全身麻酔の概要
全身麻酔は、中枢を抑制して意識・疼痛・体動を除去すること。
麻酔の3要素
①患者の生命を守ること | 手術に伴う合併症を予防すればOK |
②患者の肉体的かつ精神的苦痛を取り除くこと | 十分な鎮痛と鎮静をすればOK |
③術者が手術しやすい条件をつくること | 無動状態と十分な筋弛緩をすればOK |
全身麻酔の4条件
①意識消失 | 吸入麻酔薬、静脈麻酔薬 |
②鎮痛 | 麻薬、局所麻酔薬 |
③不動化 | 筋弛緩薬、局所麻酔薬 |
④有害反射の抑制 | ①〜③の結果、麻酔の強さが調節されて抑制される |
※有害反射:異常な高血圧、頻脈など生体にとって都合の悪い事象のこと
鎮静と全身麻酔の違い
最小限の鎮静 (不安除去) |
中等度の鎮静 (意識ある鎮静) |
深い鎮静 | 全身麻酔 | |
反応 | 呼びかけで正常反応 | 呼びかけで意味のある反応 | 痛み刺激で意味のある反応 | 痛み刺激で覚醒しない |
気道 | 影響なし | 介入不要 | 要介入 | 要介入 |
自発呼吸 | 影響なし | 十分 | 不十分 | 消失 |
心血管系 | 影響なし | 保たれる | 通常保たれる | 破綻の可能性 |
全身麻酔で生じること
生じること | 対応 | |
意識レベル低下 | 気道・咳反射消失、筋活動低下、呼吸停止 | 人工呼吸 |
交感神経の抑制 | 血管拡張+徐脈=血圧低下(体位変換で起立性低血圧の可能性あり)、体温低下 | 輸液、加温 |
全身麻酔の順序
(急速導入)麻酔の流れ | |
術前評価 | 現病歴(喘息など)、既往歴、過去の麻酔歴・親族の麻酔歴(悪性高熱)、気道の評価(頭部挙上で痺れが出るか、開口して3横指入るか)、アレンテスト(尺骨Aの閉塞がないか確認)、心肺機能の評価 全身麻酔は6時間前まで食事可能、2時間前まで飲水可能、喫煙者は禁煙 |
前投薬 | 現在、ほとんど行わない |
導入1 | 手術台に移動後、マスクで3分以上、6Lの酸素投与で脱窒素し、SpO2が適正値になるのを確認(気道内を酸素で満たすため、呼吸停止しても5分くらいは低酸素血症にはならない) |
導入2 | 静脈麻酔を投与し、睫毛反射消失で鎮静を確認 (小児の場合は吸入麻酔のみで鎮静導入し、静脈麻酔で維持する=緩徐導入) |
導入3 | 筋弛緩薬で筋弛緩(十分に喉頭展開して挿管するため。そのため、ラリンジアルマスクの場合は筋弛緩不要) |
導入4 | 入眠後、マスク下で用手的に陽圧換気を行い、調節換気可能か確認+筋弛緩薬の効果発現を待つ (フルストマック時は誤嚥防止のため酸素投与のみで陽圧換気は行わない+輪状軟骨圧迫=迅速導入。ラリンジアルマスクによる気道確保は誤嚥の可能性があるため禁忌) |
挿管 | 嗅ぐ姿勢(sniffing position)で気管挿管を行い、人工呼吸を開始 |
維持 | 気管チューブ経由で吸入麻酔を用いて鎮静維持 麻薬性鎮痛薬で鎮痛維持 喉頭痙攣・咳・体動などを抑制し術中操作を容易にするため筋弛緩薬で筋弛緩維持 |
覚醒 | 術後は筋弛緩薬拮抗薬を投与し(リバース)、呼吸を再開 |
抜管 | 鎮静薬の投与中止し、鎮痛薬を中止+リバースする。自発呼吸が認められたら抜管。 |
【全静脈麻酔(吸入麻酔薬を使わない全身麻酔)TIVA:Toral Intra-Venous Anesthesia】
利点 | 吸入麻酔薬の代謝産物分解による臓器障害を起こしにくい。 |
欠点 | 導入に静脈路が必要なため小児や精神疾患で不可、スパゲッティ症候群 |
【吸入麻酔(静脈麻酔薬を使わない全身麻酔)VIMA:Volatile agent induction and maintenance of anesthesia】
