法医学
死因の種類
内因死以外は異状死!
内因死 | ①病死及び自然死 | |
外因子 | 不慮の外因子 | ②交通事故 ③転倒・転落 ④溺水 ⑤火災事故 ⑥窒息 ⑦中毒 ⑧その他 |
その他及び不詳の外因子 | ⑨自殺 ⑩他殺 11.その他及び不詳の外因 |
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不詳の死 | ー |
異状死
医師は死体または妊娠12週以上の死産児を検案して異状がある(=普通ではない)と認めた時は24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。※検視は外側から観察するだけで警察が行う。
異状死とは、病死や老衰などの確定診断された疾患による死亡以外の全ての死。つまり、死亡の起点となった原死因が外因とその続発症・後遺症による死亡や死因が明らかでないものである。
対象遺体 | 実施者 | 根拠法 | |
司法解剖 | 犯罪の疑い有 | 裁判官から委託された鑑定人≒法医学者 | 刑事訴訟法 |
行政解剖 | 非犯罪死体 | 監察医(23区/横浜/名古屋/大阪/神戸) | 死体解剖保存法 |
承諾解剖※ | 非犯罪死体 | 遺族から委託された鑑定人≒法医学者 (監察医制度がない地域) |
死体解剖保存法 |
新法解剖 | 非犯罪死体 | 警察署長から委託された医師≒法医学者 | 死因身元調査法 |
※承諾解剖は遺族の承諾が原則必要。
死体現象
心臓死の直後から現れる変化を死徴といい、確徴と不確徴に分けられる。
確徴 | 早期死体現象の発現のこと。1つでも出れば確徴となる(ただし、乾燥を除く) |
不確徴 | 心停止、自発呼吸停止、瞳孔散大、対光反射消失、筋肉の弛緩、皮膚の蒼白など |
【早期死体現象】
死後経過時間を推定する根拠 死斑・死体硬直は12時間で完成、角膜混濁は24時間で完成! |
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角膜混濁 | 開眼では死後2時間後、閉眼では12時間後から見られ、24時間以降は透見不可となる。白内障と要鑑別。 |
死斑 | 循環停止により血管内の血液が重力に従って下方に移動し、下位の皮膚が暗紫色で着色する現象。急死の場合には発現が強い。死斑出現部位によって死体の置かれていた姿勢がわかる。 死後2時間後から出現し、12時間後に完成、24時間後に固定化される。 縊死(いし:首吊り)では四肢(手足)に溜まった血液が透けて見える。 |
死体硬直 | 死後2時間後から顎関節や項部の関節から始まり、徐々に上肢の関節から下肢の関節へと広がっていく12時間後には完全に硬直する(筋小胞体からCaが放出されるため)。 死後経過時間の推定に最も有用! |
体温降下 | 直腸温は死後10時間までは1時間に1℃低下し、11時間以降は1時間に0.5℃低下し、 外気温と平衡になる。 |
溢血点 | 点状出血のことで、窒息(胸部圧迫)、絞頸・扼頸(頸部圧迫)で出現しやすい。 絞頸、扼頸による窒息死では、顔面の高度うっ血により眼球粘膜や顔面皮膚に溢血点が見られやすい。ただし、溺死では見られない。 |
【晩期死体現象】
死体の分解過程 | |
自家融解 | 自己の酵素によって無菌的に分解される過程(膵炎ではない)。 腐敗に先行して始まる。 |
腐敗 | 腸内細菌による分解過程。腐敗速度:地上1>水中1/2>土中1/8 ●腐敗性変色・腐敗水疱:死後1~2日後、右下腹部の淡緑色変色から始まり、徐々に腹部から全身に広がり、死後2〜4日後に体表に水疱が出現し諸臓器が軟化する。 ●腐敗血管網:死後2~4日後、皮静脈に沿った暗赤褐色や緑青色の樹枝状の変色。 ●巨人様化:死後3日~10日以上経過すると腐敗菌が大量の腐敗ガスを産生して全身が膨隆する。特に眼球,舌,陰囊は著明に膨大する。 |
