呼吸器各論 拘束性肺疾患(間質性肺炎)

呼吸器科

間質性肺炎 IP:Interstitial pneumonia

病態 肺胞壁などの間質の炎症を主とする疾患で、進行すると広範な線維化により拘束性障害をきたす。
症状 労作時呼吸困難
他覚 聴診:fine crackles
検査 【呼吸機能検査】
%VC↓、FEV1↓
【画像検査】
高分解能CT(HRCT):すりガラス様陰影、蜂巣状陰影
【血液検査】
WBC↑、赤沈↑CRP↑LDH↑
【血液ガス】
DLco↓、AaDO2開大(線維化による拡散障害)
治療 ステロイドを使用することが多い

間質性肺炎の分類

びまん性肺疾患 肺全体が広範囲にわたって侵される疾患
間質性肺炎 感染症や腫瘍を除外したびまん性肺疾患
肺線維症 間質が線維化した病態
①特発性間質性肺炎 原因不明の間質性肺炎(多くは特発性肺線維症)
②続発性間質性肺炎 過敏性肺炎、放射性肺炎、じん肺、薬剤性肺炎、膠原病による肺炎

①特発性間質性肺炎 IIPs:Idiopathic Interstitial Pneumonias

その他の特発性間質性肺炎はNSIP>OP>DIP・RB>DADの順に多く、ステロイド反応性である(AIPのみステロイド反応性不良)。

病理パターン ステロイド反応性 BALF
特発性肺線維症(IPF) UIP:線維化不均一 不良 マクロファージ優位
非特異性間質性肺炎(NSIP) NSIP 良好(一部不良) リンパ球優位
剥離性間質性肺炎(DIP) DIP 良好 マクロファージ優位
呼吸細気管支炎に伴う
間質性肺疾患(RB-ILD)
RB 良好 マクロファージ優位
特発性器質化肺炎(COP) OP 良好 リンパ球優位
急性間質性肺炎(AIP) DAD 不良 好中球優位
特発性肺線維症(IPF:Idiopathic pulmonary fibrosis)
疫学 50歳以上の喫煙者に好発。IIPsで最多(約70%)。
病態 小葉間隔壁が繰り返し破壊されて線維化し、代償的に蜂巣肺となる。急性増悪・肺癌・感染症などを生じ、自覚症状出現から3〜5年で死亡することが多い(予後不良)。
急性増悪の誘因に手術、ステロイド減量、BALFがある。
症状 乾性咳嗽、徐々に増悪する労作時呼吸困難
検査 【身体検査】視診:ばち指(約30%)、聴診:背側肺底部のfine crackles
【血液検査】LDH↑、SP-A/D↑(サーファクタントプロテイン)、KL-6↑(病勢反映)
【血液ガス】PaO2↓・AaDO2開大(Ⅰ型呼吸不全)
【画像検査】CT:胸膜直下優位に蜂巣肺を伴う網状影、牽引性気管支拡張像
【呼吸検査】%VC80%以下、DLco↓肺コンプライアンス↓
【BAL】好中球↑
治療 ステロイド反応性不良(ただし急性増悪時はステロイドパルスを実施)
抗線維化薬:ピルフェニドン、ニンテダニブ(進行抑制)
肺移植

②過敏性肺炎

病態 真菌、細菌、薬剤、化学物質など抗原の反復吸入により細気管支〜肺胞で惹起されるびまん性肉芽腫性間質性肺炎であり、Ⅲ型・Ⅳ型アレルギーが関与する。
急性型は4〜6時間で発症、亜急性型は数週間〜数ヶ月で発症(最多)、慢性は数年の経過を辿る。
原因 夏型過敏性肺炎(約70%):トリコスポロンを抗原として吸入
②農夫肺(約10%):カビの生えた枯れ草や飼料を吸入
③換気装置肺炎(約5%):汚染された加湿器や空調から吸入
④鳥飼病(約5%):鳥類の羽毛(羽毛布団やダウンジャケットなど)や排泄物を吸入
症状 ①乾性咳嗽
②呼吸困難
③発熱
検査 【呼吸機能検査】
拘束性障害:%VC↓、PaO2↓DLCO↓
【画像検査】
胸部CT:両側びまん性に小葉中心性の粒状影やすりガラス影、呼気CTでair tappingが見られモザイクパターンを示すこともある
※air trapping:特に呼気時での肺野の過剰ガス貯留のこと
【血液検査】
ACE↑、急性炎症所見(WBC↑CRP↑赤沈↑)、LD↑、KL-6↑、ツ反陰性
ツ反に過敏な猿負け確定過敏性肺炎、サルコイドーシス、疹、核(粟粒結核、結核感染初期)、細胞性免疫低下(AIDSなど)
【生検】
びまん性肉芽腫
治療 抗原からの隔離(入院や転地)、改善が遅い場合はステロイド投与

