神経系の感染症
★髄膜炎 Meningitis
病態 | 細菌性、ウイルス性によって急性髄膜炎(1週間以内)、 結核性、真菌性、癌性によって亜急性髄膜炎(2〜6週)が生じる。 |
症状 | ①感染によるサイトカイン↑:発熱、頭痛、嘔吐、意識障害 ②髄膜刺激症状:頭痛、項部硬直、ブルジンスキー徴候、ケルニッヒ徴候 |
検査 | 【身体検査】 項部硬直、ブルジンスキー徴候、ケルニッヒ徴候 jolt accentuation(感度約100%):首を横に振ると頭痛が増悪する 【髄液検査】 欄外に記載。眼底検査でうっ血乳頭、または、CTで頭蓋内占拠病変など頭蓋内圧亢進するものがないか確認してから髄液検査すること。髄液中の糖は血糖値と連動するので高血糖時は注意! 【画像検査】 造影MRI:炎症部位の血流が増加して著名な高信号を示す |
治療 | 原因に応じた治療 |
【髄液検査】→頭蓋内圧亢進時は禁忌(脳ヘルニアを誘発するため)
脳ヘルニアの疑い:瞳孔固定 or 散大、除脳・除皮質肢位、眼球の変位固定など
細菌性 | ウイルス性 | 結核性 | 真菌性 | |
外観 | 混濁 | 無色透明 | 無色透明 | 無色透明 |
髄液圧 | ↑↑ | ↑ | ↑ | ↑ |
蛋白 | ↑↑ | ↑ | ↑↑ | ↑ |
細胞数 | ↑好中球:多核 | ↑リンパ球:単核 | ↑リンパ球:単核 | ↑リンパ球:単核 |
糖※ | ↓↓ | 正常 | ↓ | ↓ |
その他 | グラム染色や細菌培養で原因菌検出 | ウイルス抗体価↑ PCRでウイルス検出 |
ADA↑、フィブリン析出、PCRで菌検出 | 墨汁染色やPCRで真菌検出 |
治療 | 抗菌薬(メロペネム) ステロイド(サイトカイン↓のため) |
対症療法 | 抗結核菌薬 ステロイド(サイトカイン↓のため) |
抗真菌薬(アムホテリシンB) |
リンパ球優位の細胞増加+糖濃度の軽度低下の場合には、癌性髄膜炎の可能性もあり、発熱がなく髄液細胞中に異常細胞が見られる場合は癌の検索を行う。
※髄液糖は同時測定の血糖値の1/2から2/3が正常範囲
【原因別の病態】
細菌性 | 細菌が血行性に髄液に達して生じ、死亡率が高い。起炎菌は以下の通り。 生後3ヶ月以前:①B群レンサ球菌、②大腸菌、インフルエンザ菌 生後4ヶ月以降:①肺炎球菌、②インフルエンザ菌、③髄膜炎菌 <グラム染色> グラム陽性双球菌:肺炎球菌 グラム陽性桿菌:リステリア グラム陰性球菌:髄膜炎菌(髄膜炎菌性髄膜炎) グラム陰性桿菌:インフルエンザ菌 |
ウイルス性 | 髄液培養で何も育たないため無菌性髄膜炎とも呼ばれる。軽症が多い。 80%がエンテロウイルスで、夏季に好発する。 |
結核性 | 敗血症によって血中に散布された結核菌が髄液に達して生じる。小児に好発。 |
真菌性 | 主に日和見感染によって血中の真菌が髄液に達して生じる。 起因菌はクリプトコッカスが最多(墨汁染色で莢膜による明るい輪ができる)。 <墨汁染色> クリプトコックス(Gram染色でもGram陽性の球状に染色される) |
脳膿瘍 Brain abscess
病態 | 化膿性病巣から二次的に炎症が波及し、脳実質内に化膿性膿瘍を作る疾患。原因は中耳炎や副鼻腔炎からの菌の直接侵入によるものが多く、残りは右→左シャントのある先天性心疾患、感染性心内膜炎などの血行性感染もある。 |
症状 | ①炎症による頭蓋内圧↑:激しい頭痛、嘔吐、意識障害 ②膿瘍の圧迫による巣症状:片麻痺、痙攣発作 ③髄膜刺激症状 |
