発作性上室性頻拍(PSVT)
発作性頻拍:期外収縮が持続して洞結節の代わりにリズムを刻むもの
PSVTの原因は、①WPW症候群によるもの、②房室結節リエントリーによるものがある。

| 病態 | PSVTの大半はリエントリーに起因し、その多くは房室リエントリー頻拍(AVRT)約70%と房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)約20%で占められている。 ①AVRTはほとんどが潜在性WPW症候群を伴って出現する。つまり、心房→房室結節→脚→心室→ケント束→再び心房にリエントリーを起こして心房頻拍を生じる。また、AVRTはWPW症候群にAFを合併したものにしばしば移行する。 ②AVNRTは先天異常によって房室結節付近に二重伝導路が存在する場合がある。その結果、心房で起こった期外収縮が房室結節内の不応期の短いα路を逆行してリエントリー起こし心房頻拍が起こる。 |
| 症状 | 動悸(必発):HRは約140〜240(250以上は心房粗動疑い)で、180以上心拍出量が低下し、血圧低下、Adams-strokes症候群を来すことがある。 |
| 検査 | 【AVRTの心電図】 発作時=リエントリー中(非発作時はWPW症候群を参照) ①頻脈+Narrow QRS、RR整 ②V1でST部分に逆行性P’波(正常P波なく、見えにくい逆行性P波) 【AVNRTの心電図】 ①頻脈+Narrow QRS、RR整 ②V1でQRS直後にノッチ(Ⅱ誘導で正常P波も逆行性P波もない) |
| 発作時 | AVRT・AVNRTどちらでも房室伝導を抑制して頻脈を止めれば良い。 <循環動態不安定の場合> 頻脈徐脈の診察に従い、カルディオバージョンを検討 <循環動態安定の場合> ①修正バルサルバ法:胸腔内圧上昇(静脈還流量↓)→解除で副交感神経↑ ・45度半座位にして大きく息を吸わせた後、15秒間息こらえ or 10mLシリンジに15秒息を吹き続けてもらう(一過性に頻脈)→直後に仰臥位+15秒下肢挙上→座位に戻る ②ATP急速静注(気管支喘息、副伝導路を介した上室性頻脈には禁忌) ・除細動器装着 ・ATP投与時に一瞬気分が悪くなることを患者に事前に伝える ・初回は、ATP5mg急速静注、生食20mL後押し(改善なければ再度5mg施行) ・3回目は、ATP10mgを急速静注(数秒間の房室伝導抑制) ③Ca拮抗薬静注:房室伝導抑制(心不全、低血圧には禁忌) ・投与前に心エコーで評価し、心収縮が悪い場合は投与しない ・ベラパミル5mg1A (5mg/2mL)+生食50mLで用意し、15〜30分で点滴静注(ボーラス投与)。終了10分後に効果判定する。 ④その他の抗不整脈薬 上記で無効な場合、アミオダロンなどを試み、それでも無効ならカルディオバージョン |
| 予防 | 循環器内科へ紹介 ●持続時間短く、症状が軽い場合:抗不整脈薬の頓用 WPWない場合:心機能に応じてベラパミル、ジルチアゼム、β遮断薬 WPWの場合:上記以外の抗不整脈薬 ●根治(カテーテルアブレーション):薬物療法で多くのPSVT発作は止まるが、しばしば再発するため、副伝導路やβ路を高周波電流で凝固壊死させてリエントリー回路を断ち切る。 |
心房細動 AF:Atrial fibrillation
| 疫学 | 有病率:0.5〜1%、60歳以上では2〜4% |
| 病態 | AFは複数の興奮波(マイクロリエントリー)によって心房が細かく震え、心房全体として収縮できない状態である。 【分類】 ①発作性AF(PAF):7日以内に洞調律に戻るもの ②持続性AF:7日以上の持続するが、薬剤・直流通電で停止するもの ③永続性AF:薬剤・直流通電が無効なもの(心不全、高血圧、DMなどが背景) PAF→持続性AF→永続性AFという経過をたどる。AFの約70%は基礎疾患があり、残り約30%は基礎疾患を持たないAF(孤立性AF)である。 |
