンテープ 1回20mg 夕〜朝まで貼付 |
| 内服可能な場合(糖尿病なし) | |
| ①クエチアピン (セロクエル®) |
・1〜2時間で効果なければ追加投与可(100mg/日以内) ・MARTAであり抗幻覚/鎮静/抗不安作用を持つ ・効果発現まで1時間、半減期は4時間程度 ・パーキンソン病で使用=錐体外路障害が少ない(12.5mgから) |
| 例)クエチアピン25mg(高齢者は12.5mgから)頓用 | |
| ②オランザピン | |
| 例)オランザピンOD錠 | |
| 内服できる場合(糖尿病あり) | |
| ③リスペリドン (リスパダール®) |
・内用液製剤は口腔粘膜から吸収される ・1時間で効果なければ追加投与可(3mg/日以内) ・Cmaxまで1時間、半減期は4時間程度 ・幻覚/妄想に強いが、鎮静作用は弱いので日中にも使いやすい ・液体のため味噌汁などに入れても可(お茶類・コーラは不可) |
| 例)リスペリドン内服液 0.5〜1mg 頓用 | |
| ④ペロスピロン |
せん妄への対応(せん妄の原因検索)
| ①意識障害 | 電解質異常、低血糖、薬剤性(抗コリン薬、抗ヒスタミン薬)を除外 |
| ②身体的苦痛 | ・疼痛、便秘、脱水、カテーテルなどデバイスによる苦痛の有無 ・低酸素:肺塞栓症に注意 ・離脱:アルコール離脱やBZ系離脱 ・感染症:発熱などバイタルなど総合して判断 |
| ③心血管系 | ・急性心筋梗塞や大動脈解離を除外 |
| ④環境変化 | ・環境整備 |
ICU患者のせん妄
記載途中・・・


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