神経伝達物質
ドパミンと受容体
| 分布 | 関連 | |
| D1 | 大脳皮質、線条体 | 動機づけ、認知機能、運動の調節 |
| D2 | 線条体、脳幹 | 動機づけ、認知機能、運動の調節、悪心嘔吐 |
| D3 | 中脳辺縁系 | 報酬、動機づけ |
| D4 | 扁桃体、海馬、大脳皮質 | NAdもD4に高い親和性あり |
| D5 | 海馬、視床下部 |
E/Iバランス
| E(興奮) | グルタミン酸 | グルタミン酸受容体(NMDA受容体、AMPA受容体) |
| I(抑制) | GABA | GABA-A受容体 |
D2受容体遮断薬
D2遮断薬の特徴は、高用量ではD2遮断作用が強く、低用量ではその他の受容体遮断の作用が目立ってくることである。よって、幻覚妄想や躁状態では高用量を、抑うつや不安には低用量を用いる。
4つのドパミン経路と作用と副作用
| ドパミン受容体遮断時の作用・副作用 | |
| ①中脳皮質路 | 陰性症状&認知機能障害悪化:前頭前皮質の働きが低下するため |
| ②中脳辺縁系路 | 陽性症状(幻覚・妄想)軽減 |
| ③黒質線条体路 | 錐体外路症状:運動調節する線条体のドパミンニューロンがSTOP ①服用数日以内に急性ジストニア:筋緊張による斜頸、舌の突き出し ②服用数週間以内にアカシジア(静座不能):そわそわして落ち着かない ③服用数週間以内にパーキンソニズム:振戦、筋強剛、動作緩慢、小刻み歩行 ④長期使用で遅発性ジスキネジア:頬・顎・舌に生じる不随意運動 |
| ④漏斗下垂体路 | 高PRL血症:乳汁・無月経・骨粗鬆症リスク増加、乳癌リスク増加の可能性 |
| +α(延髄CTZ) | 制吐作用:延髄CTZのD2遮断 |
| +α(H1) | 鎮静作用、食欲亢進→体重増加(満腹中枢H1遮断) |
| +α(α1) | 鎮静作用、血圧低下による起立性低血圧やめまい |
| +α(5-HT2A) | ①陽性症状(幻覚・妄想)軽減:中脳辺縁系路のD2受容体遮断による ②陰性症状改善:中脳皮質系→前頭前野のD1機能亢進 ③食欲亢進→体重増加、耐糖能異常、脂質代謝異常 |
| +α(M) | 中枢性では認知機能障害・せん妄、末梢性では便秘などの抗コリン作用 |
| 多因子 | 誤嚥性肺炎を生じやすい、水中毒を生じることがある |

錐体外路障害治療薬
| 抗コリン薬 | 錐体外路障害は背側線条体に投射するドパミンニューロンの働きが弱くなり相対的にコリン介在性ニューロンが強くなるため出現する、そのため、抗コリン薬で錐体外路症状を抑えることができる。ただし、大脳皮質へ投影するAChニューロンも抑えるため認知機能障害を引き起こす一因となる。 |
| ①ビペリデン | アキネトン® |
| ②トリヘキシフェニジル | アーテン® |
| β遮断薬 | アカシジアでは扁桃体のNAd過活動が一因と考えられており、それを抑制するためβ遮断薬が第一選択となる。 |
| ①プロプラノロール | インデラル®:喘息、低血圧に注意 |
| BZ系 | |
| ①クロナゼパム | リボトリール® |
定型抗精神病薬
【ブチロフェノン系】
| ハロペリドール | セレネース® |
| 保険適用 | 統合失調症、双極症の躁状態 |
| 最大投与量 | 6mg/日(適宜増減)、注射製剤の場合は10mg/日(適宜増減) |
| 適応外 | せん妄、強迫症 |
| 適応外使用法 | 1〜5mg(多くは2mg前後で十分、5mg以上使用しても鎮静効果) |
| 注意点 | QT延長、α1に多少作用する程度なので鎮静作用はそれほど大きくない |
【フェノチアジン系】
| クロルプロマジン | コントミン® |
| 保険適用 | 鎮静作用に優れる |
| レボメプロマジン | ヒルナミン®、レボトミン® |
| 保険適用 | 鎮静作用に優れる |
【ベンザミド系】
| スルピリド | ドグマチール® |
| 保険適用 | 胃十二指腸潰瘍、うつ病、統合失調症 |
