法律まとめ
医師法 | カルテ、研修医、異状死 |
医療法 | 医療計画(都道府県が作成)、医療安全、IC、入院診療計画書 <施設> 病院、診療所、助産所、特定機能病院、地域医療支援病院、臨床研究中核病院、医療安全支援センター |
医薬品医療機器等法 | <施設> 薬局 |
健康保険法 | <施設> 保険医療機関、保険薬局 |
地域保健法 | <施設> 保健所、市町村保健センター |
母子保健法 | 妊娠健診、母子手帳、未熟児養育医療、乳幼児健診、低体重児の届出 <施設> 母子保健施設(母子健康包括支援センター) |
母体保護法 | 妊娠中絶、不妊手術、受胎調整 |
児童福祉法 | 小児慢性特定疾病、要保護児童の保護、児童の一時保護 <施設> 児童相談所、児童福祉施設(障害児入所施設,児童発達支援センターなど) |
老人福祉法 | <施設> 老人福祉施設(特別養護老人ホームなど) |
介護保険法 | <施設> 介護保険施設(介護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護医療院)、地域包括支援センター |
精神保健福祉法 | 精神障害者保健福祉手帳、精神保健指定医、措置入院 <施設> 精神保健福祉センター |
感染症法 | 感染症の届出、入院勧告、就業制限、対物措置 |
予防接種法 | ワクチン定期予防接種、副反応の救済処置 |
食品衛生法 | 食中毒届出、保健機能食品 |
障害者総合支援法 | 自立支援医療 <施設> 地域活動支援センター |
男女雇用機会均等法 | 妊婦健診の時間の確保、時差出勤、母性健康管理指導事項連絡カード |
労働基準法 | 年齢制限、産前産後休業、妊婦の危険有害業務の制限 |
労働安全衛生法 | 産業医、健康診断、THP |
麻薬取締法 | 麻薬の取り扱いや破棄、麻薬中毒者の措置入院 |
健康増進法 | 受動喫煙防止、がん検診、健診、健康日本21、国民健康・栄養調査 |
生活保護法 | 8つの扶助 |
高齢者医療確保法 | 75歳以上の保険、特定健康診査 |
予防医学・健康増進
健康とは?
WHOによる健康の定義は、「健康とは身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病または虚弱の存在しないことではない」である。
【健康に関する声明】
プライマリ・ヘルスケア | アルマ・アタ宣言 | 保健医療活動の促進!ア→最初(プライマリ) |
ヘルスプロモーション | オタワ憲章 | 一次予防促進!(健康増進法っぽい活動促進) |
バンコク憲章 | オバアさんはヘルス(健康)活動が好き | |
アデレード宣言 | ー |
予防医学(一次・二次・三次予防)
疾患は20世紀中頃から、感染症→非感染性疾患(Non Communicable Disease :NCD)に変わった。NCDを予防することによってPremature death(若年死亡)を減少させたい!
一次予防 | 病気になる前に予防 →罹患率の減少 |
例:予防接種、ポピュレーションアプローチ (集団全体のリスクを下げる方法、例:食塩制限) |
二次予防 | 病気の早期発見 →死亡率の減少 |
例:健診・検診、ハイリスクアプローチ (疾患を発症しやすい集団のリスクを下げる方法、例:高血圧治療) |
三次予防 | 病気になった後の改善 →目指せ社会復帰 |
例:リハビリ、デイケア、居住環境の改善 |
【健診と検診の違い】
健診(健康診断) | 健康か否か、危険因子があるか確かめること |
検診(検査して調べる) | 特定の病気にかかっているか調べること |
行動変容ステージモデル
詳細 | 指導方法 | |
無関心期 | 行動を変えようと思っていない | 情報の提供、問題点の指摘 |
関心期 | 6ヶ月以内に行動を変えようと思っている | 動機付け |
準備期 | 1ヶ月以内に行動を変える用意ができている | 目標設定、具体的な計画提案 |
実行期 | 実際に行動して6ヶ月以内 | 意欲強化と報酬付け、環境調整 |
維持期 | 行動が6ヶ月以上持続している | 賞賛、障害のための問題解決 |
健康増進法
健康日本21 (一次予防) | 第一目標は「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」、そのほかに②生活習慣病(NCD)の発症予防と重症化予防の徹底、③社会生活を営むために必要な機能の維持および向上、④健康を支え、守るための社会環境の整備、⑤生活習慣および社会環境の改善の5項目が挙げられている。 目標摂取量が設定されているのは塩分8g・野菜350g・果物の3つ。 一次予防推進の基礎資料として国民健康・栄養調査などが使用される! |
国民健康・栄養調査 | 毎年11月に全国から無作為に調査対象地区が抽出され、保健所が調査(データ収集)を行う。 |
受動喫煙の防止 | 原則屋内禁煙、学校などの特定の敷地内禁煙 ※未成年者の喫煙を禁止している法律は未成年者喫煙禁止法 |
健康診断 | ①就学時・定期健康診断(学校保健安全法) ②一般健康診断(労働安全衛生法) |
健康診査 | ①妊婦健康診査(母子保健法) ②乳幼児健康診査(1歳半・3歳・乳児)(母子保健法) ③特定健康診査・後期高齢者健康診査(高齢者医療確保法) |
がん検診 (健康増進法) |
対策型がん検診:集団全体の死亡率減少が目的。市区町村が行う住民検診が該当。具体的には20歳以上は子宮頸、40歳以上は肺、乳、大腸、50歳以上は胃。 任意型がん検診:個人の死亡リスク低減が目的。人間ドックが該当。個人の判断で行うため全額自己負担。 |
その他の検診 (健康増進法) |
①歯周疾患検診(40〜70歳) ②骨粗鬆症検診(40〜70歳女性) ③肝炎ウイルス検診(40歳) 市町村は検診の結果を通知し、健康手帳を交付(40歳以上) |
【健診と検診の違い】
健診(健康診断) | 健康か否か、危険因子があるか確かめること |
検診(検査して調べる) | 特定の病気にかかっているか調べること(対策型検診、任意型検診) |
健康指標
地域別比較のための健康状態を示す健康指標 | ①年齢調整死亡率 ②乳児死亡率 ③0歳平均余命 ④PMI |
国際間の健康水準の基準となる総合健康指標 | ①粗死亡率 ②1歳平均余命 ③PMI 65(65歳以上死亡割合) |
疫学(医療統計学)
公衆衛生の医療統計学を参照。
保健統計・死因統計・疾病統計
人口統計
人口動態統計 | 国勢調査(人口静態統計) | |
対象 | 全数 | 全数(個人+世帯) |
調査期間 | 毎年 | 5年毎 |
調査方法 | 保健所が調査(厚生労働省) | 自記式(総務省) |
調査内容 | ①出生数 ②死亡数、③死産数 ④婚姻、⑤離婚数の5つ |
・常在人口 ・個人調査 ・世帯調査 |
【年齢別人口】
日本は現在超高齢社会(21%以上)であり、4人に1人が65歳以上である。
年少人口(15歳未満) | 約13% | |
生産年齢人口 | 約60% | |
老年人口(65歳以上) | 約26% | 前期高齢者13%、後期高齢者13% |
人口動態統計
【①出生】
定義 | 計算式 (生殖年齢15~49歳として計算) | 2021年 | |
出生率 | 全人口に対する出生数 | 1年間の出生数/その年の人口 ※出生数81.2万人(2021年) |
6.6 |
合計特殊出生率 | 1人の女性が産む平均児数 | 15〜49歳の(母親の年齢別出生数/同年齢の女子人口)の合計 ※2未満は人口減少! | 1.3 |
総再生産率 | 1人の女性が産む平均女児数 | 15〜49歳の(母親の年齢別女児出生数/同年齢の女子人口)の合計 | 0.64 |
純再生産率 | 総再生産率×母親になるまでの死亡率を考慮 | 総再生産率 × 15〜49歳の(女の年齢別定常人口/10万)の合計 ※1未満は人口減少! | 0.63 |
【②死亡】
定義 | 計算式 | 率 | |
粗死亡率 | 全人口に対する死亡数 | 1年間の死亡数/その年の人口 | 12 |
年齢調整死亡率 | 標準化した死亡率 | 直接法を参照 | 男4.6>女2.4 |
PMI 50 | 死亡者数中の50歳以上の割合 | 50歳以上の死亡者数/総死亡数 | 94% |
【③死産数】
母子保健を参照
【④婚姻・⑤離婚】
婚姻率(=1年間の婚姻件数/日本人人口) | 4.1↓(人口千対) |
離婚率(=1年間の離婚件数/日本人人口) | 1.5↓(人口千対) |
生命表と平均余命
生命表 | 同時に生まれた架空の10万人が現在の年齢別死亡率通りで死ぬと仮定した場合に、観察集団の生存者が減少していく様子を図で示したも(完全生命表 or 簡易生命表)。 年齢別死亡率(=年齢別死者数/年齢別人口)から計算されるもので、人口の年齢構成の影響は受けない。 |
平均余命 平均寿命 |
各人の当該年齢の時に、あと何年生きることができるか示すものである。 生存曲線(カプラン・マイヤー曲線)は縦軸に生存率、横軸に年齢 or 経過時間をとったもの。中央値は生存率が50%となった時間を指す。 特に、0歳児の平均余命を平均寿命といい、男82歳・女88歳である。 ● x歳の平均余命 = x歳以上の定常人口/x歳の生存数 定常人口=x歳以降の生存数曲線下の面積のこと |