死体の損壊 | 死後の損壊であるため出血がない。 ウジは硬いものを食べないので血管や神経は残る=架橋がある |
【特殊死体現象】
死蝋化 | 死体が水中など湿潤で風通しの悪い場合、死後1~2ヵ月経過しても腐敗が進行せず、 身体成分が灰白色のやわらかいチーズ様やワックス様に硬化した状態になる |
ミイラ化 | 死体から急速に水分が失われると微生物の繁殖が阻止され軟部組織だけ乾燥する |
生活反応
生活反応:生きた状態で外因が加わった際に見られる反応
溺水 | 胃や肺以外の臓器からも珪藻が検出される |
感電 | 雷紋という通電された血管麻痺による赤色樹枝状模様が見られることがある |
創傷 | 物理的な外力によって生じた損傷で、刺創、切創、割創、裂創、挫創などがある |
窒息 | 眼瞼結膜の溢血点が見られる |
創傷の分類
詳細 | 創縁周囲の表皮剝脱 | 創縁 | 創洞内の架橋状組織片 | |
切創 | 鋭器による損傷、いわゆる切り傷 | なし | 整 | なし |
刺創 | 鋭器による損傷、いわゆる刺し傷 | なし | 整 | なし |
割創 | 重み+厚みのある鋭器(斧、鉈、日本刀など)で叩いたり、打ち込んだりすることで形成される創 | あり | 整 | なし |
挫創 | 鈍器の打撲など鈍力の直接作用によって皮膚が離断した創 | あり | 不整 | あり |
裂創 | 鈍的外力により表皮が過度に伸展されて生じる開放性の創。直接打撲された部位とは離れた所に形成されるため創縁周囲に表皮剝脱を伴わない。 | なし | 不整 | あり |
剥皮創 | 別名デコルマン。交通事故などの際、皮膚や皮下組織が回転するタイヤなど強い牽引力によって筋組織から剥脱されて生じる皮膚損傷 | ー | ー | ー |
中毒学
職業癌
膀胱癌 | β-ナフチルアミン、ベンジジン |
皮膚癌 | ヒ素、タール類(すす、ピッチ) |
白血病 | ベンゼン、電離放射線 |
肺癌 | ヒ素、クロム、ニッケル(精錬過程)、石綿(アスベスト) |
中皮腫 | 石綿(アスベスト) |
肝血管肉腫・肝細胞癌 | 塩化ビニルモノマー |
胆管癌 | 1,2-ジクロロプロパン、ジクロロメタン |
安全データシート SDS:Safety Data Sheet
対象化学物質またはそれを含有する製品を他の事業者に譲渡・提供する際に、その化学物質の性質や危険性・有害性、取扱いに関する情報を提供するための文書
金属中毒
生体にとって必須ではない重金属、特に水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、6価クロムなどでは、ごく少量でも中毒を引き起こす。重金属中毒の特徴は排泄が遅く、特定組織に蓄積しやすい。
曝露 | 病態・症状 | 検査所見 | |
無機鉛 (金属鉛) |
印刷、塗料、蓄電池、陶磁器を扱う業種 | 急性期では嘔吐・腹部疝痛、慢性期ではHb合成を阻害により低色素性貧血を起こす。 | 尿中δアミノレブリン酸増加 |
無機水銀 | 農薬 | 消化管障害、腎不全 | |
アルキル水銀 | 有機水銀試薬 | 生物濃縮により慢性中毒を起こし求心性視野狭窄、小脳運動失調、振戦を起こす。 | 毛髪中の水銀増加 |
カドミウム (イタイイタイ病の原因) |
精錬、顔料、メッキ、溶接を扱う業種 | 近位尿細管上皮細胞に蓄積して腎障害や骨軟化症を起こす。 | 尿中β2ミクログロブリン増加 |
クロム | メッキ、ステンレス、皮なめしを扱う業種 | 接触による皮膚炎、吸入による鼻中隔穿孔や肺癌を起こす。 | ー |
