呼吸困難、SpO2低下、喘鳴

症候学

呼吸困難、息切れ、呼吸苦

呼吸困難の鑑別

呼吸不全 緊張性気胸
気道異物
アナフィラキシー
killer sore throat
気管支喘息大発作
COPD急性増悪
肺塞栓症
循環不全 ACS
急性心不全
A解離
心筋炎
肺炎・胸膜炎
その他 貧血
ギランバレー症候群
腹水貯留
過換気症候群 SpO2はほぼ100%

ABCD

A 頸部聴診:Stridor・吸気性喘鳴(頭部後屈顎先挙上)、痰づまり音(吸引)
B SpO2低下→SpO2低下の項目へ
胸部聴診:wheezes聴取→wheezesの鑑別へ
必ず緊張性気胸を否定してCへ行くこと!
C チアノーゼ、頸静脈怒張
D

【緊張性気胸】

リスク因子 COPD、喘息、肋骨骨折
症状 呼吸困難、チアノーゼ、ショック
所見 皮下気腫、頸静脈怒張、頸部気管偏位
その他 BVMで呼吸中にバッグが硬くなった、挿管して人工呼吸すると悪化

S

O ●突然発症(〜時〜分に発症)
AMIによる心不全、気胸、肺塞栓症、痰づまり、アナフィラキシー
●急性発症(数時間で徐々に発症)
うっ血性心不全、ARDS、間質性肺炎、喘息、COPD増悪
●亜急性発症(数日かけて発症)
肺炎、胸水貯留、胸膜炎、呼吸筋疲労、慢性血栓塞栓性肺高血圧症
P
Q
R
S 胸痛:AMIによる心不全、気胸、肺塞栓症、胸膜炎
T

O

血ガス SpO2低い場合は動脈血ガス採取を考慮
血液検査 BNP、トロポニン、Dダイマー
心電図
胸部X線
エコー 心エコー、肺エコー

SpO2低下

緊急性が高い疾患

喘息発作 wheezes聴取
COPD増悪 wheezes聴取
急性心不全 wheezes聴取、AMI、A解離、心タンポ、うっ血性
痰詰まり 吸引でSpO2改善
気胸 吸気時に増悪、呼吸音低下
肺塞栓症
ショック RUSHエコー

SpO2低下を見たらサルも聴診器で準備

酸素 ショックの場合、十分な酸素投与
ルート 薬剤、輸液投与のため確保
モニター 急変時は必須
ちょう 超音波 ショックの原因を鑑別
しん 心電図 心筋梗塞による心原性ショックを鑑別
胸部X線 心拡大、無気肺、気胸、胸水など

①SpO2低下を見たらまず行うこと

測定環境の問題 体動が激しい、血圧測定中、測定器の向きが反対
測定部位の問題 末梢循環不全、マニキュア・爪が汚い、色素注入中
酸素投与下 酸素配管外れ・酸素OFFになっている、鼻カニュレ使用時の口呼吸、酸素マスクのずれ
背景疾患 CO中毒、睡眠時無呼吸症候群による一時的低下、メトHb血症
上記に該当しない ②へ

②上気道か下気道の判断

詳細 治療
上気道の問題 気道閉塞 :Stridor、痰づまり音(吸引) 気道確保
死戦期呼吸で呼吸パターンが不安定な場合
※死戦期呼吸:生命の危機的状況の場合、下顎呼吸→あえぎ呼吸→不規則呼吸→無呼吸→死亡となる
用手換気
下気道の問題 上気道症状なし(喘鳴など) ③へ

