先天性心疾患
心房中隔欠損症 ASD:Atrial Septal Defect
| 疫学 | 先天性心疾患の約10%を占める(2番目に多い)。女性に好発(男:女=1:2) |
| 病態 | 心房中隔の欠損孔を通じて拡張期に左→右シャントが生じ、右心系への容量負荷をきたす疾患。経過とともに肺血管抵抗が上昇すると右→左シャントとなり、酸素化されてない血液が駆出される(Eisenmeger症候群)。 ※左房→右房への血流の速度が速くないため感染性心内膜炎のリスクは低い |
| 症状 | 【小児期】 原則、無症状(心雑音のみ) 【思春期以降】 ①心不全症状:労作性呼吸困難 ②動悸:長期的な心房に対する負荷により心房細動を合併しやすい ③肺高血圧症:右心系の血流増加のため チアノーゼ・ばち指:Eisenmeger症候群のため(ただし、ここまで至るのは比較的稀) |
| 検査 | 【聴診】 ①Ⅱ音固定性分裂(2LSB):右室の仕事量が常に増加し、呼気時のⅡpも遅れる ②収縮期駆出生雑音(2LSB):右心系容量負荷で肺Aへの駆出量↑で、相対的PSになる ③拡張期ランブル(4LSB):さらに容量負荷でにT弁通過血流量↑で、相対的TSになる 【心電図】 ①右軸偏位(二次孔型) ②V1でrsR’型の不完全右脚ブロック(学校検診などで見つかる) ③高齢者でAFなどの上室性不整脈 【画像検査】 心エコー:右房・右室内腔の拡張、カラードプラで左房→右房へのシャントで確定診断、Mモードで心室中核の奇異性運動(右室前壁に向かう) 胸部X線:肺A拡大による左第2弓突出、右房拡大による右第2弓突出、右室拡大による右第4弓突出(心腰部の消失、CTR拡大)、肺血流増加による肺血管陰影の増強 心カテ:シャントによる右房内のO2 step upを認める |
| 治療 | 乳児期を除いて自然閉鎖が期待できないため、就学前に根治術を行うことが望ましい。 Qp(肺血流量)/Qs(体血流量)が1.5以上(=シャント率33%以上)の場合、手術適応。 欠損孔閉鎖術(心内修復術):欠損部を直接縫合 or パッチを用いて閉鎖 カテーテル下デバイス閉鎖術:小さな欠損孔のみ適応 |
心室中隔欠損症 VSD:Ventricular Septal Defect
| 疫学 | 先天性心疾患の約30%を占める(最多)。 |
| 病態 | 心室中隔の欠損孔を通じて収縮期に左→右シャントが生じ、肺血流量増加によって左心系への容量負荷をきたす疾患。経過とともに肺血管抵抗が上昇すると右→左シャントとなり、酸素化されてない血液が駆出される(Eisenmeger症候群)。 |
| 症状 | 【小欠損】 原則、無症状(多くは自然閉鎖する) 【中〜大欠損】 乳児期より、 心不全症状:呼吸困難・多呼吸→哺乳困難 チアノーゼ・ばち指:Eisenmeger症候群のため |
| 検査 | 【聴診】 Ⅱ音の病的分裂(2LSB):肺動脈血流量↑でP弁閉鎖に時間がかかる 全収縮期逆流性雑音(3LSB):欠損孔通過音(孔が小さいほど雑音大きい) 拡張期ランブル(心尖部):M弁通過する血液量↑による機能的MS=Carey Coombs雑音 Ⅱp亢進:肺高血圧によってP弁が強く閉じる→機能的PRとなる Graham-Steell雑音:肺高血圧に伴う機能的PRにより拡張期に逆流性雑音を生じる 【心電図】 シャント量が増加するにつれ左室肥大による左室高電位など 【画像検査】 心エコー:カラードプラで左室→右室へのシャントで確定診断 胸部X線:シャント量が増えるにつれ左第2・3・4弓突出 心カテ:シャントによって右房から右室おけるO2 step upを認める |
| 治療 | 【小〜中欠損】 経過観察。VSDの約70%は自然閉鎖し、主に2歳までに閉鎖する。 VSD残存した場合、感染性心内膜炎のリスクのため抜歯時などは抗菌薬の予防投与する。 【大欠損】 肺体血流量比(Qp/Qs)が1.5以上で手術適応。パッチを用いて外科的に閉鎖。 漏斗部欠損(A弁直下→右室)ではA弁変形によりARを生じるため早期手術する。 |
房室中隔欠損症 AVSD(別名:心内膜床欠損症)