ヒ素 | 半導体製造業 | 接触による皮膚炎。Bowen病、皮膚癌、膀胱癌、肺癌、鼻中隔穿孔を起こす。 | 毛髪中のヒ素増加 |
マンガン | 特殊鋼、電池工業を扱う業種 | 吸引によってパーキンソン症候群、難治性肺炎を起こす。 | 血中マンガン濃度増加 |
ベリリウム | 宇宙航空材料、原子炉材を扱う業種 | 接触による皮膚炎、 吸引による間質性類上皮細胞性肉芽種(ベリリウム肺)を起こす |
ー |
ニッケル | 接触皮膚炎、吸引によって肺気腫、肺癌などを起こす | ー | |
亜鉛熱 (金属熱) |
溶接作業・メッキ作業 | 金属フュームの吸入によりアレルギー反応が生じてマラリア様発熱などを呈する | 末梢血白血球数増加 |
インジウム | 液晶パネル | 吸入により間質性肺炎 |
有機溶剤中毒
有機溶剤の作用はアルコールや麻酔薬に類似していることから、抑制性GABAA受容体と興奮性NMDA受容体の機能的なバランス異常が関与していると考えられている。
曝露 | 病態・症状 | 検査所見 | |
ベンゼン | ガソリンを扱う作業 | 慢性で再生不良性貧血→白血病 | 尿中フェノール増加 |
トルエン | シンナー(トルエンを薄めたもの)、塗料 | 高濃度を一気に吸入すると麻酔・幻覚作用 | 尿中馬尿酸増加 |
キシレン | シンナー(キシレンも含む)、塗料 | 同上 | 尿中メチル馬尿酸増加 |
スチレン | 合成樹脂や発泡スチロールの材料 | 粘膜刺激症状、慢性で多発性神経炎 | 尿中マンデル酸増加 |
ノルマルヘキサン | 油脂工場 | 慢性で多発性神経炎→筋力低下 | 尿中ヘキサディオン増加 |
トリクロロエチレン | ドライクリーニング工場 | 慢性で多発性神経炎 | 尿中トリクロロ酢酸・総三塩化物増加 |
ジクロロプロパン | 印刷業 | 胆管癌 | |
ジクロロメタン |
印刷業 | 胆管癌 |
有機化合物中毒
曝露 | 病態・症状 | 検査所見 | |
ポリ塩化ビニル(PBC) | 現在製造禁止されており曝露は減少 | 経皮吸収され全身性強皮症様症状、また肝血管肉腫、指端骨溶解症を起こす。 | ー |
塩化ビニルモノマー | プラスチック工場 | モノマーは強皮症や末節骨溶解症を起こす。 | ー |
トリレンジイソシアネート(TDI) | ウレタン樹脂の製造 | 経気道吸収され喘息を引き起こす。 | ー |
芳香族ニトロ・アミノ化合物 | 工場 | メトヘモグロビン血症を起こすものと膀胱癌を起こすものがある。 | 血中メトHb上昇 尿沈渣の細胞診 |
有毒ガス中毒
曝露 | 病態・症状 | 検査所見・治療 | |
一酸化炭素(CO) | 練炭、石油ストーブ、トンネル内火災 | Hbと強く結合し酸欠により大脳基底核が壊死。血管拡張により皮膚紅潮(死斑は鮮紅色=ピンク色) | 血液ガス分析にて血中CO-Hb濃度上昇 SpO2測定不可! 治療は高圧酸素 |
シアン(青酸) | 食品消毒など | 経気道+経皮で吸収され、電子伝達系を阻害し酸欠となり呼吸停止で死亡。血管拡張により皮膚紅潮(死斑は鮮紅色)。 | 呼気からアーモンド臭 治療は亜硝酸Na |
二酸化硫黄(SO2) | 工場 | 粘膜刺激 | ー |
二酸化窒素(NO2) | 工場 | 粘膜刺激 | ー |
硫化水素(H2S) (水溶性のため眼・鼻などの粘膜が障害される) |
工場 | 強い腐敗臭があり、吸引により鼻粘膜が障害され嗅覚麻痺を起こす。最終的には内呼吸を阻害し呼吸停止で死亡。硫化メトHbのため死斑は緑褐色。 | ー |
フッ化水素(HF) | 工場 | 粘膜刺激 | ー |
酸素欠乏症(18%以上を維持する必要がある)
酸素濃度 | 21% | 16% | 11% | 6% |
