形成外科 Common disease(頭部外傷・顔面外傷)

救急医学

脳損傷の分類

一次性脳損傷 外力によって不可逆的に脳実質が直接損傷(介入困難
二次性脳損傷 受傷後、様々な因子で生じ、適切な処置で軽減可能(介入可
二次性脳損傷には頭蓋因子と頭蓋因子がある
※頭部外傷後、来院時には話ができる程度の軽い意識障害の患者が、その後に急激な意識障害をきたすことがある。これは高齢者に多く、脳浮腫や遅発性外傷性脳内血腫の進展で急変する

頭部・顔面外傷のPrimary survey

ABCD

A 気道閉塞:下顎骨骨折により仰臥位にて舌が咽頭側へ落ち込む、口腔咽頭部の浮腫、大量出血、凝固塊、轢断(れきだん)組織片、入れ歯などで気道閉塞する。
B 低酸素血症:血液や異物の誤飲による低酸素血症が生じうる。
C 血圧低下頭部外傷単独では低血圧にはならない。合併する出血性損傷を考慮しつつ、脊髄損傷、心挫創、心タンポ、緊張性気胸なども考慮する。動脈損傷による大量出血→軟部組織創出血は圧迫で止血可能だが、顔面骨折に伴う口腔・鼻腔からの大量出血は止血困難であり、確実な気道確保を行った上でガーゼパッキング→べロックタンポン→バルーンカテーテル→外頸動脈結紮を用いた止血を行う。
D GCSを評価し、切迫するDを認めた場合は気管挿管の準備と脳神経外科にコンサルトする

頭部・顔面外傷のSecondary survey

問診

受傷機転 着地面の材質、外力の種類と強さ
意識障害 頭蓋内病変、脳振盪
健忘 脳振盪
頭痛 頭蓋内圧亢進、側頭骨骨折、脳振盪
嘔気嘔吐 頭蓋内圧亢進
めまい 脳振盪、側頭骨骨折
脱力 脳振盪
けいれん 外傷性てんかん
鼻出血 鼻骨骨折、眼窩壁骨折、頭蓋底骨折
鼻閉 鼻骨骨折に伴う浮腫、鼻中隔血腫
耳出血 側頭骨骨折
開口障害 頬骨弓骨折、下顎骨骨折
咬合不全 上顎骨骨折、下顎骨骨折

身体所見

視診 ①眼窩周囲の皮下血腫(前頭蓋底骨折)
②耳介後方の皮下血腫(中頭蓋底骨折)
③頭皮顔面の外表創、外耳孔・鼻孔・口腔内からの出血を確認
※外耳孔・鼻孔から流出する血液が水分が多くサラサラの場合ダブルリング試験を行う
④耳鏡で外耳道からの出血、鼓膜の破損、鼓膜内出血を確認
触診 ①頭部全体を触診し、皮下血腫、圧痛、陥没骨折を確認
②顔面の隆起部を指でなぞり圧痛の有無を確認しながら凹凸や異常な可動性を確認
神経 視力:視神経管損傷
瞳孔・対光反射:peaked pupil(眼球破裂疑い)
眼位:共同偏視では脳出血・脳梗塞疑い
眼球運動・複視:眼窩壁骨折、前頭洞骨折
眼振:
顔面の触覚:V2領域では眼窩壁骨折、V3領域では下顎骨骨折
顔面の運動:側頭骨骨折
指こすり音の聴取:側頭骨骨折
口蓋垂偏位(-/)、構音障害:
舌偏位:
推測 上記問診や身体所見から骨折の可能性を推測をする
①顔面上1/3:眼窩上縁〜頭髪縁
②顔面下1/3:下顎
③顔面中1/3:①と②の間