検査 | 【髄液検査】 占拠性病変のため髄液検査は禁忌 【画像検査】 造影CT:中心部は低吸収、被膜がリング状に高吸収に写る(ring enhancement)、高吸収の部位の厚みは比較的均一で薄い(膠芽腫、転移性脳腫瘍との違い) 造影MRI:造影T1で中心部は低信号+辺縁が高信号(ring enhancement)、拡散強調では内部が高信号になる(低信号なら膠芽腫、転移性脳腫瘍の可能性!) MRS:アラニン・乳酸のピークが出現(脳囊胞では乳酸のみピーク) |
治療 | セフェム系・ペニシリン系点滴(髄液移行性高い) 脳圧降下薬(グリセロール、ステロイド) 膿瘍径2cm以上の場合、膿瘍ドレナージ |
単純ヘルペス脳炎 Herpes simplex encephalitis
ウイルス性脳炎の10〜20%(起因不明が最多)を占める。詳細は単純ヘルペスウイルスを参照。
神経梅毒 Neurosyphilis
梅毒トレポネーマを参照。
亜急性硬化性全脳炎 SSPE
麻疹ウイルスを参照。
プリオン病 Prion disease
正常プリオン蛋白が何らかの原因によって感染性を有する異常プリオン蛋白に変化し、中枢神経内に蓄積して神経細胞変性を引き起こす疾患。非常に稀な疾患。
①ヤコブ病(80%) | 孤発性に発症。50〜60代に好発。 |
②遺伝性プリオン病(15%) | プリオン遺伝子の変異。常染色体優性遺伝。 |
③感染性プリオン病(5%) | 医原性はヒト由来乾燥硬膜移植、食品はBSE(ウシ海綿状脳症) |
Creutzfeldt-Jakob病(CJD)
第5類感染症:診断したら1週間以内に保健所に届け出
病態 | プリオン病を参照。 |
症状 | ①急速に進行する認知症:意欲低下、抑うつ気分、物忘れなどで発症 ②広範な大脳皮質障害:ミオクローヌス(必発)など ③錐体路障害:四肢腱反射↑ ④錐体外路障害:筋固縮 ⑤小脳運動失調 |
検査 | 【画像検査】 MRI:拡散強調像で線条体や大脳皮質に高信号(脳浮腫)、中期以降はT2で線条体や大脳皮質に高信号 【脳波】 周期性同期性放電(PSD):PDSに一致してミオクローヌスを生じる 【髄液検査】 14-3-3タンパク質レベルの上昇 |
治療 | 治療法なく、発症から1〜2年で死亡する。 通常の接触では感染しないため一般病棟に入院できる。 脳・脊髄・網膜・髄液に触れる器具は可能な限り使い捨てを使用し、使い捨てできない場合はSDS(ドデシル硫酸Na)によるプリオン蛋白の不活性化を行う。 |
占拠性病変
★原発性脳腫瘍
神経細胞は分裂しないため、グリア細胞のみが腫瘍化する。原発性脳腫瘍の約94%が15歳以上の成人に発症する。原発性脳腫瘍の割合は髄膜腫(約35%)>神経膠腫(約20%)>下垂体腺腫(約20%)>神経鞘腫(聴神経腫瘍など(約10%))。
下垂体腺腫は内分泌科を、聴神経腫瘍は耳鼻咽喉科を参照。
【代表的原発性脳腫瘍】
膠芽腫(神経膠腫の1つ) | 髄膜腫(くも膜の腫瘍) | |
好発部位 | 前頭葉(脳実質内) | 脳表面(脳実質外) |
悪性度 | 悪性 | 基本的に良性 |
病態 | 未分化なアストロサイトが腫瘍化 | 髄膜が腫瘍化(血管が豊富!!) |
症状 | ①脳浮腫による頭蓋内圧亢進症状(早朝の頭痛・嘔吐、うっ血乳頭、外転N麻痺など) ②腫瘍の部位に応じた症状(失語、運動失調、症候性てんかんなど) |
左に同じ 【Foster-Kennedy症候群】 前頭蓋底部の腫瘍などで生じる。腫瘍と同側の嗅覚脱失、視神経萎縮、対側のうっ血乳頭の3症状が特徴 |
検査 | 造影MRI:造影T1で中心部は低信号+辺縁が高信号(ring enhancement)、拡散強調で低信号(高信号なら脳膿瘍の可能性)、原則単発 病理診断:偽柵状配列 |