| 病態 | 房室中隔の発育障害による疾患。不完全型と完全型に分類される。 不完全型:ASD+房室弁変形による閉鎖不全 完全型:不完全型+VSD(完全型の約40%はDown症候群に合併) |
| 症状 | ASD、VSDの症状 |
| 検査 | 【心電図】 不完全右脚ブロック、左軸偏位、第1度房室ブロック 【画像検査】 左室造影:goose neck sign(左室→左房→右房へ造影剤が流れるため) |
| 治療 | M弁修復+パッチで欠損部閉鎖 |
動脈管開存症 PDA:Patent Ductus Arteriosus
| 疫学 | 先天性心疾患の約10%を占めるがすぐに治療されて成人では約2%。 リスク因子:34週未満の早産児、先天性風疹症候群 |
| 病態 | 胎児期の動脈管が残存し、大動脈弓→肺Aへ左→右シャントとなり、肺循環へ負荷がかかり最終的に左心系の容量負荷をきたす疾患。経過とともに肺血管抵抗が上昇すると右→左シャントとなり、腕頭Aなど上半身を灌流する動脈を除いて、酸素化されてない血液が駆出される(Eisenmeger症候群)。 |
| 症状 | 左心不全症状:呼吸困難 下半身のみの遅発性チアノーゼ:Eisenmeger症候群のため |
| 検査 | 【血圧・脈圧】 速脈・大脈:動脈管開存が大きいとシャントにより拡張期圧↓から速脈=反跳脈となる Quincke脈:爪床で脈拍に合わせて色調変化 【身体検査(聴診)】 連続性雑音(2LSB):収縮期・拡張期ともに大動脈→肺Aへ血液が流入するため Ⅱp亢進:肺高血圧によってP弁が強く閉じる→機能的PRとなる Graham-Steell雑音:肺高血圧に伴う機能的PRにより拡張期に逆流性雑音を生じる 【心電図】 左室肥大所見 【画像検査】 心エコー:カラードプラで大動脈→肺Aへの流入像 胸部X線:肺A拡大で左第2弓突出、左室拡大で左第4弓突出、肺血流増加による肺血管陰影の増強 心カテ:右室から肺AにおけるO2 step upを認める |
| 治療 | 【未熟児】 インドメタシン静注:動脈管拡張作用のあるPGE1の合成を阻害 【上記以外】 動脈管の外科的切離・結紮、カテーテルによるコイル塞栓術 |
肺動脈狭窄症 PS:Pulmonary artery Stenosis
| 病態 | 先天的に主にP弁に狭窄があり、右心系に圧負荷をきたし右心肥大を生じる疾患。 |
| 症状 | 軽症は無症状 中等症以上で労作時呼吸困難など |
| 他覚 所見 |
【2LSB聴診】 収縮中期駆出性雑音:狭窄したP弁を通過する乱流音 Ⅱ音の病的分裂:P弁の閉鎖に時間がかかることでⅡpが遅れる |
| 検査 | 【心電図】 右軸変異、右房拡大(P波増高)+右室肥大所見 【画像検査】 心エコー:ドーム状に形成したP弁+主肺Aの狭窄後拡張 胸部X線:肺A狭窄後拡張による左第2弓突出 心カテ:収縮期に右室圧(圧↑)>肺A圧(圧正常)を認める |
| 治療 | 軽症は経過観察 中等症以上で経皮的バルーンP弁形成術(BPV)→稀に肺A穿孔の合併症あり |
Fallot四徴症 TOF:Tetralogy Of Fallot
| 疫学 | 先天性心疾患の約5%を占める(3番目に多い)。 |
| 病態 | 発生過程で円錐中隔が右前方に偏位するため、心室中隔が欠損する(右室圧=左室圧)。大動脈がその欠損部位に騎乗したようになり、相対的に肺A狭窄が狭窄する。その結果、右室流出路狭窄による右室の圧負荷が起こり右室肥大となる。さらに、肺血流が減少し、VSDを通して右→左シャントとなり、大動脈へ静脈血が流出してチアノーゼをきたす。 ①VSD→②大動脈騎乗→③肺A狭窄→④右室肥大 |
| 症状 | ①チアノーゼ:生後1〜6ヶ月の間にチアノーゼが出現+呼吸困難が初発となり(無酸素発作)、以後もチアノーゼが続き、ばち指が見られることもある。 ②発作時に蹲踞の姿勢(しゃがみ込んだ姿勢):体血流抵抗の増大によりVSDの右→左シャントを減少させ、肺血流量を増加により呼吸苦を改善させる。 【合併症】 脳膿瘍:右左シャントの存在する先天性心疾患のため |
