褥瘡(床ずれ) pressure ulcer
病態 | 荷重のかかる組織で圧排や血流低下により組織が壊死する疾患。 皮下組織が薄く骨突出部である肩甲骨、仙骨(最多)、腸骨、大転子部、踵などに好発する。寝たきり、低栄養、知覚の低下、皮膚の乾燥、摩擦などがリスク因子となる。 【褥瘡の分類:NPUAP分類】 Ⅰ度:表皮の変色 Ⅱ度:表皮剝離・水疱 Ⅲ度:皮膚を越えて皮下組織・筋膜まで Ⅳ度:筋肉を越えて広範な壊死、さらに骨に及ぶ |
症状 | ①圧迫部の紅斑 ②潰瘍 ③黒色期:皮膚と皮下組織が壊死している状態 ④黄色期:不良肉芽組織や膿などが現れた状態。多量の浸出液あり、感染の危険が高い ⑤赤色期:壊死組織が除かれ、下から肉芽組織が盛り上がってくる。治癒が近い ⑥白色期:赤い肉芽組織が欠落した組織を埋め、表皮形成が始まる。この表皮は周囲の皮膚より白っぽいのが特徴 |
褥瘡の発生リスク評価
Bradenスケール(ブレーデン)
6つの評価項目を1点(最も悪い)〜4点(最も良い)で採点し、合計点が少ないほどリスクが高いと判断する。急性期病院では14点以下、在宅や施設では17点以下を高リスクと判断することが多い。
OHスケール
寝たきり高齢者・虚弱高齢者を対象として得られた褥瘡発生危険要因を点数化したもの。重症入院患者では使用する場合は過小評価されることがあるため注意。4つの評価項目を点数化し、1〜3点は軽度、4〜6点は中等度、7〜10点は高度レベルとする。
【OHスケールに準じたマットレスの選択】
軽度 | 褥瘡なし | 10cm以上、静止型マット、圧切替型エアマットレス |
褥瘡あり | 圧切替型エアマットレス | |
中等度 | 褥瘡なし | 圧切替型エアマットレス |
褥瘡あり | 超低圧保持、伸縮対応 | |
高度 | 褥瘡なし | 圧切替型エアマットレス、超低圧保持、伸縮対応 |
褥瘡あり | 超低圧保持、伸縮対応 |
褥瘡の予防
①体位変換 | 基本的に2時間ごとに体位変換 |
②体圧分散マットレス | |
③栄養状態の改善 | 低栄養を改善 |
④リハビリ | 廃用症候群を改善 |
【体圧分散マットレス(代表的な4素材)】
体圧分散性 | 寝返り | ムレ感 | 注意点 | |
低反発ウレタン | ◎ | △ | × | 寝返りしづらく、蒸れやすい |
高反発ウレタン | ○ | ○ | ○ | 安価なものは体圧分散性少ない |
エアマット | ○ | ◎ | △ | シーツにシワができやすい |
ゲル・ジェル | ○ | ○ | △ | 蒸れやすい、冷えやすい |
すでに生じている褥瘡の評価
NPUAP分類
皮膚の性状や組織欠損の有無で評価
DESIGN-R分類
NPUAP分類より詳細な評価方法。初期評価だけでなくその後の治療過程を評価することにも適している。1〜2週間ごとに評価する。各項目で小文字は軽度、大文字は重度を表す。また、各項目の評価をスコア化し、点数が大きいほど重症であることを意味する。
褥瘡の感染合併の有無の評価
炎症(局所疼痛・熱感・発赤・腫脹)+膿性滲出液や悪臭で創部感染を疑う
NERDSとSTONES
①NERDS | 創表面の感染徴候 |
N | 治癒しない創 |
E | 滲出液が多い創 |
R | 創底が赤く出血しやすい創(過剰肉芽を伴う) |
D | 創内に壊死組織などが存在する |
S | 創から悪臭がする |
②STONES | 創深部の感染徴候 |
※創縁を超えて発赤・硬結・握雪音がある場合は深部への感染波及を考慮 | |
※組織欠損が大きい褥瘡でゾンデが骨に触れると骨髄炎の合併を考慮 | |
S | 創面積の拡大 |
T | 創面積の熱感 |
O | プローブを挿入すると骨に達する or 骨の露出 |
N | 創周囲皮膚の新たな損傷 |
E | 滲出液、発赤、浮腫が見られる |
S | 悪臭が漂う |
褥瘡の治療
①創部の管理 | =創傷治癒の妨げとなる4因子(TIME)を取り除き創傷治癒につなげる |
①T:壊死組織をデブリドマン | |
②I:感染原因になるものを除去(局所洗浄) | |
※洗浄は水道水 or 生食(創表面に付着した細菌数の数を減らす) | |
③M:滲出液のアンバランスを改善(適切な創傷被覆材、陰圧閉鎖療法) | |
※DESIGN-R分類に基づいた外用薬・ドレッシング材を選択 | |
④E:創辺縁の治癒延長やポケットを外科的デブリドマン、陰圧閉鎖療法 | |
②感染症加療 | 創部感染症には洗浄・排膿・デブリ・全身性抗菌薬 |
原則、感染創にはドレッシング剤は使用しない(閉鎖環境にしない) | |
創部培養は常在菌検出が多いため参考程度にし、褥瘡や全身状態に応じて必ずしも耐性菌カバーを行わなくても良い | |
膿瘍より検出された菌は原因菌である可能性が高く、起因菌として抗菌薬でカバーする | |
③予防 | 褥瘡が治癒しても再発リスクは高いため、「褥瘡の予防」を引き続き行う |
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