呼吸器各論(喘息、COPD、DBP、間質性肺炎、過換気、SAS)

呼吸器科

閉塞性肺疾患

障害部位 特徴
気管支喘息 中枢気道〜末梢気道 発作性呼吸困難、wheezes
COPD 末梢気道〜肺胞 労作時呼吸困難、DLco↓
DPB 呼吸細気管支のみ 労作時呼吸困難、多量の膿性痰、慢性副鼻腔炎

気管支喘息 BA:Bronchial asthma

疫学 IgE依存型(アトピー型):90%以上は6歳までに発症し(発症ピークは1〜2歳)、遺伝的素因を持つ。70%は成長とともに気道径が広くなり、成人までに寛解する。30%は成人喘息に移行。
IgE非依存型:多くは成人発症し、成人喘息の40%を占める。
病態 Ⅰ型アレルギーまたは原因不明の炎症により、可逆性の気道閉塞と気道過敏性亢進をきたす閉塞性肺疾患。ただし、好酸球浸潤による慢性気道炎症が生じると基底膜の線維化平滑筋層肥厚による気道リモデリングが生じて不可逆性の気流制限が起こりうる。
喫煙、感冒、鼻水によって増悪する。日内変動や週内変動が大きい。
※ピークフロー:呼吸機能検査におけるフローボリューム曲線の最高点
症状 【発作時】
咳嗽、呼気性喘鳴(wheeze聴取)、呼気性呼吸困難(呼気延長)。副交感N亢進する夜間早朝に好発する。発作が重症化すると起坐呼吸、チアノーゼ、肺胞低換気により呼吸性アシドーシスをきたす。24時間以上発作が続く場合を喘息発作重積状態という。
【非発作時】
症状はないが、炎症は持続している。ピークフロー値が低下した場合(患者自身が毎日測定)は発作前サインのため注意。
検査 【呼吸機能検査】
スパイロメトリー:FEV1%:70%以下(β2刺激薬吸入で改善、※COPDは改善しない)
【FV曲線】下に凸の下降曲線
【血液検査】好酸球↑(喀痰も好酸球↑)、IgE↑、特異的IgE抗体↑
【呼気】FeNO↑(気道粘膜の好酸球浸潤と相関する。COPDは上昇しない)
【画像検査】胸部X線:過膨張の肺・縮小した心陰影など肺気腫状態
治療 【喘息発作時:発作治療薬(リリーバー)】
中発作以上ではただちに酸素投与ルート確保(採血でD-ダイマー、凝固、BNP)
SABAネブライザー吸入サルブタモール(ベネトリン®吸入液0.5%)0.3mL+生食2mL→ネブライザー吸入 or プロカテロール(メプチン®吸入液0.01%)0.3mL+生食2mL→ネブライザー吸入 数十分おきに反復可能
ステロイド点滴アスピリン喘息疑う場合には以下ステロイドは不可
例:ヒドロコルチゾンコハク酸(ソルコーテフ®)200〜500mg+生食 or メチルプレドニゾロンコハク酸(ソルメドロール®)40〜125mg+生食 30分〜1時間かかて投与
アドレナリン筋注(中発作以上)
例:心電図を装着し、アドレナリン(ボスミン®)0.1〜0.3mL(mL/mg)筋注
アミノフィリン点滴静注(中発作以上)
アミノフィリン(ネオフィリン®)6mg/kg+生食250mL 60分かけて点滴静注
【喘息非発作時:長期管理薬(コントローラー)】
①ICS+テオフィリン/LABA/LAMA/LTRA(枠外の詳細参照)
難治性喘息には気管支サーモプラスティ(BT)を使用することもある。
予防 ①こまめな掃除や布団の丸洗いを行う:IgE依存型はダニが最も多い抗原なため
②毎日朝晩に簡易型ピークフローメータでピークフロー値を測定する。
※ピークフロー値はFEV1(1秒量)・中枢側気道径とよく相関し、その日内変動が20%以上ある場合は可逆性気流制限ありと判断できる。自己最良値の80%以上・日内変動20%以内になるように自己管理する。日内変動の程度は気道過敏性のレベルを示すため、気道炎症の指標にもなるとされている。

