消化器薬・痔治療薬

薬理学

プロトンポンプ阻害薬(PPI)

第一世代PPI(〜プラゾール)

作用機序 プロドラッグが胃酸によって活性化され、小腸で吸収された後血流に乗って壁細胞のH/K-ATPaseに非可逆的に結合する(細胞内側から作用するため作用発現まで約6時間以上かかる)。そのため、半減期は1〜2時間であるが、酸分泌阻害時間は24時間以上である。
注意点 全て肝代謝型であり、遺伝的多型による個人差に注意が必要(逆に腎機能障害の場合は投与量調整の必要がない)。
酸に不安定であるため全て腸溶性製剤。
胃潰瘍は8週間、十二指腸潰瘍は6週間など投与期間制限がある(ただし、維持療法の場合は投与期間制限なし)。
一般名 先発名 特徴
オメプラゾール
(OPZ)
オメプラール錠
オメプラゾン錠
【ADME】CYP2C19の寄与率が高く、遺伝的多型によりCmaxに個人差が出る。
ランソプラゾール
(LPZ)
タケプロンOD錠 【ADME】CYP2C19の寄与率が高く、遺伝的多型によりCmaxに個人差が出る。
ラベプラゾール
(RPZ)
パリエット錠 第一世代PPIの中で最もH/K-ATPase阻害作用が強い。
エソメプラゾール ネキシウムCP OPZのS体。NSAID服用時の消化性潰瘍予防の適応。
【ADME】CYP2C19の寄与率が低く、遺伝的多型による個人差が少ない。

第二世代PPI(K競合型Acid Blocker:P-CAB)

作用機序 H/K-ATPaseのKイオンと競合的に作用することで可逆的に阻害する。
注意点 非びらん性胃食道逆流症の適応なし
一般名 先発名 特徴
ボノプラザン タケキャブ錠 ピロリ菌除菌率が高い。
【利点】腸溶性製剤ではなく、酸による活性化も不要であり作用発現が早い。酸に対して安定であり長時間残存して胃酸生成を抑制するため、第一世代よりも強力かつ持続的に酸分泌を抑制する。
【ADME】CYP3A4で代謝されるため、遺伝的多型による個人差が少ない。

H2受容体拮抗薬(〜チジン)

作用機序 壁細胞のH2遮断により胃酸分泌を抑制する。夜間の胃酸分泌は抑制するが、日中の食事による胃酸分泌を抑制する作用はイマイチ。
注意点 腎排泄型(ラフチジンを除く)のため高齢者や腎機能障害患者に注意が必要
一般名 先発名 特徴
シメチジン タガメット
カイロック
【ADME】CYP3A4・CYP2D6阻害作用があり併用禁忌薬が多数ある。
ラニチジン ザンタック錠  
ファモチジン ガスターOD錠 H1遮断薬と併用して痒み止めとして使用されることもある。
ロキサチジン アルタット  
ニザチジン アシノン錠  
ラフチジン プロテカジン錠 肝代謝型のため基本的に腎機能障害患者にも投与量調節は不要。

選択的ムスカリン受容体拮抗薬

一般名 先発名 特徴
ピレンゼピン 選択的M1遮断薬。
【欠点】口渇の副作用あり。
チキジウム チアトンCP 選択的M3遮断して消化管運動を抑制し、痙攣性疼痛を緩和する。
【禁忌】
①閉塞隅角緑内障(開放型は慎重投与)、②前立腺肥大など
【副作用】
口渇、便秘、羞明など抗コリン作用

三級アミン合成抗コリン薬

一般名 先発名 特徴
ピペリドレート ダクチル錠  

四級アンモニウム塩合成抗コリン薬

一般名 先発名 特徴
ブチルスコポラミン ブスコパン錠  
ブトロピウム コリオパン  
チメピジウム セスデンCP  
プロパンテリン プロ・バンサイン錠  
N-メチルスコポラミン ダイピン錠  