症状 | 大気中 | 集中力低下 | 意識障害 | 即死 |
農薬中毒
代表薬 | 病態・症状 | 検査所見 | |
パラコート (経皮吸収されるため治療者は2次被害に注意!) |
除草剤 | 服用直後は口腔粘膜や食道にびらん。NADPHよりフリーラジカル産生し、約3日後に肺水腫を来たし、1〜3週間後に間質性肺炎・肺線維症で死亡。 | 尿中パラコート陽性 治療薬なし 酸素投与は禁忌! 1時間以内なら胃洗浄 |
有機リン剤 | 殺虫剤 | ChE阻害により流涙、流涎、発汗、縮瞳、下痢、筋萎縮性攣縮を伴う呼吸筋麻痺。 | 血清ChE活性低下 治療薬:抗コリン薬+PAM |
カーバメイト剤 | 殺虫剤 | 同上。有機リン剤より弱いため自然軽快する。 | 同上 治療薬:抗コリン薬 |
アルコール関連
【アルコールに伴う精神症状】
①アルコールの摂取により急性に起こること | 異常酩酊(複雑酩酊と病的酩酊) |
②大量飲酒の習慣に伴って起こること | アルコール依存症 |
③大量飲酒を中断した際に起こること | アルコール離脱症状、振戦せん妄 |
④大量飲酒を長期に継続した結果として起こること | Korsakoff症候群 |
アルコールの摂取量
男性では純アルコール量で40g/日以上,女性で20g/日以上が健康リスクのある飲酒
純アルコール量(g)=酒の量(mL)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8(比重)
アルコールの作用
【吸収】
アルコールは消化を受けることなく,胃で約20%,小腸上部で約80%の割合で吸収される.吸収は速く,飲酒から1時間で80%以上が吸収される.
【エタノールの代謝】
【エタノールの作用機序】
①GABA神経終末に作用してGABA遊離を促進する。また、シナプス後膜のGABAA受容体やグリシン受容体に結合しCl透過性を亢進する。 |
②グルタミン酸神経に作用しグルタミン酸遊離を抑制する。また、シナプス後膜のNMDA受容体に結合し、受容体の機能を抑制ためグルタミン酸による入力を抑制する。 |
①+②の結果、エタノールは前頭葉・海馬・小脳を麻痺させ、脱抑制・記憶障害・平衡障害を起こす。 |
【作用機序の結果、出現する薬理作用】
薬理作用 | 詳細と対応方法 |
局所作用 | 蛋白凝固作用や脱水作用によって皮膚や粘膜を収斂し、発汗防止作用や殺菌作用を示す。 |
中枢神経抑制作用 | 大脳皮質→小脳→脊髄→延髄の順に抑制(下行性抑制)。 アルコールによる興奮は大脳皮質の脱抑制によるもので(麻酔第1期と2期に相当)、意識喪失が始まると急に延髄麻痺に移行し、急性アルコール中毒で死に至る。 |
呼吸作用 | 少量で呼吸促進、多量で呼吸抑制される。気道閉塞を予防するために回復体位を取らせ、意識がなければ気道確保する。 |
循環系作用 | 頻脈になる。末梢血管拡張により赤ら顔となり、外気温が低下すると熱が奪われ体温が低下する。→保温 |
消化器系作用 | 少量のアルコールは胃酸分泌を亢進し、食欲を増進する。また、多量では嘔吐。 |
内分泌作用 | アドレナリンの遊離を促進し、一時的に高血糖・高脂血症となる。 バソプレシンの分泌を抑制し利尿作用を示すため脱水状態になる。そのため、しっかり水分補給させる。 |
高揚感 | 中脳辺縁ドパミン系を活性化し、高揚感を引き起こす。 |
急性アルコール中毒
病態 | アルコール摂取により酩酊が起こる。酩酊は単純酩酊(普通の酔っ払い)、複雑酩酊(酒乱)、病的酩酊(器質性脳疾患がある人)に分類される。 |
単純酩酊 | 血中アルコール濃度の上昇に伴って段階的に進行する酩酊で、発揚期(多弁・ほろ酔い状態)→酩酊期(千鳥足)→泥酔期(血中濃度200mg/dL以上で立ち上がれない)→昏睡期(意識消失し死亡のリスク高)と変化する。 |