【コントローラーの治療計画】

発作が3ヶ月以上なければステップを下げる。鼻水(アレルギー性鼻炎、感冒など)は喘息を増悪させるため抗アレルギー薬を追加する。5歳以下は吸入できないためLT拮抗薬を中心に治療開始する。

ステップ1 ステップ2 ステップ3 ステップ4
喘息頻度 週1回未満 週1回以上 毎日 毎日
%PEF 80%以上 80%以上 60〜80% 60%未満
長期管理薬 ICS低用量 ICS低〜中用量 ICS中〜高用量 ICS高用量
上記使用できない場合はLTRA、テオフィリン 効果不十分な場合はLABA、LTRA、テオフィリン、LAMAから1剤追加 LABA、LTRA、テオフィリン、LAMAを併用 ステップ3+生物学的製剤(抗IL-5抗体抗IgE抗体)、ステロイド内服併用
適宜追加 抗アレルギー薬 抗アレルギー薬 抗アレルギー薬 抗アレルギー薬

アスピリン喘息(AIA)

疫学 20〜40代女性に多い。成人喘息の約10%
病態 NSAIDs投与によってLTが相対的に上昇し、気管支収縮や鼻粘膜の浮腫が起こる疾患。
症状 NSAIDs投与の数時間後に、咳嗽、喘鳴、呼吸困難を発症
【合併症】
①ほぼ全例に慢性副鼻腔炎を合併しており好酸球性鼻茸を認める
感染型気管支喘息の合併も多い
検査 IgE正常
治療 原則喘息と同じ治療。アセトアミノフェンやCOX-2選択的阻害薬は使用可。
①SABA吸入
②ステロイド点滴
例:デキサメタゾン(デカドロン®)6.6〜9.9mg
例:ベタメタゾン(リンデロン®)4〜8mg+生食 30分〜1時間かけて投与
【禁忌】
①コハク酸エステル型ステロイドの急速静注:発作が悪化
②酸性NSAIDs(貼付剤を含め禁忌
③ブロムヘキシン塩酸塩吸入液:防腐剤のパラベンによって発作が悪化しうる

喘息類似疾患

副鼻腔気管支症候群(SBS) 咳喘息(CVA) アトピー咳嗽
病態 8週間以上続く呼吸困難発作を伴わない湿性咳嗽 主に風邪の後の3週間以上持続する乾性咳嗽。季節性あり。気道過敏性あり。約30%が喘息に移行する。 主に風邪の後の3週間以上持続する乾性咳嗽。気道過敏性はなく、喘息に移行しない。アトピー素因あり。
症状 ①慢性湿性咳嗽
②副鼻腔炎様症状:後鼻漏、鼻汁、咳
①喘鳴を伴わない乾性咳嗽
②Wheezes(ー)
①喘鳴や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽
②咽喉頭掻痒感
検査 副鼻腔炎を示唆する画像所見 喀痰・末梢血の好酸球↑
呼気NO↑の場合あり
末梢血の好酸球↑
血清IgE値↑
治療 マクロライド系抗菌薬
+去痰薬
β2刺激薬+ICS
(一般の鎮咳薬無効)
H1遮断薬内服+ICS
β2刺激薬・鎮咳薬無効)

