腰痛の診察
腰痛の分類
| 機能性腰痛 | 血液検査や画像検査などで原因がつかめる腰痛 |
| 非機能性腰痛 | 血液検査や画像検査などで原因がつかめない腰痛(腰痛の大部分を占める) |
| 神経根症 | 脊髄や神経根が圧迫されて発症する痺れや腰痛 |
| ↑脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、腰椎椎間板ヘルニア |
①本当に腰痛か確認
| 胸背部痛 | 肩甲骨下縁より上方→上背部痛の診察へ |
| 腰背部痛 | 肩甲骨下縁より下方→腰痛の診察開始 |
②問診
| O | 突発性(何時何分何秒に発症)、急性(発症4週未満)、慢性(発症12週以上) |
| P | 安静と鎮痛薬で無効か、どんな時悪化・改善するか |
| Q | NRS(激痛か?) |
| R | 疼痛・痺れ・感覚低下の部位を確認 |
| S | 最近の感染症、外傷の既往、膀胱直腸障害 ※膀胱直腸障害:尿が出にくい、頻尿、尿失禁、便秘、肛門に力が入らない、便失禁 |
| T | 発症して4週間未満?12週以上持続? |
| 既 | 悪性腫瘍の既往、免疫不全 |
| 薬 | 特にステロイド |
③突発性発症の場合
突発性の場合はバイタルを確認し、ダイナミック造影CTで緊急疾患を除外する
| ①大動脈解離・大動脈瘤破裂 | 裂けるような激痛 |
| ②脊髄梗塞・前脊髄動脈症候群 | 突然の背部痛と同時に弛緩性麻痺 |
| ③腎梗塞 | 突然の片側性の背部痛、AF、血尿、CVA叩打痛 |
| ④脊髄圧迫・馬尾症候群 | 腰痛→運動麻痺→膀胱直腸障害の順に進行:腰痛で歩けない |
④腰痛のRed flag(ツナフィッシュ)を除外
| T | Trauma | 外傷歴(骨折) |
| U | Unexplained weight loss | 体重減少(悪性腫瘍の転移、多発性骨髄腫) |
| N | Neurological signs | 膀胱直腸障害:尿閉、便尿失禁、下肢脱力(馬尾症候群) |
| A | Ache | 夜間痛、安静時痛、進行性疼痛(悪性腫瘍、感染症、骨折) |
| F | Fever | 発熱、悪寒戦慄(感染症:化膿性脊髄炎、硬膜外膿瘍、椎間板炎) |
| I | Intravenous drug use | 静注薬物使用 |
| S | Steroids | 長期ステロイド使用(骨折) |
| H | History of cancer | 悪性腫瘍の既往 |
⑤身体所見・検査所見
| 背部 | 脊椎叩打痛、CVA叩打痛 |
| 血管 | 膝窩動脈・足背動脈触知 |
| 神経 | 股関節屈曲(L1〜3)、膝伸展(L3〜4)、母趾背屈(L5)、爪先立ち(S1) 膝蓋腱反射(L3〜4)、アキレス腱反射(S1)、肛門括約筋収縮(S2〜4) |
| 試験 | SLRテスト:坐骨神経に沿った疼痛誘発で陽性(腰椎椎間板ヘルニア疑い) FNST:大腿神経に沿った疼痛誘発で陽性 |
| 画像 | CT |
| 血液 | 発熱の場合は血液培養 |
腰痛の鑑別
| ①鑑別 | 脊柱圧迫骨折(低エネルギー外傷)、破裂骨折・横突起骨折(高エネルギー外傷)、尿路結石、大動脈解離、急性腰痛症 |
| ②症状 | 腰痛 |
| ③身体所見 | 脊柱叩打痛、恥骨・坐骨の圧痛 |
| ④Xp・CT | 高エネルギー外傷の椎体の変形は破裂骨折で即整形コンサルト |
整形外科的腰痛の鑑別
体動時の明らかな増悪、外傷機転の場合は整形外科的腰痛の可能性
| MMの病的骨折 | 多発性骨髄腫の既往 |
| 癌の骨転移 | T4より上での骨折は癌の骨転移の可能性あり |
| 急性腰痛症 | 重いものを持ち上げた時に発症 |
| 椎間板ヘルニア | 腰痛、下肢の疼痛や痺れ、20〜40歳代に多い |
| 脊柱管狭窄症 | 伸展で痛みが増強し、間欠性跛行、高齢者に多い |
| 脊椎圧迫骨折 | 側臥位で棘突起の圧痛・叩打痛あり、ギャッチアップで増悪する腰痛 |
| 脊椎すべり症 | |
| 筋・筋膜性腰痛 | スポーツで急激な負荷 |
非整形外科的腰痛の鑑別
| 問診、身体診察 | ||
| 血 | 大動脈解離 | |
| 大動脈瘤破裂 | 大動脈瘤の既往、心停止状態 | |
| 消 | 急性膵炎 | |
| 膵癌 | 体重減少 | |
| 胆石症・胆嚢炎 | ||