悪性高熱
疫学 | 全身麻酔1/10万件、男性に多い、10歳未満が最多 |
病態 | 遺伝性の筋疾患。骨格筋の筋小胞体のリアノジン受容体の異常により、Caが放出され筋収縮が持続し、代謝が亢進して様々な症状を呈する。 <原因薬> 吸入麻酔:セボフルラン、デスフルラン 脱分極性筋弛緩薬:スキサメトニウムなど |
症状 | ①急激な体温上昇(38度以上):心拍数も上昇 ②筋硬直:開口障害といった咬筋硬直などが生じる ③赤褐色尿:ミオグロビン尿→腎不全を生じる |
検査 | 【血液検査】 横紋筋融解によりCK↑・高K血症、乳酸産生による代謝性アシドーシス |
治療 | 原因薬物中止+ダントロレン+輸液+利尿 |
【悪性高熱 VS 悪性症候群】
悪性高熱 | 悪性症候群 | |
原因 | 麻酔の合併症 | 感染、脱水、抗精神病薬・抗Parkinson病薬の中止 |
共通症状 | 右に同じ | 高熱、横紋筋融解 |
相違症状 | 筋硬直 | 錐体外路症状 |
治療 | ダントロレン | ダントロレン |
術前管理
カルテチェック
①貧血、出血傾向 | 採血後の青あざ、Hb、PT-INRなど確認 |
②循環器系 | 心機能、心疾患の既往(高血圧、心筋梗塞、狭心症、不整脈) |
③呼吸器系 | 呼吸機能検査、呼吸器疾患の既往(上気道感染、肺炎、結核、喘息、COPD、器質的肺疾患) |
④肝機能 | AST、ALT |
⑤腎機能 | BUN、Cre |
⑥糖尿病 | Glu、HbA1c |
⑦その他 | 内分泌疾患・膠原病・透析の既往、喫煙歴、飲酒歴、肥満度 |
術前診察
※1日禁煙で酸素運搬機能の改善、3日禁煙で気管支繊毛運動改善、2週間禁煙で喀痰の減少、2ヶ月禁煙で肺合併症減少が期待できる。
①AMPLE確認 | ・アレルギー:バナナ、キウイ、アボガドアレルギーあればラテックスアレルギーの可能性あり、歯科治療でアレルギーの場合は局所麻酔薬によるアレルギーの可能性あり ・内服薬:抗血栓薬、経口避妊薬、糖尿病薬、向精神薬の内服の有無 ・既往歴:心筋梗塞、脳梗塞の有無 ・妊娠の有無 |
②全身状態評価 | 心肺機能:日常での運動能力の評価 ①METs(身体活動の強度が安静時の何倍か):4METs以上で小手術可 ②NYHA心機能分類: ③Hugh-Jones分類: |
・最終経口摂取時間:フルストマック確認(緊急手術時) ・意識状態:JCS、GCS ・出血傾向:採血後の青あざなど ・感冒様症状:咳、痰、発熱、呼吸音聴診、呼吸数 ・飲酒、喫煙 ・術前検査:血液検査、胸部X線、心電図、エコー、肺機能検査 ・普段の血圧 |
|
③開口の状態 | 3横指以上開口できるか、大きな舌や扁桃腫大がないか、Mallampati分類を確認 ※Mallampati分類:正面を向いてもらい、できるだけ大きな口を開けて舌をできるだけ前に出してもらう。 |
④歯の状態 | 入れ歯の有無、歯の動揺を確認 |
⑤頸部の状態 | 頸部後屈の可否、後屈時に痺れなどあるか確認 |
⑥手技部位 | 脊麻など手技を行う部位の状態確認 |
⑦過去の麻酔 | 過去の麻酔で問題はなかったか(特に悪性症候群がなかったか)、乗り物酔いしやすいか確認 |
⑧総合評価 | ASA術前状態分類(Physical Status)を決定 クラス1:健康な患者 クラス2:軽度の全身疾患を持つ患者 クラス3:重度の全身疾患を持つ患者(クラス3以上は麻酔困難な症例) クラス4:生命を脅かすような全身疾患を持つ患者 クラス5:手術なしでは24時間生存不可能な瀕死状態の患者 |
マスク換気が難しい症例(MOANS)
換気困難な症例を事前に想定しておこう!
