内分泌疾患(下垂体、副腎、甲状腺、副甲状腺、内分泌腫瘍)

内分泌代謝科

内分泌総論

分泌様式    
全分泌(holocrine) 腺細胞自体が崩壊し、細胞内の様々な物質が分泌物質として放出される。 皮脂腺
離出・断頭分泌(apocrine) 細胞の一部が出芽してちぎれ放出される。 汗腺や乳腺
漏出分泌(merocrine) 細胞自体は破壊されない.エクリン汗腺や,多くの内分泌腺.このうち,分泌機構によって,さらに以下の2つに大別される.
①エキソサイトーシス(開口分泌,exocytosis)細胞内で作られ膜に包まれた小胞が細胞膜と融合して内容物を放出する.タンパク質や多くのホルモンなど.
②透出分泌(diacrine)細胞膜に溶解しうる物質が透過,あるいは細胞膜にあるポンプを通して出す.ステロイドホルモン,胃酸など.
その他
日内変動を示すホルモン  
①成長ホルモン にピーク、日中は空腹時に分泌増加・食後に分泌低下。
②メラトニン にピーク、日中は低い。
③ACTH・コルチゾール・Ald 早朝にピーク、その後漸減して深夜に底値。

視床下部・下垂体(前葉+後葉)

【解剖】

下垂体後葉はADHを貯蔵しているためMRIのT1強調像で高信号となる。

【生理】

視床下部ホルモン 前葉ホルモン 前葉ホルモンの作用
成長ホ放出ホ
(GRH)
成長ホ
(GH)
①直接+間接(肝からソマトメジンC分泌促進)作用により軟骨細胞の増殖させ、骨・軟部組織の成長促進
②蛋白同化促進・脂質分解促進・インスリン抵抗性を増加させて血糖上昇
②水&電解質を腎で再吸収促進
【GH分泌促進】低血糖、インスリン、グルカゴン、アルギニン、ドパミン&クロニジン(GRH分泌促進)
【GH分泌抑制】ブドウ糖(高血糖)、ソマトメジンC、ソマトスタチン、ドパミン遮断薬
甲状腺刺激ホ放出ホ
(TRH)
甲状腺刺激ホ
(TSH)
甲状腺ホルモン(主にT4)の分泌刺激作用
副腎皮質刺激ホ放出ホ
(CRH)
副腎皮質刺激ホ
(ACTH)
副腎皮質ホルモン(コルチゾール、副腎アンドロゲン)分泌刺激作用
ゴナドトロピン放出ホ
(GnRH)
性腺刺激ホ
(LH/FSH)
性ホルモン分泌刺激作用
(エストロゲン↑プロゲステロン↑アンドロゲン↑)
ドパミンで抑制
TRHで促進
乳頭吸啜刺激で促進
プロラクチン
(PRL)
①乳汁合成作用
②性腺抑制作用(GnRH分泌を抑制し無月経にさせ、制欲を低下させる)
ソマトスタチン
(SS)
GH分泌抑制TSH分泌抑制
ソマトストップで成長と代謝をSTOP

視床下部合成→後葉ホルモン 作用
バソプレシン(ADH/AVP) 血中Na低下・血漿浸透圧低下作用
血漿浸透圧↑により視床下部でADHが合成される。ADHは腎の集合管V2受容体に結合し、管腔側にAQP2の発現促進させ、水の再吸収を促進させて血漿浸透圧を低下させる。
※CRHによりADHの産生↑
オキシトシン ①子宮収縮作用、②吸啜刺激により射乳作用

下垂体腺腫

病態 前葉細胞由来の腫瘍(主に良性腫瘍)。
ホルモン産生する機能性腺腫(PRL産生腺腫>GH産生腺腫>ACTH産生腺腫>TSH産生腺腫)とホルモン産生しない非機能性腺腫に大別される。また、腫瘍の大きさによってミクロアデノーマとマクロアデノーマに分別される。
腫瘍内出血して脳卒中様の症状を呈することを下垂体卒中という。
症状 【機能性腺腫】
ミクロではホルモン過剰症状、マクロになると圧迫症状が加わる。
【非機能腺腫】
ミクロでは無症状、マクロになると圧迫症状(頭痛両耳側性半盲)が出る。
【下垂体卒中】
突然の頭痛視力障害、嘔吐、海綿静脈洞内への圧迫による外眼筋麻痺
検査 【画像検査】
CT:下垂体卒中ではトルコ鞍付近の高吸収域を含む占拠性病変
MRI:
治療 【手術】Hardy手術(経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術)←下垂体卒中時は準緊急的に行う
【放射線】定位放射線照射(ガンマナイフ、サイバーナイフ)
【薬物療法】PRL産生腫瘍に対してドパミン作動薬

高プロラクチン血症 Hyperprolactinemia(無月経乳汁漏出症候群)

疫学 女性に多い(4:1)、20〜40歳代に好発
病態 下垂体前葉からPRL分泌過剰となる疾患。原因不明の無月経の約20%を本症が占める。
【原因】
ドパミン遮断薬、エストロゲンなどの薬剤(最多)
下垂体腺腫(プロラクチノーマ):PRL産生↑↑
原発性甲状腺機能低下症:TRH↑のためPRL↑
④特発性:産褥期のChiari -Frommmel症候群(授乳終了後もPRL濃度が低下しない)
⑤慢性腎不全:PRLは腎排泄型のため
⑥視床下部・下垂体茎病変:下垂体のドパミン作用低下
⑦胸壁疾患:外傷、火傷、湿疹など
症状 【女性】
乳汁分泌→女性の場合はミクロアデノーマの段階で受診する!
②性腺機能低下(続発無月経、不妊、性欲低下):PRLはGnRHの分泌を抑制する
【男性】
①性腺機能低下(勃起不全、性欲低下、女性化乳房)
②腫瘍による圧迫症状(頭痛、両耳側性半盲)→男性の場合はマクロアデノーマの段階になってやっと受診する!
検査 【血液検査】
血中PRL↑↑↑、甲状腺機能低下症の場合はTSH↑・T3&4↓
【画像検査】
X線・CT・MRI:プロラクチノーマの場合はトルコ鞍部に下垂体腺腫
治療 ①原因薬剤中止
②D2刺激薬(カベルゴリン、ブロモクリプチンなど)、薬剤抵抗性はHardy手術
③T4補充:原発性甲状腺機能低下症の場合