気道確保:頭部後屈顎先挙上。舌根沈下がある場合はエアウェイを使用

【エアウェイの違い】

経鼻エアウェイ+安全ピン 経口エアウェイ
意識の有無 意識あっても使用可 意識ない場合に使用
注意点 頭蓋底骨折、抗凝固中の患者、脳出血の場合は経鼻的挿入禁忌 嘔吐や喉頭けいれんを誘発することがある
サイズ選択 鼻尖から耳たぶまでの長さ 下顎角から口角までの長さ
挿入方法 潤滑剤を塗布し、垂直に鼻腔に挿入する。完全に入り込まないように、鼻の外に出ている部分に安全ピンをつける 先端を口蓋に向けて挿入する。咽頭後壁に向ける時、180度回転させ、取っ手が唇にあたるまで挿入する

用手換気:バックバルブマスク or ジャクソンリース

【バックバルブマスクとジャクソンリースの違い】

バックバルブマスク ジャクソンリース
概要 バルブがあるため呼気が外部に排出されるため、ナルコーシスなどCO2を素早く排出させたい時に有効 PEEPをかけることが可能なため、気管支喘息やCOPD増悪などで有効。また、自発呼吸に合わせやすい
O2供給 不要 必要
PEEP かからない かかる
高濃度O2 リザーバーを接続すれば可能 可能

③酸素投与の方法

通常、SpO2 90%未満で酸素投与を開始し、SpO2 94〜98%を目標値とする(COPDや結核後遺症などの慢性肺疾患患者へのO2投与はナルコーシスに注意し、88〜92%を目標値とし必要最低限のO2投与を継続する)

純酸素100%を数時間吸入すると肺組織障害が起こると言われており、できるだけFiO2を60%未満で保つこと(リザーバー付きマスクで酸素6L以上はFiO2 60%以上となる)。

リザーバー付きマスクで酸素化が不十分な場合、高流量酸素療法を検討する。

低流量酸素療法 高流量酸素療法
特徴 供給する酸素と同時に周囲の大気も吸入する。呼吸状態で酸素濃度変わる。 吸気時に大気は吸入されず、患者の最大吸気流入量以上の酸素が供給される。
FiO2 患者の1回換気量の方が酸素供給より多いため、患者の換気状態でFiO2が変化する 設定している酸素濃度であり、患者の呼吸に左右されずFiO2を設定できる
デバイス 鼻カニュレ
フェイスマスク
リザーバー付きマウク
ベンチュリーマスク(加湿×)
ネーザルハイフロー
NPPV

【低流量酸素療法】

特徴 詳細
鼻カニュラ
(通常3L以下)
軽症〜中等症 酸素通常4L/分以下(FiO2 約4%上昇/酸素1L
1L/分→得られるFiO2 24%
2L/分→得られるFiO2 28%
3L/分→得られるFiO2 32%
4L/分→得られるFiO2 36%
酸素マスク
(通常4〜6L)
中等症 酸素5L/分以上
5L/分→得られるFiO2 40%
6L/分→得られるFiO2 50%
7L/分→得られるFiO2 60%
リザーバー付きマスク
(通常7L以上)
中等症〜重症 酸素6L以上(FiO2 投与量L÷10)
6L/分→得られるFiO2 60%(膨張しない)
7L/分→得られるFiO2 70%
8L/分→得られるFiO2 80%
9L/分→得られるFiO2 90%
10L/分→得られるFiO2 99%

【NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)】

原理 マスクにより上気道から陽圧を用いて換気する方法。PEEPによる肺胞リクルートメントで換気血流不均等の改善、肺うっ血の改善
条件 ・中等度〜高度呼吸困難で呼吸数25以上
・意識状態が悪くない
・排痰可能
・マスクが顔面にフィットして自発呼吸が可能
適応 ①COPD急性増悪、②心原性肺水腫など
禁忌 呼吸停止、マスクフィット不能、不穏・興奮・非協力的、気道確保困難、昏睡・意識障害、循環動体不安定、不安定狭心症、過剰な気道分泌、最近の腹部・食道手術後、多臓器不全、上部消化管出血、ドレナージされていない気胸・血胸

