脳神経各論(脳血管障害)

脳神経

脳血管障害(脳卒中)cerebrovascular disease

疫学 リスク因子:糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙、家族歴、大量飲酒、AF、片頭痛、感染症、外傷、妊娠、違法薬物使用、寒冷など
病態 クモ膜下出血、脳出血、脳梗塞によって急に卒倒する病態。脳出血後にうつ病を発症する例は多い。
【クモ膜下出血】主に脳動脈瘤が破裂して脳実質のクモ膜下腔に出血する。
【脳出血】主に高血圧により細い血管が破裂し脳実質に出血する。
【脳梗塞】血栓塞栓により血管が閉塞し脳虚血が起こる。
症状 【①頭蓋内圧↑症状】
頭痛、悪心嘔吐、意識障害、クッシング現象により血圧上昇・徐脈(代償反応)
【②局所神経症状】
片麻痺(顔の歪み)、構音障害(呂律が回らない)、嚥下障害、感覚障害、失語、視野障害(瞳孔不同)など
クモ膜下出血は①のみ(脳実質外のため)
脳出血は①+②
脳梗塞は①+②(脳浮腫にはなるが頭痛は少ない)
CPSS CPSS:シンシナティ病院前脳卒中スケール
①イーと笑った時に顔の歪みがある
②閉眼して10秒間上肢挙上不能
③きちんと話せない
上記のうち1つでも当てはまれば脳卒中を疑い救急車を呼ぶ!
NIHSS NIH stroke scale:脳卒中の重症度評価スケール(日々の症状変化の指標にもなる)
①脳卒中を疑ったら、発症時刻の確認NIHSSで重症度を点数化する
※発症時刻:正常と確認できた最終時間(前日の就寝時刻など)
②現病歴、体重を確認
検査 ③頭部CT:ルート確保、採血後に実施。SAH、脳出血を確認。
④頭部MRI:DWI/FLAIRミスマッチ確認、脳梗塞を参照。
⑤心電図:ST変化、T波変化を伴うQT延長が比較的多く認められる。
治療 早期にリハビリテーションを開始し、廃用症候群による関節拘縮・筋力低下・深部静脈血栓症などを防ぐ。

脳梗塞 cerebral infarction

【脳梗塞の病型】

心原性 アテローム性 ラクナ BAD
機序 塞栓 血栓、塞栓 血栓 血栓
発症 突発完成 緩徐、段階増悪 急性完成 急性、増悪傾向
症状 局所神経症状
皮質症状
(意識障害)
局所神経症状
皮質症状
(意識障害)
ラクナ症候群 ラクナ症候群から始まり増悪
画像 境界明瞭
閉塞血管の支配域
出血多い
浮腫強い
境界明瞭
皮質領域は境界不明瞭なことが多い
穿通枝領域
(=基底核領域)
直径15mm以下
血管閉塞なし
ラクナと似る
or 橋A領域
直径15mm以上
血管閉塞なし

【病型別治療】

心原性 アテローム性 ラクナ BAD
抗血小板薬 ×
DAPT × △(軽症のみ) ×
ヘパリン △(進行性のみ) △(進行性のみ) × ×
アルガトロバン × ○(48hr以内) △(進行性のみ) 左に同じ
エダラボン
グリセリン