Mask fit | シールが難しい、顔面外傷、顎ひげなど |
Obesity/Obstruction | 肥満、妊婦、気道閉塞 |
Age | 55歳以上(コンプライアンス低下、上気道の筋緊張増加) |
No teeth | 歯がないのでマスクフィットしにくい |
Stiff lung/chest wall | 肺や胸郭が硬い |
気管挿管が難しい症例(LEMON)
Look externally | 外表面を観察し、ひげ、顔面外傷、肥満などの有無を確認する |
Evaluate 3-3-2 Rule | ①開口3横指、②顎先〜舌骨が3横指、③口腔底〜甲状軟骨が2横指 |
Mallanpati分類 | 声を出さずに、口を大きく開け、舌を突き出す |
Obstruction | 炎症、外傷、腫瘍、舌肥大などによる上気道閉塞の有無を確認する |
Neck Mobility | 頚椎の可動制限(前屈、後屈)の有無を確認する |
麻酔方法の決定
以下は麻酔の中止や延期を考慮 | |
心不全 | NYHA3度以上 |
狭心症 | CCS分類3度以上 |
心筋梗塞 | 発症後3ヶ月以内 |
AR、MR、TR | いずれも中等度以上 |
AS、MS | |
心臓機器 | 埋込型ペースメーカー、埋込型除細動器を使用 |
先天性心疾患 | |
肺動脈性肺高血圧 | |
呼吸不全 | PaO2 60mmHg未満、P/F比300未満 |
換気障害 | 1秒率70%未満かつ%VC70%未満 |
気管支喘息 | 治療しているにもかかわらず中発作以上を繰り返す |
糖尿病 | 血糖コントロール不良 |
腎不全 | 血清Cre 4.0mg/dL以上 |
肝不全 | Child-Pugh分類B以上 |
貧血 | Hb6.0未満 |
血液凝固能低下 | PT-INR2.0以下 |
DIC患者 | |
血小板減少 | PTL5万未満 |
敗血症 | |
ショック状態 | |
完全脊椎損傷 | Th5より高位のもの |
心配補助あり | |
人工呼吸あり | |
透析患者 | |
IABPあり | |
BMI35以上 |
麻酔の説明と同意
①絶食の必要性 | 絶食しないと誤嚥を起こし肺炎を生じる。 8時間前より絶食、2時間前より絶水 |
②麻酔方法の説明 | 入室、導入、気道確保、覚醒後の深呼吸・喀痰排泄、疼痛管理 |
③麻酔合併症の説明 | 全身麻酔:咽喉頭痛、嗄声、悪心嘔吐、無気肺、歯牙損傷、肺塞栓症 |
術前内服薬
継続 | 降圧薬(ACEI、ARBを除く)、抗不整脈薬、冠血管拡張薬、気管支拡張薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、抗甲状腺薬 |
変更 | 糖尿病薬→短時間作用型インスリン |
中止 | ACEI・ARB:手術当日の朝中止 経口糖尿病薬:手術当日の朝中止 SGLT2阻害薬::手術3日前に中止 三環系抗うつ薬:手術2週間前に中止 MAO阻害薬:手術2週間前に中止 |
麻酔準備
①麻酔器の準備 | ・Yピース→人工鼻→L字管→マスクの順に接続する。人工鼻にはEtCO2モニター線をつなぐ。 ※人工鼻の効能:麻酔機器の汚染防止+吸気の加湿 |
・リークテスト: | |
②麻酔器具の準備 | ・気管チューブ(男7.5mm、女7.0mm)を用意し、カフ用シリンジでナフ内の空気を抜いておく。チューブ内にキシロカインスプレー(or KYゼリー)をプッシュし、スタイレットをチューブから出ない程度まで入れ、カフ辺りで直角に曲げる。上の出ている部分は直角に折る。 ※カフ付きチューブ内径(mm)=(年齢/4)+3.5 |
・喉頭鏡(マッキントッシュ):E3を本体と接続してライト確認 ・ビデオ喉頭鏡(McGRATH):男4、女3を本体と接続してライト確認、カメラ部分に曇り止めを数滴塗る。 |
|
・消化管手術の場合は胃管にKYゼリーを塗っておく。 | |
③薬剤の準備 | ・プロポフォール (ディプリバン®):アンプル20mLを、20mLシリンジへ吸っておく。 |
・レミマゾラム(アネレム®):20mLシリンジに生食25mLを吸い、2mgバイアルを溶解。それをシリンジポンプにセット 。 | |
