A群β溶血性レンサ球菌の特徴
カタラーゼ陰性
血液寒天培地ではβ溶血を示す(完全溶血:血液寒天培地で培養すると菌が溶血毒素(外毒素のストレプトリジンO:SLO)を産生し、赤血球に孔をあけて血液を溶かすため、コロニー周囲が透明調を呈する溶血環を形成する)。この抗SLO抗体(ASO)はA群レンサ球菌の感染マーカーとして使われる。
【感染プロセス】
①感染2〜5日後 | 上気道感染、肺炎 |
②皮膚・軟部組織感染 | 丹毒・伝染性膿痂疹(多い)、蜂窩織炎・壊死性筋膜炎(少ない) 表皮(伝染性膿痂疹)→真皮(丹毒)→皮下組織(蜂窩織炎)→筋(壊死性筋膜) |
③続発症 | 免疫学的に機序によりリウマチ熱、急性糸球体腎炎を続発 |
猩紅熱(咽頭扁桃炎)・劇症型壊死性筋膜炎
疫学 | 学童期に好発 |
病態 | 主に飛沫感染によって咽頭に侵入して増殖し、発熱と発疹を引き起こす発熱毒素を産生する。その毒素によって化膿性炎症が起こり、咽頭は発疹(咽頭炎)し、扁桃は腫大(扁桃炎)し、胸部あたりから全身に広がる発疹(紅斑)をしばしば認める。発疹は約1週間で消退し、落屑して治癒に向かう。A群レンサ球菌に起因するこの感染症を猩紅熱という。 感染数週間後、免疫学的に機序により急性糸球体腎炎・リウマチ熱を続発することがある。 【劇症型壊死性筋膜炎(人喰いバクテリア)】 まれに発症し、ショック+多臓器不全で致死的となる。 |
症状 | 【Centorスコア(溶連菌感染症の治療方針のためのスコア・各1点)】 ①38℃以上の発熱 ②咳の欠如 ③白苔を伴う扁桃の発赤・咽頭の点状出血斑(咽頭扁桃痛) ④圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹 ⑤3〜14歳(45歳以上は-1点) 上記、1点以下は抗菌薬や検査は必要なし。2〜3点は抗原検査を行い、抗原陽性なら抗菌薬投与。4点以上は抗菌薬を経験的投与。 ⑥その他の症状:掻痒感を伴う発疹(紅斑)、口の周りのみ紅斑がない(口囲蒼白) 【劇症型壊死性筋膜炎】 数時間単位で広がる発赤・腫脹・強い疼痛・強い炎症を示唆する血性水疱 |
検査 | 【身体検査】 視診:咽頭の発赤、扁桃の腫大+扁桃表面に灰白色の滲出物、全身に広がる点状出血様の紅斑(血行性に発熱毒素が散布されるため)、ただし皺の少ない口周囲は白く見える(口囲蒼白)。また、舌乳頭の発赤(イチゴ舌)も認める。 触診:リンパ節腫大 【迅速検査】 咽頭ぬぐい液を用いた迅速溶連菌抗原検査(エルナス®スティック ストレップA) 【血液検査】 ASO(ストレプトリジンOに対する抗体)↑、ASK抗体↑ ※感染後のASO陽性化率は1週間後30%、2週間後50%、3週間後70%、4週間後90% 【画像検査】 X線、CT、MRI:皮下ガス貯留や膿瘍など確認 |
治療 | ペニシリン系抗菌薬を10日間内服 (抗菌薬を投与してから4~5日で症状が軽快することがあり、服薬中止すると、急性糸球体腎炎やリウマチ熱(心疾患)を合併する可能性がある。症状が軽快しても抗菌薬を必ず10日間内服するように指導すること!!) 劇症型壊死性筋膜炎:クリンダマイシン併用 |
川崎病との鑑別点
溶連菌 | 川崎病 |
①口周蒼白 | ②結膜充血+四肢浮腫 |
市中肺炎
病態 | 感冒に続発し、胸膜炎をきたすこともある。 |
症状 | 市中肺炎症状 |
検査 | 【画像検査】 胸部X線:気管支透亮像を伴う浸潤影 |
治療 | ペニシリン系 |
痂皮性膿痂疹(とびひ)
疫学 | 全ての年齢で発症、季節性なし(水疱性膿痂疹と比較) |
病態 | 発赤毒素により膿疱が多発し、膿疱内容物が周囲に接触することで次々に拡大する(=飛び火) |
症状 | ①紅斑、膿疱→厚い痂皮 ②腎炎の合併に注意 |
検査 | 【膿疱液培養】溶連菌検出?毒素だから検出されない? |
治療 | ペニシリンG投与 |
丹毒
病態 | 真皮まで炎症が及んだもの。同一部位に再発を繰り返すものを習慣性丹毒という。 |
症状 | ①突然の発熱 ②両頬部や下腿に好発する境界明瞭な浮腫性紅斑(熱感・著名な圧痛あり) ③腎炎の合併に注意 耳介は真皮が薄く皮下の脂肪組織がないため、 耳介の腫脹と発赤(Milian’s ear sign)があれば丹毒と診断できる! |
検査 | 【血液検査】ASO↑ASK↑ |
治療 | ペニシリンG投与 |
蜂窩織炎
皮膚科を参照。
【小】リウマチ熱(続発症) RF:Rheumatic Fever
疫学 | 抗菌薬の普及・栄養状態改善により発症は1%未満とまれ。20歳以下に多い。 |
病態 | 溶連菌対して産生された抗体が、抗原と類似した構造を持つ心臓や関節の細胞を攻撃する交差反応(膠原病)。 |
症状 | 溶連菌感染による発熱・咽頭痛の2〜3週間後に、 Jonesの5大症状(Jonesは森林で大きなブタにひっかけられた) ①心炎:心内膜炎・心筋炎。特にMRを伴う全収縮期雑音を聴取。 ②輪状紅斑:四肢近位部に多い ③四肢の大関節からはじまり移動性多発性関節炎(関節変形はきたさない) ④小舞踏病:踊る? ⑤皮下結節:硬性、無痛性、可動性 ⑥その他:発熱 |
検査 | 【血液検査】 ASO↑ASK↑で溶連菌感染証明。WBC↑赤沈↑CRP↑ 【培養検査】 咽頭培養で溶連菌(+) 【画像検査】 心エコー:弁膜症など確認 |
治療 | ペニシリン系、発熱や関節炎にアスピリン、心炎を伴う場合はステロイド 再発予防のため症状消失後もペニシリン系を成人期まで投与。 |
【小】溶連菌感染後急性糸球体腎炎(続発症)
腎臓内科の管内増殖性糸球体腎炎を参照。
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