HSV-1/2の特徴
Cowdry A型封入体を形成する。
HSV-1 | 幼少期に接触感染で主に口腔粘膜で増殖した後、知覚神経を上行して三叉神経節などに潜伏感染する。その後、疲労や日光の暴露が誘因となり、神経軸索を伝って分布する皮膚や粘膜で再帰発症し、強い疼痛を伴う水泡や潰瘍を形成する。 口唇ヘルペス(片側性)、角膜ヘルペスの原因となることが多い。アトピー性皮膚炎患者がHSV-1に感染するとカポジ水痘様発疹症(両側性)となる。 |
HSV-2 | 思春期以降に性感染で主に性器粘膜で増殖した後、知覚神経を上行して腰・仙髄神経節などに潜伏感染する。その後、疲労や日光の暴露が誘因となり、神経軸索を伝って分布する皮膚や粘膜で再帰発症し、強い疼痛を伴う水泡や潰瘍を形成する。性器ヘルペスの原因となることが多い。 |
歯肉口内炎、Kaposi水痘様発疹症、口唇ヘルペス
病態 | ①歯肉口内炎:乳幼児のHSV-1初感染の一部に発症 ②カポジ水痘様発疹:アトピー性皮膚炎のある乳幼児にHSV-1が初感染、もしくは表皮のバリア機能低下(免疫力低下)した患者にHSV-1が回帰感染して発症 ③口唇ヘルペス:HSV-1がストレス・感冒・日光暴露・免疫低下で回帰感染して発症 |
症状 | 【①歯肉口内炎】 ①発熱、不機嫌、所属リンパ節腫脹 ②歯肉+口唇・口蓋前部周辺に痛みを伴った水疱やびらんが多発 【②カポジ水痘様発疹】 ①発熱、所属リンパ節腫脹 ②掻痒感のある全身性両側の皮疹(紅斑、小水疱、びらん)が多発 【③口唇ヘルペス】 掻痒や違和感などの前駆症状に続いて、ピリピリした痛みや痒み、片側性の口腔粘膜・口唇周囲に小水疱の集簇(水疱は中央に臍窩がある)→膿疹→潰瘍、アフタ口内痛、歯肉の発赤腫脹 |
検査 | Tzanck試験:ギムザ染色 or パパニコロフ染色で多核で核が細胞質を占める細胞(+) |
治療 | 【歯肉口内炎】1〜2週間程度で自然回復 【口唇ヘルペス】ピリピリ感じたらアシクロビル軟膏、ビダラビン軟膏。無治療では1〜2週間で自然回復。 |
単純ヘルペス角膜炎
主にHSV-1。初感染は多数が不顕性に経過して潜伏感染し、免疫力が低下した際に発症する。
上皮型(表層型) | 実質型(深層型) | |
病態 | HSVが角膜上皮に感染すると、点状→線状→樹枝状→地図状と角膜炎が拡大していく。実質型に移行するものもある。 | HSVが角膜実質に侵入すると抗原抗体反応により円盤状の角膜炎をきたす。抗原抗体反応のため病変からウイルスは分離されない。 |
症状 | ①片側性の眼痛+角膜知覚低下 ②流涙、異物感、充血、視力低下など |
①症状は基本的に上皮型と同じ ②視力低下は上皮型より強い傾向 ③進行すると前部ぶどう膜炎を合併 |
検査 | フルオロセイン蛍光染色による細隙灯顕微鏡検査で樹枝状の潰瘍を確認 | フルオロセイン染色による細隙灯顕微鏡検査で円盤状の潰瘍を確認 |
治療 | アシクロビル眼軟膏+抗菌薬点眼 (ステロイド点眼は禁忌) |
ステロイド点眼:免疫抑制・抗炎症 アシクロビル眼軟膏:上皮型合併も考慮して |
性器ヘルペス
5類感染症。
病態 | 主にHSV-2感染だが、最近ではHSV-1感染も増加している。感染期間は2日〜4週間。 |
症状 | 【初感染】 性交渉2~10日後、 ①皮疹:強い疼痛を伴う左右対称性の多発性の水疱・びらん・潰瘍 男性:陰茎、カリ部分、尿道、陰嚢、臀部、肛門などに皮疹 女性:外陰部、尿道、子宮頸部、臀部、肛門などに皮疹、疼痛で歩行障害(女性に特有) ②両側の鼠径リンパ節有痛性腫脹、発熱 ③膀胱炎、排尿障害 【回帰感染】 ストレス・感冒・日光暴露・免疫低下で再発しやすいのが問題となる。 ①疼痛を伴う小水疱を多数認め、水疱→膿疹→潰瘍となり痂皮化する。 |
検査 | 【尿検査】PCR、HSV抗原(+)で確定診断 【細胞診】多核巨細胞、核内封入体を多く認める |
治療 | アシクロビル、バラシクロビル内服 |
ベル麻痺
病態 | 【回帰感染】 顔面神経のHSVが再活性化されると運動神経で脱髄が起こる。さらに、神経の浮腫による絞扼と虚血により感染していない運動神経に麻痺が生じる。顔面神経麻痺の原因の約20%を占める。 |
症状 | 顔面神経麻痺症状のみ(聴覚過敏、味覚異常、表情筋障害、涙液分泌障害) |
検査 | |
治療 |
新生児ヘルペス
病態 | 経産道感染により胎児に初感染すると流産や死産の原因となる。また、出生しても中枢神経に感染した新生児の半分は死亡する。 |
症状 | 皮膚症状(水疱疹),眼症状(脈絡網膜炎,角結膜炎),中枢神経症状(小頭症) |
検査 | |
治療 | 帝王切開により経産道感染を防ぐ |
ヘルペス性ひょう疽
病態 | 口腔内のHSV-1、もしくは陰部からのHSV-2が小児ではおしゃぶり、成人では歯科医などの医療従事者が指先の傷から感染する疾患。 |
症状 | 指に有痛性の小水疱・膿疱の集簇 |
検査 | ? |
治療 | ? |
単純ヘルペス脳炎 Herpes simplex encephalitis
病態 | HSV-1の初感染によって小児の脳炎が起こり(乳幼児はHSV-2)、回帰感染によって三叉神経節に潜伏したウイルスが軸索を逆行して側頭葉を侵して成人の脳炎が起こる。 |
症状 | ①側頭葉症状:意味不明の言動(感覚失語)や奇声を発するなどの精神症状 ②先行する精神症状後の脳炎症状:発熱、頭痛、嘔吐、けいれん ③髄膜刺激症状:項部硬直など |
検査 | 【画像検査】 CT:側頭葉を中心とする低吸収域 MRI:T2やFLAIRで海馬を中心とした側頭葉に高信号の病変(脳浮腫) 【抗体検査】 血中・髄液中の抗HSV抗体、または髄液中のHSV-DNAをPCRで検出 【髄液検査】 ウイルス性髄膜炎と同様の異常所見 |
治療 | 検査結果を待たずにアシクロビルを点滴静注(2〜3週間投与) |
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[…] 単純ヘルペスウイルス1型、2型(HSV-1、HSV-2:Herpes Simplex Virus) […]