【喘息と比較】

IgE FEV1% 呼気NO
気管支喘息
アスピリン喘息 不変
咳喘息 不変
アトピー咳嗽 不変 不変

慢性閉塞性肺疾患 COPD:Chronic obstructive pulmonary disease

疫学 40歳以上の約10%が罹患、高齢者に好発
病態 長期の喫煙など有毒な粒子やガスが原因で肺に炎症が起こり、
①終末気管支以下の肺胞壁が破壊されて肺胞腔が縮まなくなる(肺気腫
②分泌腺過形成や末梢気道の線維化による閉塞が起こる(慢性気管支炎
その結果、進行性で不可逆的な閉塞性換気障害が生じる疾患。
急性増悪時の原因菌は肺炎球菌>インフル桿菌>モラクセラカタラーリスが多い。
予後規定因子:除脂肪体重(筋肉量と骨塩と相関するため)
症状 ①慢性気管支炎症状:慢性の湿性咳嗽喀痰(咳受容体刺激)
②肺気腫症状:①の後、労作時呼吸困難が進行(拡散障害)
COPDの急性増悪
感冒などの呼吸器感染症で呼吸困難、咳、痰の症状が増悪、膿性痰の出現
【合併症】
肺癌、肺高血圧(肺胞破壊により肺血管収縮)、気胸、骨粗鬆症(動くと息切れするため)、気腫合併特発性肺線維症:CPFE(上肺野はCOPD+下肺野は肺線維症)、うつ病(若年、女性、循環器疾患の既往、現役喫煙者などはうつ発症リスク↑)
他覚 【視診】
①口すぼめ呼吸:気管支内圧↑により肺内の空気を出し易くする
②痩せ型:呼吸が苦しいため食欲不振
③ビア樽状胸:弾性線維↓による肺の過膨張
④胸鎖乳突筋の肥大:呼吸補助筋の使用
⑤チアノーゼ:末梢気道閉塞によるPaO2↓
⑥Hoover’s sign:重症では吸気時に肋間や鎖骨上窩の陥入がみられる
【打診】
①鼓音、②肺肝境界低下(肺の過膨張)、③濁音(分泌物↑のため)
【聴診】
①肺胞呼吸音減弱(肺胞壁破壊)、
②wheezes(末梢気道閉塞)、coarse crackles(分泌物貯留)
検査 【画像検査】
胸部X線:①肺の過膨張像(肺野透過性↑)、②横隔膜平坦化、③滴状心、④CP角の鈍
胸部CT(急性増悪時は必ず撮像):全体的に黒っぽい(気腫性変化による低吸収域増加)、気道壁肥厚、胸郭前後径↑、気道壁肥厚、気道狭窄
【呼吸機能検査】
スパイログラム:β2刺激薬吸入しても改善せずFEV1%が70%以下(呼気時間の延長)、静肺コンプライアンス↑(弾性線維↓)、残気量↑、DLco↓、FV曲線でピークフロー低下・下に凸の下降曲線・RV↑による左偏移
【血液検査】
悪化するとⅡ型呼吸不全によりPaO2↓、AaDO2開大(拡散障害+換気血流比不均衡)、重症化ではPaCO2↑
初期
治療
急性増悪時(肺炎+右心不全の治療)=ABCアプローチ
まず、酸素投与しSpO2 88〜92%でコントロール。呼吸補助筋の使用/呼吸数26以上/急性呼吸性アシドーシスのうち、2つ以上満たせばNPPVの適応。(喀痰が多く気道確保が困難 or 意識障害の場合は挿管)
A(抗生剤):喀痰培養の結果を参考にしつつ原則肺炎治療に準じる
B(SABAネブライザー吸入):ベネトリン0.5mL+生食5mL 20分あけて反復投与
C(ステロイド点滴):入院が必要な患者や安定期の病期がⅢ以上の症例では投与検討。
経口:プレドニゾロン(プレドニン®)
注射:メチルプレドニゾロンコハク酸(ソルメドロール®)点滴静注 40mg/日 5日間
治療 【安定期の治療】
気管支拡張薬投与(詳細は下記参照)、外科的には肺容量減少術
PaO2:55%以下(SpO2が88以下)の場合で在宅酸素療法(HOT)を導入
予防 ①まずは禁煙!
②インフエンザワクチン接種、肺炎球菌ワクチン接種、手洗いうがい
③呼吸リハビリ(口すぼめ呼吸+腹式呼吸+運動療法)
④食事:分食が基本(腹満により横隔膜運動が妨げられて呼吸困難感が増すため)、脂質割合が高い食事(呼吸商が小さくCO2産生↓)、高エネルギー、高蛋白食(BCAAを多く含みタンパク異化抑制&合成促進する)

