麻薬性鎮痛薬、依存形成薬物

薬理学

オピオイド受容体

μ受容体 【μ1】鎮痛、縮瞳(耐性×)、腸管運動抑制(耐性×)、多幸感・依存、カタレプシー(脊髄に作用し躯幹筋の緊張増加=鉛管現象)
【μ2】呼吸抑制(呼吸中枢の抑制)
δ受容体 鎮痛、血圧低下(作用が弱い)
κ受容体 鎮痛、不快感、精神異常作用

麻薬性オピオイド

作用機序 モルヒネが肝臓で代謝されて生成するモルヒネ6グルクロナイド(M6G)が鎮痛活性を示す。そのため腎機能障害者ではM6Gの排泄が延長し作用が残存する。
副作用 【全て】便秘、悪心・嘔吐(1〜2週間で耐性できる)、眠気(3〜5日で耐性できる)
【モルヒネ】ヒスタミン遊離によって血圧低下や喘息誘発する。
【レミフェンタニルとフェンタニル】急速投与によって起こる腹部強直を鉛管様硬直といい、筋弛緩薬で治療する。

【オピオイド鎮痛薬の分類】

レスキュー薬は徐放剤1日量の1/6を目安に投与する。1時間間隔を空ければ何回でも追加投与可能。

徐放剤 持続痛に対し常時使用するベース薬(徐放剤)
速放剤 突出痛に30分以内に効くレスキュー薬(速放剤)
ROO製剤 急な突出痛に15分以内に効くレスキュー薬(速放剤)

モルフィナン系オピオイド

一般名 徐放性製剤(ベース) 速放性製剤(レスキュー)
効果発現時間30分程度
効果持続時間4時間程度
その他の製剤
モルヒネ塩酸塩 パシーフ オプソ内服液 アンペック坐薬
モルヒネ硫酸塩 MSコンチン
カディアン
MSツワイスロン
   
オキシコドン オキシコンチンTR オキノーム散
オキファスト
 
ヒドロモルフォン ナルサス ナルラピド ナルベイン注

フェニルピペリジン系オピオイド

フェンタニルはモルヒネの力価100倍。副作用として強い呼吸抑制、副交感神経刺激作用がある。循環抑制はない。肝臓で代謝され、代謝産物は鎮痛活性ない 。

一般名 徐放性製剤(ベース) 速放性製剤
(レスキュー)
ROO製剤(レスキュー)
効果発現時間15分程度
効果持続時間1~2時間程度
フェンタニル デュロテップパッチ
ワンデュロパッチ
フェントステープ
フェンタニルテープ
ラフェンタテープ
なし イーフェンバッカル錠
アブストラス舌下錠

【麻酔に使用するオピオイド】

麻酔科&麻酔薬を参照。

その他のオピオイド

メサドン メサペイン 消化管吸収率高く、半減期は長いが個人差が大きい。
強オピオイド使用で不十分な鎮痛に使用する
タペンタドール タペンタ 徐放性製剤。
μアゴニスト作用とノルアドレナリン再取り込み阻害作用を併せ持つ

天然アヘンアルカロイド

一般名 先発名 特徴
アヘン アヘンチンキ  
アヘン・トコン配合 ドーフル配合散  
アヘンアルカロイド パンオピン  

非麻薬性オピオイド

麻薬性オピオイドと併用すると拮抗薬として働くので併用禁忌!

ベンゾモルファン系

一般名 先発名 特徴
塩酸ペンタゾシン ソセゴン
ペルタゾン
μ受容体拮抗薬+κ受容体作動薬。
【欠点】鎮痛効果には天井効果がある。依存性はある。
ペンタゾシン ソセゴン注射液  
エプタゾシン セダペイン  

モルフィナン系

一般名 先発名 特徴
ブプレノルフィン塩酸塩 レペタン μ受容体部分作動薬
【利点】
【欠点】鎮痛効果には天井効果がある。受容体親和性が高いためナロキソンで拮抗されにくい
ブプレノルフィン ノルスパンテープ μ受容体部分作動薬。

その他のオピオイド

トラマドールはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用有し、代謝産物がμ受容体に作用。依存性が弱い。

一般名 徐放性製剤(ベース) 速放性製剤(レスキュー) その他の製剤
トラマドール ワントラム トラマール
トラムセット配合錠
なし

モルヒネ拮抗薬

麻薬過量投与時による呼吸抑制を解除できる。ただし、使用により急激な痛みを生じることがあるため注意して使用する。

一般名 先発名 特徴
ナロキソン μ・δ・κ拮抗薬。
レバロルファン ロルファン  

依存形成薬物

精神的依存・身体的依存・耐性

抗うつ薬・抗精神病薬は報酬系に作用しないため依存は生じない!

精神的依存 精神的に薬物に頼り、薬物に対する強い渇望と薬物探索行動を示す状態。
中脳辺縁ドパミン系報酬系と言われ、この神経系が活性化されると快感が引き起こされ精神的依存が形成される。中脳辺縁ドパミン系はグルタミン酸神経から興奮入力とセロトニン神経とGABA神経から抑制性調節を受けている。
【該当薬物】全ての依存性薬物
身体的依存 身体が薬物に適応した状態。休薬により退薬症状(離脱症状)が生じる。
【強】モルヒネ・コデイン・ヘロインなどのオピオイド・アヘン系
【弱】アルコール、バルビツール系、BZ系、ニコチン
耐性 薬物の効果が反復使用により減弱し、目的の効果を得るためには増量しなければならない現象。耐性には代謝耐性機能耐性がある。代謝耐性とは薬物によってCYPが誘導されて薬物の効果が減弱することで、機能耐性とは薬物の濃度に適応して受容体数が減少(down-regulation)・細胞内情報伝達系の抑制などが起こることである。
【該当薬物】コカイン・大麻を除く依存性薬物