画像所見

画像検査による分類:ABCが安定化したことを確認したら画像検査に行ってよい

分類 小分類 詳細
頭蓋骨骨折 線状骨折、陥没骨折、縫合離解を生じる
円蓋部骨折 【緊急手術を考慮】
①1cmを超える陥没骨折
②髄液流出のある開放性陥没骨折
③陥没骨折による静脈洞圧迫に起因する静脈還流障害
頭蓋底骨折 【頭蓋底骨折を疑う所見】
①眼周囲や耳介後部の皮下出血斑、鼻出血、耳出血
②耳鏡検査による鼓膜内出血
③CTで気脳症
局所性脳損傷 脳ヘルニアをきたす場合は手術が必要
脳挫傷 血管支配に関係ない辺縁が毛羽だった低吸収域(脳浮腫と脳実質損傷)の中に高吸収域(小出血)が散りばめられた所見を呈する
急性硬膜外血腫 頭蓋骨骨折直下の硬膜上の硬膜動脈や静脈洞から出血し硬膜外に血腫をつくる。意識清明期があり、CTで凸レンズ型の高吸収が特徴。
急性硬膜下血腫 脳表の架橋動脈や脳実質から出血し、硬膜下に血腫をつくる。CTで硬膜とくも膜の間に三日月状の高吸収が特徴。
外傷性脳内血腫 脳挫傷による小出血が癒合し、脳内血腫に進展して形成されることが多い(多くは72時間以内)
びまん性脳損傷 一般的に手術適応なく、対症療法
脳振盪 画像所見なし
びまん性軸索損傷 受傷直後より遷延する意識障害があるが、CTでは頭蓋内占拠性病変がみられない(外傷性SAHや少量の脳室内出血などの付随的所見は認める場合あり)
外傷性SAH 脳底槽のくも膜下出血は、びまん性脳損傷の間接的所見とも言われている。外傷性SAHでは外傷局所やその対側、脳底槽の一部に薄く見られることが多い。しかし、脳底槽や脳表にびまん性に広がる外傷性SAHはCTAを撮像し、血管損傷・CCF・仮性動脈瘤の精査を行う。内因性と比べて低い割合ではあるが、脳血管攣縮を合併することもある。
びまん性脳腫脹 記載なし
その他 外傷性
頭蓋内血管損傷
受傷時に動脈の血管内皮が損傷し、時間が経過してから動脈解離による脳梗塞や仮性動脈瘤の破裂による出血をきたす。血管走行部の頭蓋底骨折、厚いSAH、原因不明の脳梗塞所見があれば動脈損傷を疑う。診断はCTAやMRAを活用する。
穿通性脳損傷 穿通したものは抜去せず脳外科にコンサルトする。
外傷性てんかん 受傷直後に起こる直後発作、1週間以内に起こる早期発作、その後に起こる晩期発作に分類される。早期発症は換気障害などにより脳損傷を増悪さえる可能性があるため、治療を要する。
皮下血腫 皮膚〜皮下組織内の血腫(皮膚直下)
帽状腱膜下血腫 帽状腱膜と骨膜の間の血腫(頭蓋骨表面に沿って広く板状・三日月状に広がる)

脳損傷の重症度分類

転帰
軽症 GCS 14〜15 観察入院
中等症 GCS9〜13 中等症以上の外傷は脳外科にコンサルト
重症 GCS8以下(昏睡) 脳外科的処置ができる病院へ速やかに転院

中等症・軽症の場合

まず、頭蓋内病変を合併する危険因子を確認する。
CTで異常所見が認められる場合、あるいはCTで異常所見がなくても危険因子を伴う場合やGCS14点以下の場合、少なくとも24時間の入院経過観察が勧められる。また、意識清明になるまでは絶飲食が勧められる。
入院中も繰り返し神経症状を確認し、悪化の所見があればCTを再撮像する。
帰宅する場合、受傷後少なくとも6時間以降が勧められる。

重症の場合

①呼吸管理 酸素化の管理目標:SpO2 98%以上、AガスのPaO2 80mmHg以上
CO2の管理目標:AガスのPaCO2が頭蓋内圧亢進時は30〜35mmHg、頭蓋内圧正常時は35〜45mmHg
②循環管理 sBP:110mmHg以上、MAP:90mmHg以上、脳灌流圧:50mmHg以上、Hb 10g/dL以上
③体温 高体温の場合、速やかに平熱まで冷却する
④頭蓋内圧管理 除去すべき占拠性病変が存在し、頭蓋内圧の亢進所見、脳ヘルニア徴候が進行する場合、手術までの間、上半身を30°挙上しマンニトール0.25〜1.0g/kgを急速点滴するが、循環動態の変化に注意する。
⑤抗凝固薬 抗凝固薬を内服中の患者に頭蓋内出血を合併した場合、リバースを検討する。
⑥手術適応

頭蓋内圧亢進・脳ヘルニア

頭蓋内圧亢進(症状)