| 原因 | <AFの原因となる基礎疾患> ①心臓由来の因子 虚血性心疾患(特にACS)、心不全、高血圧、心房負荷となるMS・MR・ASD、拡張型心筋症、肥大型心筋症、収縮性心膜炎、WPW症候群 ②非心臓由来の因子 糖尿病、脂質異常症、肥満、CKD、急性呼吸器疾患、肺塞栓症、COPD、肺線維症、脳梗塞、くも膜下出血、高齢、睡眠時無呼吸症候群 ③可逆性のリスク因子 術後、甲状腺機能亢進症、電解質異常(低K、低Mg)、感染や炎症、飲酒 |
| 症状 | 症状は無症状のこともある ①動悸:自覚することが多い ②めまい、ふらつき:Adams-strokes症候群のため ③その他:胸痛、息切れ、倦怠感 【合併症】 塞栓症:AFが48時間以上続くと高率に心房内血栓を生じ、脳梗塞、急性腸管膜動脈塞栓、腎梗塞、四肢塞栓などを引き起こす。 |
| 検査 | 【身体所見】 聴診:特にMR(心尖部の全収縮期雑音)を確認 触診:頻脈+脈不整はAFと考えて良い。脈拍欠損(心拍数>脈拍数)となり心拍数と脈拍数が一致しにくい(頻脈で1回拍出量が少なくなると脈拍が弱くなるため) 【心電図】 ①Ⅱ誘導でP波が消失 ②V1 or Ⅱ誘導で多数のf波(基線の揺れ)が出現 ③RR間隔不整:心房の興奮がランダムに伝導されるため。ただし、完全房室ブロックがある場合は心室補充調律となるためRR間隔整となる。 ④ACSを疑うST変化を確認 【血液検査】 K、Mg、TSH、T4、トロポニン、BNP、貧血を確認 【画像検査】 心エコー(必須):LVEF、左房径(45mm以上は塞栓リスク↑)、弁膜症を確認 胸部X線:心拡大、肺うっ血、胸水を確認 造影CT:左心耳内血栓の検索 経食道心エコー:造影CTで血栓を否定できない場合に施行 |
| 発作時 | <頻脈の場合> 新規発症のAFでは以下の治療と同時に必ず頻脈の誘因(HI EDGE)を同定し、早急な介入に努める <循環動態不安定の場合> AF由来の血行動態破綻の場合は頻脈徐脈の診察に従い、緊急カルディオバージョンを考慮する(循環器内科にコンサルト)。発作から48時間以上(発作開始が不明な場合も)の場合、カルディオバージョンを行うと心原性脳塞栓を起こす可能性があるが、致死的な病態の場合はリスクを患者に伝えた上でカルディオバージョンを躊躇しない。抗凝固薬未導入の場合、緊急カルディオバージョンの直前に未分画ヘパリン2000〜5000静注を考慮。カルディオバージョン後は速やかにDOACなど抗凝固薬の内服を開始する。 <循環動態安定の場合> 枠外のAF発作時の治療法を参照。 薬理学的除細動が無効の場合、カルディオバージョンを考慮するが、鎮静や塞栓症のリスクを伴うため循環器内科にコンサルトして行う。 |
| 再発 予防 |
循環器内科へ紹介 ①カテーテルアブレーション:肺静脈入口部を焼灼。WPW合併はKent束も焼灼。 ②持続性AFの場合:Ia群投与(ただし、慢性心不全や陳旧性心筋梗塞に使うと死亡率を高めるため禁忌)。 【すべてのAF】 抗凝固療法:心房内血栓予防のためワルファリンやDOAC内服(抗血小板薬は有効性低い)。脳梗塞発症リスクの評価の指標としてCHADS2スコアを用いる。 |
AF発作時の治療法
| レートコントロール | 洞調律に復帰させずAFのままで、適切な心拍数にコントロールし、自覚症状を軽減させて経過観察する治療法(非専門医でも可能) |
| リズムコントロール | AFを停止させて洞調律に復帰・維持させる、リズムそのものをコントロールする治療法(専門性が高い治療→循環器内科が行う) ※発作から48時間以上持続していることを否定できない場合は緊急の場合を除き、経食道エコーで心内血栓を否定するか、3週以上の抗凝固療法を行ってから薬理学的除細動する。 |
※レートコントロールは、AFFIRM試験というリズムコントロールとレートコントロールを比較した試験で生命予後に有意差がなかったことが根拠となっている。ただし、ガイドラインでは発症早期のAFではリズムコントロールを考慮すると記載されている。
