褥瘡(床ずれ)の概要
定義と病態
| 定義 | 褥瘡とは、圧迫、摩擦とずれ、湿潤(絶えず湿った状態)といった外力が骨突起部に加わり皮膚の血流が途絶え、組織障害を起こした状態![]() |
| 好発部位 | 皮下組織が薄く骨突出部である肩甲骨、仙骨(最多)、腸骨、大転子部、踵などに好発する(寝たきり、低栄養、知覚の低下、皮膚の乾燥、摩擦などがリスク因子となる)![]() |
| 病態 | ①急性期:炎症が強い時期で、場合によっては水疱形成。圧迫しても紅斑あり。褥瘡の深さ判定が困難であり、後日一見深さが進行したように見えることがある。皮下膿瘍の合併に注意する。![]() |
②黒色期:黒い壊死組織が付着している時期。皮下膿瘍に注意を要し、膿瘍があるならばドレナージを早急に行う。![]() |
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③黄色期:黒い痂皮がとれ黄色の壊死組織などが表面に現れた時期。局所に強い感染を認めず、良性の肉芽も少ない。![]() |
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④赤色期:黄色の壊死組織などがとれ、赤い良性の肉芽が多くなる時期。![]() |
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⑤白色期:創縁と創底部の段差がなくなり、創周囲から上皮化が進む時期。この表皮は周囲の皮膚より白っぽいのが特徴。![]() |
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⑥治癒:瘢痕となって治癒した時期。![]() |
①褥瘡の診断
骨突出部における慢性潰瘍を見たら褥瘡を考え、他の慢性潰瘍の可能性を除外することで診断する
| 除外疾患 | 詳細 |
| MDRPU(医療関連機器圧迫損傷) | 広義の褥瘡ではあるが、必ずしも骨突出部と一致しない |
| 反応性充血 | 血流が一時的に遮られた後に、その阻害が解除されると、血流が通常よりも増加して組織が赤くなる生理的な現象(ガラス板圧診法で白く消退する場合は反応性充血、消退しない場合は褥瘡) |
| 末梢性動脈疾患 | |
| うっ滞性皮膚潰瘍 | |
| 糖尿病による感染壊死 | |
| 接触性皮膚炎 | 尿や便への曝露に起因するものを失禁関連皮膚炎という |
| 皮膚カンジダ症 | |
| 壊疽性膿皮症 | |
| 電気メスによる熱傷 | |
| 消毒薬による化学損傷 | 接触性皮膚炎の1つ |
②褥瘡の発生リスク評価
Bradenスケール(ブレーデンスケール)
6つの評価項目を1点(最も悪い)〜4点(最も良い)で採点し、合計点が少ないほどリスクが高いと判断する。急性期病院では14点以下、在宅や施設では17点以下を高リスクと判断することが多い。

OHスケール・マットレス選択
寝たきり高齢者・虚弱高齢者を対象として得られた褥瘡発生危険要因を点数化したもの。重症入院患者では使用する場合は過小評価されることがあるため注意。4つの評価項目を点数化し、1〜3点は軽度、4〜6点は中等度、7〜10点は高度レベルとする。

【OHスケールに準じたマットレスの選択】
| 軽度 | 褥瘡なし | 10cm以上、静止型マット、圧切替型エアマットレス |
| 褥瘡あり | 圧切替型エアマットレス | |
| 中等度 | 褥瘡なし | 圧切替型エアマットレス |
| 褥瘡あり | 超低圧保持、伸縮対応 | |
| 高度 | 褥瘡なし | 圧切替型エアマットレス、超低圧保持、伸縮対応 |
| 褥瘡あり | 超低圧保持、伸縮対応 |
③褥瘡の重症度(深達度)評価
NPUAP分類(皮膚の性状や組織欠損の有無で評価)
DTI:Deep Tissue Injury
| DTI | 外力のずれ力より皮膚表面よりも骨突出部などの深部の軟部組織損傷が先行して生じるもので、直上皮膚の皮膚変化(紫色/栗色/血疱)や皮下硬結が現れる |
| ステージⅠ | 圧迫しても蒼白にならない表皮の紅斑 |
| ステージⅡ | 真皮の部分層欠損(表皮剝離・水疱など) |
| ステージⅢ | 全層皮膚欠損(皮下脂肪は視認できるが、骨、腱、筋肉の露出なし) |
| ステージⅣ | 骨、腱、筋肉の露出を伴う全層皮膚欠損 |
| 判定不能 | 潰瘍の底面に黄色/灰色/茶色のものが付着して視認できない全層組織欠損 |

DESIGN-R分類(慢性期褥瘡の治癒過程の評価)
NPUAP分類より詳細な評価方法で、治療過程を評価することに適している。急性期褥瘡には対応していないため、褥瘡発生後1〜2週間経過した慢性期から評価を開始する。
| 評価期間 | 1〜2週間ごとに評価する |
| 評価方法 | 各項目で小文字は軽度、大文字は重度を表す。また、各項目の評価をスコア化し、点数が大きいほど重症であることを意味する。 |
| 点数 | DESIGN-R:D3-E6s9i0g3N3p0(深さは点数化せず、その他66点満点) |