| 最大投与量 | ①胃十二指腸潰瘍:150mg/日(適宜増減) ②うつ病:600mg/日(適宜増減) ③統合失調症:1200mg/日(適宜増減) |
| 使用法 | 12.5mg/日から開始、50mg/日が上限(高齢者は25mg/日が上限) |
| 特徴 | 食欲不振の目立つうつ状態、原因不明の消化器症状に使用することが多い |
| 注意点 | 150mg/日でも錐体外路症状や高PRL血症を生じやすい |
非定型抗精神病薬
【セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)】
| リスペリドン | リスパダール® |
| 保険適用 | 統合失調症、小児期のASDに伴う易刺激性 |
| 最大投与量 | 統合失調症:12mg/日 |
| 適応外 | せん妄(H1遮断作用あり) |
| 適応外使用法 | |
| 注意点 | 高PRL血症生じやすい、QT延長 |
| パリペリドン | インヴェガ®(徐放製剤) |
| 保険適用 | 統合失調症 |
| 最大投与量 | 統合失調症:12mg/日 |
| 適応外 | |
| 適応外使用法 | |
| 注意点 | 高PRL血症生じやすい、禁忌:CCr50未満(腎排泄型) |
| ペロスピロン | ルーラン® |
| 保険適用 | 統合失調症(1日3回投与の短時間作用型で統合失調症には使いにくい) |
| 最大投与量 | 統合失調症:48mg/日 |
| 適応外 | 不安、不眠、せん妄、BPSD |
| 適応外使用法 | 不安時に2〜4mg頓服 |
| 特徴 | 抗不安作用も併せ持つ |
| 注意点 | 食後投与推奨(空腹時で吸収低下) |
| ブロナンセリン | ロナセン® |
| 保険適用 | 統合失調症 |
| 最大投与量 | 統合失調症:24mg/日(小児は16mg/日)、テープ剤は80mg/日 |
| 適応外 | せん妄 |
| 適応外使用法 | |
| 特徴 | 体重や代謝系への影響が少ない |
| 注意点 | 低用量では鎮静作用はほとんどない |
【多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)】
| クエチアピン | セロクエル® |
| 保険適用 | 統合失調症(D2遮断作用弱いためあまり使われない) |
| 最大投与量 | 統合失調症:750mg/日 |
| 適応外 | せん妄、不眠 |
| 適応外使用法 | |
| 特徴 | 鎮静作用のためせん妄や不眠に使用される |
| 注意点 | 禁忌:糖尿病、抗コリン作用、QT延長 |
| オランザピン | ジプレキサ® |
| 保険適用 | 統合失調症、双極症、抗癌剤に伴う悪心嘔吐 |
| 最大投与量 | 統合失調症・双極症:20mg/日、抗癌剤に伴う悪心嘔吐:10mg/日(筋注製剤は20mg/日) |
| 適応外 | 身体疾患による食欲不振と体重低下 |
| 適応外使用法 | 1mg/日以下の少量投与 |
| 特徴 | |
| 注意点 | 禁忌:糖尿病(筋注製剤除く)、鎮静作用強い、喫煙で代謝促進、QT延長 |
| アセナピン | シクレスト®(舌下錠) |
| 保険適用 | 統合失調症 |
| 最大投与量 | 20mg/日 |
| 適応外 | 嚥下困難な患者のせん妄 |
| 適応外使用法 | 5mg半錠(2.5mg)を舌下投与 |
| 特徴 | 舌下錠のため嚥下障害に使いやすい |
| 注意点 | QT延長、口に含むとピリピリする、CYP2D6阻害 |
| クロザピン | クロザリル® |
| 保険適用 | 治療抵抗性統合失調症 |
| 最大投与量 | 600mg/日 |
| 特徴 | TDMが必要 |
| 注意点 | 禁忌:糖尿病、無顆粒球症と心筋炎(発熱に注意)、強い抗コリン作用で便秘(腸閉塞に注意)、喫煙で代謝促進 |
【ドパミン受容体部分作動薬(DPA)】
