糖尿病治療薬

薬理学

糖尿病薬の概要

    体重増加リスク 低血糖リスク
糖新生抑制薬 ビグアナイド薬
インスリン抵抗性改善薬 チアゾリジン薬
  テトラヒドロトリアジン系薬    
インスリン分泌促進薬 SU薬
  グリニド薬
  DPP-4阻害薬
  GLP-1作動薬
糖吸収排泄調節薬 α-GI
  SGLT-2阻害薬 低〜中

【使い分け】

第一選択薬 禁忌に該当しない限りビグアナイド薬(メトホルミン)
第二選択薬 決まったものはないが、DPP-4阻害薬が多い
非肥満者 DPP-4阻害薬、α-GI(非肥満者ではインスリン分泌不全が想定されるため)
減量が必要 GLP-1作動薬、SGLT-2阻害薬
心血管疾患の既往 GLP-1作動薬、SGLT-2阻害薬
心不全 SGLT-2阻害薬
CKD SGLT-2阻害薬(難しければGLP-1作動薬)
3剤以上の場合 3剤使用してコントロール困難な場合はインスリン製剤導入検討
BOT療法 基礎インスリン補充と経口血糖降下薬を併用する治療法

ビグアナイド薬

作用機序 ①インスリン抵抗性改善作用
②血糖降下作用:肝で糖新生抑制+筋への糖取り込み促進+消化管から糖吸収抑制により血糖値を低下させる
副作用 ①下痢などの消化器症状:乳酸アシドーシスの初期症状ではないもの
乳酸アシドーシス:ビグアナイド薬が肝ミトコンドリア細胞膜に結合し、酸化的リン酸化を阻害し、乳酸からの糖新生を抑制して乳酸値が上昇する。特に、乳酸は肝臓で代謝されるため大量飲酒や肝機能障害があると乳酸アシドーシスが生じやすい。定期的に血清乳酸値と血清pHを確認する。初期症状は悪心嘔吐・下痢・腹痛などの消化器症状。
注意点 ヨード造影剤使用前後は投与禁忌(ヨード造影剤と併用するとビグアナイド薬が蓄積して乳酸アシドーシスが生じやすいため、検査当日と造影剤投与2日前後の合計5日間は原則休薬)
②その他の休薬:シックデイ、予定手術の周術期、腎機能障害、肝機能障害

一般名 先発名 特徴
メトホルミン メトグルコ
グリコラン
【利点】ブホルミンより乳酸アシドーシスの発現少ない。
【ADME】腎排泄型なので、eGFR30未満には投与しない。
ブホルミン ジベトス SU剤が使用できない場合のみに使用する(だからあまり使われない)

チアゾリジン誘導体

作用機序 ①インスリン抵抗性改善作用
②PPARγを刺激してアディポネクチンを増加させ、TNF-αと遊離脂肪酸を減少させる
禁忌 心不全
副作用 ①体重増加:服用開始1年後からは不変
浮腫・心不全:服用開始1〜2ヶ月後に好発、顔面・下肢に好発
③骨粗鬆症:閉経後は骨密度フォロー
膀胱癌のリスク増加
一般名 先発名 特徴
ピオグリタゾン アクトス錠 男女で投与量異なる(女性は浮腫の発現頻度が高いため)

テトラヒドロトリアジン系薬(グリミン)

作用機序  
副作用 ①消化器症状:特にビグアナイドとの併用で消化器症状が増加
②SU剤との併用で低血糖
一般名 先発名 特徴
イメグリミン ツイミーグ  

スルホニル尿素薬

SU剤=持続型インスリン製剤の内服版

作用機序 膵β細胞のSU受容体に結合し、ATP感受性Kチャネルを遮断しインスリン分泌を促進する。
副作用 ①体重増加
②遷延性低血糖:作用時間が長いため高齢者などは極力使わない

第1世代

一般名 先発名 特徴
グリクロピラミド デアメリンS  
アセトヘキサミド ジメリン  
クロルプロパミド  

第2世代

一般名 先発名 特徴
グリクラジド グリミクロン  
グリベンクラミド オイグルコン
ダオニール
SU剤の中で最も強力。長時間作用型。
【欠点】低血糖を起こしやすい。

第3世代

一般名 先発名 特徴
グリメピリド アマリール 長時間作用型
【利点】筋・脂肪・肝でのインスリン感受性を増強させる。

速効性インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

速効型インスリン分泌促進薬=速効型インスリン製剤の内服版

作用機序 SU剤と同じ。ただし、効果発現は早く持続時間は短いため食後高血糖の是正に使用される(食直前服用)。
副作用 ①体重増加
②低血糖
一般名 先発名 特徴
ナテグリニド ファスティック
スターシス
 