先端巨大症 Acromegaly

病態 下垂体腺腫(GH産生腫瘍)によってGHが過剰分泌する疾患。
骨端線閉鎖前に発症した場合は下垂体性巨人症、閉鎖後に発症した場合は先端巨大症。
症状 【GHによる症状】
軟部組織の肥厚四肢先端の肥大下顎や眉弓部の突出などの顔貌変化、巨大舌→睡眠時無呼吸症候群手根管症候群、変形性膝関節症、足底軟部組織肥厚(治療効果測定に使用)が起こる。
②発汗過多:汗腺発達のため
③耐糖能異常・DM:血糖値↑のため
脂質異常症:脂肪分解促進による、ただし、体脂肪は増加しない
⑤高血圧:腎での水やNa再吸収促進による
【腫瘍による圧迫症状】
頭痛、両耳側性半盲、性腺機能低下(ゴナドトロピン産生細胞を圧迫するため)
【合併症】
①大腸ポリープ→大腸癌(下部内視鏡検査を行うこと!)
②尿路結石:糸球体濾過率上昇により尿中Ca増加するため
③心肥大:心筋症様の症状、虚血性心疾患
④高プロラクチン血症:腫瘍自体がGHと同時にプロラクチンを産生する
検査 【負荷試験】ブドドウ糖、パミン、TRH
75g OGTT負荷試験:ブドウ糖負荷してもGH値が抑制されない
②ドパミン負荷試験:健常者とは逆でGH値が低下する(→ドパミン作動薬が治療に有効)
③TRH・GnRH負荷試験奇異性にGH↑↑
【血液検査】
IGF-1↑GH↑(日内変動消失=1回の採血では評価できない)、P↑(GHは尿細管でP再吸収を促進するため)、TG↑(LPLが低下するため)
【尿検査】
尿中Ca↑
【画像検査】
単純X線:前頭洞の拡大、指趾末節のカリフラワー様肥大変形、足底軟部組織肥厚(22mm以上)、トルコ鞍拡大変形による二重床・風船様拡大
MRI:T1強調画像で低信号の下垂体腺腫を確認
治療 【手術】
Hardy手術(経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術)(第一選択)
【薬物療法】
手術後の残存腫瘍に対して、
①ソマトスタチン誘導体注射(オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド)
②ドパミン作動薬(ブロモクリプチン)経口投与
③GH受容体拮抗薬(ペグビソマント)皮下注
【放射線療法】
薬物療法が無効の場合、残存腫瘍に対してガンマナイフやサイバーナイフ照射
※無治療で放置すると心血管疾患、悪性腫瘍を合併し、平均寿命が約10年短縮する。

下垂体前葉機能低下症 Hypopituitarism

病態 視床下部もしくは下垂体に腫瘍・虚血・炎症が生じ、全ての前葉ホルモンの分泌低下をきたす疾患。欠乏するホルモン数は、複数(部分的下垂体機能低下症)もしくは全て欠乏(汎下垂体機能低下症)の場合がほとんどである。
【原因】
①視床下部性:胚細胞腫、頭蓋咽頭種などの脳腫瘍、サルコイドーシス
②下垂体性:下垂体腺腫、Sheehan症候群リンパ球性下垂体炎
症状 【欠乏するホルモンに応じた症状】
FSH/LH:無月経、性欲低下、乳房・精巣の萎縮、腋毛・恥毛脱落
PRL:乳汁産生障害
TSH:寒がり、低体温、浮腫、皮膚乾燥、便秘
ACTH:続発性副腎不全により意識障害(低血圧低血低Na血症、※Aldは分泌されているため高K血症は来さない)、易疲労感、食欲低下、悪心、体重減少
GH:小児期では低身長、成人期では体脂肪量↑・筋組織量↓
【腫瘍による圧迫症状】
腫瘍、炎症により頭痛、両耳側性半盲
検査 【分泌刺激試験】
視床下部ホルモンを投与し、反応があれば視床下部性、なければ下垂体性
【血液検査】
ACTH↓によりコルチゾール↓
TSH↓によりFT4↓
LH/FSH↓によりアンドロゲン↓(テストステロンなど↓)エストロゲン↓
GH↓によりIGF-Ⅰ(ソマトメジンC)↓
【画像検査】
MRI:基礎疾患の有無を検索
治療 原疾患治療+欠乏した前葉ホルモンを補充。
ACTH欠乏はコルチゾール、TSH欠乏はT4を補充(両欠乏:コルチゾール→T4の順に投与!先にT4を投与すると、コルチゾールの代謝を促進し、副腎クリーゼを来たすため。
※低Na血症の状態でコルチゾール補充を開始すると、水利尿の改善に伴う血清Na値(血漿浸透圧)の急激な上昇により浸透圧性脱髄症候群(ODS)を誘発することがあり注意!

Sheehan症候群 VS リンパ球性下垂体前葉炎

どちらも似たような時期に発症し、症状も似ている!

  Sheehan症候群(汎下垂体↓が多い) リンパ球性下垂体前葉炎(部分的が多い)
病態 分娩時の大量出血に起因する下垂体前葉の虚血性壊死を生じた疾患。 下垂体に対する自己免疫により前葉の機能不全をきたす疾患。妊娠末期〜産褥期に好発。
症状 前葉ホルモン低下症状(乳汁分泌不良陰毛脱落など) 前葉ホルモン低下症状(1/3の症例でPRL↑して乳汁分泌をきたす)+炎症による圧迫症状
検査 下垂体前葉機能低下症を参照 MRI:下垂体の対称性腫大
治療 欠乏したホルモンを補充 左に同じ

尿崩症 DI:Diabetes insipidus

  中枢性尿崩症 腎性尿崩症 心因性多飲
病態 視床下部〜後葉の腫瘍や炎症により突然、ADHの合成・分泌不全となり多尿を来たす病態。特発性(40%)と続発性(最多)に大別される。 高Ca血症低K血症薬剤によるLi中毒などで集合管のAQP2発現低下が起こり多尿となる病態。遺伝性と続発性に大別される。 ストレスで多飲し、血漿浸透圧↓しAVP分泌↓により多尿となる。
症状 夜間尿意あり→睡眠不足
口渇・多飲・3L以上の多尿
夜間尿意あり→睡眠不足
口渇・多飲・3L以上の多尿
夜間尿意なし
多飲・多尿
検査 【視野検査】
視床下部〜後葉の腫瘍
【MRI】
T1で後葉の高信号が消失
治療 デスモプレシンの点鼻/経口投与+続発性は原疾患治療(使用時は体重を指標にして水中毒に注意する!)
脱水時:5%ブドウ糖液
サイアザイド系利尿薬が部分的に有効(作用機序不明)
ただし、遺伝性や重症例には無効
飲水制限
デスモプレシン禁忌(低Na血症を悪化させるため)