②好酸球性肺炎 Eosinophilic pneumonia(PIE症候群)

好酸球の肺への浸潤を特徴とし、原因不明なものと原因ありのものがある。

原因不明(約75%) 急性・慢性好酸球性肺炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)など
原因あり(約25%) アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、薬剤性など

急にタバコ吸う兄さん、ずっと移動して荒れてるおばさん

急性好酸球性肺炎(AEP) 慢性好酸球性肺炎(CEP)
疫学 若年者に多い 中年女性に多い
病態 初めての喫煙開始直後に呼吸不全を呈する疾患。好酸球が間質に浸潤し肉芽腫を形成する(間質性肺炎)。CEPには移行しない(別の病態)。 半数はアレルギー疾患(喘息など)を持ち、数週〜数ヶ月の慢性経過で呼吸不全を呈する疾患。好酸球が間質に浸潤し肉芽腫を形成する(間質性肺炎)。
症状 咳嗽、呼吸困難、発熱 咳嗽、呼吸困難
検査 【画像検査】
胸部X線:びまん性のすりガラス陰影+浸潤影、Kerley’s B線、胸水貯留
CT:非区域性に広がる高吸収域(胸水貯留)
【BALF】好酸球↑
【血液検査】好酸球数はほぼ正常、IgE↑、IL-5↑
【画像検査】
胸部X線:外側辺縁優位の移動性浸潤影(自然軽快する場所とまた別の場所に出てくるため移動しているように見える)
CT:両側末梢性浸潤影
【BALF】好酸球↑
【血液検査】末梢血でも好酸球数↑、IgE↑
治療 ステロイド内服(1週間以内に軽快)
再発は少ない
ステロイド内服(半年以上かけて漸減)
再発は多い

②医原性肺炎(放射線肺炎)

病態 癌治療などで放射線照射した領域が、照射終了1〜6ヶ月後に間質性肺炎を起こす。
肺線維症やCOPDなどの基礎疾患があると生じやすい。
症状 肺炎症状
検査 【画像検査】X線:照射部位に一致した肺炎像
治療 経過観察、SpO2低下する場合はステロイド内服

②じん肺症 Pneumoconiosis

病態 じん肺とは、長期にわたる粉じん(珪酸>石綿>その他)の吸入により肺が不可逆的に線維化していく拘束性肺疾患。直径2μm以下の粉じんは肺胞まで到達し異物性胞隔炎が起こり間質性肺炎となる。粉じんの曝露が無くなっても病態は進行する。約15%は肺癌を合併する。
症状 自覚症状なく進行し、10年以上して発症する
(そのためじん肺法による定期健診を行い早期発見に努めている)
①労作時呼吸困難、湿性咳嗽、喘鳴など
検査 ①胸部X線:石灰化陰影(慢性炎症のため)
胸腔穿刺:細胞診、各種マーカー(CEA、ADA、ヒアルロン酸)などを測定
胸腔鏡検査:プラークなど確認
治療 対症療法

【珪肺と石綿肺の違い】

珪肺(遊離ケイ酸が原因) 石綿肺(アスベスト肺)
環境 トンネル工事、鉱山鋳物業窯業
石切場、ガラス工場
建設解体作業、自動車工場、断熱材製造業、ボイラー点検
好発部位 上肺野(粒子径小さく軽いため) 下肺野(粒子径大きく重いため)
X線 肺門リンパ節の卵殻状石灰化
(egg shell calcification)
壁側胸膜に石灰化を伴う胸膜プラーク
(石綿曝露歴があったことを示す)
病理 珪肺結節 石綿小体(太鼓バチ状のアスベスト小体)
続発症 肺結核イ肺=ッカク)
②肺癌、③関節リウマチ
胸膜悪性中皮腫
肺癌

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