死因統計
死亡診断書・死体検案書を基に死因統計が作成される。
【死因順(2021年)】悪進路の肺
1位 | 悪性新生物(約30%) |
2位 | 心疾患(約15%):虚血性心疾患、慢性リウマチ性心疾患、心不全 |
3位 | 老衰 |
4位 | 脳血管疾患(約7%):脳卒中など |
5位 | 肺炎(約5%)(誤嚥性肺炎は6位) |
7位 | 不慮の事故:0歳は窒息、5〜64歳は交通事故、80歳以上は転倒・転落 |
【年齢階級別にみた死因順(2021年)】
0〜4歳 | 1位 | 先天性疾患 |
5〜9歳 | 1位 | 悪性新生物 |
10〜39歳 | 1位 | 自殺(年別に見ると、2000~2010年にピークがあるのが特徴) |
40〜89歳 | 1位 | 悪性新生物 |
90歳以上 | 1位 | 老衰 |
【悪性新生物の統計】
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
死亡数 | 男性 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓↑ | 肝臓 |
(2021年) | 女性 | 大腸 | 肺 | 膵臓↑ | 乳房↑ | 胃 |
合計 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓↑ | 肝臓 | |
年齢調整死亡率 | 男性 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓↑ | 肝臓 |
(2019年) | 女性 | 乳房↑ | 大腸 | 肺 | 膵臓↑ | 胃 |
合計 | ||||||
罹患率 | 男 | 前立腺 | 大腸 | 胃 | 肺 | 肝臓 |
(2019年) | 女 | 乳房 | 大腸 | 肺 | 胃 | 子宮 |
合計 | 大腸 | 肺 | 胃 | 乳房 | 前立腺 |
【悪性腫瘍のリスクファクター】
危険因子 | |
胃癌 | 喫煙、食塩、Hピロリ菌感染 |
食道癌 | 喫煙、飲酒、肥満、熱い飲食物 |
大腸癌 | 飲酒、運動不足、肥満、赤肉・加工肉 |
肝癌 | 喫煙、飲酒、HBV、HCV |
肺癌 | 喫煙、石綿などの職業的爆露 |
膵癌 | 喫煙、肥満、高身長 |
口腔癌 | 喫煙、飲酒、熱い飲食物、HPV |
咽頭癌 | 喫煙、飲酒、熱い飲食物、EBV(上咽頭)、HPV(中咽頭) |
喉頭癌 | 喫煙、飲酒 |
乳癌 | 飲酒、肥満、授乳経験なし、外因性ホルモン剤使用、高身長 |
子宮頸癌 | 喫煙、HPV |
子宮体癌 | 肥満 |
腎癌 | 喫煙、肥満 |
膀胱癌 | 喫煙、ベンジジンなどの職業的曝露 |
皮膚癌 | 飲料水中のヒ素 |
白血病 | 喫煙、HTLV-1感染 |
【飲酒と喫煙と癌の関係】
飲酒 | 口腔 | 咽頭 | 喉頭 | 食道 | 肝 | 大腸 | 乳 | |||||||
喫煙 | 口腔 | 咽頭 | 喉頭 | 食道 | 肝 | 大腸 | 肺 | 胃 | 膵 | 腎 | 膀胱 | 子宮頸部 | 白血病 |
疾病統計
国民生活基礎調査 | 患者調査 | |
対象 | 無作為に抽出された世帯に対して調査員が面接(国勢調査地区内) | 無作為に抽出された医療機関が主傷病名などを記入 |
実施者 | 厚生労働省 | 厚生労働省 |
調査時期 | 3年毎(簡易調査は毎年) | 3年毎 |
調査目的 | 国民の生活状態の把握 | 国民の傷病状態の把握 |
調査内容 | ①健康票:有訴者率(約30%)、通院者率(約40%)、健康状態、健診受診 ②世帯票:家族構成など ③所得票、貯蓄票 ④介護票:介護が必要となった原因 |
①推計患者数 ②受療率(入院受療率・外来受療率) ③平均在院日数(最も長いのは統合失調症) |
※受療行動調査:受療の状況や受けた医療に対する満足度などを調査する。上記2つの調査とあわせて3年毎に実施される。
【患者調査の受療率(入院受療率・外来受療率)】
入院受療率 | 外来受療率 | |
1位 | 精神系の疾患(約6割が統合失調症) | 消化器系の疾患(約8割が歯科疾患) |
2位 | 循環器系の疾患(約6割が脳血管疾患) | 循環器系の疾患(約7割が高血圧性疾患) |
3位 | 腫瘍 | 筋骨格系および結合組織の疾患 |
社会保障制度・医療経済
憲法第25条に「すべての国民は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する」と生存権を規定している。この規定を受けて、自助のみでは対応できないリスクに対して、共助や公助を行うために社会保障制度の4つの柱(①社会保険、②保健・公衆衛生、③社会福祉、④公的扶助)がつくられた。
【社会保障給付費の現状】
財源 | 総額約140兆円 |
給付費 | 年金40%、医療費35%(年間43兆円:GDPの約8%)、福祉その他25% |
医療費の財源割合 社会保険料50%:公費40%:自己負担10% |
自助・共助・公助
自助 | 互助 | 共助 | 公助 | |
費用負担 | 自己負担 | 自発的なもので相互に支える | リスクを共有する仲間が費用を負担し相互に支える | 税による公の負担 |
具体例 | 健康管理 | ボランティア | 社会保険制度 | 生活保護制度 |
社会保険
偶発的な事故による経済的な損失を回避するために、予め保険料を拠出し、そこから保険者が被保険者に保険給付する仕組みである。保険料は概ね所得に比例するが、もらえる給付は差がないのが特徴である。被保険者は強制加入であり、保険料が不足しないよう国庫からの補助もある。
【給料の手取り金】
①給料 | |
ー②社会保険料 | 健康保険+年金+雇用保険+介護保険 |
ー③税金 | 所得税+住民税 |
④手取り金 | ①ー②ー③=④ |
①医療保険・公費医療
【医療保険】
保険名 | 保険者・被保険者 | 保険料 | |
被用者保険 (職域保険) |
①健康保険 | 保:企業 被:サラリーマン+家族 |
保険者と被保険者で折半 |
②共済組合保険 | 保:共済組合 被:公務員・学校教職員 |
同上 | |
③船員保険 | 保:全国健康保険協会 被:船員+家族 |
同上 | |
国民健康保険 (地域保険) |
ー | 保:組合、市町村 被:自営業、退職/無職者 |
保険者と被保険者で折半 |
後期高齢者医療 (地域保険) |
ー | 全国市町村で組織した医療広域連合 | 保険者+被保険者+国庫 |
【自己負担割合】
未就学児 | 2割負担 |
小学生〜69歳 | 3割負担 |
70〜74歳 | 2割負担(70歳以上の現役並み所得者(課税所得145万円以上)は3割負担) ※課税所得:収入から公的年金等控除・基礎控除・給与所得控除等の税法上の控除金額を差し引いた額 |
75歳以上 | 1割負担(年金から天引きされる) |
【医療給付対象】
医療費 | 帝王切開、入院中の食事、禁煙治療、高額療養費 |
医療費対象外 | 正常な妊娠・分娩、予防接種、健康診断、差額ベッド代、歯科材料差額分 |
所得保障 | 傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、埋葬料、移送費 |
【公費医療の対象】
①医療保険を適用せず全額公費負担 | 生活保護、新感染症の入院の医療、被爆者 |
②医療保険+患者自己負担分が公費負担 | その他 |
法律 | 公費負担医療給付の対象(法別番号) |
感染症法 | 1・2類感染症(29)、結核(10、11) |
精神保健福祉法 | 措置入院(20) |
麻薬取締法 | 措置入院(20) |
予防接種法 | 予防接種の副反応によって生じた疾病の医療 |
母子保健法 | 養育医療(23):入院を必要とする1歳未満の未熟児、乳幼児健診 |
障害者総合支援法 | 自立支援医療(育成医療など)(15、16、21、24) |
児童福祉法 | 小児慢性特定疾病(53):722疾患・18歳未満を対象・療育医療 |
生活保護法 | 医療扶助(12) |
原爆被害者 | 認定疾病医療(18)、一般疾病医療(19) |
難病法 | 特定医療費:パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、SLEなど330の指定難病 |
②介護保険
高齢者保健を参照。
③年金保険
保険者は市町村、被保険者は20歳以上の国民。国民年金(基礎年金)に加入、さらにサラリーマンなどの被用者は厚生年金にも加入することが義務付けられている。
老齢年金 | 65歳以上の者に支給 |
障害年金 | 障害等級に該当する場合に支給 |
遺族年金 | 被保険者が死亡した子を持つ配偶者・子に支給 |
④雇用保険
保険者は政府、被保険者は被用者で、失業すると保険料を受け取れる。
⑤労災保険(労働者災害補償保険)
労働者を1人でも雇用する事業者に対し、加入が義務付けられている。業務災害だけでなく通勤災害も含まれ、労災(負傷・疾病・死亡)の認定は労働基準監督署長が行う。
保険者 | 保険料 | 被保険者 |