【鑑別検査(下垂体後葉機能検査)】

  中枢性尿崩症 腎性尿崩症 心因性多飲
血中Na
血中ADH濃度
①高張食塩水負荷
5%NaCl持続静注)
ADH上昇なし ADH上昇 ADH上昇
①水制限
(脱水に注意)
高Na血症になるため水制限は禁忌 尿濃縮なし 尿濃縮あり
(尿浸透圧↑尿量↓)
②AVP負荷
(=ADH誘導体投与)
尿濃縮あり 尿濃縮なし(尿浸透圧・尿量不変) 尿濃縮あり

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 SIADH

病態 血漿浸透圧に関係なくADHが分泌される疾患。
ADH分泌により血漿浸透圧↓、血清Na↓し、RAA系抑制により、Ald低下するため尿中Na↑尿浸透圧↑し、低Na血症の症状が出現する(ゆっくり低Na血症なった場合は症状が出ないこともある)。
【原因】
①中枢神経疾患(くも膜下出血・脳腫瘍など):視床下部の浸透圧受容体機能が低下し、ADH分泌抑制がされずADHが分泌される。
②異所性ADH産生腫瘍:肺小細胞癌、膵癌などが異所性ADHを分泌
③肺疾患(肺炎、肺結核など):胸腔内圧↑し、静脈還流量↓で、代償的にADHが分泌
④薬剤性(カルバマゼピンなど):薬剤が①の機序によりADH分泌
症状 低Na血症による、
①脳浮腫症状(血漿浸透圧↓により細胞内圧↑し、頭痛、意識障害、痙攣が起こる)
②体重増加(細胞内に水が貯留するため)
※脱水、乏尿、高血圧、全身の浮腫は起こらない!
検査 【血液検査】
低Na血症血漿浸透圧↓なのにADH分泌正常、BUN↓尿酸↓レニン↓(薄まるため)
【尿検査】
尿中Na↑+尿浸透圧↑(血漿浸透圧<尿浸透圧
治療 ①低Na血症の治療のため水制限、原疾患治療
②重篤な低Na血症の場合(120mEq/L以下で意識障害や痙攣を伴う):フロセミド3%高張食塩水を緩徐に投与=血清Na値の上昇速度は10mEq/L/24h以下、18mEq/L/48h以下(急激なNa補正による橋中心髄鞘崩壊症(浸透圧性脱髄症候群)に注意
③デメクロサイクリン(AVP阻害薬)やV2受容体拮抗薬(モザバプタン)を投与することもある

【鑑別検査】

低張性脱水 尿中Na↓(Ald分泌されNa再吸収促進されるため)
腎機能低下 尿中Na↑+血清Cre↑
副腎不全 尿中Na↑+CORT↓(Ald↓によりNa再吸収↓、CORT↓により相対的にADH作用↑)

甲状腺

【解剖】

甲状腺は嚥下運動によって上方へ移動する(唾を飲み込んでもらう)。

【生理】

  甲状腺ホルモンの作用
中枢神経 思考回転を早める
心臓 β1の発現を促進し、心拍数↑心拍出量↑
代謝亢進 熱産生↑、酸素消費量↑
蛋白質分解・脂質分解↑
血清コレステロール↓(LDL受容体の発現促進)
消化管からの糖質吸収促進
身体発育 GHの発現促進→成長促進
骨成熟の促進

甲状腺中毒症

【分類】

  全般性 限局性
甲状腺機能亢進症 Basedow病(自己免疫性) Plummer病(腫瘍性+限局性)
甲状腺破壊性
(漏出性)
無痛性甲状腺炎(自己免疫性)
薬剤性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎(ウイルス性+限局性)

【共通の症状】

中枢神経 イライラ、振戦、アキレス腱反射↑、不眠
心臓 動悸、頻脈、AF、高血圧
代謝亢進 暑がり・体温上昇、発汗過多・皮膚湿潤、食欲亢進、下痢、体重減少
生殖器 月経異常(月経周期の全期間において血中LHが上昇しLHサージが起こらない)

甲状腺クリーゼ

病態 甲状腺機能亢進症を基礎疾患に持つ患者が、感染などを契機に甲状腺機能の急激かつ
極度に亢進することにより生命の危機に直面した状態。(放置すれば死)
症状 中枢神経症状(せん妄、傾眠、不穏、昏睡)、発汗過多
高熱(38度以上)、頻脈:130回/分以上、心不全、消化器症状(下痢、嘔吐)
治療 ①全身管理(気道確保+輸液+冷却)
②大量無機ヨード(即効性があり一過性にT4↓)ステロイド(末梢でT4→T3変換抑制)+大量の抗甲状腺薬(遅効性)+β遮断薬(高度な洞性頻脈を抑制)

Basedow病(Graves病)