褥瘡の治療

①創部の管理
| 急性期 | |
| 褥瘡の範囲や深さが明瞭でないため、創の保護・感染防御・疼痛管理が中心となる | |
| ●除圧:体位変換、高機能マットレスの使用 | |
| ●創面保護:デュオアクティブETやエアウォールなど創面が観察できるものを貼付 | |
| ●適度な湿潤環境:ワセリンやアズノール塗布 | |
| 慢性期 | |
| 浅い褥瘡(d2真皮までの褥瘡):創面保護と適度な湿潤環境を維持 | |
| 深い褥瘡:創傷治癒の妨げとなる4因子(TIME)を取り除き創傷治癒につなげる | |
| T | 壊死組織除去(黒色期・黄色期):①皮下膿瘍がないことの確認、②細菌巣の除去 |
| 鋭的デブリ(通常):セッシ、ハサミ、えいひを用いて出血する層まで壊死組織を切除する | |
| 鋭的デブリ(マンゴーカット法):15番メス壊死組織に割を入れた後、メスでこそぎ取る | |
| 化学的デブリ:ゲーベンなどを塗布し、毎日のガーゼ交換で壊死組織を絡めとる | |
| I | 感染原因になるものを除去(局所洗浄) |
| ※洗浄は水道水 or 生食(創表面に付着した細菌数の数を減らす) | |
| 皮下膿瘍:デブリして皮下膿瘍あれば、開放し洗浄する | |
| 皮下ポケット:ポケットの被蓋を切開し、洗浄を容易にすることで抗菌薬投与期間を短縮する | |
| M | 滲出液のアンバランスを改善(適切な創傷被覆材、陰圧閉鎖療法) |
| ※DESIGN-R分類に基づいた外用薬・ドレッシング材を選択 | |
DESIGN-Rで大文字が複数ある場合、N>G>Sの順に対応し、EとIは都度対応する![]() |
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| E | 創辺縁の治癒延長やポケットを外科的デブリドマン、陰圧閉鎖療法 |
②全身の管理
| ①基礎疾患の管理 | 脳血管疾患などで可動性や活動性の低下すると持続的圧迫の原因となる |
| ②併存疾患の管理 | 糖尿病や閉塞性血管病変で褥瘡の発症や治癒遷延化リスクとなる |
| ③栄養管理 | 低栄養なら高カロリー、高タンパク、高ビタミン食、NST介入 |
| 血清Alb3.0g/dL・血中総リンパ球数1800/mm3・Hb11g/dL以上が目標 | |
褥瘡の深さによる目標栄養摂取量(NST依頼)![]() |
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| ④廃用症候群を予防 | ポジショニング枕を用い、基本的に2時間ごとに体位変換 |
| ⑤除圧 | 体圧分散マットレス |
【体圧分散マットレス(代表的な4素材)】
| 体圧分散性 | 寝返り | ムレ感 | 注意点 | |
| 低反発ウレタン | ◎ | △ | × | 寝返りしづらく、蒸れやすい |
| 高反発ウレタン | ○ | ○ | ○ | 安価なものは体圧分散性少ない |
| エアマット | ○ | ◎ | △ | シーツにシワができやすい |
| ゲル・ジェル | ○ | ○ | △ | 蒸れやすい、冷えやすい |
(特殊)踵の褥瘡の治療
| デブリしない患者 | 下記患者はデブリしても創部縮小や肉芽形成が望めない。また、皮下膿瘍の合併が少なく、ドライネクローシス(乾燥した壊死組織)となるため感染も起こりにくい。全身状態に影響を与えないことが多いため以下の患者の踵の褥瘡では積極的デブリを行わない |
| ①寝たきりの低栄養患者 | |
| ②患部に十分な血行なさそうな患者 | |
| ずれによる水疱形成時 | 水疱内の貯留液をドレナージして被膜を密着させ、2〜3週間保護すると治癒することがあるため、被膜は除去せず温存して湿潤療法とする |
| ●ドレッシング剤使用 | 体位変換時のずれ応力を軽減させる |
| ●軟膏療法 | 感染予防の軟膏療法を主とする |
| ●装具 | ヒールウェッジシューズで歩行時の踵への圧を軽減させる |
| ●ベッド | 下腿後面へクッションを入れて踵への圧を軽減させる |
褥瘡の感染合併の有無の評価
炎症(局所疼痛・熱感・発赤・腫脹)+膿性滲出液や悪臭で創部感染を疑う
NERDSとSTONES
| ①NERDS | 創表面の感染徴候 |
| N | 治癒しない創 |
| E | 滲出液が多い創 |
| R | 創底が赤く出血しやすい創(過剰肉芽を伴う) |
| D | 創内に壊死組織などが存在する |
| S | 創から悪臭がする |
| ②STONES | 創深部の感染徴候 |
| ※創縁を超えて発赤・硬結・握雪音がある場合は深部への感染波及を考慮 | |
| ※組織欠損が大きい褥瘡でゾンデが骨に触れると骨髄炎の合併を考慮 | |
| S | 創面積の拡大 |
| T | 創面積の熱感 |
| O | プローブを挿入すると骨に達する or 骨の露出 |
| N | 創周囲皮膚の新たな損傷 |
| E | 滲出液、発赤、浮腫が見られる |
| S | 悪臭が漂う |
褥瘡感染の治療
創部感染症には洗浄・排膿・デブリ・全身性抗菌薬
原則、感染創にはドレッシング剤は使用しない(閉鎖環境にしない)
創部培養は常在菌検出が多いため参考程度にし、褥瘡や全身状態に応じて必ずしも耐性菌カバーを行わなくても良い
膿瘍より検出された菌は原因菌である可能性が高く、起因菌として抗菌薬でカバーする












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