【依存・耐性のまとめ】

薬物 分類 精神的依存 身体的依存 耐性
アヘン型・麻薬 ダウナー
アルコール ダウナー
バルビツール酸系 ダウナー
ベンゾジアゼピン系 ダウナー
覚せい剤 アッパー ×
コカイン アッパー × ×
ニコチン アッパー
LSD サイケデリック ×
有機溶剤 サイケデリック ×
大麻 サイケデリック × ×

中枢抑制薬

オピオイド

大麻類

作用機序 マリファナに含まれるカンナビノイド(主成分:テトラヒドロカンナビノール)はシナプス前膜のCB1受容体に結合し、神経伝達物質の遊離を抑制する。その結果、鎮静作用、鎮痛作用、食欲亢進、カタレプシーなどが生じる。
副作用 頻脈、高血圧、幻覚
効能  

バルビツール酸系

バルビツール酸系の作用機序と副作用を参照

アルコール依存症治療薬

アルコールの作用機序と中毒は中毒学を参照。

一般名 先発名 特徴
シアナミド シアナマイド ALDHを阻害してアセトアルデヒドによる不快な副作用を起こさせて断酒させる。最終飲酒から24時間経過してから服用する。
ジスルフィラム ノックビン シアナミドよりALDH阻害の特異性が低い。
アカンプロサート レグテクト NMDA受容体の部分アゴニスト作用によりグルタミン酸神経を抑制し、飲酒欲求を抑制する。また、GABA受容体にも作用する。
ナルメフェン セリンクロ オピオイド受容体に作用し、内因性オピオイドによって引き起こされる快・不快の情動を調節し、飲酒欲求を抑制する。

中枢興奮薬

覚せい剤(アンフェタミン、メタンフェタミン)

作用機序 モノアミントランスポーター阻害により中枢・末梢のシナプス間隙のカテコラミン・セロトニン濃度を上昇させる。特に、中脳辺縁ドパミン系のシナプス前膜に存在するドパミントランスポーターを阻害によって、シナプス間隙のドパミン濃度を上昇させ、気分高揚、多幸感などを引き起こす(=統合失調症様症状)。
メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)はメタンフェタミンの合成誘導体である。
覚せい剤を使用すると脳に不可逆的な過敏性が残り、少量の覚せい剤の再使用によって以前と同様の効果が得られたり(逆耐性)、入院などを契機にストレスがかかると覚せい剤使用時のような症状が出たりする(フラッシュバック)。
【コカインの局所麻酔作用】
電位依存性Naチャネル遮断によって局所麻酔作用を示す。コカインは血管収縮を起こす唯一の局所麻酔薬である。これは交感神経終末シナプス間隙のノルアドレナリン濃度を上昇させるためであり、持続性の局所麻酔効果を示す。
副作用 コカインの急性使用は頻脈、高血圧、発汗、興奮などの交感神経刺激作用を示す。慢性使用はドパミンを枯渇させうつ状態を引き起こす。
回転性めまい、高血圧、不眠、錯乱、嗜癖性、悪心、下痢などもある。

幻覚剤

作用機序 LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)、メスカリン、シロシン、シロシビンなどはセロトニン神経に結合して神経活動を抑制すると幻覚作用(幻視、サイケデリック体験)を発現すると考えられている。
フェンシクリジン、ケタミンなどの非競合的NMDA受容体拮抗薬によっても幻覚が発現する。
副作用 交感神経刺激症状(ただし、バイタルサインは正常)

有機溶剤(揮発性溶剤)

有機溶剤の作用機序と中毒は中毒学を参照。

ニコチン

作用機序 低用量では神経節のニコチン受容体を刺激し、高用量では遮断する。
作用

副作用
中枢作用:ニコチンは脂溶性でBBBを通過し、中脳辺縁ドパミン系を活性化して快感や満足感をもたらす。特に、シナプス前膜に局在し神経伝達物質の遊離調節をしているα4β2ニコチン受容体に親和性が高く、ニコチンの慢性曝露で耐性が生じる。また、ニコチンは食欲抑制作用を持つ。
末梢作用:交感神経節と副腎髄質を刺激し、血圧と心拍数を増加させ、血管を収縮させる(高血圧・狭心症患者に有害)。また、副交感神経節を刺激し腸運動を亢進する。
離脱症状 禁煙による離脱症状として、イライラ、集中力低下、疲労感、倦怠感、口寂しさ、食欲亢進、便秘などがある。これらの症状は禁煙後2~3日がピークとなり、1~3週間で消失する。

●禁煙補助薬

一般名 商品名 特徴
ニコチン ニコチネルTTS ニコチン受容体アゴニスト
バレニクリン チャンピックス α4β2ニコチン受容体部分アゴニスト。うつ病には禁忌。

カフェイン

作用機序 非選択的PDE阻害作用によってcAMPやcGMP濃度を上昇させる。またアデノシン受容体遮断作用によって神経伝達物質遊離を脱抑制する。
作用

副作用
中枢作用:大脳皮質を刺激し、疲労減少、覚醒作用をもたらす。延髄を刺激し、呼吸中枢・血管運動中枢・迷走神経を興奮させる。
末梢作用:心筋・平滑筋のcAMPが上昇し、β1・β2作用増強により心機能亢進、気管支平滑筋弛緩、末梢血管拡張が起こる。腎血流増加により利尿作用を示す。また、胃細胞のcAMP上昇により胃酸分泌が亢進する。
利尿作用と末梢血管拡張作用には耐性が生じるが、中枢興奮作用には耐性が生じない。

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