疫学 20〜30歳代女性に好発(4:1)、400~500人に1人
病態 自己免疫応答により産生された抗TSH受容体抗体(TRAb)がTSH受容体を刺激し続ける疾患。産後に増悪しやすい。また、本症の母親から生まれた新生児は一過性の甲状腺機能亢進症を起こすことがある(TRAbが胎盤を通過するため)。
不完全治療、手術、感染、ストレスなどによって甲状腺クリーゼが誘発される。
症状 Merseburg三徴(全て症状が揃うことは多くない)
①びまん性甲状腺腫:TRAbが甲状腺を刺激し続けるため
②眼球突出:眼窩部球後組織にもTSH受容体があるため球後組織が外眼筋と癒着して複視が生じる。
③頻脈:心房細動もしばしば生じる
④甲状腺中毒症状:振戦など
その他:高回転型の骨粗鬆症、瞼裂開大、低K性周期性四肢麻痺
検査 【血液検査】
FT3↑、FT4↑、TSH(早期から反応)、T-Chol骨型ALP値↑、血糖↑(食後一過性が多い)、TRAb陽性(ほぼ全例陽性)、抗甲状腺抗体、抗TPO抗体
【画像検査】
エコー:カラードプラで血流↑
123ヨードシンチ:I取り込み増加
【心電図】
甲状腺ホルモン投与開始前に虚血性疾患や心房細動の有無を評価が必須
治療 【薬物療法】
①抗甲状腺薬(第一選択):緩徐に増量しながら数ヵ月~半年で正常化を目指し、機能が正常化しても1〜2年は維持投与し、TRAb陰転化を待つ。
②効果が不十分な場合:無機ヨード(ヨウ化K)を内服
③β遮断薬:動悸・振戦など甲状腺中毒症状
【薬物療法が無効の場合】
手術:甲状腺の亜全摘し、残存した甲状腺でホルモンを維持
(術後合併症:反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症、出血、咽頭浮腫など)
放射性療法:131ヨード内服(5歳以下、妊婦、授乳婦、挙児希望者には禁忌)

低K性周期性四肢麻痺

疫学 甲状腺機能亢進症の若年男性に好発(30:1)、東洋人の男性に多い
病態 主に甲状腺機能亢進に伴いNa-Kポンプがフル回転し、Kが大量に細胞内に移動して低K血症となる。その結果、静止膜電位が上昇し、神経からの興奮がきても脱分極が起こらず弛緩性麻痺生じる。
遺伝性:L型Caチャネル遺伝子の変異
二次性:甲状腺機能亢進症、原発性Ald症、偽性Ald症、Batter症候群、尿細管性アシドーシス、利尿薬(ループ/サイアザイド系)
症状 ①甲状腺中毒期に伴う反復する脱力発作:低K血症時に下肢近位筋から始まる四肢脱力が数時間〜数日間持続。発作は運動して数時間後の休息時や過食・飲酒後の明け方に起こりやすい(インスリン・糖・Kが一緒に細胞内に入るため)
検査 【血液検査】発作時の低K血症CK↑(正常の場合もある)
治療 発作時:カリウム含有の補液、または塩化K内服
予防:アセタゾラミド(機序不明)、トリアムテレン(K保持性利尿薬)

Plummer病

病態 甲状腺ホルモン産生の結節性腺腫(稀な疾患)
症状 甲状腺中毒症症状
検査 【画像検査】
123ヨードシンチ:I取り込み↑、結節に一致した123ヨードの集積(hot nodule)
治療 腫瘍摘出術(甲状腺の亜全摘)

無痛性甲状腺炎

病態 慢性甲状腺炎(橋本病)の経過中に抗Tg抗体や抗TPO抗体が濾胞破壊が生じ、一過性の甲状腺中毒症を示す疾患。
症状 炎症(ー)、びまん性甲状腺腫+
検査 【血液検査】
抗サイログロブリン抗体(+)、抗ペルオキシダーゼ抗体(+)、
TRAb(ー)、FT3↑FT4↑、TSH↓
【画像検査】
エコー:カラードプラで血流↓
123ヨードシンチ:I取り込み↓
治療 経過観察、動悸・振戦にはβ遮断薬。
抗甲状腺薬は禁忌:炎症が消退後の一過性の甲状腺機能低下をさらに悪化させるため

亜急性甲状腺炎

疫学 30〜50代の女性に好発。
病態 感冒様の先行感染(おそらくウイルス感染)の後に、濾胞破壊により甲状腺ホルモンの血中への逸脱を生じる非化膿性の有痛性甲状腺炎。無治療でも2〜4ヶ月で自然治癒する。
約20%が回復期に炎症が再燃する。約10%が甲状腺機能低下症に移行する。
症状 ①感冒様症状の1〜2週間後、前頸部に激痛(下顎部や耳介後部にも放散)、発熱
炎症の波及に伴い、疼痛部位が反対側の甲状腺へ移動する(クリーピング現象)
圧痛を伴う結節性甲状腺腫+硬
③甲状腺中毒症症状:動悸、頻脈
検査 【血液検査】
炎症反応陽性(赤沈↑CRP↑)、FT3↑FT4↑、TSH↓、Tg↑
【画像検査】
前頸部エコー:甲状腺内部に不均一な低エコー領域あり、甲状腺内での炎症の波及に伴い低エコー領域が反対側の甲状腺へ移動する(クリーピング現象)
123ヨードシンチ:I取り込み↓
治療 ①発熱・疼痛に対してNSAIDs、効果不十分ならステロイド内服
②動悸・頻脈:β遮断薬
抗甲状腺薬は禁忌:炎症が消退後の一過性の甲状腺機能低下をさらに悪化させるため

妊娠時一過性甲状腺機能亢進症

病態 妊娠第1期(10週前後)は胎盤からhCGが分泌され、hCGがTSH受容体を刺激して甲状腺機能亢進症を引き起こす。
症状 甲状腺中毒症状
検査 【身体検査】
触診:甲状腺腫大(ー)
【血液検査】
hCG↑↑、抗TSH抗体(ー)
治療 経過観察

甲状腺機能低下症

【分類】

  TRH TSH T4 原因
視床下部性 胚芽種、頭蓋咽頭腫
下垂体性 Sheehan症候群、非機能性の下垂体腺腫
原発性 慢性甲状腺炎(橋本病)、ヨード過剰摂取、甲状腺術後
甲状腺機能低下症の大半は橋本病。先天性甲状腺機能低下症はクレチン症という。

【共通の症状】

代謝低下 精神活動↓(思考停止、記名力低下、無気力)、脱毛
寒がる・低体温、発汗不足・皮膚乾燥、便秘、食欲低下、易疲労感
アキレス腱反射弛緩相の遅延(Lambert徴候)
心臓 徐脈、低血圧、心肥大、心嚢液貯留
ムコ多糖沈着 皮膚粘液水腫(non-pitting edema)、眼瞼浮腫、無関心様表情、巨大舌、嗄声(声帯に蓄積)、筋力低下(筋に蓄積、CK↑)、T-Chol↑、体重増加

【薬剤性甲状腺機能低下】

①リチウム ヨードと同様に甲状腺ホルモンの放出を抑制あるいは合成を阻害する
②ステロイド T4→T3への変換を阻害する(亜急性甲状腺炎では治療として使う)
③β遮断薬 同上
④アミオダロン 大量のヨードを含んでいるため甲状腺機能を低下させる

