尿検査の概要
採尿方法
中間尿 | 細菌培養や尿細胞診の評価、尿道常在菌や上皮細胞の影響を排除できる |
カテーテル尿 | 膿尿の評価は終末尿 |
分杯尿 | 慢性前立腺炎や骨盤痛の評価、初尿・中間尿・前立腺マッサージ後尿の3種 |
尿検体の保存
一般尿検査 | 室温なら採尿後90分以内に検査(すぐ検査できない場合は冷蔵保存) |
培養検査 | 室温なら採尿後すぐに検査(すぐ検査できない場合は冷蔵保存) |
淋菌検査 | 室温なら採尿後すぐに検査(冷蔵保存で淋菌が死滅するため冷蔵保存不可) |
尿の色と変化の原因
薬剤 | 病態 | |
赤色尿 | クロロキン、デフェロキサミン、ヒドロキシコバラミン、イブプロフェン、リファンピシン、ワルファリン | 血管内溶血、尿路結石、ナットクラッカー症候群、ポリフィリア、月経血の混入、尿道損傷 |
オレンジ色 | イソニアジド、リボフラビン、サラゾスルファピリジン | ー |
褐色尿 | アセトアミノフェン過剰服用、メトロニダゾール、大黄(ルバーブ) | 溶血性貧血、転移性メラノーマ、ポリフィリア |
黒色尿 | メチルドパ、レボドパ、メトカルバモール、メトロニダゾール、クレゾール、鉄剤、センナ、ソルビトール | アルカプトン尿症、転移性メラノーマ、ポリフィリア |
白色尿 | プロポフォール | 乳び尿、フィラリア症、リンパ管瘻、吸血吸虫症、脂肪尿、蛋白尿、膿尿、尿路結核、高Ca血症、高シュウ酸塩尿、リン酸塩尿 |
青/緑色尿 | メチレンブルー、アミトリプチリン、シメチジン、インドメタシン、メトカルバモール、メトクロプラミド、プロメタジン、プロポフォール、除草剤誤飲、クロロフィル | 胆道閉鎖、青いオムツ症候群、ハートナップ病、ポルフィリア、緑膿菌尿路感染症 |
紫色尿 | ー | purple urine bag syndrome(PUBS) |
尿の色と脱水
尿の色の濃さと尿比重・尿浸透圧は相関性があり、体液状態を評価するのに有用
4以上で脱水を疑う(ただし、早朝尿は濃縮されているためこの評価には向かない)
尿定性
尿定性の検査法
尿試験紙検査:strip test | ビタミンCは偽陰性となる(尿糖、潜血、ビリルビン、亜硝酸塩) |
屈折率法 | 尿比重がわかる |
尿定性の臨床的意義
基準値 | 臨床的意義 | |
pH | 4.6〜8.0 | 通常、不揮発酸を排出するため弱酸性6.0〜6.5となる。 尿路結石の成分予測としても使うことができる。 ●酸性尿:尿酸結石、シュウ酸Ca結石 ●アルカリ尿:リン酸Mgアンモニウム結石 |
尿浸透圧 | 300 Posm | 推定尿浸透圧式=尿比重の下2桁/0.03(mOsm/L H2O) |
尿比重 | 1.010〜1.030 | 1.030以上(高張尿):脱水症、造影剤の混入 1.010〜1.030(等張尿):1.025以上で尿濃縮力あり 1.010未満(低張尿):水分過剰摂取、尿崩症、利尿薬投与 |
尿糖 | ー | 尿糖は血糖が180mg/dL以上になると出現 |
尿中Bil | ー | 直接Bil上昇すると尿中Bilも上昇する(ビリルビン尿) |
ウロビリノーゲン | ± | 通常尿中にも存在するが、血中Bil上昇で尿中ウロビリノーゲンも上昇する |
尿中ケトン | ー | 尿中ケトン体陰性であればDKA否定できるが、AKAは否定できない |
亜硝酸塩 | ー | 硝酸還元酵素をもつ細菌がいると陽性になり尿路感染症を疑う |
エステラーゼ | ー | 顆粒球がいると陽性になり尿路感染症を疑う |
尿蛋白 | ー | 起立性蛋白尿や熱性蛋白尿などの生理的蛋白尿が多く、無症候性蛋白尿で有意な腎疾患を有するのは1.5%以下と言われている。そのため蛋白尿を確認した場合は早朝尿で再検する(濃縮尿で偽陽性になるため尿比重と合わせて判断すること) ●尿蛋白2+以上:生理的蛋白尿では説明できず腎疾患を考慮 ●尿蛋白1+以上かつ血尿:腎疾患を考慮 |
尿潜血 | ー | 月経や運動による陽性が多く、半分近くは一過性のもので自然消失する。そのため再検して消失していれば病的意義はないと判断。 ●血尿:尿沈渣で赤血球(+)の尿 ●ミオグロビン尿:尿沈渣で赤血球(ー)かつ血中CK↑の尿 ●Hb尿:尿沈渣で赤血球(ー)かつ血中CK上昇なしの尿 |
●尿蛋白(+)かつ尿潜血(+):糸球体性血尿の可能性 | ||
各項目の偽陽性・偽陰性