| 検査 | 【聴診】 収縮期駆出性雑音(2LSB):右室流出路狭窄のため 単一Ⅱ音(2RSB):肺A狭窄によりⅡp音が減弱するため 【心電図】 右軸変異、右房拡大(P波増高)+右室肥大所見 【画像検査】 胸部X線:肺A低形成による左第2弓陥凹+右室肥大による左第4弓突出=木靴型心陰影 心エコー:右室収縮期圧=左室収縮期圧 心カテ:右室造影で肺A・大動脈・左室が同時に造影される |
| 治療 | 【無酸素発作時】 ①胸膝位+O2吸入(肺動脈閉鎖(極型Fallot)では動脈管依存のためにO2吸入は禁忌) ②モルヒネ or BZ系:鎮静 ③β遮断薬の静注:右室流出路狭窄改善 【手術】 ①心内修復術(VSD閉鎖+肺A狭窄解除 or 右室流出路形成):肺A発育を待って生後6ヶ月〜1歳に施行。 ②肺Aが閉鎖した重症TOFでは、まず、PGE1を持続点滴静注して動脈管を開存維持し、次に鎖骨下A→肺A吻合するB-Tシャント術(=動脈管開存みたいな状態)などの姑息手術を肺血流増加を目的に行い、最後に心内修復術を施行する。 |

大動脈縮窄症 CoA:Coarctation of the aorta
| 疫学 | 先天性心疾患の約5%、Turner症候群の約30%に合併 |
| 病態 | 大動脈遠位弓部狭窄をきたした先天性奇形。合併のない単純型大動脈縮窄、他の心奇形(VSD、PDA)を合併したものは大動脈縮窄複合に分類される。 |
| 症状 | 単純型:無症状が多い 複合型:PDAがあると右室→大動脈へと流れ下半身チアノーゼをきたす |
| 検査 | 【聴診】 左背部で収縮期あるいは連続性雑音 【血圧】 上肢血圧>下肢血圧(上半身へは左室から駆出される血液が灌流するが、下半身への血流は右室・肺動脈から開存した動脈管を経由して下行大動脈に供給されため、下半身のみに酸素飽和度の低い血液が送られてチアノーゼを認める) |
| 治療 | 単純型:上下肢血圧差20以上の場合は狭窄部切除端々吻合術 複合型:PGE1投与し、可及的速やかに手術(NSAIDs禁忌) |
エプスタイン奇形 Ebstein anomaly
T弁の一部が右室に落ち込み、T弁閉鎖不全と右房化右室となり、機能的に右室が狭小化する疾患。心房中隔の欠損孔や卵円孔を通して右→左シャントとなりチアノーゼを呈する。また、刺激伝導系にも異常がありWPW症候群を合併することが多い。
完全大血管転位症
| 疫学 | 男児に多い |
| 病態 | 肺Aと大動脈が入れ替わり、右室から大動脈、左室から肺Aが起始するチアノーゼ疾患。放置すれば1年以内に大多数が死亡する。体循環と肺循環が分離されているため、生命維持のためには両循環での体液の混合が必須となり、シャント量が多いほど生存に有利となる。 |
| 治療 | 出生直後にPGE1製剤投与 出生後早期にバルーン心房中隔裂開術(BAS)施行 |
心筋疾患
【心筋症の分類】
| 拡張型心筋症 | |
| 肥大型心筋症 | |
| 拘束型心筋症 | 稀。左室壁が硬いために拡張障害をきたす。 |
| 不整脈原性右室心筋症 | 常染色体優性遺伝。右室の心筋細胞が壊死し線維組織に置換される。 |
拡張型心筋症 DCM:Dilated Cardiomyopathy
| 疫学 | 約20%に家族歴があり、その多くは常染色体優性遺伝する。 |
| 病態 | 遺伝・ウイルス持続感染・自己免疫によって心筋が壊死して心室内腔が拡大し、収縮障害をきたす疾患。 |
| 症状 | ①心不全症状:労作時息切れ、交互脈 ②動悸:統一の取れた収縮が困難となりさまざまな不整脈を生じる ③塞栓症状:収縮力↓で血液うっ滞して血栓形成し、脳塞栓や肺塞栓を生じる |
| 他覚 症状 |
【聴診】 容量負荷によるⅢ音、収縮力↓を心房が代償しⅣ音、合わさり奔馬調律となる。 心室拡張に伴いM弁輪拡大するとMRのため全収縮期逆流性雑音を生じる。 |
| 検査 | 【画像検査】 胸部X線:心陰影拡大、肺うっ血により肺門部に白い陰影(Butterfly shadow) 心電図:左室拡大所見、異常Q波、非特異的ST-T変化 心エコー:左室内腔拡大+左室壁菲薄化、EF↓、Mモードで左室壁運動↓ 心カテ:左室拡張末期圧=PAWP↑、EF↓ |
| 治療 | 基本は慢性心不全と同じ薬物療法 根治は心臓移植 |
肥大型心筋症 HCM:Hypertrophic Cardiomyopathy