ミチグリニド グルファスト  
レパグリニド シュアポスト  

インクレチン関連薬

DPP-4阻害薬

作用機序 ①血糖降下作用:DPP-4を阻害しインクレチンの濃度を高め、インスリンの作用を増強させる。
副作用 ①SU剤との併用で低血糖
②胃腸障害
③急性膵炎、心不全
④自己免疫疾患
代謝 ●腎排泄型
シタグリプチン、アログリプチン、アナグリプチン、サキサグリプチン、トレラグリプチン、オマリグリプチン
●肝代謝型
ビルダグリプチン、テネリグリプチン
●胆汁排泄型
リナグリプチン
一般名 先発名 特徴
シタグリプチン ジャヌビア
グラクティブ
 
ビルダグリプチン エクア 【欠点】重症の肝機能障害患者に禁忌
アログリプチン ネシーナ  
リナグリプチン トラゼンタ 【利点】腎機能低下患者にも減量の必要なし
テネリグリプチン テネリア 【利点】腎機能低下患者にも減量の必要なし
アナグリプチン スイニー  
サキサグリプチン オングリザ  
トレラグリプチン ザファテック 1週間に1回服用
オマリグリプチン マリゼブ 1週間に1回服用

GLP-1受容体作動薬

作用機序 ①血糖降下作用:膵β細胞膜上のGLP-1受容体に結合し、血糖依存的にインスリン分泌を促進させる。また、胃内容排出抑制作用があり、空腹時血糖値と食後血糖値を両方低下させる。
②体重減少作用:インスリンによる食欲亢進を抑制
副作用 ①胃腸症状:悪心嘔吐
②急性膵炎
一般名 先発名 特徴
リラグルチド ビクトーザ皮下注 長時間作用型(空腹時高血糖改善)
エキセナチド バイエッタ皮下注
ビデュリオン皮下注
短時間作用型(食後高血糖改善)
長時間作用型(週1回注射)
リキシセナチド リキスミア皮下注 短時間作用型(食後高血糖改善)
デュラグルチド トルリシティ皮下注アテオス 長時間作用型(空腹時高血糖改善)
セマグルチド オゼンピック皮下注 長時間作用型(空腹時高血糖改善)

αグルコシダーゼ阻害薬

作用機序 αグルコシダーゼ(マルトース)を阻害し、小腸での糖の吸収を遅らせることで食後高血糖を是正する(食直前服用)。
副作用 ①消化器症状:腹部膨満感、放屁、便秘、下痢、食欲不振など
注意 他の糖尿病薬と併用時に低血糖を起こした場合はブドウ糖を服用する
一般名 先発名 特徴
ボグリボース ベイスン 0.2mgには「2型DMの発症抑制」の適応がある。
アカルボース グルコバイ 【利点】αアミラーゼ阻害作用もあるため血糖降下作用が強い。心血管系イベントや高血圧の発症予防がある。
ミグリトール セイブル 【欠点】ラクターゼ阻害+トレハラーゼ阻害作用もあるため下痢・鼓腸になりやすい。

SGLT2阻害薬

作用機序 ①血糖降下作用:近位尿細管のSGLT2を阻害しブドウ糖の再吸収を減少させ、尿中に糖を排泄させる
②体重低下作用
③腎保護作用
副作用 ①多尿・口渇:尿浸透圧↑による脱水(飲水摂取不安定な患者には慎重投与)
②尿路感染症
③血糖正常アシドーシス
④サルコペニア
一般名 先発名 特徴
イプラグリフロジン スーグラ  
ダパグリフロジン フォシーガ DMではない心不全も改善
ルセオグリフロジン ルセフィ  
トホグリフロジン デベルザ
アプルウェイ
 
カナグリフロジン カナグル  
エンパグリフロジン ジャディアンス  

配合剤

一般名 先発名 特徴
ピオグリタゾン+メトホルミン メタクト配合錠  
ピオグリタゾン+グリメピリド ソニアス配合錠  
ピオグリタゾン+アログリプチン リオベル配合錠  
ミチグリニド+ボグリボース グルベス配合錠  
ビルダグリプチン+メトホルミン エクメット配合錠  
アログリプチン+メトホルミン イニシンク配合錠  
アナグリプチン+メトホルミン メトアナ配合錠  
テネリグリプチン+カナグリフロジン カナリア配合錠  
シタグリプチン+イプラグリフロジン スージャヌ配合錠  
エンパグリフロジン+リナグリプチン トラディアンス配合錠  
インスリンデグルデク+リラグルチド ゾルトファイ配合注フレックスタッチ  

アルドース還元酵素阻害薬

一般名 先発名 特徴
エパルレスタット キネダック 食前服用(食後高血糖時とCmaxが重なるように)

糖尿病神経障害治療薬

一般名 先発名 特徴
メキシレチン メキシチールCP 不整脈薬を参照

ソマトメジンC

一般名 先発名 特徴
メカセルミン ソマゾン注射  

高インスリン血性低血糖治療薬

一般名 先発名 特徴
ジアゾキシド ジアゾキシドCP  

脂肪萎縮症治療薬

一般名 先発名 特徴
メトレレプチン  

コメント

タイトルとURLをコピーしました