| レートコントロール | リズムコントロール |
| 洞調律を維持することが困難と考えられる持続性および永続性AF患者が主な対象 | 症状が強い、AF持続による心不全が増悪、AFの原因疾患が少ないなどが主な対象 |
【レートコントロール】
PAFは自然停止する場合があるため、バイタルが安定しておりHR110未満であれば経過観察する場合がある。症状改善のためレートコントロール(目標HR110未満)を施行する場合、投与前に心エコーを行い心機能を評価する。発作から48時間以内であれば心房内血栓はないとして薬理的除細動を開始するが、48時間以降(発症時間不明の場合も含む)は洞調律に戻さずレートコントロールと抗凝固療法開始を考慮する。
| LVEF25〜40% または 心不全併存 |
心不全や低血圧を伴う頻脈性AFにCa拮抗薬を投与すると心収縮力を抑制し、循環動態を悪化させる可能性がある。 ●急性期:β遮断薬を微量から徐々に漸増 例)ランジオロール(オノアクト®)150mg/3V(50mg/1V)+生食50mLで用意(3mg/mL)。1γ(0.02mL/kg/hr)から開始(MAX10γ) ※超短時間作用型であり、投与後は15分ごとに用量調整が必要 上記で効果不十分な場合、腎機能障害とWPWがないことを確認し、ジゴキシンを追加する(作用発現までに30分かかる) 例)ジゴキシン(ジゴシン®)0.25mg1A+生食50mLで用意。点滴静注。血中濃度0.5〜0.9ng/mLを目安に投与量を調節する。 例)プロプラノロール(インデラル®)1A(2mg/2mL)を1mLずつ2分毎に静注、最大3回まで ※喘息・COPD患者には原則使用しない ●慢性期:β遮断薬貼付 or 内服に徐々に移行 例)カルベジロール(アーチスト®)1回1.25〜5mg1日1回から導入、段階的に最大20mgまで増量可 例)ビソプロロール(メインテート®)1回0.625mg1日1回から導入、段階的に1回合計5mgまで増量可。貼付(ビソノテープ®)の場合、1日1回2〜4mgより導入し、最大8mgまで増量可 |
| LVEF40%以上 | ●急性期/慢性期:β遮断薬貼付 or 内服、またはCa拮抗薬 上記のカルベジロール、ビソプロロールと同様 例)ベラパミル(ワソラン®)1回40〜80mg1日3回(頓用可) 例)ジルチアゼム(ヘルベッサー®)1回30〜60mg1日3回 <内服できない場合> 例)ベラパミル5mg1A (5mg/2mL)+生食50mLで用意し、15〜30分で点滴静注。 |
| LVEF評価困難 | LVEF評価困難な場合は心機能低下として対応する アミオダロンは心収縮力低下作用が小さく、洞調律復帰とレートコントロールの両方の作用を持つため使用しやすい 例)アミオダロン点滴(投与方法は頻脈徐脈の診察を参照) |
| +α | MgのIVにより洞調律への自然転換率が増加すると示唆されている 例)硫酸Mg1A+生食50mLを30分かけて投与? |
【リズムコントロール(専門医が行う)】
| 器質的心疾患(+) | 症候性頻拍(+) | レートコントロール+カルディオバージョン |
| 症候性頻拍(ー) | アミオダロン | |
| 器質的心疾患(ー) | PAF | Ia群(プロカインアミド or ジソピラミド) |
| 持続性AF | ベプリジル、アミオダロン |
抗凝固療法(CHADS2スコアなど)
PAF、持続性AF、永続性AF、いずれにせよ抗凝固薬の適応を検討する。
【CHADS2スコア(心原性塞栓症の発生リスク評価)】
1点以上でDOAC推奨(腎機能確認)、ワルファリン考慮。生体弁はこちら。
MSに伴うAF、人工弁に伴うAF、腎機能障害の場合にはワルファリン推奨(INR 2.0〜3.0)。
| 危険因子 | 点数 | |
