水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:Varicella Zoster Virus)

微生物学

水痘(水疱瘡:水ぼうそう)Varicella

5類感染症。学校保健安全法:すべての発疹が痂疲化するまで登校停止。

【初感染】

疫学 2~8歳に好発
病態 空気感染により上気道粘膜から侵入したウイルスは局所リンパ節で増殖した後、血行的に全身に移動する。約80%が顕性感染となる。細胞性免疫能低下があると発症しやすく、重症化しやすい。
症状 2〜3週間の潜伏期間の後、
①発熱、瘙痒:発熱が紅斑に先行する場合も多い
同一皮膚領域に紅斑→水疱→膿疱→びらん・痂皮といった様々な段階の皮疹が混在し(新旧混在の発疹)粘膜を含めた全身に起こす(両側性)。皮疹は紅斑水泡→痂皮化の順になり、紅斑から痂皮化したものまで混在する。
③1週間程度で全て痂皮化して治癒する。
【合併症】
急性小脳失調症(発症1〜2週間後に生じ、自然軽快する)、肺炎、角結膜炎など
検査 PCR法:血液
ELISA法:IgM抗体確認
治療 通常、対症療法。
重症化リスクが高い場合は、アシクロビル、バラシクロビル投与。
アスピリンはReye症候群を起こす可能性があるため禁忌。
<水痘患者に接触者>
72時間以内
の緊急ワクチン(高力価γグロブリン)接種すれば発症を予防、もしくは軽症化することが可能。
予防 全ての小児に対して生ワクチンを定期接種する。

帯状疱疹 Zoster

【回帰感染】

病態 全身の知覚神経に潜伏感染したVZVは加齢、疲労、ストレス、悪性腫瘍などで免疫力低下すると再活性化し、1本の知覚神経軸索を下行して支配下の皮膚や粘膜に帯状に生じ(片側性)、2〜3週間後に痂皮となり治癒する。帯状疱疹は原則として一生に一度だけしか発症しない。 ウイルス量が多いときは両側性に皮疹が生じる播種性帯状疱疹(汎発性帯状疱疹)となり、空気感染対策が必要となる(個室隔離)。
症状 ①発疹前より神経痛が出現するのが特徴だが、発疹がなく神経痛のみの場合もある!
②片側の神経支配領域に一致した有痛性紅斑上に中心臍窩を伴う小水疱が帯状に多発
紅斑→水疱→膿疱→びらん・痂皮といった段階で変化(片側性)
※皮疹は一定領域を超えて孤立性皮疹を認める場合がある(播種性帯状疱疹) 皮疹は肋間神経領域が最多、次いで三叉神経領域が多い。 合併症として、顔面では角膜炎など眼症状、耳介・外耳道ではRamsay Hunt症候群を生じることがある。
検査 Tzanck試験:巨細胞(+)
治療 アシクロビル、バラシクロビル、ビダラビンの内服。
帯状疱疹後神経痛に対してはVB12、NSAIDs、無効の場合はプレガバリン内服。
予防 50歳以上の高齢者に対して生ワクチンの予防接種を推奨。
患者に対しては接触感染対策を指導する。

Ramsay Hunt症候群(耳帯状疱疹)

病態 顔面神経膝神経節に潜伏していたVZVが再活性化して発症する。
症状 ①末梢性の顔面神経麻痺(目が閉じれない、口角が下がる)
②病側の内耳神経症状(難聴・めまい・耳鳴り)
③耳介帯状疱疹(外耳道・耳介・口腔内に発疹、激しい痛み)
⇨②・③はベル麻痺にはない症状
検査 顔面神経麻痺がないか閉眼、口角挙上させる
治療 ステロイド:神経炎による神経絞扼を解除し、神経変性を予防する(神経の変性が完成する10~14日以降に投与しても効果がない)
アシクロビル・バラシクロビル 人工涙液:兎眼による乾燥性結膜炎を予防

帯状疱疹角膜炎

疫学 50歳以上に多い。
病態 三叉神経に潜伏感染したVZVの再活性化により角膜炎をきたす疾患。
症状 ①角膜炎:点状びらん、角膜潰瘍、虹彩毛様体炎を合併することもある
②片側性の三叉神経第1・2枝の支配領域に有痛性の紅斑→水疱→膿疱→自壊し痂皮化
検査 【細隙灯顕微鏡検査】
点状の角膜上皮びらん→進行すると円盤状角膜炎
治療 角膜上皮びらん:アシクロビル眼軟膏
角膜実質炎や虹彩毛様体炎の場合:ステロイド点眼
皮膚症状:バラシクロビル内服もしくは点滴

先天性水痘症候群

病態 妊婦が妊娠8〜20週に水痘に罹患した場合、胎児の約2%に発症
症状 新生児に、
①皮膚瘢痕
②発育障害
③神経系の異常(肢麻痺,水頭症,大脳皮質の萎縮,けいれん)
④眼球の異常(網脈絡膜炎,瞳孔不同,眼振,小眼球症,白内障)
⑤骨格の異常(上肢や下肢の低形成,指や趾の低形成)などがみられる
検査  
治療  

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