・レミフェンタニル(アチルバ®):20mLシリンジに生食20mLを吸い、2mgバイアルを溶解。それをシリンジポンプにセット。 | |
・ロクロニウム (エスラックス®):5mLシリンジに吸っておく。 | |
・フェニレフリン(ネオシネジン®):12mLシリンジに生食9mLを吸い、フェニレフリン1mLで10倍希釈する。 | |
④シリンジポンプ | ・ベッドより高い位置にセットしない。 |
※TCIポンプ | 血中濃度を設定し、ポンプに組み込まれたコンピュータが投与速度を自動的に調節するもの。 |
【麻酔器の構造】
導入
抗菌薬投与 | 執刀開始前60分以内に投与。術野の汚染の原因となる菌を想定して選択。 皮膚常在菌:セファゾリン 嫌気性菌(下部消化管、膣など):セフメタゾールやフロモキセフ ※術中は約3時間ごとに抗菌薬追加投与(体重、腎機能を確認) |
患者入室 | ・あいさつし、緊張をほぐす。 ・名前を確認し、PCに入室時刻を入力する。 ・今日手術する場所を患者と一緒に確認する。 |
手術台へ移動 | ベッドで横になった後、患者の頭が臍の高さになるまでベッドを上げる。 |
モニタ装着 | 血圧計、心電図、SpO2、BIS、TOFを装着 BISを付けたら5秒押さえる、その後インピーダンスチェックする。 |
酸素投与 | 6L酸素、APL全開(Spont)にし、5分以上マスクを軽く当て、深呼吸してもらう(脱窒素化)。 |
鎮痛薬投与 | ・フェンタニル100〜200μg(1〜2mL)静注 |
導入麻酔投与 吸入麻酔開始 |
・プロポフォール100〜150mg(10〜15mL)静注 ・セボフルラン6〜8%吸入 「血管に痛みはあるかもしれません、大丈夫ですか?」 名前を呼んで声かけ、または睫毛反射で入眠を確認 |
マスク陽圧換気 | ①入眠後、両手で頭部後屈顎先挙上→スニッフィング位(下顎を上に持ち上げ、アイーンという顔になる感じ)→開口させる。 ②左手でカープのCにしてマスクを持ち、マスクフィットさせながら小指で顎先を上げるようにし、APL閉じて用手換気を開始する。その後、APLを少しOpenにして圧を逃す。 ③胸郭が上下しているか、腹部膨満はないか確認。 ※舌根沈下がひどい場合、口腔内エアウェイを迷わず使用 |
筋弛緩薬投与 | ・ロクロニウム30〜50mg(3〜5mL)静注 (気管挿管の場合)マスク換気可能なら、筋弛緩薬初回量を投与 |
気管挿管 | ①筋弛緩薬投与約60秒後、奥歯に指を当ててクロスフィンガーで右口角部を展開し(中指〜小指は下顎を持ち上げる)、喉頭鏡を受け取り、喉頭蓋(エピログ)の上に挿入したら上に持ち上げ、声門が見えたら気管挿管する。 ※喉頭鏡の場合、できるだけ根本を握り、舌を左側によけて挿管 ②挿管後、チューブ先端が声帯を超えたところでスタイレットを抜去してもらい、チューブを21〜23cm進めた後、カフに6mL空気を注入してもらう。喉頭鏡を抜いて、チューブを麻酔回路に接続し、右の手袋はずし、チューブを左手に持ち替えたら、右手でバックを揉んで返ってくるか確認。 ※チューブは門歯から男23cm、女21cmくらい挿入 ※BURP法:介助者に甲状軟骨を圧迫してもらう方法 ※Cormack分類:喉頭展開した時の所見(Grade1〜4) |
挿管後評価 | ①胸郭が均一に上下しており、腹部が膨らんでいない ②心窩部音→肺呼吸音の左右差→頸部でカフ漏れ音を聴診 ③カプノメータでCO2呼出、SpO2下がらないことを確認 ④麻酔器の1回換気量を確認(VT500設定なら480くらい呼出されてるか) ⑤カフの空気確認のぷにぷにが耳たぶ程度の硬さであることを確認 ※食道挿管ならカフを抜き、チューブ抜去してマスク換気再開 ※手揉みの際、カフ圧が20cmH2Oを超えないように管理 |
挿管後処置 | ・挿管に問題なければ、VCボタンを押し、ダイヤルをプッシュ。 ・気管チューブを口角で固定し、必要ならバイトブロック噛ませる。 ・蛇管立てに蛇管をセットし、蛇管立ての高さを調節して下げる。布がかかったら患者の顔を出す。 ・目パッチ、BISモニターを装着する。 |