| 疫学 | 50%以上に家族歴があり、その多くは常染色体優性遺伝(遺伝性の約50%にサルコメア関連蛋白遺伝子変異)する。 |
| 病態 | Ca感受性亢進により低いCa濃度で心筋が収縮する変性疾患で、主に心室中隔の肥大に基づく左室の拡張障害をきたす疾患で、突然死の原因となる。 【閉塞型肥大型心筋症(HOCM)】 HCMの1/4は左室流出路が狭窄したHOCMであり、SAMによるMR合併がよく見られる。HOCMでは、静脈還流量が低下すると狭窄が高度になるため、期外収縮後の収縮(Brockenbrough現象)、Valsalva法呼吸、立位、運動によって悪化する。 |
| 症状 | 運動や脱水など交感神経亢進時に、 ①息切れ:左室拡張障害による肺うっ血のため ②動悸:拡張不全によるAFなどの不整脈 ③胸痛:肥大+拡張障害による心筋虚血 ④めまい・失神:心拍出量低下 |
| 他覚 | 【4LSB〜心尖部聴診】 拡張障害に伴いⅢ音+心房収縮力↑によりⅣ音(奔馬調律) HOCMでは収縮期駆出性雑音(A弁は正常なので頸部に放散しない)、期外収縮期後に増強する収縮期雑音 蹲踞で減弱する収縮期雑音:静脈還流量増加と末梢血管抵抗の増大(腹部大動脈と大腿動脈を圧迫することで体血管抵抗を増大)により、左室容積が増えて雑音が減弱する。 |
| 検査 | 【心電図】 ①ST-T変化(ストレイン型):V4〜V6でR波増高+ST低下 ②巨大陰性T波:左室肥大(特に心尖部)のためV3〜V5に巨大陰性T波 ③異常Q波:心室中隔の肥大のため ④左室高電位、Wide QRS:左室肥大のため 【画像検査】 胸部X線:心陰影拡大なし(求心性肥大のため) 心エコー:EFは正常、左室後壁と比較時に心室中隔の非対称性肥厚(ASH)、HOCMではカラードプラによる左室流出路狭窄のモザイク乱流やA弁の収縮中期半閉鎖、Mモードでは前尖を支える乳頭筋の偏位によりM弁前尖の収縮期前方運動(SAM)、DDR低下(僧帽弁前尖後退速度) 頸動脈圧波:二峰性脈 心カテ(左室-大動脈引き抜き圧曲線):閉塞部分を通過後に圧が下がる。左室流出路の狭窄部位前後で収縮期圧較差が30mmHg以上(左室内で圧較差) 【病理】 心筋生検で心筋細胞の肥大や錯綜配列、間質の線維化が見られる。 |
| 治療 | 【生活】激しい運動禁止 【薬物療法】左室内圧較差の是正! β遮断薬:陰性変時作用により運動時の心拍数増加も抑制し、労作時息切れや呼吸困難を改善。心筋酸素需要も減少するため心筋虚血による胸痛も改善。 Ca拮抗薬(ベラパミル or ジルチアゼム):陰性変力作用により左室内圧較差が減少し、めまいや失神発作などを改善。ジヒドロピリジン系は左室流出路圧較差を増大させるため不向き。 左室流出路閉塞を強めるβ刺激薬、ニトログリセリン、ジギタリス、利尿薬は禁忌! 【手術】 薬剤抵抗性HOCMはカテーテルによる中隔アルコール焼灼術(PTSMA)、突然死ハイリスク患者にはICD |
たこつぼ型心筋症 Takotsubo cardiomyopathy
| 疫学 | 高齢女性に多い |
| 病態 | たこつぼ心筋症の原因は詳細不明だが、ストレスを誘因に1つの冠動脈の支配領域を超えた左心室の壁運動異常を生じるが、冠動脈には有意狭窄を認めない疾患。 |
| 症状 | 心筋梗塞に似た胸痛 |
| 検査 | 【心電図】 ①広範囲な誘導でST上昇 ②経時的にST復帰+48時間以内に現れる陰性T波(特に下壁誘導)とQT延長(ときに巨大陰性T波を示す) ※心電図のみでは診断できず、複数の臨床所見や臨床経過を総合して診断される。 【血液検査】 心筋梗塞を示す心筋逸脱酵素の血中上昇はない 【画像検査】 左室造影:心尖部を中心とした広範囲は収縮低下と代償性の心基部の過収縮、収縮終期の左室形態がたこつぼ様 |
| 治療 | 多くは数週以内に自然治癒 |
急性心筋炎 Acute myocarditis
| 病態 | ウイルス感染(エンテロウイルス属のコクサッキーB群など)による免疫応答、薬剤性などにより心筋が攻撃され心筋壊死や機能障害をきたす疾患。ほとんどが心膜炎を合併する。 |
| 症状 | 【先行症状】 感冒様症状、消化器症状 【先行症状の数日後】 息切れ:急激な左室機能低下による心不全症状 胸痛:心膜刺激 動悸:心ブロックなどの不整脈 |