粘液水腫性昏睡

病態 長期にわたり未治療あるいは十分な治療を受けていない甲状腺機能低下症の患者に、感染症・寒冷曝露など何らかの誘因が加わり、甲状腺ホルモン欠乏に対する生体の代償機構が破綻した状態である。原因は橋本病が多い。
症状 低体温・呼吸不全・循環不全・意識障害などをはじめとした多臓器の機能不全
治療 T4補充

慢性甲状腺炎 Chronic thyroiditis(≒橋本病)

疫学 30〜40歳の女性に好発。
潜在性のものを含めると成人女性の約10%(10人に1人)が橋本病と推定されている。
病態 自己免疫応答により産生された抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体)・抗TPO抗体などが甲状腺を破壊し、甲状腺機能を低下させる疾患。
橋本病とAddison病の合併はSchmidt症候群と呼ばれる。
【合併症】
高プロラクチン血症、自己免疫疾患(シェーグレン症候群、原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性肝炎、RA、SLE)、悪性リンパ腫、原発性副腎不全、悪性貧血
症状 代償期は無症状、非代償期には甲状腺ホルモン欠乏症状を呈する
びまん性甲状腺腫+ゴム様硬(慢性炎症で線維化)
検査 【心電図】
虚血性疾患や心房細動の有無を評価
【血液検査】
コレステロール↑CK↑、カロテン↑、赤沈↑(γグロブリンが産生されるため)、LDH↑、AST↑、抗Tg抗体・抗TPO抗体陽性、
TSH↑→FT4↓→FT3↓の順に観察される
【画像検査】
エコー:内部エコー低下、ドプラで血流↓
123ヨードシンチ:I取り込み↓
治療 甲状腺機能正常時には経過観察、機能低下時にはT4投与
※甲状腺ホルモンは心臓に負荷をかけるため、補充療法は少量より開始し徐々に増量する。また、投与開始前に心電図で虚血性疾患や心房細動の有無を評価することが重要!!
※治療経過中に甲状腺悪性リンパ腫の合併に注意する!

低T3症候群

病態 低栄養の状態や疾患により、血中TSHやT4は正常だが、T3だけが低くなる状態。
体内のエネルギーをなるべく消費しないようにする生体反応で、甲状腺自体には問題ない。
症状  
検査 血液検査
治療 原因疾患の治療

先天性甲状腺機能低下症(クレチン病)

疫学 新生児マススクリーニングで最多
病態 視床下部ー下垂体ー甲状腺のいずれかが障害され、甲状腺ホルモン合成能が先天的に低下し、身長の成長や知的な発達の障害をきたす疾患。Down症候群に合併することもある。
症状 新生児期:便秘、巨舌、遷延性黄疸など
乳児期:知能低下、低身長、骨年齢遅延など
検査 ①スクリーニング:TSH↑
②精密検査:TSH↑T3・T4↓、X線で大腿骨遠位端骨核が存在しない
治療 T4投与

甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍は約10%が悪性腫瘍で、残り90%は良性腫瘍、腺種様甲状腺腫、嚢胞である。

【悪性腫瘍】

全ての組織型で女性に多い。腫瘤は硬く可動性が悪く、増大傾向→エコー&穿刺吸引細胞診(濾胞癌を除く)! 悪性度:未分化癌>髄様癌>悪性リンパ腫>瀘胞癌>乳頭癌

  乳頭癌 濾胞癌 未分化癌 悪性リンパ腫 髄様癌
頻度 約90% 約6% 約1% 約2% 約1%
病態 濾胞上皮由来
リンパ行性に転移
濾胞上皮由来
主に血行性転移し肺・骨・肝へ
濾胞上皮由来
炎症反応(+)
非Hodgkin、B細胞型が多い
橋本病に合併
傍濾胞細胞由来
家族性、MEN2が多い
症状 緩徐に腫大
結節性甲状腺腫
緩徐に腫大 急速に腫大
疼痛・発赤
比較的急速に腫大 比較的緩徐に腫大
画像
検査
点状高エコー像
砂粒状石灰化
    甲状腺内に著明な低エコー域 間質にアミロイド沈着
血液
検査
再発すると血清Tg↑ 再発すると血清Tg↑ CRP↑
(炎症あり)
抗Tg抗体↑
抗TPO抗体↑
カルシトニン↑
CEA↑
治療 手術→131I内服 手術 ケモラジ ケモラジ 手術
10年後生存率 90%以上
良好
約80%
比較的良好
約0%
不良
約50〜70%
やや不良
約60%
やや不良

副甲状腺

Ca・Pの調節因子

血中Ca×P=一定となるように保たれている(結晶化を防ぐため)。

  血中Ca 血中P 作用
PTH ①骨吸収↑して血中Ca↑
②腎遠位尿細管でCa再吸収↑+近位尿細管でP・HCO3排泄↑し、その結果、血液を酸性に傾ける。(P↓、HCO3↓)
③腎でVDを活性化
活性型VD ①腸管からCa+Pの吸収↑
②腎遠位尿細管でCa再吸収↑
カルシトニン ヒトではほぼ機能していない
FGF23 ①近位尿細管でNaPiの発現を抑制してP排泄↑
②活性化ビタミンDの合成抑制してP吸収↓

【疾患とCa・Pの関係】

  P↑ P↓
Ca↑ ①悪性腫瘍の骨転移(多発性骨髄腫、乳癌、前立腺癌)
②急性骨萎縮(長期臥床)
Ca・Pの吸収増加(ビタミンD中毒)
①原発性副甲状腺機能亢進症
HHM:液性悪性腫瘍性高Ca血症(PTHrP産生腫瘍)
③家族性低Ca尿性高Ca血症
Ca↓ ①特発性・偽性副甲状腺機能低下症
②慢性腎不全(続発性副甲状腺機能亢進症)
①吸収不良症候群
②ビタミンD欠乏症(くる病、骨軟化症)
③尿細管性アシドーシス

