蕁麻疹 Urticaria
病態 | I型アレルギー性(食品などのアレルゲン)または非アレルギー性(擦過、日光、寒冷、薬剤などの物理的・化学的刺激)にヒスタミンが分泌され、血管内皮細胞のH1に結合して血管透過性亢進し、真皮上層に一過性の限局性浮腫が生じる疾患。また、ヒスタミンは知覚神経のH1に結合し、掻痒を起こす。 【診断名のある蕁麻疹】 ・食物アレルギー:特定の食事が抗原となり生じる蕁麻疹 ・ラテックスアレルギー:ラテックスに対するアレルギー性接触蕁麻疹で、約半数にバナナ・栗・アボガドなどの食物と交差反応を示す(ラテックス・フルーツ症候群) ・昆虫アレルギー:昆虫由来物質に対するIgEが作用して生じる蕁麻疹 ・職業アレルギー:特定の物質に長期間曝露されることで生じる蕁麻疹 |
分類 | ・急性蕁麻疹:6週間未満で終息、慢性蕁麻疹:6週間以上繰り返す ・接触蕁麻疹:原因物質が接触して数分〜数十分後に生じる蕁麻疹 ・コリン性蕁麻疹:運動や入浴など体温が上昇して発汗する際に生じる蕁麻疹 ・物理性蕁麻疹:物理的刺激によって生じる蕁麻疹 【物理性蕁麻疹の種類】 ・機械性蕁麻疹(人工蕁麻疹):擦過部に一致して生じる蕁麻疹 ・寒冷蕁麻疹:寒冷曝露部位に一致して生じる、もしくは全身に生じる ・温熱蕁麻疹:温熱が加わった部位に一致して生じる蕁麻疹 ・日光蕁麻疹:日光曝露部位に一致して生じる蕁麻疹 ・遅発性圧蕁麻疹:下着装着部など圧が加わった部位に1〜12時間後に生じる蕁麻疹 ・水蕁麻疹:水(特に海水)が接触し、毛孔一致性の小膨疹が生じる蕁麻疹 |
症状 | ①境界明瞭な限局性の膨疹(摩擦や圧迫されやすい部位に出現しやすい) ②多くは24時間以内に跡形なく消退(一過性) ③掻痒を伴う |
検査 | 物理性蕁麻疹:紅色皮膚描記法(+ ) IgE関与が疑われる場合:皮内テスト、特異的IgE測定 |
治療 | 原因物質除去+抗ヒスタミン薬内服(病変が真皮なのでステロイド外用は×) 追加でH2遮断薬を投与することもある。 重症例ではステロイド全身投与。 慢性蕁麻疹には抗IgE抗体(オマリズマブ)注射 |
血管性浮腫(Quincke浮腫)Angioedema
病態 | 蕁麻疹の一種であり、真皮深層〜皮下組織の限局性浮腫。 非遺伝性ではACE阻害薬やプレガバリンなどの薬剤の副作用によってヒスタミンが分泌され、皮下組織の限局性浮腫(膨疹)が生じる。 遺伝性ではC1インヒビターが欠損し、カリクレイン・キニン系が活性化しやすく血管透過性が亢進する(非常に稀な疾患)。 |
症状 | ①突然の限局性浮腫:特に眼瞼・口唇多い。咽頭浮腫では窒息、腸管浮腫では下痢、腹痛、悪心嘔吐を生じる。浮腫は境界不明瞭である。 ②原則痒みはなく、症状は2〜3日続く(蕁麻疹との相違点) |
検査 | 咽頭内視鏡検査で咽頭浮腫の状態確認、C1 inhibitor欠損症:補体↓ |
治療 | 【非遺伝性】 蕁麻疹と同じ治療法。薬剤性であれば原因薬剤中止。 【遺伝性】 発作時:新線凍結血漿 発作予防:アンドロゲン製剤(C1インヒビター産生増強)+トラネキサム酸投与 |
食物依存性運動誘発アナフィラキシー FDEIA
疫学 | 学童〜成人に多い(特に男性) |
病態 | アスピリン内服で症状悪化、小麦>甲殻類が多い |
症状 | ①特定の食物摂取+1〜4時間後に運動すると生じる蕁麻疹やアナフィラキシー |
検査 | 誘発試験 |
治療 | 食事後2時間は運動を控える |
色素性蕁麻疹(肥満細胞症の皮膚型)
疫学 | 乳児期に好発 |
病態 | 肥満細胞が真皮で増殖するため生後1歳頃までに蕁麻疹を繰り返し、全身に爪甲大までの色素斑が多発する疾患。入浴、皮膚摩擦などで肥満細胞からヒスタミンが放出され症状が出現する。 乳幼児期に発症した症例は5〜6歳頃より自然治癒傾向を示すが、成人型は難治性。 |
症状 | ①反復性の蕁麻疹症状(色素斑上に生じる膨疹) ②四肢や体幹に散在する褐色色素斑と紅斑 ③肝脾腫、リンパ節腫脹、骨硬化症、血液異常を合併することもある |
検査 | Darier徴候+(色素斑の擦過により肥満細胞からヒスタミン放出で膨疹を生じる) 【皮膚生検】 トルイジンブルー染色で真皮内の肥満細胞内の顆粒が赤紫色に染色される |
治療 | 発作時に抗ヒスタミン薬内服 |
痒疹 Prurigo
病態 | 真皮上層に滲出性炎症が生じる疾患。原因不明。 中高年以降に出現した痒疹は白血病、内臓悪性腫瘍などを背景に生じることがある。 【分類】 急性痒疹:数週間以内に軽快する。虫刺症の過敏反応と考えられている。 慢性痒疹:多形慢性痒疹と結節性痒疹に分類。前者は高齢者の側腹部や腰臀部に、後者は青年期以降の女性に好発する。 妊娠性痒疹:妊娠初期に四肢伸側や体幹に生じ、出産後に軽快する。 多形妊娠疹:妊娠後期に妊娠線部位に生じ、次第に体幹に拡大し、出産後に軽快する。 色素性痒疹:思春期女子の背部、項部、上胸部に好発し、治癒後は網目状の色素沈着残す。 |
症状 | ①強い掻痒+孤立性の丘疹・小結節(湿疹のように他の発疹型に移行しない) ②痒疹瘢痕:瘢痕中央が白く、周囲が色素沈着した状態。痒疹があったことを意味する。 |
検査 | 【身体検査】 視診:上記 |
治療 | 抗ヒスタミン薬内服+ステロイド外用 色素性痒疹はミノサイクリン、DDSが有効 |
皮膚掻痒症 Cutaneous pruritus
病態 | 種々の疾患を背景に生じる。 【分類】 汎発性:全身に掻痒があり、老人性乾皮症、肝硬変、慢性腎不全、血液透析、糖尿病、内臓悪性腫瘍、悪性リンパ腫、菌状息肉症などに合併して掻痒を生じることが多い 限局性:肛門、外陰部、背部などに限局して掻痒がある |
症状 | ①強い掻痒のみで、皮疹は認めない(掻破によって二次的に皮疹を生じる) ②ドライスキンを伴うことが多い |
検査 | 【身体検査】 視診:皮疹はない |
治療 | ①原疾患の精査とその治療 ②抗ヒスタミン薬内服 ③二次性皮疹にはステロイド外用 |
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