複雑酩酊 | 飲酒量が多いが、広範な記憶欠損はない酩酊 |
病的酩酊 | 器質的脳疾患などが背景にあり、急激に意識障害や見当識障害があり、健忘を伴う酩酊。飲酒量に関係なく出現する。 |
アルコール依存症
病態 | 飲酒を自分の意志で制御できなくなり、仕事、人間関係、健康などを犠牲にしても飲酒する状態。周囲から見限られるため次第に自信を失うが、アルコールにより前頭葉機能が低下して断酒の意思決定ができず、また、脱抑制により周囲に粗暴行為をとることもある。 ビタミンB1欠乏を合併しやすく、ウェルニッケ・コルサコフ症候群が生じる。 |
症状 | 精神依存:アルコールに対する強い渇望+薬物探索行動 耐性・身体依存:耐性に伴い酒量が増加し、身体依存を生じ、飲酒停止によって不快な離脱症状に悩まされるため酒を手放せなくなる その他:嫉妬妄想(自尊心低下のため?) |
検査 | 【CAGE質問票】2項目以上該当で、アルコール依存症の可能性あり Cut down:減酒の必要性を自覚している Annoyed by criticism:飲酒の批判による苛立ちをしたことがある Guilty feeling:飲酒に対する罪悪感がある Eye opener:朝酒・迎酒をする |
治療 | まずは断酒! 【精神療法】社会的に孤立した患者を断酒会やAA(匿名の断酒会)といった自助グループを利用して治療+家族にも酒を与えないよう家族療法を行う。 【薬物治療】抗酒薬(ジスルフィラム、シアナマイド)、アカンプロサート、ビタミンB1を含む輸液 ※低血糖時、ブドウ糖単独投与するとビタミンB1不足が加速するため禁忌 |
アルコール離脱症候群
病態 | 断酒により興奮系の離脱症状が1~3日後に生じる状態。 |
スクリーニング | CIWA-Arにより、客観的なアルコール離脱症候群の評価ができる。 0〜9点:軽度、10〜15点:中等度、16点以上:重度 |
早期離脱症状 (断酒2日以内) |
手足振戦、不眠、自律神経症状(頭痛、嘔気、血圧上昇、発汗過多、頻脈)、重篤な場合は全身のけいれん発作(強直間大発作) |
後期離脱症状 (断酒3日以降) |
振戦せん妄(小動物・小人幻視、幻触) |
治療 | 離脱症状の予防にはロラゼパム(肝障害でも使用可)などのベンゾジアゼピン系を漸減投与(せん妄時には無効)。 |
Wernicke脳症・Korsakoff症候群(健忘症候群)
疫学 | リスク因子:低栄養者(化学療法中、神経性食思不振症、偏食、妊娠悪阻、長期飲酒) |
病態 | 多くは長期飲酒や偏食によるビタミンB1欠乏によって生じる。 Wernicke脳症が進行するとKorsakoff症候群へ移行する。 |
症状 | <ウェルニッケの3徴> ①意識障害:脳幹網様体と視床内側核に病変があるので見当識障害(軽度の意識障害)から昏睡に至る様々な程度の意識障害を呈する ②眼球運動障害:外転神経核、動眼神経核に病変があり、眼振をきたす ③失調性歩行(小脳失調):小脳前葉に病変があるため <コルサコフの4徴> ①記銘力低下:乳頭体を含む記憶回路(Papetzの回路)が障害されるため ②健忘:同上 ③見当識障害:ウェルニッケの① ④作話 |
検査 | 【身体検査】 反射:腱反射低下 【画像検査】 MRI:急性期にはT2・FLAIER像で第三脳室・中脳水道周辺の灰白質で高信号、慢性期には第三脳室の拡大・乳頭体の萎縮などがみられる |
治療 | ウェルニッケ脳症:ビタミンB1静注→ブドウ糖静注 コルサコフ症候群は不可逆的で難治性 |
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