部分作動薬:低用量では弱く受容体に作用するためアゴニスト的に、高用量では受容体を埋めてパーシャルアゴニストの結合を妨げるためアンタゴニスト的に働く薬
中脳辺縁系では拮抗薬として、中脳皮質系・黒質線状体系では部分作動薬として働くため陽性症状+陰性症状に効果があり、錐体外路症状も軽減される。5-HT遮断作用もあるため中脳皮質系・黒質線状体系をさらに活性化する。
| アリピプラゾール | エビリファイ® |
| 保険適用 | 統合失調症、双極症の躁状態、うつ病、小児期のASDに伴う易刺激性 |
| 最大投与量 | 統合失調症・双極症の躁状態:30mg/日、うつ病:15mg/日 |
| 適応外 | 高PRL血症 |
| 適応外使用法 | D2遮断薬+アリピプラゾール1.5mg/日(少量投与) |
| 特徴 | 体重や代謝系への影響が少なく鎮静がかかりにくい |
| 注意点 | D3部分刺激による報酬・動機づけ刺激で衝動的行動 |
| ブレクスピプラゾール | レキサルティ® |
| 保険適用 | 統合失調症 |
| 最大投与量 | 統合失調症:2mg/日 |
| 特徴 | アリピプラゾールより受容体刺激作用が弱くアンタゴニスト作用強い |
| 注意点 |
グルタミン酸神経伝達抑制薬(E/IバランスのEを抑える薬)
気分安定薬
| 炭酸リチウム | リーマス® |
| 保険適用 | 躁病および躁うつ病の躁状態 |
| 最大投与量 | 1200mg/日 |
| 特徴 | 細胞内のセカンドメッセンジャーに直接介入し、細胞内Caシグナル伝達を調節し、過剰なCaによる神経毒性を和らげると考えられている。自殺を予防する効果が最も高いため双極症の第一選択となる。 |
| 注意点 | 腎排泄型、中毒症状回避のためTDM必要(0.6〜1.2mEq/Lと有効域狭い)、薬効発現に1週間以上必要 |
| 併用注意 | NSAIDs、利尿薬、ARB・ACEI、SGLT2阻害薬など |
| 副作用 | ・消化器:悪心嘔吐、下痢(消化器症状は徐々に消失) ・循環器:QT延長、徐脈 ・神経:振戦、運動失調、構音障害、混乱や焦燥、意識障害、けいれん ・甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの放出抑制あるいは合成阻害 ・腎機能障害:長期治療で約25%に認める ・尿崩症 ・副甲状腺機能亢進症 ・体重増加 |
| バルプロ酸 | デパケン®、セレニカ® |
| 保険適用 | 各種てんかん・てんかんに伴う性格行動障害(不機嫌、易怒性など)、躁病および躁うつ病の躁状態、片頭痛発作の発症抑制 |
| 最大投与量 | 添付文書参照 |
| 特徴 | ニューロンのNaチャネルとCaチャネルを阻害して興奮性伝達を抑制する |
| 注意点 | 妊娠可能女性には不向き |
| 副作用 | 体重増加、肝機能障害、急性膵炎、眠気、脱毛、カルニチン欠乏による低血糖(小児)、PCOS、高NH3血症、血小板減少症 |
| 併用禁忌 | カルバペネム系 |
| カルバマゼピン | テグレトール® |
| 保険適用 | てんかん・てんかんに伴う精神障害、躁病および躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態、三叉神経痛 |
| 最大投与量 | 添付文書参照 |
| 特徴 | ①強い興奮を伴う躁状態に有効(だが、気分安定薬としてはイマイチ) |
| ②部分てんかんに極めて有効 | |
| 注意点 | CYP3A4/2B6/1A2とグルクロン酸抱合を誘導、妊娠可能女性には不向き |
| 副作用 | 皮疹、ふらつき、複視、悪心嘔吐、下痢、血球減少、肝機能障害、低Na血症、聴覚障害 |
| ラモトリギン | ラミクタール® |
| 保険適用 | てんかん発作、双極症の再発・再燃抑制 |
| 最大投与量 | 添付文書参照 |
| 特徴 | ニューロンのNaチャネルを阻害して興奮性伝達を抑制する |
| 注意点 | 重篤な皮疹に注意 |
抗うつ薬の副作用