副甲状腺機能亢進症 Hyperparathyroidism

病態 【原発性】
腺腫(約90%)、過形成(数%)、癌(数%。稀だがMEN1もしくはMEN2Aの場合がある)によって自律的にPTHの分泌が亢進する疾患。
【続発性(二次性)】
主に慢性腎不全によってVDを活性化できず低Ca血症となり、PTHの分泌が亢進する疾患。代償的に副甲状腺過形成や線維性骨炎(PTH過剰による高度の骨粗鬆症)を生じる。腎不全末期ではFGF23によるP排泄能が低下して高P血症となる。
症状 【原発性】
高Ca血症症状:尿路結石、消化性潰瘍、膵炎など(中等度以上)
低P血症
骨症状:骨粗鬆症(骨密度↓)、長期化すると線維性骨炎
消化管病変:悪心嘔吐
高Cl性代謝性アシドーシス:HCO3再吸収↓によりCl↑
【続発性(二次性)】
腎不全症状、長期化すると線維性骨炎(PTH↑による骨吸収↑のため)
高P血症:腎不全によるP排泄障害
検査 【尿検査】
原発性:Ca↑、P↑
【血液検査】
原発性:PTH↑、Ca、P↓(尿細管再吸収↓のため)、ALP3↑
続発性:Ca↓、代償的にPTH↑、末期ではP↑
【画像検査(原発性)】
頸部エコー:副甲状腺腫大(通常エコーで副甲状腺は見えない)
手指骨X線撮影:線維性骨炎による骨膜下骨吸収像(透亮像)、骨量↓
副甲状腺シンチ:99mTc-MIBIの取り込み↑
治療 【原発性】
副甲状腺摘出(術後は一過性低Ca血症出現のため、Caと活性化VD3投与!)
高Ca血症クリーゼ時:まずは大量生食輸液!脱水改善し、次にフロセミドによる尿中Ca排泄促進、ビスホスホネート製剤による骨吸収抑制、カルシトニンによりCa補正
【続発性】
腎不全治療、
高P血症:食事療法(P制限)、P吸着薬内服

副甲状腺機能低下症 Hypoparathyroidism

病態 【PTH欠乏性(特発性、続発性)】
特発性(自己免疫性、先天性形成不全)や続発性(甲状腺癌や食道癌の術後→最多、放射線照射後、低Mg血症)によってPTH分泌が欠乏する疾患。
【PTH作用不足(偽性副甲状腺機能低下症)】
PTH受容体以下の機能異常によるPTHの作用不足が生じる疾患。
症状 低Ca血症症状:テタニー、Trousseau徴候など
高P血症による異所性石灰化(大脳基底核、水晶体→白内障)
【偽性副甲状腺機能低下症】
Ia型はAlbright遺伝性骨異栄養症の体型:低身長、円形顔貌、肥満、第4・5中手骨短縮
検査 【心電図】
低Ca血症によるQT延長
【Ellsworth-Howard尿試験(偽性副甲状腺機能低下症の検査)】
PTHに対する腎尿細管の反応性をみる検査。PTH↑投与後に尿検査を行い、尿中P不変かつ、尿中cAMP陰性ならⅠ型、cAMP↑ならⅡ型となる。
【画像検査】
頭部CT:大脳基底核や大脳白質内に異所性石灰化
【血液検査】
特発性・続発性:PTH、Ca↓、P↑
偽性:PTH、Ca↓、P↑
治療 【症状がある時】
グルコン酸Ca静注(意識障害やテタニー症状がある場合)
【症状が落ち着いている時】
活性化ビタミンD3経口投与

副腎

【解剖】

副腎は横隔膜の内側脚(脊椎と横隔膜が接する部分)に近接する。
肝臓があるため、右副腎は左副腎より低い位置にある。
形態は右副腎は逆V字、左副腎は逆Y字に見える(CTで見たとき)。

  分泌ホルモンと組織(アルコール&基礎も大事!
皮質(中胚葉由来) アルドステロン(状層)
  ルチゾール(状層)
  アンドロゲン(状層)
髄質(外胚葉由来) カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)
動脈 上副腎A ←下横隔膜A
中副腎A ←腹部大A
下副腎A ←腎A
静脈 右副腎V →下大V
副腎V→左腎V

【副腎皮質ホルモンの合成・代謝】

【副腎髄質ホルモンの合成・代謝】

【副腎ホルモンの作用】

アルドステロン RAA系活性化によりAld分泌↑。Aldは集合管で水・Na再吸収↑、K排泄↑して循環血漿量を増加させて血圧↑させる。(RAA系の詳細は腎泌尿器総論を参照)
【過剰分泌の場合】
K排泄が増加し、低K血症となる。その結果、K豊富な細胞が血管にKを供給し、代償的にHを細胞内に移動させる。血中H濃度は低下するため代謝性アルカローシスが生じる(アルドステロンはアルカローシスに傾く)。
コルチゾール ステロイド薬を参照
副腎アンドロゲン 【過剰分泌の場合】
男:陰茎の増大、陰嚢の着色、早期骨端線閉鎖
女:体毛の増加、陰核の肥大、音声の低音化、無月経、早期骨端線閉鎖

アルドステロン症 Aldosteronism

【アルドステロン症の分類】

  主な原因 レニン Ald 血圧 血中K
原発性Ald症 片側性腺腫、両側副腎皮質過形成
続発性Ald症 浮腫性疾患(うっ血性心不全、NS、肝硬変など)、Bartter症候群、Gitelman症候群 様々
  腎動脈の狭窄(腎血管性高血圧)
Ald様疾患 グリチルリチン製剤、Cushing症候群、Liddle症候群

原発性アルドステロン症(PA)

疫学 高血圧の約10%を占めるcommon disease
病態 副腎皮質球状層の片側性腺腫または両側過形成によりAldの過剰分泌が起こる疾患。その結果、Aldが尿細管に作用し、血清Na・水の再吸収が増加して血圧が上昇する。また、K排泄も増加して腎性尿崩症、筋力低下、代謝性アルカローシスが起こる。
本態性高血圧と比べて脳・心血管障害が多いため早期発見・早期治療が大切!
症状 ①高血圧:Na・水分貯留
②低K血症症状:筋力低下、テタニー
多飲多尿:低K血症による腎の尿濃縮力障害
④代謝性アルカローシス:生理学の低K血症を参照
【合併症】
肥満、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群など
検査 【血液検査】
Ald↑レニン↓K↓、Ald濃度/血漿レニン活性=200以上
【心電図】
低K血症によるT波平坦化・U波出現・ST低下など
【画像診断】
CT:病変部位確認(微小腺腫はCTでは検出されないほどの小さい例も多くある)
カテーテル:CTで病変がわからなかった場合、選択的副腎静脈サンプリングを行い、Ald濃度を確認して片側性か両側性を確定する。
【負荷試験】塩風呂好きのカップル!
立位フロセミド試験:交感N刺激+腎血流量↓させるが、レニン分泌↑を認めない
生食負荷試験:循環血液量↑によりAld分泌↓を認めない
カプトプリル試験:ACE阻害して60分・90分後にAld/レニン高値
①〜③から2種施行し、Aldとレニン値に変化がなければ原発性Ald症と確定診断する。
治療 【手術】副腎静脈サンプリングで片側性とわかれば、腹腔鏡下で副腎摘出
【薬物療法】両側性の場合、Ald拮抗薬(スピロノラクトン)、降圧効果を追加したい場合はCa拮抗薬

