尿閉の概要
概要 | 急性尿閉は60歳以上の男性で最も頻度が高く、尿路感染症や腎不全に発展するため、早期診断及び加療と予防が重要。 |
原因 | 前立腺疾患(51%)>神経因性膀胱(18%)>薬剤性(6%) |
尿閉の診察
①問診
症状 | 前立腺肥大を疑う場合:頻尿、排尿困難、血尿、発熱 |
神経因性膀胱を疑う場合:背部痛、神経症状 | |
既往歴 | 骨盤臓器脱、骨盤や前立腺の手術・放射線治療歴、骨盤外傷、DM、MS |
内服薬 | 市販薬を含めた尿閉をきたす薬物を確認 |
②身体所見
VItal | 強い尿意に伴う頻脈、血圧上昇、頻呼吸 |
視診 | 下腹部膨満、およびそれに伴う疼痛あり |
女性では、膀胱脱、直腸脱、子宮脱を確認 | |
男性では、包茎が尿閉の原因となる場合がある | |
触診 | 男性では、必要に応じて直腸診にて前立腺肥大を確認 |
前立腺の疼痛・腫脹・熱感がある場合は前立腺炎の可能性がある | |
肛門括約筋の弛緩や攣縮を認めた場合は神経因性膀胱を疑う |
③検査所見
尿検査 | 膿尿がある場合はUTIを疑い尿培養を提出、尿潜血がある場合は膀胱癌や尿路結石を考慮し細胞診や画像診断も検討 |
血液検査 | 腎機能障害がある場合、尿路閉塞に伴う腎後性腎不全の可能性あり |
腹部エコー | 腎:水腎症を確認 |
膀胱:尿が出ず300mL以上尿貯留があれば尿閉の可能性あり | |
腫瘍や炎症などによる出血を伴っている場合、凝血塊によるデブリ様エコーが充満している:膀胱タンポナーデの可能性あり泌尿器コンサルト | |
前立腺:前立腺肥大 |
④経尿道カテーテル留置
サイズ | 14〜18Frが一般的(16〜18Frは血餅などをドレナージしやすい) |
注意点 | 留置後は血尿、一過性低血圧、閉塞解除後利尿などの合併症に注意 |
コンサルト | 尿道膀胱損傷、尿道狭窄、カテーテル留置困難、泌尿器術後症例、カテーテル挿入後凝血塊、急性前立腺炎合併では泌尿器科にコンサルト |
Disposition
帰宅
帰宅可能 | 尿カテ留置して尿閉が解除できればカテーテル挿入したまま帰宅可能 |
再受診 | 後日、泌尿器科外来を予約して帰宅 |
入院
入院適応 | ①尿閉の原因疾患への治療が必要、②腎後性腎不全を合併、③膀胱内出血のコントロール困難では入院適応となる |
尿カテ留置後に大量の尿が排出され続ける場合、閉塞解除後利尿に伴う急性腎不全を呈することがあるため入院を考慮 | |
経口摂取可能:経口水分補給で対応できる場合が多い | |
経口摂取不可:尿量を8時間毎に評価し、その半分量を1号液で持続点滴する(例:尿量1600mL/8hrなら800mL/8hrで持続点滴) | |
前立腺肥大 | 尿カテ留置後にα1遮断薬を開始、2〜3日でカテ抜去し尿量を確認 |
例)タムスロシン(ハルナールD®)0.2mg 1日1回 | |
例)シロドシン(ユリーフ®)4mg 1日2回 | |
例)ナフトピジル(フリバス®)75mg 1日1回 | |
α1遮断薬のみでコントロール不十分な場合は5α還元酵素阻害薬を併用する(泌尿器科医が行う)、投与24〜36週後から有意な改善を認める傾向 | |
例)デュタステリド(アボルブ®)0.5mg 1日1回 | |
※同成分のザガーロ®はAGA(男性型脱毛症)の治療薬 | |
神経因性膀胱 | α遮断薬やコリン作動薬で尿排出を維持し、腎機能障害や尿路感染症を起こさないようにする。薬剤を使用できない場合は間欠的導尿か尿カテ留置する。 |
例)ウラピジル(エブランチル®)15mg 1日2回 α遮断薬 | |
例)ジスチグミン(ウブレチド® )5mg 1日1回 コリン作動薬 | |
例)ベタネコール(ベサコリン散®)30〜50mg 分3 コリン作動薬 |
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