| ①悪心嘔吐 | シナプス後膜の5-HT3/5HT2C刺激により出現 |
| 継続服用すると徐々に軽快する。症状がひどい場合は制吐剤を併用する。 | |
| ②食欲不振 | シナプス後膜の5-HT2C刺激により出現 |
| ③眠気 | α1遮断・H1遮断により出現 |
| ④認知機能低下 | M1遮断により出現 |
| ⑤出血傾向 | セロトニンは血小板凝集に関与 |
| ⑥性機能障害 | シナプス後膜の5-HT2A刺激が一因 |
| ⑦QT延長 | リスクがある場合は心電図検査を行う |
| ⑧運動障害 | 5-HT2A/5-HT2C刺激して錐体外路障害、α2遮断でアカシジアなど出現 |
| ⑨アパシー | 感情の起伏が無くなる症状で、特にSSRI長期投与かつ用量依存性に出現 |
| ⑩SIADH | 主に低Na血症による倦怠感、頭痛、悪心嘔吐、けいれん、意識障害が出現 |
重篤な副作用(セロトニン症候群と悪性症候群)
| セロトニン症候群と悪性症候群の違い | |
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|
| セロトニン症候群 | |
| 疫学 | 発症率1% |
| 病態 | 主に抗うつ薬などで生じるセロトニン増加によって生じると考えられている。悪性症候群ほど重篤にはならない。 |
| 症状 | 原因薬開始の翌日までに生じることが多い ①前駆症状:悪心嘔吐下痢などの消化器症状 ②ミオクローヌスなどの不随意運動 ③自律神経症状 重症例では高熱が持続し、悪性症候群との鑑別が必要となる。 合併症:横紋筋融解症、腎不全、DICなど |
| 検査 | 腱反射亢進、ミオクローヌス |
| 鑑別診断 | ![]() |
| 治療 | 原因薬剤の中止+補液、高熱の場合はクーリング |
| 悪性症候群 | |
| 病態 | 主に抗精神病薬投与下でドパミンがブロックされて生じると考えられている。死に至る可能性がある重篤な副作用のため早期発見と対応が必要。 |
| 症状 | 主に抗精神病薬の開始や急激な増量の数日後に以下の症状で発症することが多い 高熱、発汗、頻脈、体の震え、筋硬直、錯乱など |
| 検査 | CK/LDH/AST上昇、WBC上昇、血清鉄低下 |
| 鑑別診断 | 鑑別としては脳炎などの神経疾患、甲状腺クリーゼなどの内分泌疾患、重症の熱中症や脱水などを考える。セロトニン症候群ではミオクローヌスが見られる。 早期診断はLevenson基準、確定診断はCaroff基準がある。 |
| 治療 | まず、原因薬剤の中止+クーリング+補液を行う。![]() |
| 悪性緊張病 | |
| 病態 | 緊張病の中で発熱や自律神経症状を合併し、時に死に至るもの。 |
| 緊張病 | 昏迷、カタレプシー、蝋屈症、無言症、拒絶症、姿勢保持、わざとらしさ、常同行動、外的な刺激が影響によらない興奮、しかめ面、反響言語、反響動作のうち、3つ以上が優勢なときに緊張病を強く疑う(DSM-5) |
| 症状 | 悪性症候群と同様 |
| 検査 | 【身体所見】 ・強制開眼への抵抗あり視線があちこちに動く、開眼時は追視を認める ・ひそめ眉、しかめ顔など表情変化あり ・筋緊張は亢進と低下どちらもある、他動への抵抗あり ・不自然な窮屈な肢位が見られる |
| 診断 | 【BZ系(ジアゼパム)静注による治療的診断】 ・BZ系を緩徐に静注しながら問いかけていくと、緊張が解けて注意集中力が増し、会話が可能になるといった変化が観察される。その結果、精神病性機序の場合、幻聴や被害妄想の内容を語り出す。そうでない場合、問いかけに対して幻覚妄想の存在を否定する。 ※意思発動性制御が解除されて興奮状態に交替する危険性に注意 ※BZ系の呼吸抑制などに注意 |
三環系抗うつ薬(TCA)
抗うつ薬というより睡眠薬として使用される機会が増えた。うつ病以外にも、抗コリン作用を利用して遺尿症にも用いられる。
