病院到着前
救急隊より聴取すべきMIST
Mechanism:受傷機転 | 外傷がどのように生じたか |
Injury:損傷部位 | |
Sign:症候 | |
Treatment:処置 |
準備
感染対策 | 患者がどのような背景・状態か不明のため |
機器準備 | モニター、エコー、ポータブルX線(胸部・骨盤) |
酸素 | リザーバー付きマスクで10〜15 L |
ルート | 加温した生食を用意し、2ヶ所ルート (初期輸液は1Lまで:希釈性凝固障害になるため) |
採血 | 血液型、交差を追加する可能性伝える |
スタッフ招集 | 人数が多い方が対応しやすい |
頚椎カラー | 頚椎固定の適応がある場合使用 |
Primary survey
A
評価項目 | |
①発話 | 発話あればOK、なければ気道閉塞か意識障害を疑う 【Aへの対応】 ①吸引(内径が太めのチューブ) 嘔吐吐血、口腔内の音する場合は液体貯留があると考え吸引 ②用手的気道確保(下顎挙上)+マスク換気 用手的気道確保しならがらバックバルブマスクを用いて補助呼吸 ③舌根沈下がある場合はエアウェイ挿入 鼻出血・耳出血、パンダの眼などの頭蓋底骨折疑い→経鼻エアウェイ禁忌 ④気管挿管 気道閉塞、血液や吐物で誤嚥の可能性大の場合。2回失敗した場合は外科的気道確保を選択 ⑤分離肺換気 片側の肺や気管支に損傷がある場合行う(麻酔科医Call) |
Aと同時に以下を評価する | |
②頚椎固定の適応 | ①頸部痛、②鎖骨より上に外傷がある場合、③頸部痛が訴えられない場合(意識障害、他の部位で激痛がある、中毒患者、精神疾患患者) |
③バックボード除去 | 痛いので2時間以内に取る |
気管挿管
準備するもの | |
喉頭鏡 | 成人男性:4、成人女性:3 |
気管チューブ | 成人男性:7.5mm、成人女性:7.0mm |
鎮静剤 | ①プロポフォール 利点:効果発現早い、欠点:循環呼吸抑制あり、小児は× ②ミダゾラム 利点:循環抑制少なめ、欠点:効果発現が緩徐 |
筋弛緩薬 | ①ロクロニウム 利点:拮抗薬あり、効果発現早い ②べクロニウム 利点:安定した筋弛緩作用、欠点:効果発現まで数分かかる |
外科的気道確保
輪状甲状靭帯穿刺 | 酸素をわずかながら供給できるが、換気とはならない |
輪状甲状靭帯切開 |
B
評価項目 | |
①呼吸状態 | 服を脱がせて頭側より胸郭運動の左右差確認 |
②聴診 | 左右差を確認 |
③打診 | 左右差を確認 |
④触診 | 圧痛、胸郭の変形、皮下気腫を両手で確認 |
⑤SpO2 | |
⑥呼吸数 | |
⑦頸部評価 | 頸静脈怒張、呼吸補助筋の使用、気管支の偏位 |
気管挿管の適応 | 呼吸停止、補助呼吸が必要な呼吸不全、酸素化不良、重症肺挫傷、重症フレイルチェストの場合 |
緊張性気胸
酸素10〜15L/分投与、換気しながら、先ず胸腔穿刺(第2肋間・鎖骨中線)で減圧、次に胸腔ドレナージ(第5肋間・中腋窩線)する。
C
外傷によるショックの90%以上は出血性ショック。その出血源MAPを探せ!