政府 | 全額事業者負担 | 労働者 |
ちなみに、2021年は、新型コロナウイルス罹患>災害性腰痛>熱中症の順に労災が多かった。労災の死亡者数は年間約800人前後。
社会福祉(福祉六法)
社会福祉とは、さまざまなハンディキャップを負った人々(障害者、生活困窮者など)がそれを克服して社会生活を営めるように支援する制度であり、福祉事務所が第一線機関として機能している(ただし、精神保健福祉については扱わない)。
【福祉六法】
①児童福祉法 | 18歳未満のすべての児童が対象 ①小児慢性特定疾病医療費の支給:結核、難病など ②児童相談所の設置 ③児童福祉施設、保育所への入所、児童の一時保護 |
②身体障害者福祉法 | 身体障害者手帳の交付、障害者支援施設への入所 |
③知的障害者福祉法 | 療育手帳の交付、障害者支援施設への入所 |
④老人福祉法 | ①老人居宅生活支援事業の提供:居宅介護事業、デイサービスなど ②老人福祉施設への入所:特別養護老人ホームなど ③老人福祉計画の策定(市町村) |
⑤母子・父子・寡婦福祉法 | 母子・父子・寡婦家庭への支援(資金の貸付など)、母子・父子福祉施設の設置 |
⑥生活保護法 | 公的扶助では、現物給付の医療扶助、介護扶助、現金給付の生活扶助、教育扶助、住宅扶助、出産扶助、失業扶助、生業扶助、葬祭扶助の8つが行われている。 医療扶助が50%を占める。 |
貧困
社会における貧富の差の指標としてジニ係数(0〜1)があり、近年上昇傾向。
絶対的貧困率 | 1日1.90ドル未満で生活している国民の割合(世界銀行の定義) |
相対的貧困率 | 所得の中央値の半分(=貧困線)を下回る国民の割合(OECDの定義) 国民生活基礎調査をから算出。日本の貧困線は127万。 日本は相対的貧困率約15%で、OECD加盟国の平均よりも高い。 |
医療法
医療法の内容
条 | 内容 | 詳細 |
1 | IC | 医療を提供するにあたり適切な説明を行う努力義務がある |
1 | 病院・診療所の定義 | 病院:ベッド数が20以上、診療所:ベッド数が19以下 |
4 | 特別な医療施設 | 特定機能病院、地域医療支援病院 |
6 | 入院診療計画書 | 入院した日から起算して7日以内に入院診療計画書を作成 |
6 | 医療事故の届出 | 医療事故調査・支援センターに報告(医療事故調査制度) |
6 | 医療安全支援センター | 院外 |
7 | 診療所開設の届出 | 開設後10日以内に保健所経由で知事へ届出 |
7 | 病院開設の届出 | 知事の許可が必要 |
30 | 医療計画 | 救急医療、災害医療、へき地医療など |
特別な医療施設
病院の開設者は70%弱が医療法人で、民間企業が多くを占めている。
承認者 | 要旨 | |
特定機能病院 | 厚労大臣 | 高度医療を行う病院で、400床以上の病床数があり、多くは大学病院やがんセンターが担う。紹介外来制。 |
臨床研究中核病院 | 厚労大臣 | 医薬品や医療機器の治験や臨床試験を行う病院。一部の大学病院と国立がん研究センターが担う。 |
地域医療支援病院 | 知事 | 200床以上の病床数があり、かかりつけ医からの紹介患者対応、救急医療、医療機器の共同利用を行う病院 |
へき地医療支援病院 | 知事 | へき地巡回診療車による巡回診療や代診医派遣を行う病院 ※無医地区:半径4km以内に50人以上が居住しているが容易に医療機関を利用できない地区 |
医療安全支援センター
医療安全支援センター | 都道府県 が設置 |
患者からの苦情や相談への対応し、医療安全に必要な情報提供を行う施設(医療法に規定) |
医療安全管理室 | 病院内 | インシデントレポートの集計 |
医療圏
医療圏:医療計画の中で病院の病床および診療所の病床の整備を図る地域的単位として区分する圏域のことで、都道府県が定める。
医療圏 | 単位 | 基準 |
一次医療圏 | 市町村 | かかりつけ医への外来受診が基準(医療計画適用外) プライマリケア |
二次医療圏 | 1つの都道府県を複数に分割 | 一般病院への入院需要などが基準。 地域医療支援病院、保健所は二次医療圏単位で設置される。 |
三次医療圏 | 都道府県 | 高度かつ最先端の医療提供が基準。 高度救命救急センターは三次医療圏単位で設置される。 |
クリニカルパス
クリニカルパス | 検査→治療→処置→看護→リハビリなどの一連の流れを、入院から退院までの時間軸に沿って立案した診療スケジュール表のこと。 クリニカルパスを用いることによって診療プロセスの標準化が可能となり、医療事故の防止、患者満足度の向上など、医療の質の確保につなげることができる。 |
院内クリニカルパス | 入院〜退院までの院内管理のスケジュール表のこと。 |
地域連携クリニカルパス | 急性期病院→回復期病院→自宅への診療計画を作成し、地域すべての医療機関で共有するもの。このクリニカルパスによって急性期から慢性期まで一貫した診療の標準化に有効となる。 |
医療計画
医療計画は、医療資源の適正な配置(病院の設置場所を均等にする、病床数を制限するなど)、機能分担や連携を目的としており、医療法の規定に従って都道府県が作成する。
医療計画の記載事項 | |
① | 5疾患:がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、精神疾患 5事業:救急医療、災害時医療、僻地医療、周産期医療、小児医療 |
② | 医療従事者の確保 |
③ | 医療の安全の確保 |
④ | 病床整備を図るべき区域の設定(二次・三次医療圏の設定) |
⑤ | 基準病床数の確保 |
⑥ | 地域医療支援病院の整備目標(救急医療の提供、紹介率80%以上、200床以上) |
⑦ | 医療提供体制の確保 |
⑧ | 地域医療構想:2025年の医療需要のため、医療施設が自主的に機能分化を選択し(高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4区分から選択)、および在宅医療と病床の必要量を推計し、二次医療圏ごと必要病床数を定めるもの。地域医療構想調整会議で調整する。 |
救急医療
救急医療は3段階で、すべて二次医療圏で完結する。
対象者 | 搬送先 | |
第一次救急 | 比較的軽症者(入院は不要) | 休日夜間急患センター 在宅当番医(地域医師会が協力) |
第二次救急 | 入院治療を必要とする重症患者 | 病院群輪番制病院で決められた病院 共同利用型病院(医師会病院) |
第三次救急 | 生命の危機にさらされた重症患者(ICU) 特に広範囲熱傷、指肢切断、急性薬物中毒 |
救急救命センター(都道府県が指定) 高度救急救命センター 周産期母子医療センター |
災害医療
災害拠点病院 | 災害時に緊急対応(受け入れ・搬送)ができる病院で、都道府県が指定する(5疾病5事業に含まれるため)。災害拠点病院の指定要件には、DMATを保有する、救急救命センター or 第二次救急医療機関である、耐震構造、自家発電機能があることなどが挙げられる。各都道府県に原則1ヶ所の基幹災害医療センター、二次医療圏に原則1ヶ所の地域災害医療センターの整備が進められている。 |
DMAT:災害派遣医療チーム | 災害発生直後から活動開始できる機動性を持った専門的なトレーニングを受けた医療チーム。通常、医師2名+看護師2名+業務調整員1名で構成される。 |
DPAT:災害派遣精神医療チーム | 被災地域における精神保健医療機能の低下や災害ストレスの発生に対応するため、専門性の高い精神科医療の提供および精神保健活動の支援を行う |
DHEAT:災害時健康危機管理支援チーム | 災害時に公衆衛生活動を行う。具体的には、被災都道府県の保健医療調整本部と保健所が行う保健医療行政の指揮調整機能等を補佐する専門的な訓練を受けたチームである |
EMIS:広域災害救急医療情報システム | 災害時に、被災した都道府県の枠を超えて、医療災害に係る情報を共有することで、被災地域での迅速で適切な医療および救護に関わる情報を集約・提供するシステム |
医師法
医師法の内容
条 | 内容 | 詳細 |
1 | 医師の任務 | 医師は医療と保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上と増進に寄与する。 |
3・4 | 欠格事由 | 絶対的:未成年者は免許を与えない。 相対的:心身の障害、薬物中毒、罰金以上の刑、医事に関する犯罪の該当者は免許を与えないことがある。 |
6 | 医籍登録 | 医籍に登録し、医師免許を交付されると医療行為ができる。 |
7 | 免許の停止、取消 | 医道審議会の意見を必ず聞き、厚生労働大臣が処分する。相対的取消自由に該当する場合、戒告、医業停止(3年以内)、免許取消のいずれかの処分となる。5年後から再免許取得可能。 |
9〜16 | 医師国家試験 臨床研修 |
臨床研修指定病院で2年以上の臨床研修を受けなければならない。 |
19(1) | 応招義務 (診療義務) |
診療治療の求めがあった場合、正当な事由がなければ拒んでならない(罰則なし)。ただし、診療拒否によって患者に損害を与えたときには医師に過失があり民事責任が発生する。 |