造影MRI:造影T1で境界明瞭で均一に増強+端にdural tail sign(硬膜の一部:しっぽみたいな形) 外頸A造影撮影:sunburst appearance |
治療 | 可能な限り腫瘍摘出+術後ケモラジ (予後が1〜2年と悪い) |
術前に血栓塞栓術(術中の出血量↓のため)+全摘 |
【原発性脳腫瘍の発生部位】
【脳腫瘍の好発部位】
成人 | 小児 | |
大脳半球 | 神経膠腫(膠芽腫など)、髄膜腫、悪性リンパ腫 | |
松果体部 | 胚細胞腫瘍 | |
小脳半球 | 血管芽腫 | 星細胞腫 |
小脳虫部 | 髄芽腫 | |
第四脳室 | 上衣腫、髄芽腫 | |
脳幹部 | 神経膠腫 | 神経膠腫 |
トルコ鞍部 | 下垂体腺腫 | 頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍 |
小脳橋角部 | 聴神経鞘腫、髄膜腫 |
転移性脳腫瘍
病態 | 肺>乳房>大腸などを原発とする悪性腫瘍が脳に転移した疾患。半数が多発性となる。 |
症状 | 転移部位に応じた症状 |
検査 | 【画像検査】 造影MRI:造影T1で中心部は低信号+辺縁が高信号(ring enhancement)、拡散強調で低信号(高信号なら脳膿瘍の可能性)、多発が多い 【術後病理】 病理診断で原発巣と一致する所見。 |
治療 | 放射線治療 |
リング状増強効果(ring enhancement)を示す脳内腫瘤の鑑別
脳膿瘍 | 膠芽腫 | 転移性脳腫瘍 |
均一な膜の厚さ | 原則単発 | 多発が多い |
拡散強調像で内部が高信号 | ー | 肺癌・乳癌などから転移 |
外傷
頭蓋底骨折 Skull base fracture
病態 | 顔面・頭部打撲して頭蓋底の円蓋部の線状骨折が頭蓋骨に波及する病態。髄液漏で髄液と入れ替わり空気が頭蓋内に入る場合がある(頭蓋内気腫=気脳症)。 |
症状 | 前頭蓋底骨折(篩板骨折):嗅覚障害、髄液鼻漏、パンダ目(眼窩周囲皮下出血) 内頸A海綿静脈洞瘻:拍動性眼球突出、結膜充血&浮腫、眼窩部の拍動性雑音が3徴 側頭骨縦骨折:伝音難聴、ときにBattle徴候(耳介後部皮下出血←中頭蓋底骨折) 側頭骨横骨折:内耳N障害(感音難聴)、顔面N麻痺 視神経管骨折:眉毛外側の外傷で生じやすく、視力障害(直接対光反射消失) 頭蓋内圧亢進:頭蓋内気腫・血腫により頭痛、嘔吐 |
検査 | 【画像検査】 X線:頭蓋内気腫ではガラス片様の低吸収域 CT:頭蓋内気腫では低吸収域 |
治療 | 髄膜炎予防のため抗菌薬投与 頭蓋内圧亢進では原疾患治療までに30度の頭位挙上・呼吸管理・抗脳浮腫薬静注、重症例では脳室ドレナージして圧解放。 |
びまん性軸索損傷 DAI
病態 | 頭部への回転加速度衝撃による剪断損傷により、広範な白質神経線維の断裂が生じる病態。主に交通事故によるものが多い。過半数が死亡し、1/3が植物状態に至る。 |
症状 | 【受傷直後】 直後から強い意識障害: 【回復期】 高次脳機能障害:遂行機能障害、社会的行動障害、人格変化、認知障害など |
検査 | 【画像検査】 CT:明らかな頭蓋内損傷は認めない MRI:FLAIR像で脳梁・上小脳脚・脳幹の白質に小さな高信号領域の散在 |
治療 | 日常生活・社会生活への適応が困難となることから、リハビリテーション、生活支援などの確立に向けた取り組みが注目されている |
★急性硬膜外血腫 Acute epidural hematoma
病態 | 頭蓋骨骨折により頭蓋骨と硬膜との間に出血(中硬膜A破綻が約60%と最多)が起こり、脳実質を圧迫する病態。 |