病態 脳ヘルニアとは、頭蓋内圧が亢進して大脳鎌の縁、テント切痕、大孔を介して脳組織がシフトすること。原因は頭蓋内出血、脳腫瘍などの頭蓋内占拠性病変、脳浮腫、水頭症など。下行性脳ヘルニアのリスク↑のため腰椎穿刺は禁忌である。
症状 【急性】
①激しい頭痛(早朝起床時に強い)、悪心嘔吐(噴射状
②Cushing現象:①血圧上昇、②徐脈、③緩徐深呼吸(乏血状態に対する代償反応)
③動眼神経麻痺:一側性の散瞳と眼球の外方転位
【慢性】
①起床時の頭痛:呼吸↓によりPaCO2↑して脳血管拡張するため
検査 頭部CTで以下の脳ヘルニアの有無を確認(脳幹圧迫があれば危険)
切迫脳ヘルニアの有無の確認
切迫脳ヘルニアとは緊急減圧が必要な状態で、具体的にはテント切痕ヘルニアや大後頭孔ヘルニアがある状態のこと。CTにて、大きな占拠性病変、5mm以上の正中偏位、脳底槽の圧迫もしくは消失を認める場合は切迫脳ヘルニアを疑い、以下を確認する。
治療 ①高浸透圧利尿薬(グリセロール、マンニトールなど)の投与
②ステロイド(BBB修復して頭蓋内圧低下)
③バルビツレート・低体温療法により脳代謝抑制
④脳室ドレナージなど外科的処置で内減圧
⑤過換気

脳ヘルニアの分類

※3つはまとめてテント切痕ヘルニアという

症状 予後
大脳鎌下へルニア
帯状回ヘルニア
初期は無症状→前大脳動脈圧迫により対側 or 下肢の運動・感覚障害、前大脳動脈閉塞により脳梗塞を生じる場合がある。必ず鉤ヘルニアに先んじて生じるため、臨床的に重要

CT:Monro孔の圧迫による健側の側脳室の拡大(特に側脳室下角が早期に開大
鉤ヘルニア 初期は病変側の動眼神経麻痺(対光反射消失し散瞳→瞳孔不同
さらに進行すると・・・↓
正中ヘルニア※ 間脳の圧迫して両側散瞳
上行性ヘルニア※ 小脳が上行し中脳を圧迫
大後頭孔ヘルニア 小脳が下行して大孔に陥入し、延髄を圧迫して急激に意識障害・呼吸停止、項部硬直を生じる。上行性ヘルニアを起こす可能性もあり、四丘槽の後部が圧迫され非対称になったり平坦化した状態となる。

脳挫傷・外傷性脳内血腫

病態 脳挫傷とは、脳実質損傷のこと。実質組織の破壊と微小血管の破綻により、脳浮腫と小出血が混在する。脳挫傷による小出血が癒合し、脳内血腫に進展して形成されることが多い。
※脳挫傷・脳内血腫は前頭葉や側頭葉に好発し、脳出血との鑑別点に有用である
症状
検査 【画像検査】
頭部CT:時間経過とともに冠状断像でごま塩状の変化が見られることがある
治療

急性硬膜外血腫 Acute epidural hematoma

病態 頭蓋骨骨折により頭蓋骨と硬膜との間に出血(中硬膜A破綻が約60%と最多)が起こり、脳実質を圧迫する病態。
症状 数時間意識清明期あり:脳自体に重大な損傷がないため
②後に急激な意識障害巣症状:血腫増大による圧迫で症状出現
検査 【画像検査】
頭部CT:骨折部に凸レンズ型の高吸収域(受傷直後は認めないこともある)→骨と骨のつなぎ目以上には広がらないのため凸レンズになるのが特徴
治療 血腫が1cm以上の場合、緊急開頭して開頭血腫除去+出血源止血

急性硬膜下血腫 Acute subdural hematoma

病態 頭部外傷により、脳挫傷に合併する脳表の動脈(複合型)>架橋V(単純型)が破綻し、硬膜下に血腫が生じた病態。乳幼児では強く頭を揺さぶられて架橋Vが破綻するshaken baby syndromeがある。
症状 ①外傷直後の意識障害、もし意識があれば頭蓋内圧亢進症状(頭痛など)
検査 【画像検査】
頭部CT:硬膜下に沿った三日月型の高吸収域
治療 緊急開頭して開頭血腫除去+出血源止血

脳振盪

病態 形態的な損傷を伴わず、一過性の神経機能異常を呈するもの。受傷直後〜6時間以内の意識消失を伴う古典的脳振盪と、意識消失はないが、一過性の神経兆候(記憶障害、平衡障害など)を呈する軽度脳振盪がある。スポーツ脳震盪の場合はSCAT5を行い、プロトコルに基づいた競技復帰が提案されている。
症状 症状継続は1日未満(20%)、1日〜1週間(60%)、1週間〜1ヶ月(15%)、1ヶ月以上(5%)で多くは1ヶ月以内に軽快するが、3ヶ月以上続くと持続性脳震盪後症候群(PPCS)と言われる。
検査 画像所見なし
治療 経過観察、症状に対しては対症療法となる。
脳震盪再発を避けることが重要で、スポーツなら数日以内の試合参加は中止する。
帰宅して安静にし、症状が消失するまで1週間ごとに受診させる。