【脳梗塞について】

病態 ①〜③の原因によって脳動脈が閉塞し、脳虚血が生じて脳実質の壊死に至る疾患。割合はおおよそ心原性:アテローム血栓性:ラクナ梗塞=1:1:1である。
【病型別病態】
心原性:AF・AMI・弁膜症・DVTなどで生じた凝固塊が太い血管(中大脳Aが多い)を閉塞して、突然発症する。さらに、閉塞血管が再開通すると脆弱化した血管が破綻して出血性梗塞を生じる場合がある(脳梗塞発症数日後以内に出現しやすい、心原性で多い)。
アテローム血栓性:内頸A・中大脳A・椎骨Aなど太い血管が動脈硬化起因のプラークにより狭窄が起こり、そこに血栓が形成して血管が閉塞することで緩徐に発症する(頸動脈血栓が飛んで塞栓子となる場合は突然発症)。もしくは、血圧低下による血流低下で血管が閉塞する。前駆症状としてTIAを認めることがある。
分枝粥腫型梗塞(BAD):大脳基底核や橋底部の穿通枝入口付近に微小アテローム性病変が生じ、当該穿通枝領域全体が梗塞する。画像検査で穿通枝の走行に沿う細長い梗塞巣があり、また、病側の主幹動脈の高度狭窄や明かな塞栓源を認めないことが特徴。
ラクナ高血圧によって細い血管壁に微小アテロームが生じ、細い穿通枝Aが閉塞する(白質部分の閉塞)。繰り返すことで脳血管性認知症やパーキンソン症候群の原因となることがある。
症状 【頭蓋内圧↑症状】
意識障害:脳の広範囲が虚血になった場合に起こる(心原性に多い)
【虚血による局所神経症状】
もしくは心原性は突発的に、その他は緩徐・段階的に発症する。
前大脳A閉塞対側下肢優位の片麻痺・感覚障害、前頭葉症状(意欲低下・社会的行動障害・原始反射など)
中大脳A閉塞対側上肢優位の片麻痺・感覚障害、優位半球障害で失語、角回Aの閉塞でゲルストマン症候群(失算・失書・手指&左右失認)、劣位半球障害で対側の半側空間無視
後大脳A閉塞:黄斑回避の同名半盲、視床梗塞、Weber症候群、Benedikt症候群
脳底A分枝の閉塞:Millard-Gubler症候群
椎骨A+後下小脳A閉塞:ワレンベルグ症候群を参照
検査 【血液検査】
PT・APTT、TAT・D-ダイマーCK・トロポニン(脳梗塞の重症度と関連)
【心電図】
AFなどの不整脈がないか必ず確認
【画像検査】
頭部CT:超急性期は正常か中大脳動脈領域の場合はEarly CT sign(①中大脳A水平部の高吸収が発症直後より出現、②レンズ核輪郭の不鮮明化が発症後1~2時間で出現、③皮髄境界・島皮質の不鮮明化といった浮腫性変化が発症後2~3時間で出現、④脳溝消失が発症後3時間以降に出現)、発症24時間頃から梗塞部分が低吸収域となる。ただし、出血性梗塞があると低・高吸収域がまだら状に混在する。
頭部MRI:超急性期は拡散強調像(DWI:Diffusion)で高信号発症24時間〜1週間まで梗塞部分がT2やFLAIRで高信号となる。出血性脳梗塞はT2強調像で低信号となる。
MRA or CTA or 脳血管造影(DSAなど):血管の狭窄・閉塞像
<時間があれば>
頸部エコー:頸動脈狭窄あり(ときに聴診で頸動脈雑音あり)
心エコー:房室内血栓、左房拡大など原因検索
超急性期 血栓溶解療法
tPAの適応を確認。適応があれば、症状発症4.5時間以内にtPA投与(再開通率30%)を行いつつ、カテーテル血栓回収療法の準備をする。
・アルテプラーゼ0.6mg/kg(最大投与量60mg)の10%を1〜2分かけてボーラス投与し、残りを1時間で点滴静注。投与後は最初2時間は15分毎に血圧測定し、185/105未満に保つ。
※発症時間が不明な場合、最後に症状がなかった時刻を発症時間とみなす。
※wake up strokeの場合、DWI/FLAIRミスマッチ陽性(DWI高信号/FLAIR低信号)であればtPA投与する可能性あり。
カテーテル血栓回収療法:適応は発症6時間以内〜24時間以内に、内頸A or 中大脳A M1の閉塞がある。発症前のmRSスコアが0or1で、NIHSSスコアが10以上かつMRI拡散強調にてASPECTSが6点以上の症例に対し血栓回収療法が推奨されており、適応であるか、脳神経科にコンサルトを行う。
③その他の薬物療法(病型別に治療)
抗血小板薬(再発予防)
急性期(48hr以内):アスピリン160〜300mg/日
慢性期:アスピリン or クロピドグレル or シロスタゾール
DAPT
アスピリン50〜100mg/日(初回のみ160〜325mg)+クロピドグレル75mg/日(初回のみ300mg)→TIA亜急性期とNIHSS3点以下の軽度脳梗塞(心原性を除く)では、21日間限定で投与することで脳梗塞の再発予防効果あり。
潰瘍予防薬
オメプラゾール1回20mg/12hr静注
抗凝固薬(塞栓性脳梗塞)
急性期:ヘパリン静注(有用性は証明されていない)
慢性期:DOAC、ワルファリン
脳保護薬(壊死部から出るフリーラジカルを捕捉)
エダラボン1回30mg静注/12hr(腎機能障害には禁忌
降圧薬
虚血が悪化するため降圧薬は投与しない、もともと内服している場合も中止
ただし、sBP 220以上 or dBP 120以上が持続する場合、発症後24時間は約15%減を目標とする。大動脈解離、AMI、心不全、腎不全が合併している場合は降圧を検討する。
例:ニカルジピン10mg 5A 2mL/hrより開始
ヘッドアップ
ベッド上安静で0度に保つ(上げる時は30度まで?)
誤嚥や頭蓋内圧亢進のリスクが高い場合は30度程度まで許容される
治療 バイタルが安定したら、発症後24〜48時間以内にリハビリテーション開始!
【急性期合併症の予防】
・誤嚥性肺炎:飲食開始前に嚥下評価実施
・尿路感染症:尿カテは留置は可能な限り避け、間欠的導尿を行う
・消化管出血(Cushing潰瘍):PPI
・心血管系合併症:心電図モニター
・DVT:エコー確認、寝たきりの場合は間欠的空気圧迫法(弾性ストッキング×)
・褥瘡、関節拘縮:早期リハビリ、体位変換
【慢性期】
①心原性:抗凝固薬(DOAC、ワルファリン)内服→CHADS2スコア評価
②アテローム血栓性・BAD・ラクナ:抗血小板薬(バイアスピリン)を内服
③危険因子の管理:ARB(140/90以下目標)、脂質異常症治療薬、糖尿病薬など
④頸動脈狭窄がある場合:CEA、CAS