19(2) | 診断書などの交付義務 | 担当医は正当な自由がなければ診断書、検案書、出生証明書、死産証書の交付を拒んではならない。 |
20 | 無診察治療などの禁止 | 自ら診察せず治療、診断書・処方箋の交付を行なってはならない。また、出産証明書、死産証明書、死体検案書も同様である。 |
21 | 異状死体の届出義務 | 24時間以内に警察署へ届け出なければならない。 |
22 | 処方箋の交付義務 | 投薬の必要性を認めた場合、患者またはその看護に当たっている者に対して交付しなければならない。 |
23 | 療養指導義務 | 本人やその保護者に疾患の療養の方法を指導する(罰則なし)。 |
24 | 診療記録の記載、保管義務 | 診療した時は、遅滞なく診療録に記載し、5年間保管しなければならない。 |
【診療録の記載事項(24条)】
下記以外にも、病歴・自他覚症状・検査結果・指示(指示者、受けた者、実施者の署名を含む)も記載する。
記載必須事項 | 記載の原則 |
①診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢 | 診察の度に記載(訂正できない筆記用具で) |
②病名及び主要症状 | 記載年月日・記載者名を記載 |
③治療方法(処方及び処置) | 第三者にわかるよう記載、訂正は二重線 |
④診療の年月日 | POSで記載 |
医師の届出義務のあるもの
届出義務 | 届出先 | |
直ちに | 1~4類感染症 (侵襲性髄膜炎菌、麻疹、風疹含む) |
保健所長(を経て知事) |
新型インフル等感染症、新感染症 | 保健所長(を経て知事) | |
食中毒 | 保健所長 | |
すみやかに | 麻薬中毒、覚醒剤中毒 | 知事 |
24時間以内 | 異常死体、異常死産時 | 警察署長 |
7日以内 | 5類感染症全数把握 (侵襲性髄膜炎菌、麻疹、風疹除く) |
保健所長(を経て知事) |
10日以内 | 診療所開設 | 知事 |
翌月10日まで | 不妊手術、人工妊娠中絶 | 知事 |
処方箋を交付しなくてよい場合
①患者等が不要の申し出をした場合 | ⑥応急の処置として投薬する場合 |
②暗示的効果を期待する場合 | ⑦安静を要する患者以外に薬剤の交付を受ける者がいない場合 |
③患者に不安を与える場合 | ⑧覚醒剤を投与する場合 |
④病状の短時間の変化に即応して投薬する場合 | ⑨薬剤師のいない船舶内で投薬する場合 |
⑤診断または治療方法が未定の場合 | ー |
混合診療
保険外診療は全額自己負担となる。
【混合診療が認められる例外(保険外併用療養制度)】
①保険導入のための評価を行う評価療養 | 先進医療や治験など |
②患者申出療養 | 未承認薬などを迅速に使用する際 |
③保険導入を前提としない選定療養 | 差額ベッドや金歯など |
医療事故
インシデントとアクシデント
医療過誤:医療事故の中で、医療従事者が注意義務を怠ったことにより、患者の生命・身体を侵害し、被害を発生させたもの。
インシデント (ヒヤリハット) |
アクシデント (医療事故) |
医療過誤 | |
患者への被害 | なし | あり | あり |
誤った医療行為の実施 | どちらでも | どちらでも | あり |
誤った医療行為の有無 | あり | どちらでも | あり |
医療従事者が問われうる法律上の責任・処分
【医療事故の法律上の責任】
民事責任 | 民法 | 責任:損害賠償請求される ●第415条:債務不履行 or ●第709条:不法行為 ・説明義務違反:医師は検査、治療、転医などの診療行為において、患者の自己決定に不可欠な説明を行う診療契約上の義務があり、それを怠った場合 ●第644条:善管注意義務 ・注意義務違反:症状悪化や副作用など思わしくない事象が起こることが相当な理由で予想可能なときに、それが起きないように最善を尽くすという診療契約上の義務があり、それを怠った場合 |
刑事責任 | 刑法 | 責任(刑罰):罰金や科料などの刑罰が課せられる かきくけこ:過失、虚偽の診断書、口は固く、刑法、子供 ●第134条:情報漏洩(守秘義務違反) ●第160条:虚偽診断書等作成罪 ●第211条:業務上過失致死罪 ●第212条:堕胎 |
行政責任 | 医師法 | 責任:免許の剝奪・一定期間の医業停止(第7条) |
【債務不履行責任と不法行為責任の違い】
証明責任者 | 遅延損害金の起算点 | |
債務不履行責任 | 医療機関が収集(患者が勝訴しやすい) | 請求時から |
不法行為責任 | 患者が情報を収集 | 不法行為時から(多くもらえる) |
医療によって患者に損害を与えた場合は賠償責任が生じる。賠償責任の原因は2つに大別される。
債務不履行責任 (契約違反による責任) |
医師と患者の関係は診療契約で結ばれており、この診療契約は準委任契約(何かを任されたらその処理をする契約)と考えられている。診療時、医師は最善の治療を施す手段責務があるが、その責務を果たさなければ契約違反となり、債務不履行責任を負う。 |
不法行為責任 | 医療行為に過失があり、かつ有害事象により損害が発生した場合、過失と損害に因果関係があると判断されると不法行為責任が発生する(医療機関には使用者責任が発生)。 【過失とは】ある結果が予測でき、これを回避しようとしなかったこと⇨医療の場合、客観的な注意義務に違反した場合がこれに該当する。注意義務違反とは、一般的な医学教科書に〜しなければいけない、〜してはいけないと明記されて誰でも知っている医療水準に反する場合を指す。 |
薬剤の誤投与を防ぐための方法
5Rを指差し呼称で確認すること!ダブルチェック!医師は薬剤の口頭指示をしないこと。
Right patient(正しい患者) | 患者氏名、生年月日、性別、病棟名、診療科 薬剤の作用と患者さんの病態、アレルギーの有無 |
Right drug(正しい薬剤) | 薬剤名、薬品区分(劇薬・毒薬・麻薬)、薬剤の形状、使用期限、保管状況 |
Right dose(正しい用量) | 薬剤の単位、用量、濃度 |
Right route(正しい用法) | 投与可能な方法、支持された投与経路 |
Right time(正しい時間) | 処方日、投与時間、注射速度 |
地域保健
地域保健法
保健所 | 市町村保健センター | |
設置 | 都道府県、保健所政令市、23区 (二次医療圏に1ヶ所が基本) |
市町村 |
役割 | 疾病の予防、健康増進、環境衛生等、公衆衛生活動の中心的な機関、健康危機管理の拠点、人口動態調査票の作成 | 地域住民に身近な対人サービスを総合的に行う拠点 |
対人サービス | <広域的・専門的> 精神福祉、結核、難病、感染症、小児慢性特定疾病 |
<地域的・一般的> 健康診断、予防接種、がん検診、健康相談、訪問指導、介護 |
所長 | 原則として医師 | 誰でも |
専門職員 | 医師、獣医師、薬剤師、保健師、放射線技師、栄養士等 | 保健師、看護師、栄養士等 |
監督的機能 | ①医療機関への立入検査 ②飲食点・食品製造業者への監視指導 |
なし |
【その他の地域施設】
地方衛生研究所 | 地域における科学的・技術的中核の場(所長は医師でなくて良い) ①調査研究:疾病予防に関する調査研究 ②試験検査:新型コロナウイルス感染症のPCR検査など ③研修指導:地域保健関係者の研修指導 ④公衆衛生に関する情報の収集・解析・提供 |
児童相談所 | 児童福祉法に基づいて都道府県・指定都市に設置され、児童に関するあらゆる相談を受け、また、児童の一時保護を行う。所長は医師でなくても良い。①養護相談(虐待,棄児,育児困難,保護者の失踪,養子縁組など)②保健相談(虚弱児,内部機能障害,喘息など)③障害相談(心身障害,知的障害,自閉症など)④非行相談(触法行為など)⑤育成相談(不登校,しつけなど) |
母子保健
母子保健の統計
期間 | 計算式 | 2020年の数値 | |
妊産婦死亡率 | 最終月経初日 〜産後6週未満 |
妊産婦死亡数/(出生数+死産数) | 2.5(出産10万対) |
人工妊娠中絶 | 妊娠22週未満 | ー | 12.6万件 |
死産率 | 妊娠12週 〜出産時 |
死産数/(出生数+死産数) | 20(出産千対) |
周産期死亡率 | 妊娠22週 〜生後1週未満 |
左記期間の死亡数/(出生数+妊娠22週以後の死産数) | 3.4(出産千対) |
早期新生児死亡率 | 生後1週未満 | 左記期間の死亡数/出生数 | 0.6(出生千対) |
新生児死亡率 | 生後4週未満 | 左記期間の死亡数/出生数 | 0.8(出生千対) |
乳児死亡率 | 生後1年未満 | 左記期間の死亡数/出生数 | 1.7(出生千対) |
出産=出生+死産(自然死産+人工死産)
母子保健法
市町村=市町村保健センター
①妊娠の届出 | 妊娠した者は速やかに市町村長に届出(医師の証明は不要) 出産育児一時金(健康保険):50万(出産日〜2年に申請) 出産手当金(健康保険):月給の2/3 育児休業給付金(雇用保険):育児休業期間中 |
②母子健康手帳 ・妊娠健診 |