| 脾梗塞 | ||
| 消化管穿孔 | ||
| 腎 | 腎盂腎炎 | CVA叩打痛 |
| 腎梗塞 | AF | |
| 尿管結石 | CVA叩打痛 | |
| 腎周囲膿瘍 | ||
| 前立腺炎 | ||
| 骨 | 脊髄硬膜外膿瘍 | 発熱、安静で軽減しない疼痛、立位で悪化、膀胱直腸障害 |
| 化膿性脊椎炎 | 発熱 | |
| 結核性脊椎炎 | 亜急性〜慢性の発熱、Pottの三徴 | |
| 脊椎関節炎 | アキレス腱付着部の圧痛、安静にて悪化・動かすと改善、若年 | |
| 椎間板炎 | ||
| 筋 | 腸腰筋膿瘍 | 発熱、股関節を伸展させると腰痛 |
| 婦 | 子宮内膜症 | |
| 骨盤内炎症性疾患 |
非機能性腰痛
腰痛の9割が2週間で改善する。4〜6週間は対症療法で診て良い。
| 急性腰痛 | NSAIDs頓服、無効ならデュロキセチン |
| 慢性腰痛 | 運動療法(マッケンジー法など)が主体、期間限定でNSAIDsやトラマドール頓服 |
外傷性の腰痛
脊椎圧迫骨折
| 病態 | 典型的には尻餅をつく・転倒して背部を打撲など低エネルギー外傷で生じる。背景に骨粗鬆症(最多)、椎体への腫瘍浸潤などがある。 胸腰椎移行部や腰椎に好発し、椎体前上方の終板に生じることが多い。 陳旧性のものがXpやCTで偶発的に見つかることが多い。 |
| 症状 | ①急性期:骨折部に一致した腰痛があり体動困難となる(無症状の場合もある) ※脊柱圧迫骨折の2/3は無症候性で疼痛の訴えはない→故に見逃されやすい! ②亜急性期:2週間〜1ヶ月で疼痛漸減(高齢者の場合はより長期になる場合もある) ※疼痛は椎体が圧迫変形するため生じる! 【関連症状】 ①関連痛:椎体が潰れ、椎間孔変形による神経圧迫で臀部痛・帯状痛が生じる ②円背:変形が強いと生じ、腰背部痛・心肺機能低下・逆流性食道炎を引き起こす ③偽関節形成:数ヶ月経過しても疼痛が継続する場合は偽関節形成の可能性→MRI |
| 検査 | 【身体所見】 骨折部の圧痛・脊椎叩打痛(症状があれば圧迫骨折の可能性あり) 【画像検査】 ①X線:正面と側面の2方向で撮像、前回画像と比較して椎体高が減少 ②CT:前回画像と比較して椎体高が減少(CTでは新鮮骨折かは断定できない) ※転倒直後の矢状断の楔状椎・魚椎の変化は新鮮骨折の場合もあるが多くは陳旧性圧迫骨折で、新鮮圧迫骨折が経時的にこのような形に変形していく ③MRI:骨浮腫を反映したT1WIで低信号・脂肪抑制T2 or STIRで高信号で新鮮骨折と診断(T1WIやSTIRの異常信号は約1ヶ月経過すると次第に消失していく)※STIR :脂肪組織の信号を選択的に抑制して病変をより鮮明に描出する技術 |
| 初期 | 徐痛:アセトアミノフェン(体重×15)mgを点滴 体位:上体を起こさず安静にする(座ると脊椎圧迫が進行する) |
| 治療 | 麻痺や膀胱直腸障害がなければ緊急性はなく、基本的に保存的加療となる 【保存的加療】 ①急性期:仰臥位にて2〜3週間安静にし、極力座位や立位を避けて骨癒合を待つ ②亜急性期:疼痛軽減後にコルセットを約2ヶ月程度着用し起立・歩行を開始する ③回復期:コルセットを外して活動範囲を広げる【薬物療法】 鎮痛剤、骨粗鬆症がある場合はビスホスホネート製剤など 【手術】 経皮的椎体形成術(PVP):椎体が潰れる前に医療用セメントで椎体を硬化させる |
| 転帰 | 本人や家族が日常生活可能と思うなら帰宅、不可能なら入院 |
脊椎破裂骨折・横突起骨折
| 脊椎破裂骨折(緊急疾患) | 横突起骨折 | |
| 病態 | 転落による高エネルギー外傷での腰痛が典型で、椎体が後面にかけて変形が起こり脊柱管へ骨片が突出する。 | 転落や直接腰を強打する高エネルギー外傷での腰痛が典型。 |
| 症状 | ①腰痛 ②神経症状:四肢麻痺 |
①腰痛 |
| 検査 | 【身体所見】 骨折部の圧痛・脊椎叩打痛 【画像検査】 ①X線:椎体の変形 ②CT:椎体の脊柱管へ突出像 ※破裂骨折は陳旧性骨折という概念はないため椎体所見あれば新鮮骨折である |
【身体所見】 椎体から1〜2cm離れた傍脊柱筋の圧痛 【画像検査】 ①X線:ほぼ判断できない ②CT:横突起の骨折像 |
| 治療 | 脊髄圧迫による障害が出ている場合、受傷から6時間以内に手術が適切 | 基本的に保存的加療となる |