【tPAの適応】日本脳卒中学会より

【発症前のmRSスコア】神経疾患の重症度を評価するための指標

https://sauge-cl.com/blog/%E6%80%A5%E6%80%A7%E6%9C%9F%E8%84%B3%E6%A2%97%E5%A1%9E%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%80%80tpa%EF%BC%8B%E8%A1%80%E7%AE%A1%E5%86%85%E6%B2%BB%E7%99%82/

【その他の脳梗塞】

血管病変 非炎症性 動脈解離、もやもや病、Fabry病、放射線照射後
炎症性 CNSの原発性血管炎、高安病、SLE、感染症
血液凝固異常 赤血球・血小板異常 多血症、血小板増多少、マクログロブリン血症
凝固・線溶系異常 DIC、抗リン脂質抗体症候群など
悪性腫瘍関連 トルソー症候群など

一過性脳虚血発作 TIA:transient ischemic attack

病態 アテローム血栓性病変や心臓からの微小塞栓により一過性に脳血管が閉塞する病態。
TIAがあると90日以内の脳梗塞発症リスク(特に、TIA発症から48時間以内の発症)が高いため早期治療が重要となる。そのため、TIAを疑ったら緊急入院し、原因検索を行う。
【TIA疑いで脳梗塞の2日以内の発症リスクの評価=ABCD2スコア
Age(年齢):60歳以上(1点)
Blood pressure(血圧):収縮期140以上 or 拡張期90以上
Clinical features(臨床症状):片麻痺(2点)、麻痺を伴わない言語障害(1点)
Duration(症状の持続時間):60分以上(2点)、10〜59分(1点)
Diabetes(DM):糖尿病(1点)
発症72時間以内のTIAで、3点以上は入院適応
症状 閉塞した支配領域に応じた反復する脳梗塞似の症状(通常数分〜1時間以内に消失)。
①内頸A系の閉塞:一過性黒内障(片目)片麻痺失語(優位半球障害)
②椎骨・脳底A系の閉塞:構音・嚥下障害(脳幹虚血)、運動失調・動揺歩行回転性めまい(小脳虚血)、複視(外転N核の虚血)、四肢脱力(drop attack)など多彩な症状
検査 頭部CT・MRIで急性脳梗塞病変を認めない
②アテローム血栓性の検索:頸動脈雑音の聴取、頸動脈エコー・MRAで頸動脈狭窄確認
③心原性塞栓子の検索:心エコー、Holter心電図などで確認
治療 【心原性】
抗凝固療法(DOAC、ワルファリン)を行い、定期的にPT-INRモニタリング。
【アテローム硬化性病変】
①抗血小板療法 アスピリン160〜300mg/日
②DAPT療法 ABCD2スコア4点以上の場合 脳梗塞の治療参照
【外科的療法】
頸動脈狭窄が軽度(狭窄度50%未満)の場合は内科的治療だが、中等度以上(狭窄度50%以上で症状あり)の場合は①頸動脈内膜剥離術(CEA)、②頸動脈ステント留置術(CAS)を検討。

