糖尿病の急性合併症(高血糖緊急症)

内分泌代謝科

DKAとHHSの病態と鑑別点

DKA(糖尿病ケトアシドーシス) HHS(高血糖高浸透圧症候群)
高度のインスリン欠乏とインスリン拮抗ホルモン増加で、脂質分解が亢進して高血糖と著しいケトン体の蓄積が起こり、脱水と意識障害をきたす病態。SGLT2阻害薬内服中は注意 高齢者では口渇感が少なく、高血糖および浸透圧利尿による脱水から高浸透圧に陥っても飲水が不十分であるため、高浸透圧が進行し循環不全や意識レベルの低下をきたしうる病態。

高血糖の診察

高血糖時の症状

意識障害 脳細胞内脱水による精神神経症状、けいれん
脱水 多尿による脱水により皮膚・口腔粘膜乾燥、血圧低下、頻脈
悪心嘔吐、腹痛 ケトン体蓄積による消化器症状

①高血糖時の検査

Aガス 動脈血pH、AG、乳酸、血糖
AG↑の代謝性アシドーシス:ケトン体蓄積による
※頻回の血ガスフォローが必要なため、早めにAラインを確保
血液検査 HbA1c血漿浸透圧血中ケトン体、抗GAD抗体(1型と2型の区別)
WBC↑:ケトン体蓄積による
高K血症:インスリン作用不足によって細胞内Kが細胞外に移動
低Na血症:血管内高浸透圧、但し正常〜高Na血症の場合は脱水が高度の可能性
尿検査 尿ケトン体、尿糖
※尿中ケトン体陰性であればDKA否定できる(AKAは否定できない)

②診断基準

病態には個人差があり、DKAとHHSは明確に区別できない場合もある。

③誘因の評価

インスリン拮抗ホルモンが増加(6I)
①Infection(感染症
②Infarction(心筋梗塞や脳梗塞などの重症疾患)
③Inflammation(膵炎、外傷、手術などの強い炎症)
④Insulin deficiency(インスリン不足・インスリンなどの怠薬)
⑤Iatrogenic(医原性:高カロリー輸液、ステロイド投与など)
⑥Infant(妊婦)
⑦その他:嘔吐・下痢・飲水不良などによる脱水(高齢者、ADL低下者に多い)
インスリン自体の欠乏
①アドヒアランス不良
②膵炎
薬剤性
①ステロイド
②サイアザイド系利尿薬
③Ca拮抗薬
④β遮断薬
⑤フェニトイン
⑥SGLT2阻害薬(血糖が上昇しないDKAの発症リスクあり
⑦MARTA
⑧アリピプラゾール
⑨免疫チェックポイント阻害薬(1型DM発症)

④初期治療(脱水補正:心不全に注意しながら投与)

高血糖となると浸透圧利尿でさらに脱水となる(細胞内外液量両方減少)。循環血漿量低下により交感神経優位となり、さらに高血糖となり、病態が悪化する。

重度脱水 生食 500〜1000mL/hr(ボーラス)で点滴開始
軽度脱水(低Na血症) 生食 250〜500mL/hrで点滴開始
軽度脱水(正常〜高Na血症) ハーフ生食 250〜500mL/hrで点滴開始
血糖値がDKAで200、HHSで300に達したら、5%ブドウ糖+ハーフ生食150〜250/hrで投与

⑤初期治療(電解質補正:2時間毎に確認)

K3.3mEq/L未満 インスリン中止+Kを20〜30mEq/hrで補充
K3.3〜5.2mEq/L 補液1Lに対しKを20〜30mEq/hrで補充、4〜5mEq/Lを目標
K5.3mEq/L以上 K投与なし、2時間後に再確認

⑥初期治療(高血糖是正:少量インスリン持続静注)

急激な血糖低下は浸透圧変化による脳浮腫をきたすため注意

原則 持続インスリン0.1単位/kgを投与後、0.1単位/kg/hrで持続投与開始、50〜75mg/dL/hr程度の血糖降下速度を目標とし、1〜3時間毎に注入速度調整
例)ヒューマリン®R50単位/0.5mL+生食49.5mL(1単位/mL)で作成。50kgの場合、5単位(5mL)をボーラスした後、5単位(5mL)/hrで持続投与
DKAの場合 血糖値が200以下に低下したら、0.02〜0.05単位/kg/hrに減量し、DKAが改善するまで150〜200mg/dLに維持
HHSの場合 血糖値が300以下に低下したら、0.02〜0.05単位/kg/hrに減量し、意識が回復するまで200〜300mg/dLに維持 (200mg/dL前後で安定したら皮下注射に切り替えることが多い)

⑦初期治療(アシドーシス補正)

DKAの場合はさらにインスリン作用不足によるケトン体増加により著名なアシドーシスも加わる。

・pH6.9未満:NaHCO3 100mmol+生食400mL+塩化K 20mEqを2時間でpH7以上となるまで繰り返す(輸液とインスリンが始まると改善することも多いため、過剰な補正にならないよう注意する)

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