【安定期の治療】

軽度 中等度 重度 最重度
基本薬 SABA頓用 先ずLAMA
or LABA
LAMA+LABA LAMA+LABA+ICS?
追加薬 テオフィリン追加
去痰薬追加
テオフィリン追加
去痰薬追加
テオフィリン追加
去痰薬追加
喘息合併 ICS併用 ICS併用 ICS併用 ICS併用

びまん性汎細気管支炎 DPB:Diffuse panbronchiolitis

疫学 東アジア人に多く、HLA-B54陽性者が多い。減少傾向。
病態 呼吸細気管支にびまん性の慢性炎症が起こる。
症状 ①持続する多量の膿性痰→それに伴う息切れ・湿性咳嗽
【合併症】
慢性副鼻腔炎を高率で合併(約80%)
検査 【身体検査】
打診:濁音
聴診:coarse crackles(分泌物貯留)、wheezes(気道閉塞)
【呼吸機能検査】
スパイログラムでFEV1%:70%以下、RV↑、肺拡散能・コンプライアンスは正常
【画像検査】
胸部X線:初期は肺の過膨張、進行期は両側下肺野を中心にびまん性粒状影
CT:両側びまん性二次小葉中心性粒状影気管支拡張像+気管支壁肥厚
【血液検査】
寒冷凝集素値↑、赤沈↑CRP↑、IgA↑IgG↑
【血液ガス】
PaO2↓・AaDO2開大(換気血流不均衡)
【喀痰培養】
初期や増悪時はインフル桿菌>肺炎球菌、進行すると緑膿菌に菌交代
治療 14員環マクロライド系(エリスロマイシン)を6ヶ月少量投与(気道の抗炎症作用)
むやみに緑膿菌を殺菌しなくても改善する

拘束性肺疾患

間質性肺炎 IP:Interstitial pneumonia

病態 肺胞壁などの間質の炎症を主とする疾患で、進行すると広範な線維化により拘束性障害をきたす。
症状 労作時呼吸困難
他覚 聴診:fine crackles
検査 【呼吸機能検査】
%VC↓、FEV1↓
【画像検査】
高分解能CT(HRCT):すりガラス様陰影、蜂巣状陰影
【血液検査】
WBC↑、赤沈↑CRP↑LDH↑
【血液ガス】
DLco↓、AaDO2開大(線維化による拡散障害)
治療 ステロイドを使用することが多い

【間質性肺炎の分類】

びまん性肺疾患 肺全体が広範囲にわたって侵される疾患
間質性肺炎 感染症や腫瘍を除外したびまん性肺疾患
肺線維症 間質が線維化した病態
①特発性間質性肺炎 原因不明の間質性肺炎(多くは特発性肺線維症)
②続発性間質性肺炎 過敏性肺炎、放射性肺炎、じん肺、薬剤性肺炎、膠原病による肺炎

①特発性間質性肺炎 IIPs:Idiopathic Interstitial Pneumonias

その他の特発性間質性肺炎はNSIP>OP>DIP・RB>DADの順に多く、ステロイド反応性である(AIPのみステロイド反応性不良)。

病理パターン ステロイド反応性 BALF
特発性肺線維症(IPF) UIP:線維化不均一 不良 マクロファージ優位
非特異性間質性肺炎(NSIP) NSIP 良好(一部不良) リンパ球優位
剥離性間質性肺炎(DIP) DIP 良好 マクロファージ優位
呼吸細気管支炎に伴う
間質性肺疾患(RB-ILD)
RB 良好 マクロファージ優位
特発性器質化肺炎(COP) OP 良好 リンパ球優位
急性間質性肺炎(AIP) DAD 不良 好中球優位
特発性肺線維症(IPF:Idiopathic pulmonary fibrosis)
疫学 50歳以上の喫煙者に好発。IIPsで最多(約70%)。
病態 小葉間隔壁が繰り返し破壊されて線維化し、代償的に蜂巣肺となる。急性増悪・肺癌・感染症などを生じ、自覚症状出現から3〜5年で死亡することが多い(予後不良)。
急性増悪の誘因に手術、ステロイド減量、BALFがある。
症状 乾性咳嗽、徐々に増悪する労作時呼吸困難
検査 【身体検査】視診:ばち指(約30%)、聴診:背側肺底部のfine crackles
【血液検査】LDH↑、SP-A/D↑(サーファクタントプロテイン)、KL-6↑(病勢反映)
【血液ガス】PaO2↓・AaDO2開大(Ⅰ型呼吸不全)
【画像検査】CT:胸膜直下優位に蜂巣肺を伴う網状影、牽引性気管支拡張像
【呼吸検査】%VC80%以下、DLco↓肺コンプライアンス↓
【BAL】好中球↑
治療 ステロイド反応性不良(ただし急性増悪時はステロイドパルスを実施)
抗線維化薬:ピルフェニドン、ニンテダニブ(進行抑制)
肺移植

