ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2:Human immunodeficiency virus)

微生物学

後天性免疫不全症候群(AIDS)

5類感染症。

疫学

毎年1500人新規発症、全国に35000人患者がいる。

病態

性感染、血液感染(輸血・針刺し)、母子感染し、CD4陽性T細胞(CXCR4補助受容体)やマクロファージ(CCR5 補助受容体 )に侵入する。感染初期は感冒様症状を生じるが、その後1~10年の無症候期を経て、CD4陽性T細胞が200個/μL以下に発熱・倦怠感などが出現する。

その後、①日和見感染症、②悪性腫瘍、③HIV脳症を1つでも発症するとAIDSと診断される。

AIDS指標23疾患(HIV感染者が発症するとAIDS)

真菌症 カンジダ症(鵞口瘡=口腔カンジダ症を除く)
クリプトコッカス症(肺を除く)
ニューモシスチス肺炎(23疾患の中で最多)
④コクシジオイデス症、⑤ヒストプラズマ症
原虫症 トキソプラズマ脳症(生後1ヵ月以後)
②クリプトスポリジウム症(1ヵ月以上続く下痢を伴ったもの)
③イソスポラ症(1ヵ月以上続く下痢を伴ったもの)
細菌感染症 ①化膿性細菌感染症
②サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもの)
活動性結核(肺尖病変・空洞形成が少ない特徴あり)または肺外結核
④播種性非結核性抗酸菌症
ウイルス感染症 サイトメガロウイルス肺炎
②単純ヘルペスウイルス感染症(皮膚粘膜潰瘍、気管支炎・肺炎・食道炎)
③進行性多巣性白質脳症(JCウイルス)
腫瘍 ①カポジ肉腫(HHV-8)
②原発性脳リンパ腫
③非ホジキンリンパ腫
④浸潤性子宮頸癌
その他 HIV脳症(前頭葉が萎縮し認知症症状、または亜急性脳炎)など

検査

①スクリーニング検査 HIV抗原・抗体同時スクリーニング検査(約30分で結果が判明)
②確認検査
(確定診断)
感染6~8週後に抗HIV抗体が検出できるようになり、
①NAT法によるPCR検査(1週間以内に結果が判明)
②イムノクロマト(IC)法を用いた抗HIV抗体測定
③Western blot法を用いた抗HIV抗体測定

治療

【抗HIV療法(HAART)】key drugから1つ、backbone drugから2つの計3薬

CD4陽性T細胞の数に関わらず治療を開始し、HIV-RNAを検出限度以下にしてCD4陽性T細胞を保つのが目標!耐性菌が発生しやすいためきちんと内服してもらう。

key drug ①プロテアーゼ阻害薬(PI)  
  ②非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI) 逆転写酵素活性抑制
  ③インテグラーゼ阻害薬(INSTI)  
backbone drug ④ 核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI) 核酸類似体
その他 ⑤侵入阻害薬  

【免疫再構築症候群】

ARTを開始すると免疫力が復活し、日和見感染症が増悪・発症するため、日和見感染やB型肝炎があれば先にそちらの治療を優先する。

HIV陽性妊婦への対応

感染予防をしないと児への感染率は20〜40%と高い。そのため、器官形成期が終了した妊娠14週以降にHAART療法を行い、出産は帝王切開で行う。また、新生児にAZTを投与し、授乳は禁止。これらの感染予防を行うと感染率は1%に低下する。

コメント

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