| 検査 | 【血液検査】 赤沈↑CRP↑、逸脱による心筋トロポニン(TnT)↑LDH↑CK-MB↑AST↑ 【画像検査】 心電図:低電位、房室ブロック、非得意的ST-T変化 胸部X線:進行性心拡大 心エコー:炎症部位に一致した壁肥厚・壁運動低下、EF↓ |
| 治療 | 対症療法(左心不全には利尿薬・血管拡張薬、ショックにはIABP・PCPS) |
心膜疾患
急性心膜炎(心外膜炎) Acute Pericarditis
| 病態 | 特発性(最多)、ウイルス感染(主にコクサッキーB群)、膠原病(SLEなど)、結核、心筋梗塞などが原因で心膜の急性炎症を起こす疾患。心膜の炎症で心膜液が貯留し、心タンポナーデに至る場合もある。 心筋梗塞後の早期に起こる一過性心膜炎や、2〜6週間後に起こるアレルギー性心膜炎(Dressler症候群)に注意する。 |
| 症状 | (ウイルス感染を示唆する前駆症状が多い) ①胸痛:心膜刺激症状で30分以上持続し、吸気時・仰臥位で増強し、座位で軽減する。 ②発熱:炎症のため |
| 検査 | 【聴診】 ①心膜摩擦音:収縮期・拡張期に聴取する高調で皮革を擦り合わせた様な音 【心電図】 ①V1・aVRを除くほぼ全ての誘導で上に凹型のST上昇(対側性変化なし)。 ②aVRを除くほぼ全ての誘導でTPの基線と比較してPQ部分低下 ③心嚢液貯留が多い場合は低電位 【画像検査】 胸部X線:心膜液の貯留で心拡大 心エコー:心膜液の貯留でecho free spaceを認める。 |
| 治療 | 入院して安静+胸痛にNSAIDs、心タンポナーデがあれば心膜腔穿刺 (ウイルス性や特発性の心膜炎は2〜6週間で自然治癒する。発症2~3日後も症状が改善しなければ、結核、化膿性心膜炎を考慮し、心囊液より原因菌の同定を行う) |
心タンポナーデ Cardiac Tamponade
| 病態 | 悪性腫瘍の心膜転移(最多)、尿毒症、膠原病・結核・ウイルス感染→心膜炎、外傷・大動脈解離による出血、開心術・PCIの合併症、心筋梗塞の心破裂などの原因によって、心膜液が急激に貯留して心膜腔内圧が上昇し、心室拡張障害を来たす。その結果、右心への静脈環流量が減少+心拍出量が低下する疾患。 |
| 症状 | ①右心不全症状:右室拡張障害により下腿浮腫、肝腫大、頸静脈怒張 ②心拍出量↓:血圧↓、心音減弱、頻脈、呼吸困難 【Beckの三徴】 ベッキー、刑事と静かに決心(Beck・頸静脈怒張・静脈圧↑・血圧↓・心音↓) ①頸静脈怒張:心カテで中心静脈圧(CVP)↑・右房圧↑ ②血圧↓:代償性頻脈、吸気時に呼吸時よりも収縮期圧10以上低下する(奇脈) ③心音↓(Ⅰ音とⅡ音の減弱):心膜液により拍動が伝わりにくい |
| 検査 | 【心電図】 R波低電位、洞性頻脈、胸部誘導でQRS高が一拍ごとに変化する 【画像検査】 胸部X線:心陰影は左右対称に巾着状に拡大、胸水でCP角dull 心エコー:心膜液の貯留でecho free spaceを認める |
| 治療 | 心エコー下に心膜腔穿刺 血管拡張薬・利尿薬は禁忌、陽圧換気は静脈環流量↓のため禁忌 |
収縮性心膜炎 Constrictive Pericarditis
| 病態 | 50%以上が原因不明だが(特発性)、その他は結核など→急性心膜炎の回復過程で線維性肥厚を来し、壁側と臓側が癒着・石灰化して心膜腔が閉鎖されて拡張不全を生じる。その結果、右心への静脈環流量が減少する疾患。 |
| 症状 | ①右心不全症状:消化管うっ血のため蛋白漏出性胃腸炎→低Alb血症・下腿浮腫 ②Kussmaul徴候:吸気時に頸静脈怒張↑ ③肝静脈逆流:肝の圧迫により頸静脈怒張↑ |
| 他覚 | 【血圧・脈拍】 左室拡張不全による1回拍出量↓のため、収縮期血圧↓となり脈圧↓ 【心尖部聴診】 拡張早期過剰心音(高調性心膜ノック音):石灰化した心膜に拡張時の心筋が当たる音 |
| 検査 | 【画像検査】 胸部X線:心膜石灰化像、心拡大はなし 心エコー:心膜肥厚、石灰化で輝度↑ 心カテ:右心室圧曲線は右室拡張障害によりdip and plateau(√に似ている)、4腔の拡張末期圧差がほぼない |
