ヒトコロナウイルス(Human coronavirus)

微生物学

ヒト呼吸器コロナウイルス感染症

冬~初春にかけて流行するかぜ症候群の原因ウイルスの1つ(10~20%を占める)で、多くが6歳以下で初感染するため成人の約80%が中和抗体を持つ。

飛沫感染によって鼻咽頭粘膜上皮で増殖し、3~4日の潜伏期間の後、感冒を引き起こし1週間程度続く。感染後も防御免疫は成立しにくく、再感染を繰り返す。

SARS(重症急性呼吸器症候群)

2類感染症。

コロナウイルスが変異したSARSウイルス。

MARS( 中東呼吸器症候群)

2類感染症。

コロナウイルスが変異したMARSウイルス。

COVID-19(5類感染症定点)

学校感染症:発症してから5日経過し、かつ、症状が軽快して1日経過するまで。

疫学 3割程度は無症状。高齢者では死亡率高い。
病態 飛沫 or 接触後、鼻咽頭などの上気道に感染し、1〜7日間(中央値2〜3日間)の潜伏期間の後に発症する。感染から発症後5〜10日間は感染力を持つ
軽症では発症後1週間以内に軽快することが多い。重症化リスクの高い一部の患者では下気道まで感染が進展する。さらにARDSや多臓器不全に至る患者もある。
症状 ①上気道症状:咽頭痛(初発症状として多い)、鼻汁・鼻閉、稀に嚥下困難
②全身症状:発熱倦怠感、頭痛、筋肉痛など
③その他:味覚障害など
※周囲に感染者がいないか必ず問診する!
症状はインフルエンザVに似ており、臨床症状のみから鑑別は困難。
【合併症】
ウイルス性肺炎・二次性細菌性肺炎:呼吸困難など
心血管系:不整脈、うっ血性心不全、ショック、症状回復後の心筋炎など
血栓塞栓症:肺塞栓症、急性脳卒中など
小児多系統炎症性症候群(MIS-C):0〜19歳で、感染後2〜6週目に3日以上の発熱、腹部症状、循環器症状、川崎病類似症状があるとMIS-Cの可能性がある。
検査 【鼻咽頭ぬぐい液検査】
抗原検査(ウイルス量が少ないと検出されにくい)、RT-PCR(1〜5時間必要)
【血液検査】入院を考慮する患者は採血
リンパ球↓、血小板↓、D-dimer↑、CRP↑、PCT↑、CK↑、AST↑ALT↑
【画像検査】
胸部X線・胸部単純CT:
治療 【薬物療法】
①抗ウイルス薬
・モルヌピラビル
・ニルマトレルビル/リトナビル:プロテアーゼ阻害+ニルマトレルビル代謝遅延
・レムデシビル:RNAポリメラーゼ阻害薬
②抗体薬
・カシリビマブ/イムデビマブ(オミクロン株に無効)
・ソトロビマブ
③抗炎症薬
・バリシチニブ
・トシリズマブ:IL-6受容体モノクロナール抗体
・デキサメタゾン:SpO2が93%以下で酸素療法が必要な場合に投与
予防 ワクチン接種:インフルエンザワクチン接種者の対象者と同様(B類疾患)
手指消毒が重要】
プラスチック上では3日間、スチール上では2日間、段ボール上では1日間感染性を有する。手指にウイルスが付着しただけでは感染しない。汚染された手指で目、鼻、口などに触れて感染が成立する。
マスク着用・換気が重要】
会話、咳、くしゃみでウイルスは少なくとも8分間浮遊し、15分後に消失する。
【発症後の生活】
発症から5日間かつ症状軽快から1日以上経過するまで、人との接触はできるだけ避ける。同居家族がいる場合、生活空間を分け、マスク着用や手洗いを行う。

①重症度を分類する

②重症化リスク因子を確認

③重症度に合わせた治療を行う(外来)

他の疾患でステロイドを使用している場合、ステロイドを中止する必要はない。

軽症〜中等症Ⅰ 対症療法
重症化リスクの高い軽症 診断時は軽症と判断されても、発症後2週間以内は症状が進行することがあるため、早期に早期に抗ウイルス薬を投与することで、入院や死亡を減らすことが期待される。
薬物使用例 ①ニルマトレビル300mg/リトナビル100mg(パキロビッド®パック)
1日2回 発症から5日間内服
②レムデシビル(ベクルリー®点滴静注用 100mg)+生食
発症から3日間投与する
投与初日:200mgを30〜120分かけて点滴静注
2日目以降:100mgを30〜120分かけて点滴静注
中等症〜重症 入院治療

③重症度に合わせた治療を行う(入院)

中等症Ⅰ
(呼吸不全なし)
①レムデシビル(ベクルリー®点滴静注用 100mg)+生食
発症から3日間投与、COVID19肺炎の場合は5日間投与
投与初日:200mgを30〜120分かけて点滴静注
2日目以降:100mgを30〜120分かけて点滴静注
※ステロイド投与は不要
中等症Ⅱ
(呼吸不全あり)
①デキサメタゾン6mg+レムデシビル
デキサメタゾン6mg(経口・経管・静注) 1日1回10日間まで
血糖値測定消化性潰瘍予防を行う
※COVID-19ではなく、うっ血性心不全、誤嚥性肺炎、二次性細菌性肺炎が呼吸不全の原因の場合はステロイド投与は推奨されない。
重症 ICUに入院
その他 呼吸不全があればDVTの中等度リスク因子であるため、D-ダイマーを測定し、正常上限の3〜4倍を超える場合、ヘパリンなどの抗凝固療法が推奨される。

呼吸療法

コメント

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