小脳梗塞 cerebellar infarction

病態 主に後下小脳A(PICA)の閉塞によって小脳に拘束が生じる。
症状 ①突然のめまい、眼振、構音障害、悪心嘔吐
②小脳失調:運動失調
※小脳出血の場合は上記に加え、突然の頭痛が生じる。
検査 【画像検査】
MRI:脳梗塞と同じ
治療 CTで水頭症や脳幹圧迫がなく、意識清明:保存的治療
CTで水頭症あり、中等度の意識障害:脳室ドレナージ
CTで脳幹圧迫あり、重度の意識障害:開頭外減圧術

Wallenberg症候群=延髄背外側症候群(代表的な脳幹梗塞)

病態 椎骨A or 分枝の後下小脳A(PICA)の閉塞によって延髄背外側の一部が壊死し、突然下記の症状が出現する疾患。錐体路は障害されないため四肢麻痺はない
症状 交代性の温痛覚障害:病側の顔面温痛覚障害(三叉N×:橋→延髄の経路で×)+頸部以下の対側の上下肢温痛覚障害。
:病側の前庭N核障害:めまい、悪心嘔吐、眼振(蝸牛N核は橋なので聴覚は正常)
⑨⑩:病側の球麻痺(舌咽+迷走N核障害):嚥下障害、嗄声・構音障害、吃逆、カーテン徴候
H:病側のHorner症候群:交感神経節前ニューロンの障害により縮瞳、眼瞼狭小化など
:病側の下小脳脚障害:小脳症状によって失調性歩行、断綴言語
我は極道の星(ワレ、は8、ご5、く9、どうの10、ほHorner、し小脳)
検査 【眼球運動検査】
前庭神経核の障害による眼振を確認
【画像検査】
MRI:拡散強調像で延髄外側の高信号(確定診断)
治療 脳梗塞に準ずる

その他の脳幹梗塞

病態 症状
視床症候群 後大脳A分枝である視床膝状体Aの閉塞→視床の梗塞 対側:感覚障害、視床痛(異常な自発痛)
Weber症候群 後大脳A分枝である視床穿通枝Aの閉塞→中脳腹側の梗塞 病側:動眼N麻痺
対側:片麻痺、中枢性顔面N麻痺
Benedikt症候群 後大脳A分枝である視床穿通枝Aの閉塞→中脳背側の梗塞 Weber症候群と同じ
+上下肢の不随意運動(×赤核)
Millard-Gubler症候群 脳底Aの傍正中枝の閉塞→橋の梗塞(進行するとMLF症候群) 病側:末梢性顔面N麻痺、外転N麻痺
対側:片麻痺

脳出血(脳溢血)cerebral hemorrhage

疫学 特に日中活動時に好発する。
病態 高血圧など種々の原因により脳内の動脈が破綻し、脳実質内に出血をきたした疾患。高血圧性脳出血では、穿通枝が持続する高血圧により血管壊死し、同部に形成された小動脈瘤の破綻により生じる。
【原因】
高血圧(約80%)
②AVM、もやもや病などの脳血管異常
③その他:外傷、抗凝固療法、血液疾患、脳腫瘍、アミロイドアンギオミオパチー
【分類】
①被殻出血(約30%)
②視床出血(約25%)
③脳幹(橋)出血(約10%)
④小脳出血(約8%)
⑤皮質下出血(約20%):アミロイドアンギオミオパチーやAVMなどの非高血圧性が原因の頻度が比較的高い。
症状 【頭蓋内圧↑症状】
突然の激しい頭痛:髄膜圧迫されるため
意識障害橋出血は脳幹網様体を圧迫、被殻出血視床出血は血腫が大脳皮質を圧迫
③悪心・嘔吐:CTZが圧迫されるため
【血腫による圧迫で局所神経症状】
片麻痺:被殻出血視床出血は内包後脚を圧迫し錐体路障害+→バレー徴候で確認
四肢麻痺:橋出血は左右の錐体路を圧迫する
感覚障害:視床出血被殻出血橋出血は感覚伝導路の視床、橋を圧迫する
その他、構音障害、失語、視野障害(瞳孔不同)など
検査 【身体検査】
上肢バレー徴候(座位):掌を上に向けて前ならえをして、目をつぶって10秒間姿勢を保つ。麻痺のある上肢が落下する。
下肢バレー徴候:腹臥位で膝関節を45°挙上させ、麻痺のある下肢が落下する。
ミンガッツィーニ徴候:仰臥位で膝を直角に曲げた状態で保持、膝関節が接しないようにする。麻痺のある下肢が落下する。
【画像検査】
頭部単純CT出血部位に高吸収域(HbがX線を吸収しやすいため)、慢性期になると血腫は吸収されて組織が瘢痕化するため低吸収域として写る。
血腫の容量(cc)=直径×直交する短径×スライス数×0.5
治療 【薬物療法】
降圧薬を静注しsBP140以下に下げる。
例:ニカルジピン10mg/10mL 5A 3mL/hrより開始
sBP140以上で1mL/hrずつ増(最大15mL/hr)、sBP140未満で1mL/hrずつ減・OFF可
頭蓋内圧亢進の場合、グリセロールなどの抗浮腫薬を静注(抗浮腫薬は基本使わない)
血圧が安定し意識清明になれば、早期リハビリテーション開始!
【手術】
出血部位に関係なく血腫量10mL未満では手術適応なし
開頭血腫除去術:小脳出血・被殻出血・皮質下出血
※皮質下出血では脳表から深さ1cm以下のものでは手術適応
脳室ドレナージ術:脳ヘルニア徴候を認める急性水頭症