https://samt.securesite.jp/bunsyo/20121108aichi-nyoukensatebiki.pdf
尿沈渣(尿を遠心分離して沈殿物を光顕で観察したもの)
AKI、血尿、蛋白尿のある場合はしっかり評価する
尿沈渣の鏡検状態を見たい場合は「尿沈渣3Dアトラス」を参照
基準値 (400倍視野) |
臨床的意義 | ||
細胞成分 | 赤血球 | 4個以下/HPF | 5個以上で血尿と定義(月経1週間は陽性となりうる) 血尿は糸球体〜下部尿路からの出血を意味する ①糸球体性血尿:糸球体・尿細管からの出血 →赤血球は大小不同さまざまな形をしている ②非糸球体性血尿:腎盂以降からの出血 →赤血球の大きさが均一なのが特徴 |
白血球 | 4個以下/HPF | 5個以上で膿尿と定義 膿尿は糸球体〜尿路までの炎症を示唆する。頻度が高いのは尿路感染症(10〜20個/HPF以上)で、その他は尿細管間質疾患や糸球体腎炎の可能性もある。 |
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上皮細胞 | ? | 健常人でも少数は認めるが、尿細管変性などにより増加する。腎前性AKIとATNの鑑別に有用(腎不全を参照) | |
移行上皮細胞 | ? | 腎杯・尿管・膀胱・尿道に炎症や損傷があると脱落し、尿中に出現する | |
扁平上皮細胞 | ? | 外尿道口付近の粘膜のみに存在するため、多くは外陰部からの混入 | |
円柱成分 | 尿中円柱 | なし (1つでもあれば病的。硝子円柱は除く) |
尿中円柱は、Albを含む原尿に尿細管で分泌されるTamm-Horsfall蛋白が混ざると形成される。この硝子円柱に赤血球が入れば赤血球円柱、といった具合に様々な円柱が形成される。円柱形性には濃縮される必要があるため早朝尿で多く見られる。 |
析出成分 | ー | シュウ酸Ca結晶 | 最も頻度が高い |
リン酸アンモニウムMg結晶 | ウレアーゼ産生菌(大腸菌、クレブシエラ、プロテウスなど)による尿路感染症を示唆する所見 | ||
尿酸結晶 | 腫瘍崩壊症候群や横紋筋融解症で多数の結晶が見られる |
円柱の種類
意義 | 考えられる疾患 | |
硝子円柱 | 細胞や顆粒成分を含まず、尿細管を流れる尿流が遅いと出来やすい。 | 健常者でも少量認められ、尿細管の一部閉塞で多数認められる。 |
赤血球円柱 | 赤血球を含み、糸球体障害や尿細管障害を考える。 | AGN、IgA腎症、FSGS、MPGN、SLEなど |
脂肪円柱 | 尿細管上皮から遊離した脂肪球を含み、高度蛋白尿でみられる。 | ネフローゼ症候群、高脂血症、糖尿病性糸球体硬化症 |
上皮円柱 | 変性・脱落した尿細管上皮細胞を含み、尿細管障害を示す。 | 尿細管疾患(尿細管壊死)、活動性腎炎 |
顆粒円柱 | 様々な細胞由来の顆粒を含み、糸球体障害や尿細管障害を考える。 | 糸球体腎炎、間質性腎炎、腎盂腎炎、急性腎不全 |
白血球円柱 | 白血球を含み、糸球体や間質・尿細管の炎症を考える | 腎盂腎炎、AGN |
ろう状円柱 | ネフロン流量が低下した高度腎機能障害でみられる。 | 慢性腎不全 |
膿尿・細菌尿の診察
定義
無菌性膿尿 | 膿尿かつ培養にて一般細菌が検出されないもの(抗酸菌染色を推奨) |
細菌尿 | ●自然排尿の場合 CFU:コロニー数 尿培養で細菌数が100000CFU/mL以上が男性1回以上、女性2回以上検出 ●尿カテによる無菌的採取の場合 尿培養で細菌数が100CFU/mL以上が1回以上検出 |
無症候性細菌尿 | 細菌尿を認めるが尿路系の症状を訴えないもの(膿尿の有無は問わない) |
↑治療する意義は乏しく耐性菌の観点からも基本的に治療しない |
尿路感染症との関係
検査前確率が高い かつ 膿尿あり+尿亜硝酸塩(+) | 尿路感染症らしい |
検査前確率が低い かつ 膿尿なし+尿亜硝酸塩(ー) | 尿路感染症らしくない |
尿生化学
基準値 | 臨床的意義 | |
尿Na | 20mEq/L | 尿中Na量の約2.5倍が1日摂取Na量と等しい |
尿K | ||
尿Cl | ||
尿Ca | ||
尿糖 | 0 | |
尿BUN | ||
尿Cre | ||
尿蛋白 | ||
尿Alb | ||
尿NAG |
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