市町村が妊娠の届出をした者に交付 妊娠健診は妊娠24週未満は4週間に1回、24~36週未満は2週間に1回、36週以降は1週間に1回の受診が推奨されている。 |
③低体重児の届出 | 2500g未満の児が生まれた場合、保護者は速やかに市町村に届出 ※医師・助産師などが作成した出生証明書と合わせて出生届を生後14日以内に提出する(戸籍法) |
④乳幼児健診 | 市町村が1歳6ヵ月健診・3歳児健診を実施 |
⑤未熟児養育医療 | 市町村は入院を必要とする1歳未満の未熟児に対して給付(養育医療)を行い、医師・保健師・助産師などに未熟児訪問指導させる |
母体保護法
不妊手術および人工妊娠中絶手術に関する法律
人工妊娠中絶 | 人工妊娠中絶は、妊娠22週未満に行わなければならない。この中絶は都道府県医師会の指定医のみが行える。中絶手術を行なった医師は翌月10日までに理由を記して知事に届け出なければならない。 中絶には、「妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある」という理由が必要である。また配偶者の同意も必要である(未成年者の場合でも両親の許可は必須ではない)。 |
不妊手術 | 生殖腺を除去せず生殖不能にする手術のこと。医師であれば誰でも実施可能だが、実施後は都道府県知事に届け出なければならない。手術の実施には配偶者の同意も必要である。 |
次世代育成支援対策推進法
次代の社会を担う子供が健やかに生まれ,育成される社会の形成に資することを目的とし,一定数(常時101人)以上の労働者を雇用する企業に対して,労働者の仕事と子育てに関する行動計画の策定と届出を義務付ける法律
児童虐待の防止等に関する法律
児童虐待(疑いを含む)を発見した人は誰でも、市町村、児童相談所、福祉事務所に通告しなければならない。虐待の種類には、身体的・心理的・ネグレクト・性的がある。
通告先 | |
児童虐待 | 市町村、福祉事務所、児童相談所 |
高齢者虐待 | 市町村、地域包括支援センター |
高齢者保健・介護保険
高齢者医療確保法
①75歳以上の医療保険 | |
②特定健康診査 (メタボ健診) |
40〜74歳の被用者保険と国民健康保険の保険者(妊婦などは除外)に対して、メタボの早期発見を目的に特定健康診査の実施を義務化 実施主体:医療保険者 |
【特定健康診査】
この診査の結果、生活習慣病または予備軍は特定保健指導を受けることになる。指導内容は自助努力による行動変容の支援などがある。2個以上該当する場合は積極的支援、1個なら動機付け支援が行われる。(65~74歳の者は積極的支援と判定されても動機付け支援を行う。また、高血圧で通院中の者は医療機関において保健指導が行われるべきであり、特定保健指導の対象としない。)
特定健診の階層化の判定項目 | メタボの診断基準 |
①腹囲:男85cm・女90cm以上 | 左に同じ |
②空腹時血糖100以上 or HbA1c 5.6以上 | 空腹時血糖110以上 |
③TG 150以上、HDL 40以下(LDL含まない) | 左に同じ |
④血圧 130/85以上 | 左に同じ |
⑤その他:喫煙歴 | ー |
追加検査:心電図検査、眼底検査、貧血検査 ※上記は医師が必要と認めた場合に実施 |
ー |
<階層化に含まれない検診項目> 血液検査:LDL、AST、ALT、γ-GTP 検尿:尿糖、尿蛋白 身体測定:BMIなど |
ー |
介護保険法
老人福祉サービスの利用は介護保険が優先的に適用されるが、やむを得ない理由で介護保険を利用できない場合は老人福祉法による福祉の措置としてサービスが提供される。
①介護保険 | 保険者:市町村 被保険者:その地域に住む65歳以上の者(第1号被保険者)または40〜65歳未満の医療保険加入者(第2号被保険者) 介護給付サービス利用時に1割自己負担し、残り9割は給付される(保険料50%+公費50%)。第2号被保険者は,若年性認知症,脳血管疾患などの「特定疾病」で要介護・要支援状態になれば,介護給付サービスを利用できる。 |
②地域包括支援センター | 市町村が設置する施設で、地域支援事業を実施する。ここには保健師、ケアマネジャー、社会福祉士が職員として配置される。 ①総合相談・支援 ②権利擁護(高齢者虐待の通報先) ③包括的・継続的ケアマネジメント支援 ④介護予防ケアマネジメント |
※地域包括ケアシステム | 生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護、予防のみならず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制のこと |
【老人ホーム】
自立 | 要支援 | 要介護1〜2 | 要介護3〜5 | 認知症 | ||
民間 | 介護付き有料老人ホーム | |||||
住宅型有料老人ホーム | ||||||
サービス付き高齢者向け住宅 | ||||||
グループホーム | ||||||
公的 | ケアハウス | |||||
特別養護老人ホーム | ||||||
介護老人保健施設 | ||||||
介護医療院 |
【介護】
65歳以上の15%は外出が週1回未満の閉じこもりであり、5%は6ヶ月以上常時ベッド上にいる寝たきりである。寝たきり高齢者に最も多くみられる合併症は褥瘡で、他にも高張性脱水も起こしやすい。
介護が必要となった原因 | 要介護者 | 要支援者 |
1位 | 認知症 | 関節疾患 |
2位 | 脳血管疾患 | 高齢による衰弱 |
3位 | 骨折・転倒 | 骨折・転倒 |
4位 | 高齢による衰弱 | 脳血管疾患 |
5位 | 関節疾患 | 心疾患 |
介護給付におけるサービス
①居宅サービス | ・訪問:訪問看護、訪問入浴介護、訪問介護、訪問リハビリ ・通所(デイ):通所介護(デイサービス)、通所リハビリ(デイケア) ・短期入所:短期入所生活介護(ショートステイ)→要支援・要介護者の自立支援と介護家族の休息を目的とする。原則30日まで利用可能。 ・その他:特定施設入所者生活介護、福祉用具貸与、住宅改修費など |
②施設サービス (要介護者のみ!!) |
●介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム+福祉施設): 入院や看護は不要だが常時介護を必要とする要介護者で、在宅療養困難な人が終の棲家として利用する施設 ●介護老人保健施設(病院と施設の中間的存在): 入院は不要だが看護やリハビリを必要とする病状安定期の要介護者 ●介護療養型医療施設(療養病床を有する病院): 常時医学的管理が必要な要介護者 |
③地域密着型サービス | グループホーム(複数の認知症高齢者を家庭的な環境で共同生活させる)など 【グループホームの入所条件】 ①原則65歳以上でかつ要支援2〜要介護5の認定を受けている ②医師から認知症の診断を受けている ③心身ともに集団生活を送ることに支障がない ④グループホームと同一の市町村に住民票がある |
要介護認定
①申請 | 本人が保険者である市町村へ申請 |
②訪問調査 | 市区町村は調査員による訪問調査 |
③一次判定 | 訪問調査結果をコンピューターに入力して判定 |
④二次判定 | 一次判定結果と主治医の意見書を元に、介護認定審査会で判定 |
⑤結果 | 要介護度、要支援度、非該当が決まる |
⑥ケアプラン作成 | ケアマネジャーなどによりケアプランが作成される |
【主治医意見書の内容】
①傷病に関する意見 | 診断名,症状としての安定性,経過・治療内容 |
②特別な医療 | 処置内容(点滴,透析,ストーマなど),特別な対応(モニター測定,褥瘡の処置など),失禁への対応(カテーテルなど) |
③心身の状態に関する意見 | 日常生活の自立度等(障害高齢者の日常生活自立度,認知症高齢者の日常生活自立度),認知症の中核症状・周辺症状,その他の精神・神経症状,身体の状態(利き腕,身長,体重,麻痺,褥瘡) |
④生活機能とサービスに関する意見 | 移動,栄養・食生活,現在または今後可能性の高い状態と対処方針,サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し,医学的管理の必要性(訪問診療,訪問看護,通所リハビリテーションなど),サービス提供時における医学的観点からの留意事項,感染症の有無 |
⑤特記すべき事項 | 要介護認定・介護サービス計画作成時に必要な医学的意見 |
生活自立 | ランクJ (自立:J) |
何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する。 J1:交通機関等を利用して外出 J2:隣近所へなら外出 |
準寝たきり | ランクA (Assist:A) |
屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない A1:日中はほとんどベッドから離れて生活 A2:外出の頻度が少なく日中も寝たり起きたりの生活 |
寝たきり | ランクB (Bed:B) |
屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが座位を保つ B1:車いすに移乗し、食事排泄はベッドから離れて行う B2:介助により車いすに移乗する |
ランクC | 一日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する C1:自力で寝返りをうつ、C2:自力では寝返りもうたない |
【結果】
状態 | 給付 | ケアプラン | |
要介護 |
日常生活における基本的動作が常時介護を要すると見込まれる状態 (短時間でも放っておけない状態) |
介護給付 | 居宅介護支援事業者のケアマネジャーが作成 |
要支援 1→2 |
日常生活を営むのに支障があり、介護状態以外の状態 (1人で暮らせない状態) |
介護予防給付または 介護予防・日常生活支援総合事業 |
地域包括支援センターの保健師などが作成 |
在宅ケア
【訪問看護ステーション】
看護師がかかりつけ医の指示のもと在宅ケアを受けている患者を訪問し看護することを訪問看護という。その拠点は全国に約1万箇所ある指定訪問看護事業所である。訪問看護ステーションは、介護保険、医療保険、後期高齢者医療制度の3つの制度により規定されており、医療保険による訪問回数は原則週3回までである。
障害者保健福祉
障害の分類:国際生活機能分類(ICF)
ICF:WHOが加盟国に勧告している、全ての人を対象として、生活機能(プラス面)と障害(マイナス面)の両面から健康状態の構成要素を評価する分類するもの
ちなみに、障害者が一般市民と同じ環境・条件で家庭や地域で共に生活することを目指す概念をノーマライゼーションといい、そのためにはバリアフリーやユニバーサルデザインを導入し障害者の社会参加を促進する必要がある。
生活機能 | 障害 | 改善 |
臓器レベル (心身機能) |
心身機能・身体構造に障害がある場合=機能障害 例:神経に障害がある→足が麻痺している |
治療して改善 |
個体レベル (活動) |
個人に活動制限がある場合 例:足が麻痺して動けない→歩行障害で活動できない |
訓練・リハビリして改善 |
社会レベル (参加) |
社会的に参加制約がある場合(社会的不利を被る) 例:移動できない→仕事できない |
機会の均等化 |
背景因子 | 環境因子(車椅子で生活など影響を与える因子) | 建物のバリアフリー化 |
背景因子 | 個人因子(落ち込むなど影響を与える因子) | やる気、周囲の応援 |
健康状態 | ※健康状態は疾病、外傷、妊娠、加齢などを含む |
障害者基本法
障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身機能の障害があるもので、障害及び社会的障壁により継続的に日常・社会生活に相当な制限を受ける者である。障害者福祉対策は障害者基本法に基づいて行われる。
手帳を用いた福祉サービスには、所得税の障害者控除、公営住宅の入居及び特別減額、公営交通機関の運賃割引などがある。
全ての障害者 | 障害者総合支援法 | 障害者共通の給付について |
全ての障害者 | 障害者雇用促進法 | 常用雇用者数45.5人以上の民間企業は一人の障害者を雇用することを義務化。この条件が未達成の企業から納付金を徴収し、達成した企業には調整金や報酬金を支給する(障害者雇用納付金制度)。 |
身体障害者 | 身体障害者福祉法 | 身体障害者手帳の交付 |
知的障害者 | 知的障害者福祉法 | 療育手帳を交付 |
精神障害者 | 精神保健福祉法 | 精神障害者保健福祉手帳の交付 |
発達障害者 | 発達障害者支援法 | ー |
障害者総合支援法
18歳以上の障害者の日常・社会生活を総合的に支援する法律で、難病等疾患も含まれている。
①自立支援給付 | 障害者に個別に支給決定がなされる障害福祉サービスを受け、利用者は原則1割を自己負担する。 ①介護給付:ショートステイ(精神科デイケアは医療保険) ②訓練等給付:グループホーム ③自立支援医療:更生医療(身体障害者)、育成医療(身体障害児)、精神通院医療 |
②地域生活支援事業 | 市町村、都道府県が相談支援を行う |
精神保健
精神保健福祉法
精神障害者 | 統合失調症、薬物中毒・依存、知的障害などの精神疾患を有するもの。精神障害者は障害者総合支援法により、通院医療に係る自立支援医療費の支給(患者1割負担)を受けることができる。受診する医療機関や調剤薬局などを登録し、受給者証に記載する必要がある。 |
精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害者はの申請は市町村で行い、精神保健福祉センターで判定され、都道府県知事が交付する(2年毎更新)。1〜3級に分類。 |
精神保健福祉センター | 精神保健の向上と精神障害者の福祉の増進を図るための機関で、都道府県単位で設置する。 【業務】 ①精神医療審査会に関する事務 ②精神障害者福祉手帳の障害等級(1級〜3級の3区分)の判定 ③精神保健福祉に関する知識の普及 ※精神保健福祉の第一線機関は保健所であり、訪問指導は保健所が行う |
精神医療審査会 | 都道府県の精神保健福祉センターに設置され、強制入院患者の医療が適正に進められているか否かを審査する機関。 |
精神科の入院形態
入院 形態 |
任意入院 | 医療保護入院 (緊急時:応急入院) |
措置入院 (緊急時:緊急措置入院) |
入院 要因 |
本人の同意必要 | 自傷他害のおそれはない、 かつ家族の同意必要 |
衝動に駆られ自傷他害のおそれ (家族の同意は不要) |
診察 | 医師 | 指定医1名 | 指定医2名(緊急:指定医1名) |
入院 期限 |
ー | (応急入院の場合は72時間) | (緊急措置入院の場合は72時間、以降はに他の措置に切り替え) |
特徴 | 患者の自由意志で入退院できる | 病院長が強制入院させ、保健所を経て知事に届ける | 知事が強制入院させる (公費負担) |
【行動制限】
制限されること | 外出制限・面会制限・電話制限(医師なら指示可) 隔離・拘束(指定医のみ可) |
制限できないこと | ①信書の発信・受信 ②代理人である弁護士、人権を擁護する行政職員との面会や電話 ③都道府県が設置している精神医療審査会への退院請求・処遇改善請求 |
【精神保健指定医(指定医)】
臨床経験5年以上、精神科3年以上などの要件を満たした医師の中から厚生労働大臣が指定し、上記の強制入院の手続きを行う(精神保健福祉法)。
感染症対策
定義 | 代表感染症 | |
新興 感染症 |
約1970年以降、新たに発見された病原体によって生じる感染症 | エボラ出血熱、レジオネラ肺炎、HIV感染症、反田ウイルス肺症候群、ウエストナイル熱、SIRS |
再興 感染症 |
一度制圧された病原体がビルレンスを変化させて再登場した感染症 | 肺ペスト、ジフテリア、デング熱、結核 |
感染症法
感染症を1〜5類感染症・指定感染症・新感染症に分類。COVID-19は指定感染症。
入院 | 入院勧告に従わない場合、知事が強制的に入院させることができる |
就業制限 | 感染を蔓延させる恐れのある業務に従事することは禁止されている |
対物制限 | 病原体に汚染されている可能性の場所の立入制限等を知事は行える |
届出 | 診断した医師は直ちに最寄りの保健所長経由で知事に届け出なければならない |
【分類】
感染症名 | 入院 | 就業 制限 |
対物 制限 |
届出 | |
1類感染症 (7疾患) |
マールブルグ出血熱、コンゴクリミア熱、ラッサ熱、エボラ出血熱、南米出血熱、痘瘡、ペスト (枕え納豆ペッ!) |
○ | ○ | ○ | ○ |
2類感染症 (7疾患) |
ポリオ、ジフテリア、Tb(結核)、鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)、SARS、MARS (ポジティブ鳥様) |
○ | ○ | ○ | ○ |
3類感染症 (5疾患) |
細菌性赤痢、パラチフス、腸チフス、O157、コレラ (赤いパチOコ) |
× | ○ | ○ | ○ |
4類感染症 (44疾患) |
動物、飲食物、衣類などを介して感染する疾患 A/E肝炎、マラリアなど |
× | × | ○ | ○ |
5類全数 (24疾患) |
梅毒、百日咳、麻疹、AIDS、B/C肝炎など 7日以内に最寄りの保健所長に届出 (麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌は直ちに届出) |
× | × | × | ○ |
5類定点 (25疾患) |
指定医療機関で確認された疾患 翌月初日までに最寄りの保健所長に届出 |
× | × | × | ○ |
検疫法
国内には存在しない病原体が持ち込まれるのを防ぐための法律。船長・機長は検疫済証の交付を受けた後でなければ入港させてはいけない。検疫法の対象となる感染症は、1類感染症、デング熱、マラリア、新型インフルエンザ(H5N1、H7N9)、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、MARSの15疾患であり、その患者や疑いのある者を隔離・停留することができる。