【HFNC(高流量鼻カニュラ、ネーザルハイフロー)】

原理 専用の鼻カニュラを使用し、30〜60L/分の酸素を経鼻的に吸入する方法。
適応 ①肺炎による低酸素、②COPD急性増悪、③心不全など
利点 加温加湿が可能で気道乾燥しない、会話や食事も可能

④S・OからSpO2低下の精査

【問診】問診ができなければ、まず血ガス・採血、心電図、心エコー、胸部X線を実施。

発症様式 ●突然発症(〜時〜分に発症)
AMIによる心不全、気胸、肺塞栓症、痰づまり、アナフィラキシー
●急性発症(数時間で徐々に発症)
うっ血性心不全、ARDS、間質性肺炎、喘息、COPD増悪
●亜急性発症(数日かけて発症)
肺炎、胸水貯留、胸膜炎、呼吸筋疲労、慢性血栓塞栓性肺高血圧症
胸痛の有無 AMIによる心不全、気胸、肺塞栓症、胸膜炎
痰づまり 高齢者、嚥下障害、意識障害、慢性呼吸不全、気道感染症がリスク因子
喀痰吸引によりSpO2低下は改善する
気道閉塞 舌根沈下、あえぎ呼吸、Stridorの聴取

【検査所見】

動脈血液ガス 呼吸不全がある場合(SpO2 90%未満)は動脈血液ガスを採取する。アシドーシスがあれば危険で、呼吸不全があれば用手換気を人工呼吸を検討。
AaDO2から呼吸不全の原因を推定する。
血液検査 炎症反応、Dダイマー、BNP、トロポニン・CK
胸部X線 新規の浸潤影、気胸、肺うっ血、胸水
心電図 ST低下
心エコー 心不全、AMI、肺塞栓症の評価
CT

喘鳴とは

喘鳴とは、呼吸をするときに、ヒューヒュー、ゼーゼーなどと音がすること。聴診器を使用しなくても聞こえる

stridor(吸気性喘鳴)の鑑別

声門浮腫、上気道異物、腫瘍、急性喉頭蓋炎、クループ症候群(6ヶ月〜3歳)

wheezes(呼気性喘鳴)の鑑別

低酸素血症がある場合はまず酸素投与し、ABC安定化を図る。

まずは心不全を否定し(既往にCKD・心不全・冠動脈疾患・AFなどがあり、Ⅲ音聴取や頸静脈怒張を確認できれば心不全の可能性あり)、SABA吸入開始。

Wheezesの原因は他にも気管内異物、肺塞栓症、ARDS、腫瘍などが考えられる。

  喘息発作 COPD急性増悪 急性心不全
特徴 夜間早朝に増悪 呼吸器感染を契機に発症 夜間発作性呼吸困難
バイタル 発熱
視診 呼気延長 口すぼめ呼吸、呼気延長 起座呼吸頸静脈怒張
触診 下腿浮腫、四肢冷感
聴診 Ⅲ音・Ⅳ音
問診 喀痰の増加、体重減少 胸痛、体重増加、夜間咳嗽
内服 ステロイド吸入 抗コリン薬吸入 利尿薬、β遮断薬など
心エコー IVC拡張、EF低下、胸水
血ガス pCO2↑
胸部X線 異常なし 肺野拡大 心拡大、急性肺水腫
心電図 ST上昇など
胸部CT 肺炎像 感染契機なら肺炎像あり
喫煙 喫煙で増悪 長い喫煙歴
血液 BNP上昇
輸液 生食40mL/h以下

【重症者のサイン】

①発汗、チアノーゼ
②起坐呼吸
③会話不能
④失神・前失神
⑤呼吸補助筋の使用
⑥呼吸数30回以上
⑦脈拍120回以上
⑧治療抵抗性 1時間の治療で軽度改善、または改善なし
⑨気胸や縦隔気腫 喘息やCOPDでは気胸起こしやすい
⑩Silent chest wheezesの減弱

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