症状 | ①数時間の意識清明期の後に急激な意識障害(テント切痕ヘルニアによる脳幹圧迫) |
検査 | 【画像検査】 X線:頭蓋骨骨折(側頭部の骨折線) 単純CT:骨折部に凸レンズ型の高吸収域(受傷直後は認めないこともある)、骨と骨のつなぎ目以上には広がらないのため凸レンズになるのが特徴 |
治療 | 血腫が1cm以上の場合、緊急開頭して開頭血腫除去+出血源止血 |
急性硬膜下血腫 Acute subdural hematoma
病態 | 頭部外傷により脳表の静脈(複合型)>架橋V(単純型)が破綻し、硬膜下に血腫が生じた病態。乳幼児では強く頭を揺さぶられて架橋Vが破綻するshaken baby syndromeがある。 |
症状 | ①外傷直後の意識障害、もし意識があれば頭蓋内圧亢進症状(頭痛など) |
検査 | 【画像検査】 単純CT:硬膜下に沿った三日月型の高吸収域 |
治療 | 緊急開頭して開頭血腫除去+出血源止血 |
慢性硬膜下血腫 Chronic subdural hematoma
病態 | 軽微な頭部外傷による微量の出血が生じ、硬膜下に被膜を伴う血腫が徐々に拡大する病態。アルコール多飲者や高齢者に多く(脳萎縮?)、受傷後3週間〜6ヶ月で発症する。 |
症状 | ①頭蓋内圧亢進症状:頭痛、片麻痺、歩行障害、記名力低下、自発性低下、尿失禁 |
検査 | 【画像検査】 単純CT:硬膜下に沿った三日月型の低〜高吸収域 |
治療 | 速やかに穿頭血腫ドレナージ術 |
頭蓋内圧亢進
病態 | 脳腫瘍などの頭蓋内占拠性病変、脳浮腫、水頭症などによって頭蓋内圧が亢進する状態。 その結果、脳ヘルニアなどを引き起こす。 |
症状 | 【急性】 ①激しい頭痛(早朝起床時に強い)、悪心嘔吐(噴射状) ②Cushing現象:①血圧上昇、②徐脈、③緩徐深呼吸(乏血状態に対する代償反応) ③眼窩うっ血乳頭:乳頭萎縮 ④動眼神経麻痺:一側性の散瞳と眼球の外方転位 【慢性】 ①起床時の頭痛:呼吸↓によりPaCO2↑して脳血管拡張するため |
検査 | 頭部CT、腰椎穿刺(下行性脳ヘルニアのリスク↑)は禁忌 【画像検査】 眼底検査:うっ血乳頭があれば頭蓋内圧亢進を証明 |
治療 | ①高浸透圧利尿薬(グリセロール、マンニトールなど)の投与 ②ステロイド(BBB修復して頭蓋内圧低下) ③バルビツレート・低体温療法により脳代謝抑制 ④脳室ドレナージなど外科的処置で内減圧 ⑤過換気 |
脳ヘルニアの分類
脳ヘルニア徴候をきたしている場合は、術前にマンニトールなどの浸透圧利尿剤を急速に点滴投与し、頭蓋内圧を下げる。
※3つはテント切痕ヘルニア
動眼神経は中脳レベルで大脳脚の内側を出て前方へ走行し、テント切痕の下を通り海綿静脈洞に入る。このため、テント切痕ヘルニアの際、最初に障害されやすい。
症状 | 予後 | |
帯状回ヘルニア | 初期は無症状→前大脳動脈圧迫により下肢の運動・感覚障害 | 良 |
鉤ヘルニア※ | 初期は病変側の動眼神経麻痺(対光反射消失し散瞳→瞳孔不同) →脳幹の圧迫で重篤な意識障害 動眼神経麻痺を確認したら早急に脳外科にコンサル! |
↓ |
正中ヘルニア※ | 間脳の圧迫して両側散瞳→脳幹の圧迫で重篤な意識障害 | ↓ |
上行性ヘルニア※ | 小脳が上行し中脳を圧迫→脳幹全体を圧迫 | ↓ |
大後頭孔ヘルニア | 小脳が下行して延髄を圧迫し、急激に意識障害・呼吸停止、項部硬直 | 悪 |
水頭症
病態 | 【非交通性水頭症】髄液循環路障害により髄液が脳室からくも膜下腔に流出できない病態 【交通性水頭症】細かい目詰まりがあり髄液がくも膜顆粒から静脈洞に流出できない病態 |