| 治療 | 心膜切除術 |
動静脈疾患
大動脈瘤 Aortic aneurysm
| 病態 | 粥状硬化(最多、特に2/3がAAAとして発症)、炎症(感染、大動脈炎症候群など)、Marfan症候群、外傷により、大動脈壁の一部が全周性または局所性に拡大・突出した状態であり、破裂すると突然死する。瘤は病理学的に真性、仮性、解離性の3種類がある。 1/3が胸部大動脈瘤(TAA)、2/3が腹部大動脈瘤(AAA)である。AAAの95%が腎A分岐部以下に生じる。TAAでは最大短径4.5cm以上を動脈瘤とする。 |
| 分類 | 【大動脈瘤破裂の分類】 ①frank rupture:大動脈壁が断裂し、大動脈外に血腫が存在する破裂 ②impending rupture(切迫破裂):瘤壁や壁在血栓内にCTで高吸収の血腫があり、今にも破裂しそうなもの ※脳出血が高吸収を示すのと同じ原理 ③contained rupture:周囲組織が断裂した大動脈を被覆化した慢性的な破裂 |
| 症状 | 【未破裂】 基本、無症状。部位によって圧迫症状(左反回神経圧迫で嗄声、Horner症候群、食道圧迫で嚥下困難、気道圧迫で咳嗽・喘鳴・喀血)。 AAAは腫瘤の拍動を自覚することもある。 【破裂】 激痛、出血性ショック |
| 検査 | 【画像検査】 胸部X線:部位に応じた突出する陰影 エコー: 造影CT(3DCT):大動脈瘤の存在や腹腔内や後腹膜腔内への出血を確認 |
| 治療 | 【手術】 瘤短径がTAAで60mm(嚢状であれば大きさ関係なく手術適応)、AAAで50mm以上で手術適応。他にも急速に拡大しているもの、破裂したもの、腹痛や腰痛があるものなども手術適応となる。手術は人工血管置換術、Stanford B型およびAAAの場合はステントグラフト内挿術(EVAR)を行う。上行大動脈基部まで瘤が拡大している場合はBentall手術となる。 【TAAの術後合併症】 横隔膜前後レベル(T8~L1)には前脊髄動脈に重要な血流を供給するAdamkiewicz動脈が存在する。胸腹部大動脈瘤の手術に伴いAdamkiewicz動脈が障害を受ければ、対麻痺(下肢運動障害、膀胱・直腸障害)を起こす可能性がある(前脊髄動脈症候群)。そのため、手術に際しては手術前日に脳脊髄液ドレナージの留置や術中運動性脊髄誘発電位(MEP)の使用により対麻痺発生の予防に努める必要がある。 |
大動脈解離 Dissection of aorta
【ADD riskスコア】
| Hi(基礎疾患) | Phy(痛みの性状) | Vi(身体所見) |
| ・Marfan症候群 ・大動脈疾患の家族歴 ・大動脈弁疾患の既往 ・最近の大動脈弁手術 ・胸部大動脈瘤の既往 |
・突然発症の痛み ・強い痛み ・裂けるような痛み |
・血圧の左右差 ・脈の左右差 ・神経局在所見+痛み ・新規大動脈弁雑音 ・ショック、低血圧 |
| 疫学 | 50〜70歳に好発、男性に多い |
| 病態 | 大動脈の中膜が内外2層に解離し、その間の偽腔に血流または血腫が存在する病態。真腔→偽腔の流入部をentry、偽腔→真腔の流出部をreentry、隔壁をフラップという。![]() |
| 原因 | 高血圧、動脈硬化、Marfan症候群、梅毒など |
| 分類 | 【解離部位による分類】 Stanford A型:上行大動脈に解離あり(心タンポ、ACSなどのリスク↑) Stanford B型:上行大動脈に解離なし(最多) 【entryと解離による分類】 DeBakey Ⅰ型:上行大動脈にentryあり+解離が下行大動脈まで及ぶ DeBakey Ⅱ型:上行大動脈にentryあり+解離が上行大動脈に限局 DeBakey Ⅲ型:下行大動脈にentryあり+解離が胸部に限局Ⅲa / 腹部に至るⅢb |
| 症状 | <共通症状> ①突然の引き裂かれるような胸部・背部・腹部の激痛 ②移動性の痛み ※痛みのない場合が5〜10%存在、一時的に痛み消失してwalk-inで来る場合もある <体腔内への出血> 胸腔内出血、縦隔内出血、腹腔内出血、後腹膜出血 |