| 転帰 | 神経症状の有無にかかわらず、診断したら即時整形コンサルト | 本人や家族が日常生活可能と思うなら帰宅、不可能なら入院 |
非外傷性の腰痛
腰椎椎間板ヘルニア
| 疫学 | 20〜40歳代の男性に好発(3:1) |
| 病態 | 椎間板の変性により、椎間板の髄核が突出・脱出したもの。L4/5、L5/S1に好発。![]() |
| 症状 | 【局所症状】 腰痛、下肢痛、前屈制限 【脊髄圧迫症状】 基本なし(下位腰椎は馬尾神経のため) 中心性巨大ヘルニア:馬尾神経を圧迫し、神経性間欠性跛行、膀胱直腸障害や会陰部の知覚障害 【神経根圧迫症状】 片側性の障害レベルのみの知覚障害・運動障害、腱反射低下〜消失。 ※詳細はL3〜S1障害の高位診断を参照 |
| 検査 | 【疼痛誘発試験(神経根障害)】 ①下肢伸展挙上テスト(SLRテスト):仰臥位で膝関節を伸展させたまま下肢を挙上させて行くと70度未満の挙上で坐骨神経に沿った疼痛が誘発される。その後、膝・股関節を屈曲させた時に殿部痛が軽減されればラセーグ陽性とする。 ②大腿神経伸展テスト(FNSテスト):伏臥位で膝を屈曲させたまま膝関節を挙上させていくと大腿神経に沿った疼痛が誘発される。 【画像検査】 MRI: |
| 治療 | 【保存療法】中腰作業の回避し、NSAIDsなど服用 【手術】膀胱直腸障害やMMT3以下の下肢麻痺を伴う場合は緊急手術。 |
【L3〜S1障害の高位診断】(ヘルニア部分より1つ下の椎間孔から出る神経痕が障害)
| 障害神経根 | 筋力低下部位、反射異常 | SLRテスト | FNSテスト | |
| L3/4 | L4 | 大腿四頭筋 膝蓋腱反射↓ |
ー | + |
| L4/5 | L5 | 前脛骨筋、長母指伸筋→足関節背屈↓ | + | ー |
| L5/S1 | S1 | 下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋 アキレス腱反射↓ |
+ | ー |
脊椎分離症(腰椎分離症) spondylolysis
| 疫学 | 10代前半の男児に好発。発育期に激しいスポーツ活動を続けた人に多い。 |
| 病態 | スポーツの練習による慢性的な負荷などが原因となり、主に腰椎L4とL5の椎弓根部の上下関節突起部分が断裂する疲労骨折。断裂によって椎間板変性が進行すると、分離すべり症へ発展する。 |
| 症状 | ①運動時の腰痛(特に腰をそる、ひねる動作時) |
| 検査 | 【画像検査】 単純X線:45度斜位像で関節突起間に分離部を確認(スコッチテリアの首輪) |
| 治療 | コルセット装着して安静 |
脊椎すべり症(腰椎すべり症) spondylolisthesis
| 腰椎分離すべり症 | 腰椎変性すべり症 | |
| 病態 | 椎弓が分離して、腰椎が前方にずれる疾患。10代に腰椎分離症罹患から長年かけて移行する。L4/5に好発する。 | 加齢と共に腰椎を安定させる組織が変性して腰椎が前方にずれる疾患。椎弓の分離を伴わない。L4/5に好発する。 |
| 症状 | 腰痛 | 脊柱管狭窄症状、馬尾神経症状 |
| 検査 | 【画像検査】 L4の前方すべりを確認 |
左に同じ |
| 治療 | 【保存療法】コルセット装着して安静 | 左に同じ |
腰痛症 low back pain
| 病態 | 坐骨神経痛や下肢の神経症状を伴わず、画像検査により明らかな異常所見を認めない腰痛。発症から4週未満を急性腰痛(ぎっくり腰)、発症から3ヶ月以上を慢性腰痛、その間を亜急性腰痛と分類される。原因は脊椎とその周囲運動器由来、神経由来、内臓由来、血管由来、心因性、その他の6つに分類される。 |
| 症状 | 急性:腰椎の運動制限、屈曲困難 慢性:腰全体のだるさや重み、抑うつ、身体表現性障害 |
| 検査 | 画像検査により明らかな異常所見を認めない |
| 治療 | 【保存療法】 急性腰痛では安静(仰臥位で膝下に枕を置き、腰椎の前弯を減らす体位をとる) 薬物療法、神経ブロック療法、装具療法、運動療法(慢性疼痛のみ) |
③MRI:骨浮腫を反映した
③回復期:コルセットを外して活動範囲を広げる
※破裂骨折は陳旧性骨折という概念はないため椎体所見あれば新鮮骨折である


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