【出血部位別の特徴】

被殻出血 視床出血 脳幹(橋)出血 小脳出血
破綻血管 レンズ核線条体A 視床穿通Aなど 橋A 上小脳A
眼球運動 病側への共同偏視(び→被 鼻先凝視
視床→中心
正中位固定
著しい縮瞳
健側への共同偏視
意識障害 強い意識障害 初期はなし
頭痛 意識障害のため無 激しい後頭部痛
悪心・嘔吐 ± ± 反復性+
運動障害 対側の片麻痺
→内包後脚近い
対側の片麻痺
→内包後脚近い
四肢麻痺
→左右錐体路×
麻痺なし
運動失調+
感覚障害 対側の感覚障害 対側の感覚障害 両側の感覚障害 感覚障害なし
顔面神経麻痺 中枢性 中枢性 末梢性
その他 失語症 めまい→歩行障害
手術適応 血腫31mL以上、圧迫所見高度 なし なし 最大径が3cm以上

クモ膜下出血 SAH:Subarachnoid Hemorrhage

疫学 SAH発症の1/3が死亡、1/3が後遺症、1/3が社会復帰できる。
病態 動脈瘤(約80%)、AVM(約10%)、もやもや病などにより血管が破裂してくも膜下腔に出血する疾患。その結果、脳ヘルニアとなり意識障害から死亡する可能性がある。
①急性期:(再破裂による)出血→血腫→脳実質圧迫→脳ヘルニア
②亜急性期:脳血管攣縮→広範な脳梗塞(脳虚血)→脳浮腫→頭蓋内圧亢進→脳ヘルニア
③慢性期:髄液内出血→急性水頭症→脳ヘルニア
また、交感神経↑により神経原性肺水腫→呼吸困難も引き起こす。
症状 【髄膜刺激症状】
突然の激しい頭痛:血液が髄膜を刺激するため
意識障害:低Na血症、脳ヘルニア
悪心・嘔吐:BBBのないCTZを血液が刺激するため
④一側の散瞳や眼瞼下垂などの動眼神経麻痺(ICPC破裂時)
髄膜刺激症状
項部硬直:仰臥位で他動的に頸部を前屈させると痛みを訴え下顎が前胸部につかない
・Brudzinski徴候:項部硬直時に患者が痛みを軽減するため、股関節や膝関節を屈曲させて下肢を胸に引き寄せる現象
・Kernig徴候:仰臥位で股関節+膝関節を90°に屈曲させた状態で他動的に膝関節を上に伸展させると腰や大腿後面に痛みを訴える
検査 【画像検査】
①頭部単純CT:鞍上部周囲にヒトデ型の高吸収域
②MRI:①ではっきりしない場合はFLAIRで出血を確認
③腰椎穿刺:②で不明な場合は血性髄液(直後)・キサントクロミー(数日後)を確認
④最終的には脳血管撮影・3D-CTA・MRAで動脈瘤の部位同定や評価を行う。
治療 【急性期(24時間以内)】←再破裂予防+頭蓋内圧亢進予防
24時間以内の再破裂を防ぐため降圧+鎮痛+鎮静する(この状態だと半日くらい放置しても問題ない)。血管攣縮前(72時間以内)であれば開頭→クリッピング術やカテーテル→コイル塞栓術を行う。
【亜急性期(72時間〜2週間)】←脳血管攣縮予防
出血した血液成分によって脳血管攣縮が起こり脳虚血が起こる(72時間〜2週間)。その予防のため血腫除去、トリプルH(輸液により循環改善・血圧上昇・血液希釈)を行う。
【慢性期(数週〜数ヶ月)】
出血により続発性の正常圧水頭症が起こり(数週〜数ヶ月)、認知症・尿失禁・歩行障害などで発症する。その際は水頭症に対する治療を行う。

