頭痛の総論
まず、二次性頭痛を除外した上で診断する(突然発症は二次性頭痛、月〜年単位で繰り返す既往ありは一次性頭痛が多い)。
二次性頭痛の鑑別
緊急に処置を要する疾患
問診、身体診察 | 検査 | ||
頭 | くも膜下出血 | 突然発症、経験したことない人生最悪の頭痛、増悪傾向 | 頭部CT |
慢性硬膜下血腫 | 頭部CT | ||
脳内出血 | 眼球偏位、突然発症、経験したことない人生最悪の頭痛、増悪傾向 | 頭部CT | |
椎骨動脈解離 | 後頸部〜後頭部に突然の激痛 | 頭部MRI | |
脳静脈洞血栓症 | |||
下垂体卒中 | 頭部MRI | ||
髄膜炎 | 発熱、頸部硬直、jolt accentuation | 血液、腰椎穿刺 | |
脳炎 | 頭部MRI | ||
頭部外傷 | |||
他 | 巨細胞性動脈炎 | ||
急性緑内障発作 | 散瞳 | 眼圧測定 | |
高血圧性頭痛 | |||
CO中毒 | |||
眼部帯状疱疹 |
その他の二次性頭痛
問診、身体診察 | 検査 | ||
頭 | 脳腫瘍 | ||
脳膿瘍 | |||
他 | 急性・慢性副鼻腔炎 | ||
頸部由来の頭痛 | |||
起立性低血圧 | |||
精神疾患 | |||
ウイルス感染症 | 発熱 | ||
薬物乱用頭痛 | |||
帯状疱疹 | |||
後頭神経痛 |
SNNOOP10(二次性頭痛を疑うred flag sign)
S | 発熱を含む全身症状 | 髄膜炎、脳炎、脳腫瘍 |
N | 新生物の既往 | 脳腫瘍 |
N | 意識レベルの低下を含めた神経脱落症状 | 脳出血、脳腫瘍 |
O | 突然〜急性発症の頭痛 | くも膜下出血 |
O | 50歳以降に発症する頭痛 | 巨細胞性動脈炎、脳血管障害 |
P | 頭痛パターンの変化または最近発症した新しい頭痛 | 脳血管障害 |
P | 姿勢によって変化する頭痛 | 低髄液圧症候群 |
P | くしゃみ、咳、運動によって誘発される頭痛 | Chiari奇形 |
P | 乳頭浮腫 | 頭蓋内圧亢進 |
P | 痛みや症状が進行する頭痛 | 髄膜炎、脳静脈洞血栓症 |
P | 妊娠中、産褥期 | 高血圧性脳症 |
P | 自律神経症状を伴う眼痛 | 急性緑内障発作 |
P | 外傷後に発生した頭痛 | 硬膜下血腫 |
P | HIVなど免疫系病態を有する頭痛 | 髄膜炎、脳膿瘍 |
P | 鎮痛薬使用過多、薬剤新規使用による頭痛 | 薬物乱用性頭痛 |
二次性頭痛の診察の流れ
Onset
突然発症 | 二次性頭痛 |
転倒・外傷後 | 脳血管障害、頭部外傷 |
中毒 | 火事、ストーブのついた室内 |
Provocative/Palliative
運動で悪化 | 頭蓋内疾患(特に髄膜炎、脳炎)、片頭痛 |
光・音・匂いで悪化 | 片頭痛 |
入浴・飲酒で悪化 | 片頭痛、群発頭痛 |
Quality/Quantity
Quality | 拍動性:片頭痛、巨細胞性動脈炎、高血圧性脳症 チクチク:帯状疱疹 |
Quantity | 人生最悪の痛みを10とすると今回の痛みはいつくか?(NRS) 8以上ならくも膜下出血を鑑別にあげる |
Region/Radiation
Sequence/Symptoms
突然の頭痛 | くも膜下出血、脳出血 |
麻痺 | 脳出血、脳腫瘍 |
発熱 | 髄膜炎、巨細胞性動脈炎、急性副鼻腔炎 |
Time
増悪傾向 | 二次性頭痛 |
毎年同じ時期 | 群発頭痛 |
一次性頭痛
動き回ると痛みが増悪するのが片頭痛、軽減するのが緊張型頭痛!
片頭痛 Migraine
疫学 | 有病率約8%、家族性約40% リスク因子:若年女性(加齢で軽快)、疲労、睡眠不足・過多、週末(緊張から解放されたときに生じやすい) |
病態 | ストレスなどでセロトニンが増加し血管が収縮。その後、セロトニンが枯渇すると血管が拡張し拍動性頭痛が生じる。日常動作、入浴、飲酒などで血管拡張して悪化する。 |
症状 | ①約30%に閃輝暗点(キラキラと歯車状に輝く視野欠損)などの前兆がある。 ②拍動性頭痛が4〜72hr持続。 ③片側性が多いが両側性の場合(約40%)もある。 悪心・嘔吐、光・音・臭に過敏(そっとしておいてあげる) |
検査 | ? |
治療 | 【発作時】トリプタン(セロトニン受容体刺激薬)、NSAID 【予防】抗CGRP抗体、Ca拮抗薬、β遮断薬(機序不明)、三環系抗うつ薬 |
緊張型頭痛(TTH)
疫学 | 有病率約20%(頭痛で最多) リスク因子:VDT作業、同一姿勢の作業、各種ストレス |
病態 | 姿勢異常(VDT作業)・外部環境・ストレスなどが誘引となり後頭部〜肩甲骨にかけての持続的な緊張によって生じる両側性の頭痛。 |
症状 | ①締めつけ感・頭重感(生活に大きな支障はない程度)。 ②一日中痛みがあるが、特に夕方に増悪する。天候依存性のものもある。 肩こり(肩甲骨周囲のストレッチが有効)、眼精疲労 悪心・嘔吐は伴わない! |
検査 | |
治療 | 【発作時】NSAIDs 【予防】抗うつ薬、抗不安薬、筋弛緩薬、ストレッチで緊張をとる |
群発頭痛
疫学 | 若年男性に好発、非常に稀 リスク因子:飲酒、血管拡張薬などで悪化する |
病態 | 原因不明。周期性があり、毎年同じ季節、同じ月、同じ時間帯に発症する。 |
症状 | ①片側の目玉がえぐり取られるような激しい頭痛が連日続く。 ②深夜に起こりやすく、約1時間持続する。 流涙、結膜充血、鼻漏や鼻閉などの自律神経症状 |
検査 | |
治療 | 【発作時】 トリプタン皮下注+100%酸素吸入、リドカイン点鼻 【予防】 Ca拮抗薬(ベラパミル)、ステロイド |
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