続発性アルドステロン症

病態 副腎皮質以外の疾患により、RAA系が活性化され、レニン高値により続発的にアルドステロン分泌過剰を呈する疾患。
原因①
循環血漿量↓
ネフローゼ症候群、肝硬変、うっ血性心不全、Bartter症候群、Gitelman症候群
原因②
腎血漿量↓
腎血管性高血圧、悪性高血圧
原因③
レニン↑
レニン産生腫瘍、利尿薬、褐色細胞腫
原因④
経口避妊薬
アンジオテンシノーゲン↑によりAld↑

偽アルドステロン症

病態 主に甘草に含まれるグリチルリチン酸が遠位尿細管のコルチゾール不活化酵素(11β-HSD2)を阻害し、コルチゾール→コルチゾンへの代謝が阻害され、内因性に増加したコルチゾールによってアルドステロン過剰に類似した症状を示す。
症状 原発性アルドステロンを参照
低K血症:膵インスリン分泌が障害され、糖代謝異常を合併
検査 【血液検査】Ald↓、レニン↓、低K血症
治療 原因漢方薬の中止

Cushing症候群(副腎皮質機能亢進症)

【Cushing症候群の原因分類】

  ACTH CORT アンドロゲン 原発性 その他
視床下部 CRH産生腫瘍(稀) 異所性CRH産生腫瘍(稀)
下垂体 下垂体腺腫=
Cushing:40%
異所性ACTH産生腫瘍
(肺小細胞癌、膵癌)
副腎皮質
(副腎癌↑)
副腎腺腫(50%以上)
副腎癌
ステロイド過剰投与
(医原性)

疫学 Cushingは30〜50歳代女性に多い。
病態 主に糖質コルチコイドの慢性過剰に起因する症候群。
ACTH依存性:Cushing病、異所性ACTH産生腫瘍(両側性
ACTH非依存性:副腎腺腫・副腎皮質癌(片側性)、原発性両側大結節性副腎皮質過形成・原発性色素性結節性副腎疾患(両側性
症状 【ACTH過剰症状】
色素沈着:口腔粘膜・歯ぐき・口唇、指関節・手掌の溝などに局所的に多い
【CORT過剰症状】
糖質コルチコイド作用:ステロイド薬の作用と副作用を参照
ミネラルコルチコイド作用:高血圧、浮腫、低K血症、筋力低下、代謝性アルカローシス
【アンドロゲン過剰症状】特に副腎癌で多い。
女性:男性化徴候(多毛、ニキビ)、月経異常(無月経、不妊)
検査 【血液検査】
WBC↑好中球↑。CORT↑し、日内変動消失。DHEA-s↑なら副腎癌・Cushing病・異所性ACTH症候群を疑う。副腎癌で17-KS↑
【鑑別試験】
①少量デキサメタゾン抑制試験:抑制されない場合はCushing症候群
②24時間尿中遊離CORT↑(または17-OHCS↑)
<非ACTH依存性>
CT:副腎の腫瘤があれば副腎癌、副腎腺腫、副腎過形成を疑う
131Iアルドステロール副腎シンチ:同上
副腎静脈サンプリングを行うのはアルドステロン症なので注意!
<ACTH依存性>
8mg高用量デキサメタゾン抑制試験CRH負荷試験:負荷試験で反応なく、ACTH・CORT値が変化しない(ただし、Cushing病は負荷試験で反応あり、CORT↓、ACTH↓となる)
頭部MRI:下垂体腺腫(マクロアデノーマ)がありならCushing病
治療 【手術】
Cushing病ではHardy手術、異所性ACTH産生腫瘍・副腎癌・副腎腺腫は腫瘍摘出術
術後、健康な副腎が正常に機能するまでステロイド補充(1〜2で漸減し中止)

副腎皮質機能低下症

病態 【原発性(主にAddison病)】
自己免疫(最多)、結核、癌転移、アミロイドーシスなどで後天的に両側の副腎皮質機能が低下し、CORT・アンドロゲン・Ald全て分泌↓し、代償的にACTH↑する。
【続発性】
非機能性の下垂体腺腫やSheehan症候群、免疫チェックポイント阻害薬のirAEにより視床下部や下垂体機能が低下して、副腎皮質機能が低下し、ACTH分泌↓によりCORT・アンドロゲン分泌↓する。
症状 【CORT低下症状】
元気がなくなり痩せる、低血糖
【アンドロゲン低下症状】
月経異常、恥毛・腋毛脱落、骨粗鬆症
【Ald低下症状(原発性のみ)】
低血圧低Na血症(CRH↑によるADH産生で希釈性低Na)、高K血症(続発性はRAA系によって分泌維持されるためきたしにくい)、代謝性アシドーシス
【ACTH増加症状(原発性のみ)】
顔面・口腔内、外陰部、日光に露出しやすい部分の皮膚の色素沈着
検査 【血液検査】
<原発性>CORT↓によりWBC↓好酸球↑リンパ球↑、アンドロゲン↓、Ald↓によりK↑ACTH↑
<続発性>ACTH↓、CORT↓によりWBC↓好酸球↑リンパ球↑、アンドロゲン↓、Ald正常
【ACTH負荷試験(単発の刺激=迅速、連続の刺激)】
原発性:迅速ACTH負荷試験でも連続ACTH試験でも血中CORT変化なし
続発性:連続ACTH試験で血中CORT少し↑
【画像検査】
X線:副腎結核では両側副腎の石灰化陰影
治療 生理量のヒドロコルチゾンを生涯補充、続発性は原疾患治療
感染・手術などのストレス時には増量すること!