びまん性軸索損傷 DAI

病態 頭部への回転加速度衝撃による剪断損傷により、広範な白質神経線維の断裂が生じる病態。主に交通事故によるものが多い。過半数が死亡し、1/3が植物状態に至る。
症状 【受傷直後】
直後から遷延する意識障害(しかし、頭蓋内占拠性病変はない)
【回復期】
高次脳機能障害:遂行機能障害、社会的行動障害、人格変化、認知障害など
検査 【画像検査】
CT:明らかな頭蓋内損傷は認めない
MRI:損傷部位がT2強調やFLAIR像で急性期から高信号として描出される(脳梁・上小脳脚・脳幹の白質に小さな高信号領域の散在)
治療 経過観察、症状に対しては対症療法となる。
日常生活・社会生活への適応が困難となることから、リハビリテーション、生活支援などの確立に向けた取り組みが注目されている

びまん性脳腫脹

病態 一次性脳損傷に加え、受傷早期の低血圧、低酸素血症、高二酸化炭素血症などによる二次性脳損傷が加わりびまん性脳腫脹が生じると考えられている。成人に比べ、小児や若年者に多いとされており、急激な頭蓋内圧亢進をきたし内科的治療に抵抗性を示すことが一般的。
症状 頭蓋内圧亢進症状
検査 【画像所見】
治療 低血圧、低酸素血症、高二酸化炭素血症などの予防

内頸動脈海綿静脈洞瘻(硬膜動静脈瘻) CCF

病態 頭部外傷などで、海綿V洞の中を走行する内頸Aが破綻して瘻が生じた疾患。その結果、内頸A→海綿V洞に血流が流れ、眼Vへ逆流して眼Vがうっ血する。
分類 直接型CCFは外傷性と特発性に分けられるが外傷性は稀(間接型CCFは硬膜AVFを参照)
症状 ①拍動性眼球突出
②結膜充血&浮腫
③眼窩部の拍動性雑音
④その他:複視(動眼3N〜外転6Nが圧迫:海でさぶろう
検査 【画像検査】
内頸A造影:海綿V洞が早期に描出
治療 【手術】
海綿静脈洞塞栓術:眼Vの瘻孔閉鎖し、眼窩内圧を下げて充血・複視を改善させる

慢性硬膜下血腫 Chronic subdural hematoma

病態 軽微な頭部外傷による微量の出血が生じ、硬膜下に被膜を伴う血腫が徐々に拡大する病態。アルコール多飲者や高齢者に多く(脳萎縮?)、受傷後3週間〜6ヶ月で発症する。
症状 外傷後、約1〜2ヶ月後に、以下の頭蓋内圧亢進症状が出現する
慢性頭痛、嘔気嘔吐、片麻痺、歩行障害、記名力低下、自発性低下、尿失禁
検査 【画像検査】
頭部CT:硬膜下に沿った三日月型の低〜高吸収域を認める場合が多い、血腫により正中構造の偏位を示す場合もある
※血腫は高度の貧血や凝固能低下がない場合、約1週間は高吸収を示すが、出血後2〜3週間で脳実質と等吸収となり区別がつきにくい場合がある点に注意、両側性の場合もある
頭部MRI:頭部CTでわかりにくい場合や症状が出る前の微細な出血を診断する場合、FRAIRで明瞭な高信号を示すことが多い(T1やT2は時期により様々なパターンを示す)
治療 脳外科にコンサルトか紹介する
無症状:経過観察する場合もある
神経症状あり:穿頭血腫ドレナージ術
石灰化あり:開頭手術

硬膜下水腫 subdural hygroma

疫学 頭部外傷の5%程度
病態 外傷後、硬膜下に髄液と等濃度の液体貯留が見られることがある。硬膜下水腫はくも膜の断裂によって、くも膜下腔と硬膜が交通し、脳脊髄液が硬膜下腔に漏出することにより生じる。くも膜と交通がないものは、被膜によって被包化され、subdural effusionと呼ばれ、慢性硬膜下血腫に移行することがある。逆に慢性硬膜下血腫が分解されて、硬膜下水腫となることもある。硬膜下水腫および慢性硬膜下血腫は、しばしば画像での鑑別は困難で、併せて硬膜下液体貯留(subdural fluid collection)と総称して呼ばれることがある。硬膜下水腫は、髄膜炎や低髄液圧症候群で見られることもあり。
症状 受傷後数日で発生し、
検査 【画像検査】
頭部CT:脳表の三日月状の低吸収。硬膜下水腫では脳表を走る血管が脳側へ圧排される(脳萎縮=くも膜下腔の拡大の場合、くも膜下腔内の血管が液体貯留部を横切って描出されることが鑑別のポイント)
頭部MRI:水腫はFLAIRで低信号となるが、血腫は高信号となる。
治療 多くは経過観察で軽快する

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