| 作用機序 | シナプス前膜のモノアミントランスポーターを阻害し、NA・5-HTの神経終末への再取り込みを抑制する。その結果、シナプス間隙のNA・5-HTの量が増加し、数週間後にBDNF発現量を上昇させ、抗うつ作用を示すと考えられている。また、抗炎症作用を持つのも特徴である。 抗うつ作用を発揮するまで早くても2週間を要するが、副作用はすぐ現れる。 |
| 副作用 | H1、α1、M受容体遮断、電位感受性Naチャネル遮断作用も有するため副作用が多彩である。そのため心疾患患者や65歳以上の高齢者には投与しない方が望ましい。 |
| アモキサピン | アモキサン® |
| 保険適用 | うつ病 |
| 最大投与量 | 300mg/日 |
| 特徴 | D2遮断・5-HT遮断作用を持ち、抗精神病薬の効果も併せ持つ |
| 注意点 | 精神病性うつ病(重度のうつ病)に対して強い抗うつ作用を持つ三環系抗うつ薬のアモキサピンを使用する。D2遮断以外の作用を期待する場合は150mg/日以下で使用するが、D2遮断作用を期待する場合は200mg/日以上で使用する。 |
| アミトリプチリン | トリプタノール® |
| 保険適用 | うつ病、末梢性神経障害性疼痛、夜尿症 |
| 最大投与量 | うつ病・末梢性神経障害性疼痛:150mg/日、夜尿症:30mg/日 |
| 特徴 | 慢性疼痛に使用、SSRIやSNRIで出現する悪心嘔吐は出にくい |
| 注意点 | M遮断・H1遮断・α1遮断による副作用、QT延長、喫煙で代謝促進 |
| ノルトリプチリン | ノリトレン® |
| 保険適用 | うつ病 |
| 最大投与量 | うつ病:150mg/日 |
| 適応外 | 末梢性神経障害性疼痛 |
| 適応外使用法 | 5mg/日から開始し、50mg/日程度で使用(アミトリプチリンも同様) |
| 特徴 | アミトリプチリンを脱メチル化したもので、比較して副作用が軽度 |
| 注意点 |
四環系抗うつ薬
作用機序は三環系抗うつ薬と同じ。三環系抗うつ薬と比べて副作用が弱いが、主作用も弱く、SSRIが登場してから使用されなくなり睡眠薬として使用することが多い。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
「SSRIは効果発現までに早くて2週間、平均4週間、遅い人は6週間かかります。でも、副作用である吐き気や性機能障害は2週間以内にでます。副作用は2週間程度飲み続けていると慣れてきますので、最初2週間は服用を続けてください。」と患者に説明する必要がある。
| 作用機序 | 選択的に5-HTトランスポーターを阻害する。SSRIの反復投与によって長期間シナプス間隙に5-HTの増加が継続するとシナプス後膜の5-HT2A・5-HT2C受容体が脱感作され抗うつ作用が誘導される。 5-HT再取込み阻害作用によって抗不安・鎮静作用を示す。 |
| 副作用 | 標準量投与の場合と高用量投与の場合を比較しても効果に有意差はないが、副作用は用量依存的に出現する。標準量でも副作用が出現する場合には、標準量以下に減量を試みるのも良い。 ①賦活症候群(セロトニン症候群):稀であるが服用開始後比較的早期に5-HT過剰によって躁状態に似た焦燥、不安、不眠などを示す。若年者にイライラを認めた場合は早期に鎮静の強い抗うつ薬に切り替える必要がある(SSRI>三環系抗うつ薬)。 ④離脱症候群:服用中止後1〜3日にめまい(最多)、ふらつき、吐き気、後頭部にピリピリした頭痛(特異的症状)、情緒不安定、抑うつ気分などの多彩な症状を呈す。半減期の短いSSRIで起こりやすい。 |
代表的SSRI
| セルトラリン | ジェイゾロフト® |
| 保険適用 | うつ病、パニック障害、PTSD |
| 最大投与量 | 100mg/日 |
| 特徴 | |
| 注意点 | |
| エスシタロプラム | レクサプロ® |
| 保険適用 | うつ病、社会不安障害 |
| 最大投与量 | 20mg/日 |
| 特徴 | |