急性副腎不全(副腎クリーゼ)

病態 ①〜③の原因で副腎皮質ホルモンが急激に不足し、生命の危機に陥る状態。
ステロイド薬の急激な減量
②副腎皮質機能低下患者に感染症や手術などのストレスが加わった場合(髄膜炎菌の敗血症に伴う両側副腎出血(Waterhouse-Friderichsen症候群)が有名)
③下垂体や副腎皮質の急激な障害(下垂体卒中、外傷、血栓など)
症状 低血糖、低Na血症、低血圧によって意識障害・ショック
高K血症、悪心嘔吐、発熱
検査 【血液検査】低血糖、低Na血症、高K血症
治療 ①ヒドロコルチゾン大量投与
②ブドウ糖を含む生理食塩水1L/hr輸液+適宜飲水

褐色細胞腫 pheochromocytoma

病態 副腎髄質由来のカテコラミン産生腫瘍で、良性と悪性がある(傍神経節クロム親和性細胞由来の腫瘍はパラガングリオーマといい悪性腫瘍)。
約25が遺伝性であり、原因遺伝子としてRET遺伝子(MEN2型)やVHL遺伝子(Von Hippel Lindau病)が有名であり、どちらも両側性である。
排便、腹部触診、高用量の造影剤使用などにより発作的に症状が出る。
症状 カテコラミン分泌過剰による以下の症状が見られる。
【α1作用】高血圧、起立性低血圧(常に血管収縮しているため起立時に調節不能)
【β1作用】発作性の動悸・頻脈、代謝亢進による痩せ
【β2作用】高血糖(肝グリコーゲン分解促進)、振戦
【β3作用】コレステロール↑
【その他】発汗過多、発作性の頭痛蒼白、便秘
検査 【血液検査】カテコラミン↑
【尿検査】カテコラミン↑、(ノル)メタネフリン↑、VMA↑
【画像検査】
腹部CT:副腎髄質に低吸収域(出血、壊死)(副腎静脈造影は高血圧クリーゼをきたす可能性があり禁忌
MRI:T2強調で高信号
副腎シンチグラフィ:123I-MIBG集積
治療 副腎摘出(第一選択)
②α1遮断薬:発作時や術前の血圧管理に使用
③必要に応じてCa拮抗薬・β遮断薬を併用する(β遮断薬の単独投与はαが優位となり高血圧発作を誘発するため禁忌
利尿薬は使用しない!(本症ではすでに血管収縮で循環血液量が減っているため)

先天性副腎皮質過形成症(21-hydroxylase欠損症)

婦人科総論の性分化と性器形態の異常を参照。

内分泌腫瘍

  主要症状 好発部位 悪性化
インスリノーマ 空腹時低血糖発作 膵体尾部 少ない(10%未満)
ガストリノーマ 難治性消化性潰瘍 膵頭部 多い(約80%)
グルカゴノーマ 糖尿病、皮疹など 膵体尾部 多い(約70%)
VIP産生腫瘍 水様性下痢、低K血症 膵全体 やや多い(約60%)

インスリノーマ

病態 膵臓β細胞が腫瘍化してインスリンを過剰分泌する腫瘍。悪性は10%と少ない。
膵内分泌腫瘍で最多(60%)。
症状 <Whippleの3徴>
①空腹時の低血糖症状
②発作時の血糖値50以下
③ブドウ糖摂取など摂食で症状改善
④その他:肥満(低血糖を回避するため間食増加するため)
検査 【画像診断】
エコー・CT・MRI・超音波内視鏡:腫瘍の位置を確認(70〜80%は膵体尾部に存在)
【血液検査】
インスリン↑、Cペプチド↑
絶食試験
1〜3日間絶食後、空腹時でもインスリン分泌が抑制されず、低血糖症状起こす。
【グルカゴン負荷試験】
負荷後30分以内に血中インスリンの異常上昇、30分以降に血糖の著明な減少がみられる
治療 【手術】良性では腫瘍部のみ部分切除、2cm以上ならリンパ節郭清を伴う膵切除
【低血糖発作時】ブドウ糖摂取

ガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群)

病態 G細胞が腫瘍化してガストリンを過剰分泌する腫瘍。悪性の場合が多い。
膵NETで2番目に多い。副甲状腺過形成、下垂体腺腫との合併が多く、MEN1として家族性に発生する(25%)。
症状 ①心窩部痛:難治性の消化性潰瘍(潰瘍多発)、逆流性食道炎のため
慢性の水様性下痢・脂肪便
検査 【画像診断】
エコー・CT・MRI・超音波内視鏡:腫瘍の位置を確認
【血液検査】
ガストリン↑
【Ca静注負荷試験】
健常人よりも有意にガストリンが上昇する。
治療 【手術】リンパ節郭清を伴う膵切除
【薬物療法】切除不可なら化学療法、対症療法でPPI

グルカゴノーマ・VIPoma

  グルカゴノーマ VIPoma
病態 グルカゴンによる高血糖が持続。
症状 壊死性遊走性紅斑 WDHA症候群
WD:水様性下痢
H:低K血症
A:胃無酸症
検査
治療

多発性内分泌腫瘍(MEN:Multiple Endocrine neoplasia)

  MEN1 MEN2
病態 MEN1遺伝子(がん抑制遺伝子)の不活化変異によって下垂体腺腫、膵・消化管内分泌腫瘍、副甲状腺機能亢進症(過形成・腺腫)、副腎皮質腫瘍といった腫瘍が生じる常染色体優性遺伝の症候群。
すい・すい・ふっこう!
RET遺伝子(がん遺伝子)の活性化変異によって甲状腺髄様癌、副腎髄質褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症(MEN2A:95%)or 神経腫(MEN2B:5%)といった腫瘍が生じる常染色体優性遺伝の症候群。
ずい・ずい・ふっこう!! 
特徴 下垂体腺腫:プロラクチノーマが最多
膵内分泌腫瘍:ガストリノーマが最多
甲状腺髄様癌は必発
治療 重症度の高いものから順に手術
プロラクチノーマはドパミン刺激薬
まずは褐色細胞腫の治療
次に甲状腺全摘、副甲状腺腫大腺の摘除

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