胃管挿管 | 長時間手術や腹腔内手術の場合、胃の減圧目的に、全身麻酔導入後にKYゼリーを全体に塗った胃管を鼻孔からゆっくり挿入し、成人の場合は55cm程度挿入する。カテーテルチップ注射器で空気を胃管に10mL急速に入れ、聴診器で胃部の音を確認すること。その後、胃内容物を吸引できれば挿入確認完了となる。口側のチューブ先端には使い捨て手袋などを付け、廃液が出てきても良いようにしておく。 【鼻腔からの挿入禁忌】鼻出血、頭部外傷 |
維持
麻酔深度調整 | 執刀前までに十分に麻酔深度を深くする ※鎮痛薬は執刀前に濃度を上げておくこと! |
輸液 | 2時間で500mLくらい(250mL/hr=4mL/min=60滴/min=1滴/秒) 尿が濃いなど脱水ぽければ増量する |
①術野確認 | 侵襲性が高い手術操作、出血 |
②麻酔器確認 | ガス流量 |
③モニター確認 | 心拍数:40〜100 ショック指数(心拍数/収縮期血圧)が1以上の場合は注意 |
心電図:ST低下は虚血 | |
血圧:MAP 65〜150mmHgであれば脳血流は一定 | |
BIS:30〜60、吸入は70までOK、80以上は覚醒の可能性あり 深い眠りの波形:ムーミン谷の住人にょろにょろのような波形 浅い眠りや脳活動の低下の波形:波が小さい波形 |
|
SpO2:95%以上(COPDでは90%以上)を目標 <SpO2低下はDOPEを考える> Displacement:気管チューブ異常(片肺挿管、食道挿管、抜管) Obstruction:気道閉塞、気管チューブ閉塞 Pneumothorax:気胸 Equipment failure:機器異常 |
|
EtCO2:30〜45(PaCO2より5mmHgほど低値になる) ・Ⅰ相〜Ⅳ相が出ているか波形を確認 ・減少させたい場合はVTかfを増やす、増加の場合は逆 ・増加すると脳血管が収縮する |
|
体温(直腸温):最初の1時間で1℃低下するため、保温して覚醒時のシバリングを抑制する | |
③Aライン | 波形(A弁開放→A弁閉鎖ノッチ→僧帽弁開放) ・ノッチがない場合:心室内容が少ない(前負荷減少)or 血管抵抗減少(後負荷減少) ・ピークが先細っている場合:正確な血圧ではない可能性あり |
④輸液確認 | ボトル残量、輸液速度、ルート異常 |
その他 | 尿量:0.5〜1.0mL/kg/hr(30分ごとに確認) |
Aラインはマンシェットでの測定が不安定な場合、長時間の手術、頻回の採血を行いたいときなどに使用される。
手術侵襲による生体の変化
心拍数↑ | Ad、NAd分泌 |
心収縮力↑ | Adによるβ刺激 |
心拍出量↑ | 心拍数↑・心収縮力↑の結果 |
血管収縮 | NAdによるα刺激(末梢血管が収縮し循環の中心化が起こる) |
循環血液量↑ | ADH分泌、RAA系促進 |
尿量減少 | 出血、腎血流量低下、循環血液量増加のため |
体液貯留 | サードスペース増大 |
血糖値↑ | インスリン抵抗性ホルモン分泌(外科的糖尿病) |
凝固・止血能↑ | 出血による凝固因子活性化、炎症性サイトカインによる白血球浸潤 |
換気量↑呼吸数↑ | 精神的ストレスや侵害刺激による呼吸中枢刺激 |
覚醒・抜管
覚醒前準備 | 眼パッチを取る。口マスクの準備をしておく。固定テープを緩めておく。 |
筋弛緩拮抗薬を投与 | ・スガマデクス全量を静注 Man support(用手換気)にて、O2を4Lで用手換気する。 |
鎮静薬をOFF | ・静脈麻酔の場合は、フルマゼニルを静注 ・吸入麻酔の場合は、O2(5L)と空気(5L)を10L以上にし、Man support(用手換気)にして麻酔薬を飛ばす。 |
覚醒 | 覚醒したら手術が終わったことを伝える。 |
自発呼吸を確認 | ・拮抗薬投与1〜2分後効果発現。離握手可能、足動かす、呼びかけで開眼できる、深呼吸できるか確認。 ・自発呼吸下で、EtCO2、SpO2が正常値であるか確認。 |
抜管前処置 | 口腔内吸引し(咳反射を確認)、カフを減圧してもらう。 |
抜管 | バッグに圧をかけながら気管チューブを抜管。肺虚脱を防ぐ。 |
術後管理
手術室退室条件