ベラドンナアルカロイド

一般名 先発名 特徴
ロートエキス  
アトロピン  

制酸薬

作用機序 弱塩基性の薬物が胃酸を中和する。
注意点 Mg・Alは腎で再吸収・排泄されるため腎不全患者への長期投与は避ける。テトラサイクリン系、フルオロキノリン、イトラコナゾール、鉄剤と併用する場合は2時間以上投与間隔をあける。
一般名 先発名 特徴
炭酸水素Na 重曹  
沈降炭酸Ca   【副作用】げっぷ増加、高Ca血症
合成ケイ酸Al    
乾燥水酸化Al   【特徴】止瀉作用を併せ持つ
水酸化Mg ミルマグ錠 【特徴】緩下作用を併せ持つ

Hピロリ除菌薬(PPI+アモキシシリン+α)

PPIは胃内pHを上昇させ胃内での抗菌薬の安定性や除菌作用を高める目的で用いる。

一般名 先発名 特徴
LPZ+アモキシシリン+クラリスロマイシン ラベキュアパック 1次除菌
ボノプラザン+アモキシシリン+クラリスロマイシン ボノサップパック 1次除菌
LPZ+アモキシシリン+メトロニダゾール ラベファインパック 2次除菌
ボノプラザン+アモキシシリン+メトロニダゾール ボノピオンパック 2次除菌

PGE1製剤

一般名 先発名 特徴
ミソプロストール サイトテック錠 NSAIDsによる潰瘍予防として使用
【機序】粘液・重炭酸の分泌刺激+粘膜血流増加
※欧米では経口流産薬として使用されている。

防御因子増強薬

一般名 先発名 特徴
スクラルファート アルサルミン 潰瘍部に保護膜を形成し病巣部を保護する。
【欠点】Alを含むため腎不全患者への長期投与は避ける。
エカベトNa ガストローム顆粒  
テプレノン セルベックスCP 胃粘液増加作用
レバミピド ムコスタ錠 胃粘膜のPG増加作用+フリーラジカル抑制作用
メチルメチオニンスルホニウム キャベジンU  
L-グルタミン  
アズレンスルホン酸Na アズノール錠  
アルジオキサ  
セトラキサート ノイエル  
ソファルコン ソロン  
アルギン酸Na アルドイドG  
トロキシピド アプレース  
ベネキサート ウルグートCP
ロンミールCP
 
ポラプレジンク プロマック顆粒 亜鉛+L-カルノシン製剤
イルソグラジン ガスロンN錠  
エグアレン アズロキサ  

防御因子配合剤

一般名 先発名
アズレン+L-グルタミン マーズレンS配合顆粒、マーズレンES配合錠
水酸化Al+水酸化Mg
ジサイクロミン+酸化Mg+乾燥水酸化Al コランチル配合顆粒
メチルメチオニンスルホニウム+メタケイ酸アルミン酸Mg+沈殿炭酸Ca+炭酸Mg キャベジンU配合散

アセチルコリン作動薬

一般名 先発名 特徴
アクラトニウム アボビスCP  
カルニチン エントミン注  

ドパミン受容体拮抗薬

一般名 先発名 特徴
メトクロプラミド プリンペラン錠 D2遮断+5-HT3遮断+5-HT4刺激によって
食前投与
【副作用】軽度脂溶性のため長期投与で錐体外路症状
ドンペリドン ナウゼリン錠 D2遮断により胃コリン作動性神経の抑制を解除し、胃運動を促進させる。また、CTZのD2遮断により制吐作用を示す。BBBを通過しにくいため錐体外路障害少ない
食前投与
イトプリド ガナトン錠 【機序】D2遮断+ChE阻害によって

オピアト作動薬

一般名 先発名 特徴
トリメブチン セレキノン錠 消化管運動亢進している腸管を抑制し、逆に運動低下している腸管は亢進させる作用がある。

5-HT4受容体部分作動薬

一般名 先発名 特徴
モサプリド ガスモチン錠 5-HT4刺激によりコリン作動性神経からACh放出を促進し、消化管運動を促進する。

機能性ディスペプシア治療薬

一般名 先発名 特徴
アコチアミド アコファイド錠 【機序】コリンエステラーゼ阻害によって、
胃運動促進し上腹部膨満感を改善する。

肥満症治療薬

一般名 先発名 特徴
マジンドール サノレックス錠  

腸機能抑制薬

腸運動抑制薬

一般名 先発名 特徴
ロペラミド ロペミンCP  

収斂薬

一般名 先発名 特徴
タンニン酸アルブミン
ゲンノショウコ
【機序】腸でタンニン酸を遊離し収斂作用示す
ビスマス製剤 次硝酸ビスマス末
次没食子ビスマス末
【機序】びらん・潰瘍を包み込み、
消化管粘膜を保護する。
【注意】腎不全患者への長期投与は避ける。

