胸腔穿刺前の確認
①胸水の確認
| ①胸部CT |
胸水推定位置から１〜２つ下の肋間で穿刺部位を決定する |
| ②エコー |
皮膚から胸腔までの距離を測定 |
②胸腔穿刺の適応
両側胸水貯留で病歴や身体所見から心不全が考えられる漏出性胸水を除いて、できる限り胸腔穿刺を施行することが望ましい。ただし、慢性的な胸水貯留で臨床上問題とならない場合は経過観察も可。
| ①胸水の診断 |
片側性胸水 or 漏出性胸水を疑い治療を先行したが治療反応性に乏しい胸水 |
| ②胸水の除去 |
胸水貯留に伴う種々の症状改善 |
| ③緊張性気胸 |
ドレーン挿入までの緊急脱気として行う |
③胸腔穿刺の禁忌
| ①出血傾向・凝固異常 |
PT-INR1.5未満 or 血小板数5万以上であれば穿刺可能 |
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※抗血小板薬・抗凝固薬は手技者の判断となる |
| ②穿刺部の感染症 |
帯状疱疹、蜂窩織炎、粉瘤など上から穿刺すると胸腔内に感染リスク |
④胸腔穿刺の合併症
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予防・対処 |
| ①気胸 |
手技中に空気を吸引、呼吸苦・SpO2低下がある場合は胸部X線で確認 |
| ②感染症 |
清潔操作を行う |
| ③血胸 |
ドレナージチューブの挿入、動脈塞栓術など |
| ④再膨張性肺水腫 |
1回の排液を500〜1000mLに抑え、低蛋白血症や低栄養では量を控え目に |
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↑処置後24時間以内に発症する（対側肺に発症することもある） |
| ⑤Pleural shock |
迷走神経反射が原因、モニターなどでバイタルを確認、ルート確保 |
胸腔穿刺
①胸水の検査オーダー
| 血液 |
TP、LDH、（補助診断：Alb、コレステロール） |
| 胸水 |
TP、LDH、（補助診断：Alb、コレステロール） |
| 胸水追加検査 |
細胞数、細胞分画、グルコース、pH、グラム染色、培養、細胞診 |
②必要器具の準備
18G留置針：サーフロー®、スーパーキャス®
| バイタル |
心電図・SpO2・血圧モニター |
| 清潔関係 |
滅菌穴あきドレープ、滅菌手袋、滅菌ガーゼ、（滅菌ガウン） |
| 麻酔関係 |
1％キシロカイン、27G針、10mLシリンジ |
| 穿刺関係 |
18G留置針＋10mLシリンジ（セットする）、検体用スピッツ3本 |
| 排液関係 |
三方活栓＋ロック付き50mLシリンジ、輸液セット（点滴筒切る）、目盛付排液入れ |
| 終了関係 |
（穿刺部を圧迫する）滅菌ガーゼ、（空気の入らない）絆創膏 |
③穿刺本番
| ①穿刺体位 |
上肢挙上し、ファウラー位（仰臥位から上半身を45度程度上げた半座位） |
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可能なら端座位にして机に枕を置いてうつ伏せになる |
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体位を決めたらモニターを装着する |
| ②穿刺部位 |
エコーで黒く写るfree space確認し穿刺部位をペン先を押し当てマーキングする |
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通常、胸水が最も貯留しやすい後腋窩線上の第8 or 9肋骨上縁を穿刺する |
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※第９肋骨より下部は腹腔内損傷リスクあるため行わない |
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タイムアウト |
| ③消毒 |
穿刺部位を広く消毒した後、手袋→ドレープ＋テープで固定 |
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処置台に滅菌布（滅菌手袋の袋で代用可）を広げ、清潔野を確保 |
| ④麻酔 |
穿刺部位の膨疹→肋骨上縁に当て陰圧をかけつつ麻酔→数cm進んで試験穿刺 |
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試験穿刺の際の深さを忘れないようにする |
| ⑤本穿刺 |
シリンジに留置針を装着し、先ほどの深さ分の辺りに指を置く |
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軽く陰圧をかけながら垂直に穿刺 |
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胸水が引けたら外筒のみ進め、ある程度入ったら内筒を抜く |
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内筒を抜いたら素早く外筒口を指で押さえて胸腔に空気が入らないようにする |
| ⑥検体採取 |
吸引用シリンジを抜き、外筒に三方活栓を装着する |
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三方活栓にシリンジを装着し検体を採取して検体チューブに分注する |
| ⑦排液 |
三方活栓に延長チューブ＋点滴筒切った輸液セットを接続し、排液を行う |
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排液の勢いが弱まり、呼気時にのみ胸水を引けるなら排液はほぼ終了 |
| ⑧抜針 |
留置針を抜去し、ガーゼで穿刺部位を揉むように圧迫し、絆創膏を貼る |
| ⑨確認 |
気胸を疑う場合（胸痛、呼吸苦、低酸素血症）、胸部X線で確認 |
穿刺後
胸水の外観
| 黄白色〜白色の混濁 |
肺炎随伴性胸水や膿胸の可能性 |
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感染症が否定的な場合は乳び胸や偽性乳び胸の可能性 |
| 赤色 |
血胸の可能性 |
Lightの基準で分類
臨床的には漏出性だが、誤って滲出性として分類されることがあり、特に心不全で利尿薬を使用してる場合に生じる。その際は補助診断を使用する。
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基準 |
治療法 |
| 滲出性胸水 |
①胸水TP/血清TP＞0.5
②胸水LDH/血清LDH＞0.6
③胸水LDH＞血清LDH基準値上限×2/3
上記１つでも満たす場合は滲出性 |
ドレナージ（毛細血管の透過性亢進、リンパ管閉塞） |
| 漏出性胸水 |
上記をいずれも満たさない場合 |
原疾患の治療（うっ血性心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群など） |
②滲出性胸水の場合
| 細胞数 |
胸水白血球数1000/μL以上なら滲出性であることが多い |
| 細胞分画 |
胸水白血球分画の50％以上が好中球優位の場合は胸水中の急性炎症を反映 |
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↑肺炎随伴性胸水、膿胸、膵炎、肺塞栓、悪性腫瘍、横隔膜下膿瘍などが鑑別 |
| 胸水pH |
7.2未満であれば様々な病態が考えられる |
| グルコース |
胸水Glu60以下の場合は肺炎随伴性胸水、膿胸、悪性腫瘍などの可能性 |
| 細胞診 |
悪性腫瘍に伴う悪性胸水の診断に有用 |
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