②過敏性肺炎

疫学 夏型過敏性肺炎(約70%)
②農夫肺(約10%):カビの生えた枯れ草や飼料を吸入
③換気装置肺炎(約5%):汚染された加湿器や空調から吸入
④鳥飼病(約5%):鳥類の羽毛(羽毛布団やダウンジャケットなど)や排泄物を吸入
病態 真菌、薬剤、異種蛋白、化学物質などの反復吸入により惹起されるびまん性肉芽腫性間質性肺炎であり、Ⅲ型・Ⅳ型アレルギーが関与する。
症状 ①乾性咳嗽
②呼吸困難
③発熱
検査 【呼吸機能検査】
拘束性障害:%VC↓、PaO2↓DLCO↓
【画像検査】
CT:びまん性粒状影(間質性肺炎)
【血液検査】
ACE↑、急性炎症所見(WBC↑CRP↑赤沈↑)、LD↑、KL-6↑、ツ反陰性
ツ反に過敏な猿負け確定過敏性肺炎、サルコイドーシス、疹、核(粟粒結核、結核感染初期)、細胞性免疫低下(AIDSなど)
【生検】
びまん性肉芽腫
治療 抗原からの隔離(入院や転地)、改善が遅い場合はステロイド投与

②好酸球性肺炎 Eosinophilic pneumonia(PIE症候群)

好酸球の肺への浸潤を特徴とし、原因不明なものと原因ありのものがある。

原因不明(約75%) 急性・慢性好酸球性肺炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)など
原因あり(約25%) アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、薬剤性など

急にタバコ吸う兄さん、ずっと移動して荒れてるおばさん

急性好酸球性肺炎(AEP) 慢性好酸球性肺炎(CEP)
疫学 若年者に多い 中年女性に多い
病態 初めての喫煙開始直後に呼吸不全を呈する疾患。好酸球が間質に浸潤し肉芽腫を形成する(間質性肺炎)。CEPには移行しない(別の病態)。 半数はアレルギー疾患(喘息など)を持ち、数週〜数ヶ月の慢性経過で呼吸不全を呈する疾患。好酸球が間質に浸潤し肉芽腫を形成する(間質性肺炎)。
症状 咳嗽、呼吸困難、発熱 咳嗽、呼吸困難
検査 【画像検査】
胸部X線:びまん性のすりガラス陰影+浸潤影、Kerley’s B線、胸水貯留
CT:非区域性に広がる高吸収域(胸水貯留)
【BALF】好酸球↑
【血液検査】好酸球数はほぼ正常、IgE↑、IL-5↑
【画像検査】
胸部X線:外側辺縁優位の移動性浸潤影(自然軽快する場所とまた別の場所に出てくるため移動しているように見える)
CT:両側末梢性浸潤影
【BALF】好酸球↑
【血液検査】末梢血でも好酸球数↑、IgE↑
治療 ステロイド内服(1週間以内に軽快)
再発は少ない
ステロイド内服(半年以上かけて漸減)
再発は多い

②医原性肺炎(放射線肺炎)

病態 癌治療などで放射線照射した領域が、照射終了1〜6ヶ月後に間質性肺炎を起こす。
肺線維症やCOPDなどの基礎疾患があると生じやすい。
症状 肺炎症状
検査 【画像検査】X線:照射部位に一致した肺炎像
治療 経過観察、SpO2低下する場合はステロイド内服