| C | うっ血性心不全、左心機能不全 | 1 |
| H | 高血圧 | 1 |
| A | 75歳以上 | 1 |
| D | 糖尿病 | 1 |
| S2 | 脳梗塞またはTIA既往 | 2 |
【出血リスク評価(HAS-BLEDスコア)】
出血リスクが高い3点以上でも禁忌となるわけではなく、塞栓と出血リスク及び患者の希望を総合的に評価して行う。また、高血圧(sBP135以下へ)・併用薬・アルコール摂取など修正可能な因子を含むため可能な範囲で介入を努める。
【抗凝固薬】
| ダビガトラン (プラザキサ®) |
110mg or 150mg 1日2回 ※特異的中和薬(イダルシズマブ静注)が使用可能 ※ジルチアゼムなどのP糖蛋白阻害薬併用、70歳以上、消化管出血の既往、Ccr 30〜50mL/minの場合は減量が必要 ※APTT過延長(80秒以上)を認める場合は中止や他剤への変更を検討 |
| リバーロキサバン (イグザレルト®) |
15mg 1日1回 ※Ccr 15〜50mL/minの場合は10mgへ減量が必要 ※PT過延長(20秒以上)を認める場合は中止や他剤への変更を検討 |
| アピキサバン (エリキュース®) |
5mg 1日2回 ※腎機能障害に対する安全性が高い ※80歳以上、体重60kg以下、Cr1.5mg/dL以上のうち2つ以上満たす場合、2.5mgへ減量が必要 |
| エドキサバン (リクシアナ®) |
60mg 1日1回 ※出血が少ない ※体重60kg以下、ジルチアゼムなどのP糖蛋白阻害薬併用、Ccr 15〜50mL/minのいずれかを満たす場合、30mgへ減量が必要 ※PT過延長(20秒以上)を認める場合は中止や他剤への変更を検討 |
| ワルファリン | 2〜3mgで開始、PT-INRを指標に0.25〜0.5mgごとに増減 ※PT-INRは弁膜症性AFでは2〜3、非弁膜症性では1.6〜2.6を目標値 ※至適PT-INR達成率(TTR)60%以上を目指す ※出血時はVK10mg静注+FFP投与検討 |
心房粗動 AFL:Atrial flutter
| 病態 | 三尖弁周囲のリエントリーによって心房が毎分約300回と高頻度で規則的に収縮するが、AFと異なり心房は収縮する。心房粗動の多くは心房細動と同じく基礎心疾患を持つ。 心房が毎分300回興奮してもそのまま心室に伝わるわけではなく、多くの場合2:1伝導・4:1伝導となる。2:1伝導の場合は半分が心室に伝わるため心拍数は150回、4:1伝導の場合は75回となる。 |
| 症状 | 4:1伝導の場合(HR 75)、ほとんどが無症状。 2:1伝導の場合(HR150)、動悸や胸部不快感を訴える。 |
| 検査 | 【心電図】 ①Ⅱ誘導でP波欠如 ②Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導で鋸歯状F波、下壁誘導のF波は基線に戻らない。(2:1伝導では2回のF波で1回QRS出現。4:1伝導では4回のF波で1回QRS出現。いずれも1回はT波とF波が重なっている!) ③RR間隔整(2:1伝導は心拍数150回程度)、Narrow QRS |
| 治療 | 2:1伝導が続いて頻脈になっている場合は、AFと同様にジギタリス・Ca拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)・β遮断薬を投与して房室伝導を抑制する。 1:1伝導などの緊急事態はカルディオバージョンを行う。他にも一時ペーシング(心房ペーシングや食道ペーシング)によって洞調律に戻す方法もある。薬物による洞調律化はIa群やIc群を投与するが成功率はAFほど高くない。 根治するにはカテーテルアブレーション(三尖弁輪と下大静脈の間を焼灼) |


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