輸血
献血時の検査項目
一般的検査 | ・血液型検査(ABO型、Rh型、不規則抗体) ・血算検査、生化学検査 |
抗原抗体検査 | ・梅毒抗体 ・HBs抗原、抗HBs抗体、抗HBc抗体、抗HCV抗体 ・抗HTLV-1抗体、抗HIV抗体 ・ヒトパルボウイルスB19抗原 |
核酸増幅検査(NAT) | ・HIV、HBV、HCV、HEV |
輸血の流れ
規則抗体:抗A/B抗体、不規則抗体:抗A/B抗体以外の抗体
①同意書(必須) | 次項目の輸血の副作用に記載している内容 |
②ABO血液型検査 | 患者の血液型を調べる試験 オモテ試験:患者の血球と抗A/B抗体を反応させる。 ウラ試験:患者の血清抗体とA/B血球を反応させる。 |
③Rh血液型検査 | 患者がD抗原(Rh+)を持つか調べる試験 患者の血球と抗D抗体を反応させ、凝集すればRh+である。 |
④クロスマッチ (交差適合試験) |
輸血製剤を患者に投与して問題ないか調べる試験 主試験:患者の血清と輸血製剤の血球を反応させ、凝集しなければ輸血可能。もし患者が不規則抗体を保有していれば輸血製剤は凝固する。 ※ABO血液型検査とは別の時点で採取された検体を使用!(検体取り違えによるABO不適合輸血を防止するため)検体は原則輸血前3日以内のもの! |
※緊急時 | 院内で血液型ダブルチェック(確定)が済むまで、 赤血球製剤はO型血球、 濃厚血小板と新鮮凍結血漿はAB型血清を使用する。 クロスマッチは省略可能、Rh不一致は輸血不可 |
輸血拒否時の対応 (宗教的輸血拒否に関するガイドラインより) |
・患者が18歳以上で本人が輸血を拒否する場合は輸血できない。この場合は免責証明書を作成するか、転院を勧告する。 ・患者が15歳以上、18歳未満の場合は親権者、本人いずれかが輸血に同意すれば輸血可能。 ・患者が15歳未満、または医療の判断能力がない場合は親権者が輸血を拒否しても輸血を行うことは可能。 |
輸血の副作用
溶血性副作用 | 即時型 | ABO式不適合輸血:Hb尿、ショック、DICを生じる |
遅発型 | ABO式血液型以外の血液型に対する赤血球抗体(Rh式不適合など) | |
非溶血性副作用 | 即時型 | アナフィラキシーショック |
TRALI(輸血関連急性肺障害):輸血中/後6時間以内に起こる非心原性肺水腫(ADRS)。供血者の抗白血球抗体と受血者の白血球が反応して補体が活性化され、肺の毛細血管障害が起こり肺水腫となる。 | ||
TACO(輸血関連循環過負荷):過量の輸血による心不全。治療は利尿薬投与。 | ||
遅発型 | GVHD:製剤中のリンパ球が、宿主の免疫に異物として駆逐されずに増殖し、患者の体組織を攻撃・障害する。 ※輸血製剤への放射線照射によってほぼ完全に予防できる! |
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電解質異常 | 高K血症 | 赤血球製剤の保存期間が長くなるほど上清中のK濃度が上昇する。そのため、短時間に大量輸血すると高K血症になる可能性がある。 |
低Ca血症 | 抗凝固剤のクエン酸がCaとキレートする。 | |
感染性副作用 | 即時型 | 細菌混入 |
遅発型 | 肝炎(B型・C型・E型肝炎ウイルス)、HIV感染、HTLV-1感染 ※ウィンドウ期があるため副作用を0%にできない |
ABO式不適合輸血
① | ただちに輸血を中止。 |
② | 患者の血液型、交差試験を再度確認する。 |
③ | 溶血に対してはハプトグロビンを投与。 |
④ | DICに対して、メチル酸ガベキサートなどを投与する。 |
⑤ | 腎不全に対して透析。 |
⑥ | その他、血漿交換などを行うこともある。 |
血液製剤
特定生物由来製品には輸血用血液製剤や血液凝固因子,ヒト血清アルブミン,ヒト免疫グロブリン,ヒト胎盤抽出物などがあり,感染の危険を常に念頭に置く必要がある.感染症の発症までに長い時間経過がある場合もあるので,長期間(20年間)の記録保管が求められている.
血液製剤の種類
全血製剤 | (ほぼ使うことがない) |
RBC | 血漿の95%を除いたもの。洗浄RBC、凍結RBC、合成血がある。 |
濃厚血小板 | |
FFP | 採血後6時間以内に血漿成分を分離採取し、-20度以下に凍結保存したもの |
血漿分画製剤 | アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、凝固因子製剤 |
全血製剤
一般名 | 先発名 | 特徴 |
ヒト全血液 | 人全血液LR「日赤」 照射人全血液LR「日赤」 |
全血輸血は新生児の交換輸血など特殊な場合を除いて適応がない。採血後4℃で保存し、4〜21日の間で使用しなければならない(血液を分離せずに保存すると保存期間が極端に短くなるため)。 |
※LRは放射線照射により白血球除去を行なっているという意味。
血液成分製剤
赤血球製剤(RBC) | 新鮮凍結血漿(FFP) | 血小板製剤(PC) | |
保存方法 | 2~6℃ | -20℃以下 | 20~24℃振盪 |
有効期限 | 採血後21日間 | 採血後1年間 | 採血後4日間 |
包装 | 血液400mL由来 (280mL:2単位) |
血液400mL由来 (240mL:2単位) |
10単位 (約200mL:10単位) |
期待される効果 (体重50㎏) |
MAP2単位投与するとHb値は約1g/dL上昇※ | 2本輸血で凝固因子活性は 20~30%上昇 |
血小板10単位投与で約3〜4万/μL上昇 |
トリガー値 | Hb値が7〜8g/dL以下に低下 | フィブリノゲン値が150mg/dL以下 | PLT数が1〜2万/μL未満に低下 |
適応 | 出血、貧血の急速な補正に使用。白血球や血漿成分を除去し放射線照射を行って使用。 | アルブミン(血管内浸透圧維持)+グロブリン(免疫能改善)+凝固因子が不足する出血(希釈性の凝固障害)に使用。 | 血小板が5万/μL以下で止血困難や大量出血の場合に使用 |
※輸血後の予測上昇Hb値(g/dL)=輸血前Hb値(g/dL)+投与Hb(g)/循環血液量(dL)
RBC2単位 投与Hb(g/dL)=53g(RCC-LR-2)/ 10×体重(kg)/13
血漿分画製剤
【免疫グロブリン製剤】
【アルブミン製剤】
慢性的な低タンパク血症に対して一時的な改善を図り使用する。また、循環血漿量増加のため使用する。詳細は輸液製剤を参照。
【凝固因子製剤】
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