アレルギー性鼻炎
| 病態 | 花粉・ハウスダスト(ダニ)・真菌などが抗原となりIgEを介するⅠ型アレルギーで起こる鼻粘膜の炎症。スギ花粉ではアレルギー性結膜炎、ハウスダストでは気管支喘息を合併することが多い。 |
| 症状 | <3徴> ①反復性くしゃみ:鼻粘膜の知覚神経や血管のヒスタミン受容体に結合 ②水様性鼻汁:同上 ③鼻閉:好酸球などの炎症細胞がロイコトリエンを放出し鼻粘膜が浮腫 |
| 検査 | 【鼻鏡検査】 下鼻甲介の粘膜腫脹と蒼白化を確認 【アレルゲン検査】 鼻汁中の好酸球↑、皮内テスト、スクラッチテスト、プリックテスト、誘発テスト、RAST法・MAST法による特異的IgE抗体の定量測定(2つ以上陽性で確定診断) 【血液検査】 総IgE(IgE-RIST法)、末梢血好酸球数は重症度の指標となる |
| 治療 | 【対症療法】 抗ヒスタミン薬(鼻漏)、抗ロイコトリエン薬(鼻閉)、ステロイド点鼻、鼻内レーザー術(鼻閉) 【根治療法】 減感作療法(アレルゲン免疫療法):抗原を少量から(皮下/舌下)投与すると、IgEに対するIgG阻止抗体が産生され根治させる治療法。初回投与時はアナフィラキシーショックを起こすことがある。治療期間に数年かかる。 |
急性副鼻腔炎(発症から4週間以内)
| 病態 | 感冒の経過中に上気道全般に生じる炎症の一環として生じることが多い。当初、ライノウイルスなどのウイルス感染が発端となるが、数日後には細菌感染に移行することが多い。慢性副鼻腔炎に移行することもある。 |
| 起因菌 | 咽頭常在菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラが多い) |
| 症状 | ①膿性鼻汁、後鼻漏→湿性咳嗽、鼻閉 ②片側の頰部痛・前額部痛:上顎洞炎や前頭洞炎の炎症 ③全身症状:発熱、倦怠感など |
| 合併症 | 副鼻腔の周囲に炎症が波及して重篤な合併症を生じる。眼窩内・頭蓋内合併症が疑われる場合は早急に耳鼻咽喉科に紹介する。![]() |
| 身体所見 | 頬部・前額部叩打痛 |
| 検査所見 | X線・頭部CT:上顎洞にニボー |
| 重症度 | ![]() |
| 治療 | 治療開始3〜5日後に治療効果判定を行い、無効であれば治療を変更する |
| 【軽症】 ①アモキシシリン750mg/日 ②セフジトレン ピボキシル300mg/日 5日分 |
慢性副鼻腔炎(3ヶ月以上症状持続)
多くは両側性
| 好中球性(蓄膿症) | 好酸球性 | |
| 病態 | 線毛の機能が低下し、副鼻腔(主に片側の上顎洞)から排膿しにくいため起こる。線毛の機能が弱いため慢性気管支炎を合併しやすい。 | 好酸球により、全ての副鼻腔(篩骨洞優位)に炎症が起こる。また、鼻茸ができやすく、切除しても再発しやすい。 アスピリン喘息を合併する。 |
| 症状 | ①膿性鼻汁、後鼻漏→湿性咳嗽、鼻閉 | ①左に同じ+嗅覚障害多い |
| 検査 | 鼻粘膜・鼻茸組織に好中球浸潤 | 末梢血好酸球↑ 鼻茸組織に著明な好酸球浸潤 |
| 治療 | 14員環マクロライド少量長期投与により線毛機能亢進、抗菌薬をネブライザーで吸入 | ステロイド点鼻・内服により好酸球抑制 改善しない場合は内視鏡下副鼻腔手術(ESS)により副鼻腔出口を広げる。 |
【片側性の上顎洞病変】
| 副鼻腔腫瘍 (含む上顎洞癌) |
歯性上顎洞炎 | 真菌症(主にアスペルギルス) | 術後上顎嚢胞※ |
| ・鼻出血、疼痛 ・頬部の急速な腫脹 |
・歯科治療の既往 ・う歯 |
・CTで高吸収=石灰化 ・MRI T2で低信号 |
・手術既往 ・疼痛を伴う |
※術後上顎嚢胞:内視鏡手術が普及していなかった1990年以前では、慢性副鼻腔炎に対して上顎洞の副鼻腔粘膜の全除去を実施していた(Caldwell-Luc法)。この術式では術後20年以上経過して上顎洞自然孔ならびに対孔(下鼻道に形成する交通路)が閉鎖し、囊胞となり、他の部位を圧迫することがある。



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