意識 | 自発開眼、著しい興奮なし、手足が動かせる、生年月日が言える |
呼吸 | O2投与下でSpO2が96%以上、呼吸数10〜20回、呼吸音問題ない |
循環 | 術前血圧の±30%以内、頻脈・徐脈・不整脈がない |
筋力 | TOF90以上、頭部挙上10秒以上 |
その他 | 痛みが許容範囲、悪心嘔吐が許容範囲 |
体温 | 深部温が36度以上(35度以下は抜管しない)、シバリングなし |
スコア | Modified Aldreteスコアが12点以上 |
術後の創部管理
創部は術後24〜48時間で表面が癒合するため、それ以降は被覆の必要はなく、抜糸・抜鉤が残っていてもオープンのまま、入浴などを行なって良い。創部感染は術後2〜3日過ぎて顕著になるため、できるだけ早く治療する。
輸液
術前欠乏量 | <4−2−1ルール> 体重10kgまで 4mL/kg/hr 体重10〜20kg 2mL/kg/hr 体重20kg以上 1mL/kg/hr 体重50kgの場合:10×4+10×2+30×1=90mL/hr 絶食時間が12時間とすると、90×12=1080mLが術前の欠乏量 |
麻酔導入時 | 全身麻酔によって血管拡張して血管容量が増加するため、5-7mL/kg投与 体重50kgの場合:300mL(ボーラス投与?) |
術中 | 不感蒸泄:0.5〜2.0mL/kg/hrの外液補益 サードスペース:小手術1〜2mL/kg、開胸・開腹4〜6mL/kg 出血:出血量の3倍の細胞外液、1.5倍の代用血漿剤を補充 不感蒸泄+サードスペース+出血量を補充 体重50kgの場合:50mL+100mL(点滴は1秒1滴くらいの速度) |
点滴の輸液速度 | 20滴=1mL(微量点滴セットの場合は60滴=1mL) 1秒1滴の速度の場合、3mL/min = 180mL/hr 1秒2.5の速度の場合、7.5mL/min = 450mL/hr(約1パック輸液) |
Aライン(橈骨動脈穿刺)
逆血が来たら少し寝かす | |
内筒だけを少し抜き逆血を確認 | |
外筒をぐりぐり回しながら少しずつ進める |
全身麻酔中のモニター
麻酔器モニター
変更ボタン | 基準値 | |
O2% | ー | 25%以上(40%前後が良い) |
Freq (呼吸回数) |
Freq | f:10〜12回/分 小児の場合は、20〜30回/分 |
VT (一回換気量) |
VT | VT:10mL/kg以下(5〜8mL/kgが良い) |
MV (分時換気量) |
ー | MV(=VT×f):7〜10L |
PEEP (呼吸終末陽圧) |
PEEP | PEEPとは、呼気時に肺胞が虚脱するのを防ぐ圧 PEEP:0〜5cmH2O(初期設定は4cmH2O) |
PLAT (プラトー圧) |
PLATとは、吸気終了時に吸気弁と呼気弁を設定した時間だけ閉鎖し、気道内圧を高いまま一定に保つ圧 PLAT:25cmH2O以下(PEEPとの差を15cm程度に抑える) |
|
PEAK | PEAKとは、最も高い気道内圧。チューブ閉塞があると高くなる。 10cmH20以下:麻酔回路の漏れやはずれ、カフ漏れを考える。 30cmH20以上:チューブの閉塞や屈曲、肺胸郭コンプライアンスの低下を考える。 |
人工呼吸器のモード
【侵襲的陽圧換気=気管挿管】
PEEP:呼気時に圧力をかけて肺胞を膨らまし肺内シャントを減らす方法
VCV (従量式換気) |
VC + PEEP | 自発呼吸なし | 通常の成人全身麻酔で使用する 1回換気量と呼吸回数を設定し強制換気する |
PCV (従圧式換気) |
PC + PEEP | 自発呼吸なし | 肺損傷症例や乳幼児で使用する 吸気圧と吸気時間(or呼吸回数)を設定し気道内圧一定で強制換気する |
SIMV | VC or PC+PS+PEEP | 自発呼吸あり | 設定回数だけ強制換気し、その回数以上は自発呼吸を圧補助する |
CSV(CPAP) | PS+PEEP | 自発呼吸あり | 自発呼吸を圧補助する |
【PEEPの適応】
①気道肺胞間の閉塞(無気肺)、②急性肺水腫(溺水含む)、③肺気腫などの慢性呼吸不全、④ARDS
コメント