予防接種法
予防接種の実施内容と健康被害が生じた際の救済措置が定められている。詳細は小児科総論を参照。
院内感染対策
院内感染で最も多いものは尿路感染症で、他にも院内肺炎や創傷部位感染などがあげられる。
耐性菌についてはこちらを参照。
【院内感染の代表的原因細菌(SPACE)】
S: Serratia | セラチア |
P: Pseudomonas | 緑膿菌 |
A: Acinetobacter | アシネトバクター |
C: Citrobacter | サイトロバクター |
E: Enterobacter | エンテロバクター |
【標準予防策:スタンダードプリコーション】
患者・医療従事者を含む全ての人に適用される感染予防策で、汗を除く全ての湿性生体物質(血液、体液、排泄物、損傷した皮膚、粘膜)は感染の危険性があるとの考えに基づいている。例えば、手指衛生、個人防護具の着脱、針刺し事故防止のためリキャップせず直接廃棄するなどがあげられる。
手指衛生が必要な場面 | ①患者に触れる前 |
②清潔操作の前 | |
③体液に暴露された可能性のある場合 | |
④患者に触れた後 | |
⑤患者周囲の物品に触れた後 | |
個人防具を着脱する順番 | 手指衛生→ガウン→マスク→手袋→(作業) →手袋→手指衛生→ガウン→マスク→手指衛生 |
【感染経路別予防策】
接触感染予防策 | 部屋は基本個室対応、難しい場合はベッドの間隔を1m以上離す。使用物品は個人専用にする。患者接触時、ガウン・手袋を装着し、手指衛生を徹底する。 |
飛沫感染予防策 | 部屋は原則個室対応、難しい場合はベッドの間隔を2m以上離しカーテンする。使用物品は個人専用にする。患者接触時、サージカルマスクを着用する。 |
空気感染予防策 | 部屋は陰圧の個室管理、ドアの開放禁止。患者接触時はN95マスクを着用する。 |
【院内感染対策チームの施設基準】
一定の経験年数のある専任の医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師で構成され、標準予防策をはじめとする院内感染対策をマニュアル化する。
食品保健
食事摂取基準
健康な人をを対象として、健康の維持・増進、生活習慣病の重症化予防、高齢者の低栄養予防・フレイル予防のために参照するエネルギーおよび栄養素の摂取量の基準である。
【エネルギー】
BMI | 18〜25未満 (普通の体格はBMI:約22) |
エネルギーの収支の基準はBMIを用いる。これは収支の結果が体重と体格に表れるため。例えば、エネルギー摂取量が過剰な場合はBMI=体格が大きくなる。 |
推定エネルギー必要量(EER) | 約2000〜3000(kcal/日) | 成人において、1日に必要なエネルギー量(エネルギーの収支が釣り合っている状態)を数値化したものをEERという。そのため、EERを上回るエネルギー摂取は体重増加を招く。 ●EER=基礎代謝基準値(kcal/kg/日)×基準体重(kg)×身体活動レベル ※基準体重=22×身長(m)×身長(m)で計算 ※身体活動レベルの目安 ①低い(デスクワーク):1.5 ②普通(立ち作業):1.75 ③高い(肉体労働):2 ※小児に必要な1日エネルギー所要量:100kcal/kg/日 |
【栄養素】
「日本人の食事摂取基準」では,栄養素に対して5つの指標(推定平均必要量,推奨量,目安量,耐容上限量,目標量)が用いられている。
目標量として、炭水化物は約60%、脂質は約20%、蛋白質は約20%摂取すると良いと考えられている。蛋白質の不足はフレイルやサルコペニアを引き起こすが、慢性腎不全の場合は低蛋白質の方がよいだろう。トランス脂肪酸はLDL/HDL比を上昇させ、冠動脈疾患のリスクを上昇させる。ナトリウム(食塩相当量)の目標量は成人男性7.5g/日未満,成人女性6.5g/日未満と定めている(2019年では約10g/日摂取している)。
現在、日本人はNa摂取量が多く、食物繊維・Ca・K摂取量が少ないことが課題である。特に食物繊維は発がん物質を吸着するため乳癌・胃癌・大腸癌を予防する。日本人は20g/日食物繊維を摂取している。
食品衛生法
①食中毒届出 | 食品や添加物に起因する食中毒(疑いも含む)を診断した医師は直ちに保健所長に届出なければならない。フグ中毒も含む。 |
②食中毒 | 食中毒の年間患者数は約1万人。原因物質の9割(寄生虫>細菌>ウイルス)、原因食品8割(複合調理食品>魚介類>その他)が判明している。原因施設は飲食店が過半数。 <食中毒の患者数> ①ノロウイルス②ウェルシュ菌③カンピロバクター④アニサキス菌⑤サルモネラ属(2022年) <食中毒の事件数> ①アニサキス②カンピロバクター③ノロウイルス(2022年) |
③食品添加物 | 残留農薬や食品添加物は一日摂取許容量 ADI(ヒトが毎日一生涯摂取しても健康に影響を与えない量)を十分下回るような規格に設定する。 ●ADI=無毒性量(NOAEL)/100 |
④HACCP法 | 製造するすべての工程において、危害の発生を防止するためのポイントを継続的に監視・記録する衛生管理方法である。 |
食品表示法
①食品表示基準 | 原材料に遺伝子組み換え食品や特定のアレルゲン(えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生、くるみの8品目)含む場合はその旨表示義務がある。 |
②保健機能食品 | 特定保健用食品=トクホ(消費者庁の許可必要) 機能性表示食品(消費者庁に届出必要) 栄養機能食品(許可基準クリアでOK、届出必要なし) |
③特別用途食品 (健康増進法) |
病者・妊産婦・授乳婦・乳児・嚥下困難者などに用意された食品、特定保健用食品=トクホ(消費者庁の許可必要) |
学校保健
学校保健安全法
学校における児童生徒および学校職員の健康の保持増進に関する法律
①学校医 | すべての学校(幼稚園〜大学)に置かなければならない。 学校医の主な職務として①健康診断・健康相談②感染症予防のため生徒の出席停止の助言(権限は校長)③学校環境衛生の指導助言(職務は学校薬剤師)④学校保健計画立案に参与(決定は校長)がある。 |
②定期健康診断 | 聴力検査:小2・奇数学年は必須(小2はアデノイドの好発時期) 尿検査:毎年全員(大学生は省略可) 心電図:小・中・高校1年(突然死予防のため) 胸部X線検査:高1・大1(結核の有無) |
③就学時健康診断 | 市町村教育委員会が就学4ヶ月前までに実施。 この健康診断の結果(知能検査)を踏まえて普通学級、特別支援学級(軽度)、特別支援学校に進むかを判断する。 |
学校感染症
出席停止期間の基準を規定しており、第1〜3種に分けられる。出席停止の権限は校長である(学級閉鎖の場合は学校設置者に権限)。
第1種は感染症法の1類・2類・新型コロナ(結核を除く)で、治癒するまで登校不可。第2種は空気・飛沫感染する疾患で、感染のおそれの消失まで登校不可。第3種は学校で流行する可能性のある疾患で、医師が感染のおそれがないと認めるまで登校不可。
第二種感染症(9つ) | 出席停止期間・基準 |
インフルエンザ(飛沫) | 発症後5日経過かつ解熱後2日経過(幼稚園は3日) |
百日咳 | 特有の咳の消失or5日間抗生剤服用終了 |
麻疹(空気) | 解熱後3日経過 |
流行性耳下腺炎 | 唾液腺の腫脹後5日経過かつ全身状態良好 |
風疹 | 発疹の消失 |
水痘(空気) | すべての発疹の痂皮化 |
結核(空気) | 医師が感染のおそれがないと認めるまで |
髄膜炎菌性髄膜炎 | 医師が感染のおそれがないと認めるまで |
咽頭結膜炎:プール熱 | 主要症状消退後2日経過 |
学校保健統計調査
定期健康診断の結果より学校保健統計調査が作成され、虫歯などの有病率が算出される。この時の有病率を被患率といい、小学校の被患率第1位は虫歯・2位は近視。中高は1位は近視・2位は虫歯である。近年アレルギー性疾患の被患率は増加傾向。
学校管理下での死因1位は突然死、2位は窒息である。
産業保健
産業保健は、職業病の予防と職場を利用した労働者の健康保持・増進を目的とする。
労働安全衛生法
①産業医 | 労働者の健康管理・作業管理・作業環境管理・労働衛生教育を助言指導する医師で、常時50人以上の労働者を雇用する事業所では、事業者が産業医を選任して労働基準監督署に産業医選任届出書を提出しなければならない。 |
②健康診断 | 事業者が毎年1回必ず行わなければならない(義務) |
③THP | トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP):全ての働く人を対象とした心身両面の健康保持増進対策(事業者の努力義務で実施) |
④ストレスチェック制度 | 常時使用する労働者に対してストレスチェックを年1回実施する(事業者の義務)。結果は本人の同意なしに事業者に提供してはならない。 |
⑤面接指導 | 時間外労働が月80時間超の労働者は希望により面接指導が受けられる(過重労働対策:うつ病、自殺、脳・心血管疾患のリスク管理として重要) |