| <上行大動脈分枝の偽腔形成による閉塞症状> ●Valsalva洞圧迫:大動脈弁輪拡大でAR→急性左心不全、冠動脈閉塞(特にRCA閉塞多い)→ACS、心嚢破裂→心タンポナーデ ●(右)鎖骨下A圧迫:血圧20mmHg以上の左右差、上肢脈拍触知不良 ●総頸A・腕頭A圧迫:脳虚血症状による神経学的な巣症状(意識障害、けいれん、片麻痺、Horner症候群、痺れなどの脳梗塞症状) ●瘤による左反回神経圧迫:嗄声、Horner症候群 ●脊髄A圧迫:対麻痺 |
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| <下行大動脈分枝の偽腔形成による閉塞症状> ●気管支A破裂:喀血 ●腎A圧迫:腎血管性高血圧→急性腎不全(尿量減少など) ●腹腔A・上下腸管膜A圧迫:腸管虚血(腹痛、麻痺性イレウスなど) ●総腸骨動脈圧迫:下肢虚血(痺れ・冷感・疼痛・下肢壊死) |
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| 検査 | ①血圧 解離のみ:交感神経↑により血圧↑ 体腔内出血、心タンポナーデ、ACS、AR:ショック状態で血圧↓ ②心電図 10〜15%にACSを合併、特にⅡ・Ⅲ・aVf上昇 ③心エコー AR、心タンポナーデ、壁運動、血胸を確認 ④胸部X線 上縦隔の拡大(弓部レベルで8cm以上)、心拡大、胸水を確認 ⑤血液検査 WBC↑CRP↑、アシドーシス、虚血でCK↑乳酸↑LDH↑ Dダイマー0.5μg/mL未満だと大動脈解離の可能性低い ⑥胸腹部造影CT:単純+動脈相+平衡相+MPR再構成でオーダー |
| CT | 単純CTでは、内膜の石灰化を指標にして解離を確認できる。また、急性期の偽腔閉鎖型では偽腔が高吸収となる場合がある(hyperdense crescent sign)。 造影CTでは、まず大動脈からの分枝を見て閉塞がないか確認する。また、偽腔閉鎖型は偽腔内に真腔側から突出した像(ULP型)が新たに出現した場合、嚢状に進展したり、再解離したりする可能性あり重症度が上がる。 ![]() |
| 治療 | 【初期治療】 ●疼痛・呼吸困難・不安のコントロール 例:フェンタニル0.5mg/10mL+生食40mL(0.5mg/50mL=0.01mg/mL)→2mLフラッシュし、2mL/hrで持続点滴開始。疼痛に合わせて1〜5mL/hrに変更。 ※フェンタニルの副作用:徐脈、嘔吐、血圧低下 ●降圧(上級医に確認してから投与) sBP100〜120以下、HR60以下を目標に、β遮断薬(効果乏しい場合は非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)で降圧し大動脈壁へのずり応力を下げる 1st:プロプラノロール(インデラル®)2mg静注 2nd:ニカルジピン10mg/10mL 2.5A+生食225mL(25mg/250mL=0.1mg/mL)を 0.3mg〜3.6mL/kg/hrで調節 【分類による治療】 Stanford A型:心外にコンサルト(人工血管置換術、必要に応じて大動脈弁置換術) Stanford B型:心外にコンサルト後、基本的にはβ遮断薬などで保存的治療 大動脈内バルーンパンピング(IABP)は禁忌! |
急性動脈閉塞症 Acute arterial occlusive disease
| 病態 | 塞栓や血栓によって突然動脈が閉塞し、その末梢に虚血症状を呈する疾患。 塞栓:AF(最多)、左房粘液腫、大動脈瘤、MSなどが原因 血栓:粥状硬化、外傷、凝固能亢進が原因 |
| 症状 | <5P> Pain 疼痛 Pallor 蒼白 Paresthesia 知覚異常 Paralysis 運動麻痺 Pulselessness 脈拍消失 |
| 検査 | 【画像診断】 造影CT:閉塞血管と部位を確認 |
| 治療 | 直ちに抗凝固療法(ヘパリン静注) 組織の変化が不可逆的になる6時間前に血行再建術(カテーテルによる塞栓除去) 【血流再開処置後の合併症】 ①MNMS:筋腎代謝症候群:広範囲塞栓や長時間経過例に対し血行再建を行った場合、壊死した筋組織から逸脱したミオグロビン、CK、乳酸、Kなどが全身に還流すると、高ミオグロビン血症、ミオグロビン尿症、高K血症、乳酸アシドーシスを生じて、心停止や急性腎不全となり致命的となる。 ②コンパートメント症候群:虚血再灌流時には毛細血管の透過性亢進により筋組織の浮腫(下腿の緊満・浮腫)を生じ、筋区画(コンパートメント)の内圧上昇が起こる。 |