脳動脈瘤 Cerebral aneurysm

病態 主に脳動脈分岐部にできる血管の瘤で、約20%は多発性で女性に多い。
先天的には動脈壁の中膜欠損、後天的には高血圧や動脈硬化などが原因となる。
<好発部位> うち高校前校長は学出身
約30% 内頸A-後交通A分岐部:ICPC(易破裂)
約30% 前交通A(易破裂)
約20% 中大脳A分岐部
その他 脳底A先端部(易破裂)
※脳底Aを除き、脳動脈瘤はWillis動脈輪の前半部に発生する(約80%)。
症状 【未破裂】
基本的に無症状。ICPCの動脈瘤は動眼神経を圧迫し、先ず、外側の副交感N成分圧迫で散瞳を起こす。さらに運動N成分圧迫で眼瞼下垂・複視といった動眼神経麻痺を呈する。
【破裂】
くも膜下出血を参照
検査 【画像検査】MRAや3D-CTAでスクリーニングを行い、脳血管撮影で治療を前提とした血行動態の評価を行う。
治療 無症状の場合、経過観察+血圧コントロール。
神経圧迫症状がある場合、未破裂であれば救命できるため、開頭クリッピング術 or カテーテル→コイル塞栓術を行う(破裂した場合はクモ膜下出血を参照)

AVM・もやもや病(若年者の脳卒中)

脳動静脈奇形(AVM) もやもや病(Willis動脈輪閉塞症
疫学 20〜40歳代に好発、男性に多い(2:1) 10歳以下、30〜40歳代に好発(二峰性)
病態 毛細血管を通さず脳の動静脈がつながりnidus(異常な血管の塊)を形成する先天性奇形。 両側性の内頸A終末部の狭窄により前・中大脳Aの血流が低下。その結果、側副血行路(もやもや血管)が形成される疾患。
症状 【nidus未破綻】脳実質を圧迫し、痙攣発作、進行性の片麻痺、頭痛などを起こす。
【nidus破綻】脳出血やSAHを起こす。
【小児】過換気で誘発される脳虚血発作(一過性片麻痺、脱力、起床時頭痛など)
【成人】脳虚血・脳出血症状(1:1)
検査 【画像検査】
CT:単純で高・低吸収域の混在、造影で不均一な高吸収域を確認
MRI:無信号域(flow void)として黒く抜けて写る。
脳血管撮影やMRA:nidusを確認
【画像検査】
MRI:基底核部にもやもや血管の断面が点状の無信号域(flow void)として確認
脳血管撮影やMRA:内頸A終末部狭窄ともやもや血管を確認
治療 開頭によるnidus全摘、ガンマナイフ
AVM前処置で流入動脈塞栓術
血行再建のため外頸Aの浅側頭A→中大脳Aへ直接バイパスする(STA-MCA吻合術)

内頸動脈海綿静脈洞瘻(硬膜動静脈瘻) CCF

病態 頭部外傷などで、海綿V洞の中を走行する内頸Aが破綻して瘻が生じた疾患。その結果、内頸A→海綿V洞に血流が流れ、眼Vへ逆流して眼Vがうっ血する。外傷から1ヶ月後に生じることもある。
症状 【3徴】
①拍動性眼球突出
②結膜充血&浮腫
③眼窩部の拍動性雑音
④その他:複視(動眼3N〜外転6Nが圧迫:海でさぶろう
検査 【画像検査】
内頸A造影:海綿V洞が早期に描出
治療 【手術】
海綿静脈洞塞栓術:眼Vの瘻孔閉鎖し、眼窩内圧を下げて充血・複視を改善させる

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