【産業医の選任の基準】
事業場の規模 | 産業医の数 | 選任形態 |
常時50人以上の労働者を使用する事業場 | 1人以上 | 嘱託でも可 |
一般業務で常時1000人以上(特定の有害業務は常時500人以上) | 1人以上 | 専属 |
常時3001人以上 | 2人以上 | 専属 |
【産業医の業務】
職務 | ①健康管理 | 生活指導、健康診断、職業性疾病や障害の予防 |
②作業管理 | 作業そのものの管理、健康障害の防止対策など | |
③作業環境管理 | 有害要因の除去、環境測定などによる評価 ※実際の測定は作業環境測定士が行う |
|
義務 | 職場巡視 | 産業医は原則毎月1回は作業場などを巡視しなければならない |
その他 | ー | 衛生委員会に参加し、衛生管理者に対して助言指導を行う。 業務上疾病の認定は労働基準監督署長の権限である(産業医は事業所と利害関係にあるため)。 |
労働基準法
①労働時間 | |
②産前産後休業 | 産前6週間は本人が希望すれば休業可能 産後8週間は就業禁止!(本人希望により6週間より可能) 産婦人科医は母性健康管理指導事項連絡カードに指導内容を記載し、事業者は記載内容に応じて勤務の軽減や時間変更など必要な措置を講じる ※育児休業は育児・介護休業法に規定されている |
③妊婦の危険有害業務の制限 | 継続作業で20kg以上の重量物を扱う業務、ボイラー関係、溶接関係、5m以上の高所作業、有毒ガス関係、著しく暑熱・寒冷な場所の業務 |
④年齢制限 | 15歳未満は就業禁止、18歳未満は時間外労働・休日労働・深夜業の禁止 |
職業病
中毒学を参照。
許容濃度とは、週40時間当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば、労働者に悪影響がみられないと判断する濃度(法的拘束力はない)。
環境保健
日本の4大公害病
公害名 | 場所 | 原因 | 原因物質 |
①水俣病 | 熊本県と鹿児島県の水俣湾沿岸 | 水質の汚濁 | 有機水銀 |
②新潟水俣病 | 新潟県阿賀野川下流 | 水質の汚濁 | 有機水銀 |
③イタイイタイ病 | 富山県婦中町神通川 | 土壌の汚染 | カドミウム |
④四日市喘息 | 三重県四日市市臨海地域 | 大気の汚染 | SOx、NOx |
土呂久ヒ素公害 | 宮崎県高千穂町 | 川の汚染 | ヒ素(米から摂取) |
環境基本法
公害とは、人の活動に伴って生じる相当範囲の人の健康または生活環境に係る被害が生じること。項目は①大気の汚染、②水質の汚濁、③土壌の汚染、④騒音、⑤振動、⑥地盤の沈下、⑦悪臭がある。①〜④に関しては環境基準(目標値)が設定されている。また、一定の施設を持つ事業者に対しては公害発生防止のための規制基準(最低基準値)が設定されており、違反すれば行政上の処分または制裁を受ける。
【①大気の汚染】
大気汚染を判断するため、10項目を測定対象に定めて、全国一律基準の環境基準を設定している。
①浮遊粒子状物質(SPM) | |
②微小粒子状物質(PM2.5) | 肺胞まで到達し、肺疾患を生じる。 |
③光化学オキシダント | 光化学スモッグの原因。NOxと紫外線によって生成するため夏の風の弱い日の昼頃に発生し、吸入すると粘膜刺激症状をきたす。 |
④SO2 | 酸性雨、四日市喘息の原因。 |
⑤NO2 | 自動車排ガスに含まれており、酸性雨の原因。 |
⑥CO | 自動車排ガスに含まれている。 |
⑦ベンゼン | 自動車排ガスに含まれている。 |
⑧トリクロロエチレン | |
⑨テトラクロロエチレン | |
⑩ジクロロメタン | |
※ダイオキシン類 | 環境基本法ではなくダイオキシン類対策特別措置法に記載。 ①発癌性、②催奇形性、③神経毒性がある。 |
【②水質の汚濁】
全国一律基準 | 検出されてはならない有害物質 | 理由 |
水道法 | 大腸菌 | 塩素消毒が保証された水道水では大腸菌は検出されないため |
環境基本法 | 環境基本のABC:アルキル水銀、PCB、全シアン | 生物濃縮が生じうるため |
水質汚濁防止法 | アルキル水銀化合物 | 生物濃縮が生じうるため |
【④騒音】
昼間は50〜60dB以下、夜間は40〜50dB 以下の環境基準がある。騒音職場では6ヵ月に1度の聴力検査が義務付けられている。
地球環境問題
①オゾン層の破壊 | フロンによるオゾン層の破壊で、光化学オキシダント↑ 紫外線増加により皮膚癌↑白内障↑ |
②地球温暖化 | CO2、フロン、メタンなどの温室効果ガス↑が原因と推測 マラリアやデング熱の分布域の拡大の危惧 |
③酸性雨 | 大気中NOx↑SOx↑によりpH 5.6以下の雨が生成 |
④熱帯雨林の減少 | 商業的な森林伐採、畑地開発 |
⑤砂漠化 | 家畜の過放牧や薪炭材の過剰な採取などが主な原因 |
⑥開発途上国の公害問題 | フロン↑NOx↑により光化学オキシダント↑(SOxは含まない)PM2.5↑(粒径2.5μm以下の粒子が肺胞に到達し炎症) |
⑦野生生物種の減少 | ー |
⑧海洋汚染 | ー |
⑨有害廃棄物 | 塩化ビニルなどの焼却に伴ってダイオキシン類が発生 |
生物学的濃縮
メチル水銀、ダイオキシン類、有機塩素系農薬(PCB、DDT、BHCなど)は脂溶性が大きく、かつ化学的に安定で、自然界に分解することなく小生物から大生物に至る食物連鎖により生態系で著しく濃縮される。障害は多くの場合、連鎖の最終動物(ヒト)に認められ、中間の生物には現れにくい。
水道法
水道水の消毒は塩素で行い、蛇口の遊離塩素濃度は0.1ppm以上に保持する必要がある。ただし、副生成物としてトリハロメタンが生じる。また、水道水の塩素濃度ではクリプトスポリジウムは死なない。なお、上水道の普及率は98%、下水道は80%である。
廃棄物処理
処理責任 | ||
一般廃棄物 | 市町村 | 家庭のゴミや屎尿など、産業廃棄物以外の廃棄物。 特別管理一般廃棄物:特に指定された有害なもの(爆発性・毒性) 感染性一般廃棄物:特別管理一般廃棄物のうち、感染性のおそれのあるもの(在宅医療で生じた血液などが付着したガーゼ・リネン類など) |
産業廃棄物 | 事業者 | 事業活動によって発生した廃棄物。 特別管理産業廃棄物:特に指定された有害なもの(爆発性・毒性)感染性産業廃棄物:特別管理産業廃棄物のうち、感染性のおそれのあるもの(注射針、メスなど。家庭から出た注射針も処理業者経由で廃棄する必要がある) 通常、病院からでた感染性産業廃棄物はマニフェスト伝票を用いて特別産業廃棄物業者に処理を委託する。 |
【産業廃棄物の分類】
医療廃棄物とは?分類や処理方法を簡単に解説【5分でわかる】 | 産廃の現場から紙とムダをなくす医療廃棄物とは、医療行為によって排出された廃棄物のことです。廃棄物の種類によっていくつかに分別されているため、正しく情報を整理しなければいけません。そこで本記事では、医療廃棄物の概要を紹介します。排出された廃棄物の分別方法や正しい処理方法なども解説しているので、最後まで参考にしてください。
バイオハザードマークの種類 | |
黄色(黄色い蜂!🐝) | 注射針、メスなどの鋭利なもの |
オレンジ色 |
血液が付着したガーゼなど固形状のもの |
赤 | 血液などの液状、泥状のもの |
国際保健
機関名 | 役割 |
世界保健機関(WHO) | 国際疾病分類(ICD)作成による診断方法の標準化、疫学統計調査の分析、感染症対策など。最高意思決定機関は加盟国(194ヵ国)の代表で構成されるWHA(世界保健総会である)。 Sustainable Development Goals〈SDGs〉の中に、すべての人に健康と福祉を提供するためUniversal Health Coverage〈UHC〉について言及している。 |
国連児童基金(UNICEF) | 恵まれない子供達への支援のための基金(Children Fund) |
国連世界食糧計画(WFP) | 戦争や災害時の緊急食糧援助(Food Plan) |
国連食糧農業機関(FAO) | 世界の食糧の増産・供給の支援(Food Agriculture) |
国連教育科学文化機関(UNESCO) | 識字率の向上、義務教育普及のための活動、世界遺産登録と保護 (Education Science) |
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) | 世界中の難民の保護と支援 (Refugees:難民) |
経済協力開発機構 (OECD) |
先進国におけるヘルスケア (Economic Cooperation) |
国際労働機関(ILO) | 世界中の労働者(labor)の権利保護 |
国際協力機構 (JICA) |
特定の相手国を援助する二国間協力で行われる。 保険医療分野は無償で、経済社会基盤は有償で行う。 |
政府開発援助 (ODA) |
特定の相手国を援助する二国間協力で行われ、アジアが多い。 Official Development Assistance |
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