症状 | 【0〜2歳】頭位拡大、大泉門膨隆、落葉現象 【2歳以上】精神・運動発達遅滞 【成人】歩行障害(バランスを保つため開脚歩行、すり足、小刻み)・認知機能障害(スイッチが切れたようにパワーがないかんじ)・尿失禁(3徴) |
検査 | 【画像検査】 CT:急性期に側脳室下角が拡大する MRI:脳室拡大 |
治療 | 原因の治療 |
正常圧水頭症(NPH)
病態 | 脳室は拡大しているが、髄液圧は正常である状態のもの。 特発性:60〜70歳代に好発 続発性:くも膜下出血の慢性期、頭部外傷、髄膜炎後(炎症が原因で細かい目詰まりを起こす=交通性水頭症) |
症状 | 【三主徴】 ①歩行障害(開脚・小刻み歩行)>②認知症(記銘力低下・動作緩慢)>③尿失禁 |
検査 | 【髄液排除試験(CSF tap test)】 腰椎穿刺で髄液を約30mL排除し症状改善の有無を確認する。 【画像検査】 CT・MRI:脳室拡大、シルビウス裂拡大、正中部の脳溝・くも膜下腔の狭小化(DESH:不均衡な所見を示す水頭症で、正常圧水頭症の特徴的MRI所見) |
治療 | 【髄液短絡術】 VP(脳室腹腔)シャント、LP(腰椎腹腔)シャント |
脳・脊髄奇形
二分脊椎
疫学 | 頻度:約5人/出生1万人(嚢胞性)、1人/出生4000人(潜在性) リスク因子:葉酸欠乏症、ビタミンAの過剰摂取、薬剤(バルプロ酸など)、喫煙 |
病態 | 受精後18日から25日に起こる神経管閉鎖の異常で、神経管尾側の閉鎖不全により、腰仙部に多く見られる先天奇形。 【嚢胞性】 ①脊髄髄膜瘤:腫瘤中央の皮膚はなく、脊髄・髄膜が露出している(胎児期に羊水過多)。 ②髄膜瘤:髄膜が脱出するが、その上に皮膚はある(血管腫様の母斑)。 【潜在性】 ③潜在性:皮膚直下に脂肪腫があり、脊髄に連結している。 |
症状 | ①脊髄髄膜瘤 病変部以下の弛緩性麻痺+反射消失+感覚障害、膀胱直腸障害、足の変形、側弯、尿路感染症、合併奇形としてChiari奇形Ⅱ型、水頭症 ②髄膜瘤 神経学的症状なし、血管腫様の母斑 ③潜在性二分脊椎 固定された脊髄が成長とともに牽引され、膀胱直腸障害、腰背部痛、足の変形、側弯、潰瘍形成などの症状を生じる |
検査 | 【出生前スクリーニング】 脊髄髄膜瘤や無脳症では妊婦の血清中または羊水中のAFPの異常高値 【禁忌】脊髄くも膜下麻酔の禁忌 |
治療 | 帝王切開:髄膜瘤は経腟分娩では感染、瘤破裂の可能性のため 【開放性の脊髄髄膜瘤】 生後2日以内に髄膜瘤閉鎖術(感染の危険があるため)+水頭症治療 【非開放性の二分脊椎】 待機的に手術時期を決定する |
予防 | 妊娠する4週間前~妊娠12週に毎日0.4mg/日の葉酸(野菜350gで同量の葉酸摂取可能または栄養補助食品で摂取)を摂取することが推奨されている。 ただし、1mg/日を超えた葉酸摂取は禁忌! |
Chiari奇形
Chiari奇形は小脳の一部や延髄が大孔を介して脊柱管内に落ち込んだ病態を指す。
分類 | Ⅰ型 | Ⅱ型 |
下垂する 組織 |
小脳扁桃のみ下垂 (緩徐に発症) |
延髄・第4脳室・小脳虫部が全体的に下垂 |
発症年齢 | 成人・小児 | 乳幼児 |
症状 | 非特異的疼痛:後頭部痛、項部痛(咳やくしゃみで増悪) | 脳幹症状:吸気性喘鳴、嚥下困難、無呼吸発作 |
合併症 | ①脊髄空洞症→宙吊り型温痛覚障害 (I型は合併症1つ) |
①脊髄髄膜瘤(全例)、②水頭症 (II型は合併症2つ) |
MRI | 小脳扁桃の脊椎管内への陥入 | 小脳・延髄の脊椎管内への陥入 |
治療 | 症候性の場合は後頭蓋窩減圧術 | 左に同じ |
コメント