吸着薬

一般名 先発名 特徴
ケイ酸Al アドソルビン原末 【機序】消化管内の有害物質・過剰の水分を吸着除去

殺菌薬

一般名 先発名 特徴
ベルベリン フェロベリン  

活性生菌製剤

各菌の特性は乳酸菌群を参照。

一般名 先発名 特徴
ラクトミン+糖化菌 ビオフェルミン配合散 乳酸などを産生
ビフィズス菌 ラックビー錠 乳酸・酢酸を産生
ラクトミン+ビフィズス菌 ビオスミン配合散
宮入菌 ミヤBM錠 酪酸を産生
ラクトミン+宮入菌 ビオスリー配合錠
耐性乳酸菌 エンテロノンR 抗菌薬存在下でも増殖可

乳糖分解酵素薬

一般名 先発名 特徴
βガラクトシダーゼ
(アスペルギルス)
ガランターゼ散  
βガラクトシダーゼ
(ペニシリウム)
ミルラクト細粒  

消化管ガス駆除薬

一般名 先発名 特徴
ジメチコン ガスコン錠 【機序】界面活性作用により消泡

過敏性腸症候群治療薬

一般名 先発名 特徴
ポリカルボフィルCa コロネル細粒
ポリフル細粒
【機序】水分を吸収・ゲル化し、
便の水分バランスを整える
メペンゾラート トランコロン錠 【機序】鎮痙、唾液分泌抑制
メペンゾラート+
フェノバルビタール
トランロコンP配合錠 【機序】
ラモセトロン イリボー錠 【機序】5-HT3受容体拮抗により腸管運動抑制
【欠点】男女で投与量異なるため注意
便秘、腹痛、血便、硬便の場合には虚血性腸炎や重篤な便秘が生じる場合があるため投与中止。

下剤、便秘薬

浸透圧性下剤

【塩類下剤】

一般名 先発名 特徴
酸化Mg マグミット錠 胃酸で活性化され、浸透圧によって便を柔らかくする。大量の水と共に服用すると効果的で習慣性が少なく長期使用が可能。8〜10時間後に作用発現する。
【欠点】高齢者や腎機能低下患者では高Mg血症に注意
硫酸Mg あまり使われない
マクロゴール400 モビコール配合内用剤 【機序】PEGの浸透圧により腸管内水分量増加。
【利点】吸収されないため腎機能低下患者にも使用可
【ADME】8〜10時間後に作用発現する。

【糖類下剤】

一般名 先発名 特徴
D-ソルビトール 消化管X線造影時に使用
ラクツロース モニラック原末/シロップ
ラグノスNFゼリー
未変化体のまま大腸に達し、浸透圧によって便を柔らかくする。また、腸内細菌のアンモニア発生を抑制し、高アンモニア血症を予防する。1〜3日後に作用発現する。

【浸潤性下剤】

一般名 先発名 特徴
ジオクチルソジウム 【機序】界面活性作用により

膨張性下剤

一般名 先発名 特徴
カルメロースNa バルコーゼ顆粒 腸管内で水分を吸収して膨張し、内容物を増大させて大腸に物理的刺激を与えて排便を促す。
【利点】軟便になって排泄されるため排便時の痛みが少ない。
【ADME】12〜24時間後に作用発現する。
ポリカルボフィルNa コロネル顆粒
ポリフル顆粒
同上
詳しくはIBS治療薬を参照。

小腸刺激性下剤

一般名 先発名 特徴
ヒマシ油 小腸でリシノール酸とグリセリンに分解され、それらが小腸を刺激し蠕動運動を活発にし、食中毒・消化管検査・手術による腸管内容物の除去に使用する。
【ADME】2〜6時間後に作用発現する。