②じん肺症 Pneumoconiosis

病態 じん肺とは、長期にわたる粉じん(珪酸>石綿>その他)の吸入により肺が不可逆的に線維化していく拘束性肺疾患。直径2μm以下の粉じんは肺胞まで到達し異物性胞隔炎が起こり間質性肺炎となる。粉じんの曝露が無くなっても病態は進行する。約15%は肺癌を合併する。
症状 自覚症状なく進行し、10年以上して発症する
(そのためじん肺法による定期健診を行い早期発見に努めている)
①労作時呼吸困難、湿性咳嗽、喘鳴など
検査 ①胸部X線:石灰化陰影(慢性炎症のため)
胸腔穿刺:細胞診、各種マーカー(CEA、ADA、ヒアルロン酸)などを測定
胸腔鏡検査:プラークなど確認
治療 対症療法

【珪肺と石綿肺の違い】

珪肺(遊離ケイ酸が原因) 石綿肺(アスベスト肺)
環境 トンネル工事、鉱山鋳物業窯業
石切場、ガラス工場
建設解体作業、自動車工場、断熱材製造業、ボイラー点検
好発部位 上肺野(粒子径小さく軽いため) 下肺野(粒子径大きく重いため)
X線 肺門リンパ節の卵殻状石灰化
(egg shell calcification)
壁側胸膜に石灰化を伴う胸膜プラーク
(石綿曝露歴があったことを示す)
病理 珪肺結節 石綿小体(太鼓バチ状のアスベスト小体)
続発症 肺結核イ肺=ッカク)
②肺癌、③関節リウマチ
胸膜悪性中皮腫
肺癌

機能性呼吸障害

過換気症候群 Hyperventilation syndrome

病態 ストレス、緊張、不安などの心理的な要因により発作的に過換気が誘発される病態。
呼吸性アルカローシスによりH-Alb→遊離Alb増加し、遊離Albと遊離Caが結合する。その結果、遊離Ca↓となりテタニーを生じる(Ca総量は不変なので血中Ca濃度は正常!)。
症状 ①呼吸困難:空気飢餓感(呼吸はできる)が特徴的
②テタニー症状(けいれん、口唇や手足の痺れ、トルソー徴候)
③動悸、頭痛・めまい(CO2低下による脳血流↓)
検査 【血液検査】
PaO2正常・PaCO2↓・pH↑(呼吸性アルカローシス)、Ca正常
治療 患者を落ち着かせる、鼻呼吸+腹式呼吸
ペーパーバッグ法は禁忌:CO2濃度は上がらず、逆にO2濃度が低下して酸素不足となる

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

病態 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は閉塞型、中枢型、混合型に分類されるが、閉塞型がほとんどである。
肥満、小顎症、アデノイド、巨舌などによって上気道が狭小化し、さらに睡眠時に筋肉が弛緩して上気道が閉塞する結果、頻回の無呼吸が生じる疾患。高血圧、不整脈、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞を発症するリスクが高まる。
症状 ①睡眠時のいびき→10秒以上の無呼吸
②日中の眠気
③起床時の頭痛(CO2貯留により血管拡張し頭蓋内圧↑)
アルコールや睡眠薬は筋弛緩作用があるため症状が悪化する。
【合併症】
高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害など
検査 【睡眠時ポリソムノグラフィ(PSG)】
睡眠の状態をみるもの:脳波・筋電図・眼電図
換気の状態を見るもの:胸郭や腹部の運動・口や鼻の気流・SpO2・心電図
AHI(1時間の無呼吸回数)が5以上でOSASと診断
治療 簡易検査(外来)でAHI40以上、精密検査(入院)で20以上でCPAP保険適用
生活習慣の改善:禁酒
持続的気道陽圧法(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure):鼻マスクを装着し、気道に常時陽圧をかけ、上気道閉塞を防ぐ(強制換気はしない)。
※持続的陽圧換気(CPPV)ではないことに注意!=PEEPを加えた持続的強制換気
②減量:肥満により上気道が狭小化し、無呼吸が増悪するため
③マウスピース:下顎の後退を防ぎ、上気道の狭小化を軽減する

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