深部静脈血栓症 DVT:Deep Venous Thrombosis
| 病態 | 以下の機序で、下肢深部の静脈に血栓が生じ、静脈閉塞をきたす疾患。錐体と右総腸骨Aによる圧迫により左総腸骨Vに血栓ができやすい(腸骨静脈圧迫症候群)。また、静脈血栓が遊離して肺Aを閉塞し肺血栓塞栓症を合併することがある。 【Virchowの三徴=血栓症の要因】 ①血液うっ滞:長期臥床、長時間の座位、脱水、妊娠、肥満 ②血管内皮細胞損傷:CVカテーテル留置、手術操作、外傷 ③血液凝固能亢進:担癌状態、炎症、膠原病、抗リン脂質抗体症候群、ピル内服など |
| 症状 | ①突然、片側の下肢のびまん性腫脹・疼痛 ②側副血行路により表在静脈が怒張(下肢挙上にて消失しない=二次性静脈瘤) |
| 検査 | 【身体検査】 Homans(ホーマンズ)徴候:足関節背屈時にふくらはぎに痛み 【修正Wellsスコア】 4点以上なら肺塞栓症の可能性あり、Dダイマー検査と下肢エコー検査 【血液検査】 Dダイマー↑(陰性ならDVT除外、陽性ならエコー) 【画像診断】 下肢エコー:1cm毎に圧迫してつぶす、血栓があれば圧迫してもつぶれない。急性血栓では無〜低エコー、亜急性〜慢性血栓では高エコーになる傾向がある。 ①大腿V:鼠径靭帯でVANを確認し、そこから末梢へ行くと大伏在Vが分枝し、次に外側穿通枝が浅大腿Aと深大腿A挟まれるように分枝する。 ②膝窩V:股関節を外転+膝関節を屈曲させ、膝窩Vの直下に膝窩Aが見える。そこから末梢へ行き前脛骨V→後脛骨V・腓骨V3分枝領域まで確認。 【Padua予測スコア(入院患者のVTE静脈血栓塞栓症発症リスク)】 高リスクの場合は薬理学的予防法(出血のリスクが高い場合は機械的予防法) |
| 治療 | 【急性期】 ヘパリン、抗凝固薬(ワルファリン、DOAC)を用いた抗凝固療法。重症例ではウロキナーゼによる血栓溶解療法、または外科的orカテーテルによる血栓除去療法。限定的に、肺塞栓症の予防のため下大静脈フィルター留置を行う場合がある。 【慢性期】 弾性ストッキング着用+下肢挙上+抗凝固療法(ワルファリン、ヘパリン) |
下肢静脈瘤 Varicose vein(一次性静脈瘤)
| 疫学 | 女性(特に妊婦や肥満体)に好発、立位作業時間の長い人に好発 |
| 病態 | 表在静脈や交通枝に存在する弁機能不全により、静脈の逆流が起こり静脈の蛇行・拡張が生じる疾患。 |
| 症状 | 患肢のだるさ・つっぱり感・疼痛 表在静脈の怒張・蛇行、下肢挙上にて表在静脈は消失=一次性静脈瘤 静脈うっ滞による浮腫・点状出血・うっ滞性皮膚炎(色素沈着、湿疹) |
| 検査 | 【画像検査】 エコー:カラードプラで静脈血の逆流確認 |
| 治療 | 【手術】 静脈抜去術(stripping法)、静脈焼灼するレーザー療法、硬化剤を注入する硬化療法 |
| 予防 | 長時間の立位を避ける、臥床中は患肢挙上、弾性ストッキング着用、患肢清潔保持 |
上大静脈症候群(SVC症候群)
呼吸器外科を参照。
コレステロール塞栓症
| 病態 | 大動脈壁の粥腫の破綻により、コレステロール結晶が散布され全身の小動脈を閉塞することにより発症。血管内操作や心大血管手術、抗凝固療法を誘因として起こるものが多い。 |
| 症状 | 血管内操作などの数日〜数週間後に、 ①腎不全:BUN↑Cre↑ ②皮膚症状:網状皮斑、壊疽、チアノーゼ、潰瘍など ③BTS(blue toe syndrome):足趾動脈に塞栓、足底の疼痛 |
| 検査 | 【血液検査】 BUN↑Cre↑、好酸球↑、補体↓など 【生検】 皮膚生検:コレステロール結晶が真皮から皮下脂肪織内の小動脈の内腔に紡錘形または針状の裂隙(cholesterol cleft)として観察される(確定診断) |
| 治療 | 有効な治療法ない |




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