大腸刺激性下剤

※アントラキノン系(センナ、アロエなど)を1年以上長期連用すると、大腸が全周性に黒色の色素沈着する(大腸メラノーシス、大腸黒皮症)。ただ、病的意義はない。

一般名 先発名 特徴
センナ アジャストA錠
アローゼン顆粒
腸内細菌によってレインアンスロンが生成し、大腸の粘膜を直接刺激して蠕動運動を促進
【欠点】長期連用により耐性が生じる。
【ADME】8〜10時間後に作用発現する。
センノシド プルゼニド錠 同上
ダイオウ  
大黄など セチロ配合錠 大黄+センナ+黄連+酸化Mg+硫酸Mg
ピコスルファートNa ラキソベロン内用液 腸内細菌のアリルスルファターゼによって生成するジフェノール体が大腸運動を促進。
【利点】大腸刺激性下剤の中では作用が比較的穏やかで、副作用や習慣性も少ない。
【ADME】7〜12時間後に作用発現する。
アロエ  
NaHCO3+
NaH2PO4
新レシカルボン坐剤 基材が体温で融解し、直腸内で炭酸ガスを発生して物理的刺激で排便を促す。
【ADME】15〜30分後に作用発現する。
ビサコジル テレミンソフト坐剤 直腸粘膜を直接刺激し、排便反射を起こす。
【ADME】5〜60分後に作用発現する。

上皮機能変容薬

一般名 先発名 特徴
ルビプロストン アミティーザCP 小腸のClチャネルを活性化し、腸液分泌促進させ便を柔軟化させる。
【欠点】PG誘導体のため妊婦に禁忌
【ADME】24時間後に作用発現する。
リナクロチド リンゼス錠 腸管上皮のGCを介してClチャネルを活性化し、腸液分泌促進させ便を柔軟化させる。また、放出されたcGMPが侵害受容器を阻害し、腹痛を改善させる。
【ADME】24時間後に作用発現する。下痢を避けるため食前に服用。

胆汁酸トランスポーター阻害薬

一般名 先発名 特徴
エロビキシバット グーフィス錠 回腸末端で胆汁酸の再吸収を阻害し、大腸内での水分分泌を促進する。
【ADME】5〜6時間後に作用発現する。下痢を避けるため食前に服用。

オピオイド誘発性便秘治療薬

一般名 先発名 特徴
ナルデメジン スインプロイク錠 末梢性μ受容体拮抗により便秘を改善する。
【ADME】5〜24時間後に作用発現する。

経口腸管洗浄剤

一般名 先発名 特徴
クエン酸Mg マグコロールP散  
電解質など ニフレック配合内用剤 NaCl+KCl+NaHCO3+無水硫酸Na
NaH2PO4 ビジクリア配合錠  
電解質など モビプレップ配合内用剤 NaCl+KCl+無水硫酸Na+マクロゴール4000+ビタミンC
ピコスルファートなど ピコプレップ配合内用剤 ピコスルファート+酸化Mg+無水クエン酸

浣腸剤

一般名 先発名 特徴
グリセリン 腸管壁の水分を吸収することにより局所を刺激し、軟便化する。

痔疾患治療薬

抗炎症薬

一般名 先発名 特徴
ブロメライン+
ビタミンE
ヘモナーゼ配合錠  
動物静脈血管叢エキス ヘモリンガル舌下錠  
ヒドロコルチゾン等 プロクトセディル軟膏 ヒドロコルチゾン+フラジオマイシン+ジブカイン+エスクロシド
ジフルコルトロン等 ネリプロクト軟膏 ジフルコルトロン+リドカイン

循環改善薬

一般名 先発名 特徴
トリベノシド ヘモクロンCP  
メリロートエキス  
トリベノシド+
リドカイン
ボラザG軟膏  

局所収斂薬

一般名 先発名 特徴
次没食子酸ビスマスなど ヘルミチンS坐剤 次没食子酸ビスマス+リドカイン+アミノ安息香酸エチル

肉芽形成促進薬

一般名 先発名 特徴
大腸菌死菌+
ヒドロコルチゾン
強力ポステリザン軟膏
ポステリザンF
 

内痔核治療薬

一般名 先発名 特徴
フェノール パオスクレー注  
硫酸Al・K水和物
タンニン酸
ジオン注  

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