| 注意点 | |
| フルボキサミン | デプロメール®、ルボックス® |
| 保険適用 | うつ病、強迫性障害、社会不安障害 |
| 最大投与量 | 150mg/日 |
| 特徴 | |
| 注意点 | 広範なCYP阻害、添付文書に運転禁止の記載 |
| パロキセチン | パキシル® |
| 保険適用 | うつ病、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、PTSD |
| 最大投与量 | 添付文書参照 |
| 特徴 | NAT阻害作用あり |
| 注意点 | 広範なCYP阻害、抗コリン作用、性機能障害でやすい |
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
| 作用機序 | 選択的に5-HTおよびNAトランスポーターを阻害し、抗うつ作用を示す。さらに、前頭葉ではドパミントランスポーターの発現が乏しくNAトランスポーターがドパミンの再取り込みを担っている。そのため、前頭葉のドパミン系を亢進させる。 NA・5-HT選択的再取込み阻害作用によって、抗不安・鎮静作用+意欲亢進作用を示す。SNRIは脊髄の下行性疼痛抑制系の賦活による疼痛抑制作用もあるため慢性疼痛にも有効である。 |
| 副作用 | SSRIと同様の副作用を持つが、SSRIよりも軽度のことが多い。 α1刺激作用:NA過剰によって膀胱のα1刺激し、尿閉をきたすことがある。 β1刺激作用:NA過剰によって心β1を刺激し、動悸を起こすことがある。 |
代表的SNRI
| ミルナシプラン | トレドミン® |
| 保険適用 | うつ病 |
| 最大投与量 | 100mg/日(高齢者は60mg/日) |
| 特徴 | デュロキセチンや三環系抗うつ薬が使用できない慢性疼痛に使用 |
| 注意点 | 禁忌:尿閉 |
| デュロキセチン | サインバルタ® |
| 保険適用 | うつ病、糖尿病性神経障害・線維筋痛症・慢性腰痛症・変形性関節症における疼痛 |
| 最大投与量 | 60mg/日 |
| 特徴 | |
| 注意点 | 朝食後投与のため変更する際は処方箋にコメント追記、喫煙で代謝促進 |
| ベンラファキシン | イフェクサー® |
| 保険適用 | うつ病 |
| 最大投与量 | 225mg/日 |
| 特徴 | |
| 注意点 | 中断症状が起きやすい |
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性薬(NaSSA)
| 作用機序 | シナプス前膜のα2遮断によりNA・5-HTの分泌を促進させ、また、シナプス後膜の5-HT1A受容体を刺激し、抗うつ・抗不安作用を発揮する。 |
| 副作用 | ①消化器症状:特に便秘が多い ②その他:口渇、倦怠感、傾眠、動悸、めまい |
| ミルタザピン | リフレックス®、レメロン® |
| 保険適用 | うつ病 |
| 最大投与量 | 45mg/日 |
| 適応外 | 化学療法による悪心嘔吐 |
| 適応外使用法 | |
| 特徴 | ①5-HT2A遮断により性機能障害を生じにくい ②5-HT2C遮断により不安・嘔気・食欲低下を生じにくい ③5-HT3遮断により嘔気を生じにくい つまり、食欲不振・嘔気・強い不眠のある人に向いている |
| 注意点 | 半減期が20時間以上あり過鎮静に注意(特に40歳代以下の若い人) |
セロトニン再取り込み・セロトニン受容体モジュレーター(S-RIM)
| ボルチオキセチン | トリンテリックス® |
| 保険適用 | うつ病 |
| 最大投与量 | 20mg/日 |
| 特徴 | 5-HT2A遮断により性機能障害を生じにくい |
| 注意点 | 嘔気出やすい |


早期診断はLevenson基準、確定診断はCaroff基準がある。


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