M:大量血胸(胸部X線)、A:腹腔内出血(FAST)、P:骨盤内出血(骨盤X線)
評価項目 | |
①四肢末端の冷感 | 冷感あれば循環不全を疑いCRT計測(5秒押す) |
②橈骨動脈触知 | 触知せず頻脈や呼吸数増加あればショックを疑う |
③血圧、脈拍 | 頻脈か徐脈か |
④FAST ・心タンポ ・腹腔内出血 ・血胸 |
次に、コンベックスプローブでFASTを確認 ※ハンドル殴打で肝・膵損傷や心タンポナーデの可能性 ①心窩部 プローブを剣状突起下に当て、長軸を出して心膜腔全体を観察:心嚢液から心タンポナーデ(+IVCぱんぱん)の有無を確認 ②右季肋部 プローブを中腋窩線上に平行に当て、高エコーの横隔膜の上下→肝腎間のモリソン窩→肝尾側先端部の順にスライドさせる:液貯留から胸腹腔内出血の有無を確認 ③左季肋部 プローブを後腋窩線上に当て見上げるようにし、高エコーの横隔膜の上下→脾周囲の順にスライドさせる:液貯留から胸腹腔内出血の有無を確認 ④恥骨上部 プローブを恥骨上部2cmに当て膀胱を長軸と短軸で観察し、膀胱下(ダグラス窩)の液貯留を観察:腹腔内出血 ⑤左右胸腔(Secondary surveyで行う) リニアプローブに変え、マーカーを患者頭側に向ける。プローブを中腋窩線上に当て、胸膜のスライディングの有無を観察:スライディングなければ気胸 |
⑤胸部X線 ・フレイルチェスト ・大量血胸 |
①多発肋骨骨折があるか? 多発肋骨骨折により正常な胸壁運動が障害される状態。不安定部分が吸気時に陥凹、呼気時に突出する奇異性運動が見られる。血気胸があれば胸腔ドレナージ、呼吸不全があれば挿管陽圧換気(PEEP)による内固定。 ②大量血胸があるか? |
⑤骨盤X線 ・骨盤骨折 |
①骨盤輪が保たれているか? 骨盤骨折ならまずシーツラッピング |
⑥外出血 | 服を脱がせて体表出血を確認 |
気管挿管の適応 | 重症ショックの場合 |
心嚢穿刺
大量血胸
診断 | ショック+SpO2低下+呼吸音減弱+打診濁音+胸部X線 |
治療 | ① |
大量輸血
FAST陽性、sBP90以下、脈拍120以上、穿通性外傷のうち、2つ以上当てはまる場合大量輸血の必要性が予想される。
RCC:FFP:Plt=1:1:1で投与 | |
RCC | 1時間以内:8単位を投与 12〜24時間:20単位 |
FFP | |
Plt |
切迫するD
評価項目 | |
①GCS評価 | GCS8点以下、もしくは急速に2点以上低下。四肢の動きの左右差確認 |
②瞳孔評価 | 片側瞳孔の軽度散大、対光反射の緩慢化は脳ヘルニアの初期サイン |
③切迫するDがある | 気管挿管、CTの準備※、脳外科コール |
※常勤の脳外科が以内場合、CTより専門施設への転送を優先する
E
評価項目 | |
①体温測定 | 体温低下を防ぐため保温が重要 |
②体表観察 | 出血、損傷部位観察 |
Secondary survey
外傷 Pan-scan CT
切迫するDがあれば、バイタルが安定後にすぐCT撮影
胸部外傷
primary surveyで検索すべき致死的胸部外傷(TAF3X)
Tamponade(心タンポナーデ) | |
Airway obstruction(気道閉塞) | |
Flail chest(フレイルチェスト) | |
Tension pneumothorax(緊張性気胸) Open pneumothorax(開放性気胸) Massive hemothorax(大量血胸) |
secondary surveyで検索すべき胸部外傷(PATBED2X)
Pulmonary contusion(肺挫傷) | |
Aortic rupture(大動脈損傷) | |
Tracheo-bronchial rupture(気管気管支損傷) | |
Blunt cardiac contusion(鈍的心損傷) | |
Esophageal rupture(食道損傷) | |
Diaphragmatic rupture(横隔膜損傷) | |
Pneumo-thorax(気胸) | |
Hemothorax(血胸) |
頭部外傷
ABCを安定化→切迫するDを見逃さない!
頭部外傷単独では低血圧にはならない、合併する出血性損傷を考慮して検査を進める。
一次性脳損傷 | ー | 外力によって不可逆的に脳実質が直接損傷(治療不可) |
二次性脳損傷 | 受傷後、様々な因子で生じ、適切な処置で軽減可能(治療可) 二次性脳損傷には頭蓋内因子と頭蓋外因子がある |
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頭蓋内因子 | 血腫による圧迫、脳虚血、脳浮腫、けいれん、感染など | |
頭蓋外因子 | 低酸素血症、低血圧、低血糖、貧血など(初期治療の要点) |
【重症度分類】
中等症以上の外傷は脳外科に転送
軽症 | 中等症 | 重症 |
GCS 14〜15 | GCS9〜13 | GCS8以下(昏睡) |
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