咳・痰

症候学

咳・痰の鑑別

急性咳嗽 亜急性咳嗽 慢性咳嗽
湿性
咳嗽
感染症
心不全
喘息発作
肺癌
結核
COPD
びまん性汎細気管支炎
後鼻漏症候群
副鼻腔気管支症候群(SBS)
乾性
咳嗽
急性好酸球性肺炎
肺血栓塞栓症
気胸
胃食道逆流症(GERD) 肺線維症
胸膜炎
薬剤性間質性肺炎
咳喘息、アトピー咳嗽

咳嗽

咳嗽の機序

気道内に貯留した分泌物や異物によって、喉頭〜気管支までの上皮細胞間に存在する咳受容体が刺激され、迷走Nを介して延髄の咳中枢が興奮する。その結果、咳中枢から舌咽N、迷走N、脊髄Nを介して声帯や横隔膜の運動が起こり咳が起こる。

咳嗽の原因

①感染症によるもの
②感染症後の気道過敏によるもの
③アレルギーによるもの
④胃食道逆流症(GERD)によるもの
⑤腫瘍によるもの
⑥間質性肺疾患など肺末梢の伸展受容器に関わるもの

咳嗽の分類

急性 3週間以内 感染症、間質性肺疾患、亜急性・慢性咳嗽の初期など
亜急性 3〜8週 GERD、結核、癌など
慢性 8週間以上
(2ヶ月以上)
咳喘息、アトピー咳嗽、COPD、副鼻腔気管支症候群(びまん性汎細気管支炎、後鼻漏)など

咳嗽の性状

詳細 疾患
乾性 気道以外の異常 間質性肺炎、気胸、胸膜炎、癌性リンパ管症、ACE阻害薬のSE、ウイルス性気管支炎、咳喘息など
湿性 気道粘液過剰分泌
=気道の炎症性病変
気管支喘息(明け方の咳発作が特徴)、肺水腫(就寝時の湿性咳嗽が特徴)、細菌性気管支肺炎、気管支拡張症(起床後の大量の痰を伴うのが特徴)など

急性咳嗽

問診 身体所見 検査
感冒(急性上気道炎) 発熱、咽頭痛(嚥下時痛)、鼻汁
急性細気管支炎、肺炎 発熱、湿性咳嗽
急性好酸球性肺炎 発熱、乾性咳嗽、少し前からの喫煙歴 好酸球↑
心不全 ピンク色の泡沫状痰、喘鳴 末梢冷感
肺血栓塞栓症 喘鳴、DVT合併
気胸 喘鳴
百日咳 レプリーゼ、発熱なし 顔面浮腫、点状出血
気管支喘息発作 喘鳴

亜急性〜慢性咳嗽

問診 身体所見 検査
肺結核 湿性咳嗽 ツベルクリン反応、IGRA
COPD 湿性咳嗽 Hoover徴候、胸鎖乳突筋肥大
肺癌 湿性・乾性咳嗽 X線、CT
慢性副鼻腔炎 湿性咳嗽 血中IgA↑、びまん性粒状影
胸膜炎 乾性咳嗽、呼吸で変動する胸痛 胸膜摩擦音
GERD 乾性咳嗽、胸焼け、呑酸
薬剤性 乾性咳嗽、ACE阻害薬内服
胸膜中皮腫 乾性咳嗽 CTで胸膜肥厚
マイコプラズマ肺炎 乾性咳嗽 寒冷凝集

気道炎症 感染症、アレルギー、腫瘍
血管・リンパ管からの漏出 心不全、肺梗塞
後鼻漏による鼻汁 「飲み込みたくなる痰」「喉にひっかる感じの痰」は鼻汁と考える

痰の性状

漿液性痰 気管支喘息(無色透明)、肺水腫(ピンク色+バブル状)、肺胞上皮癌(大量)
粘液痰 急性気道感染症の初期、慢性気道感染症の安定期
膿性痰 細菌性気道感染症
血痰・喀血 肺癌、気管支拡張症、肺梗塞、肺結核、肺アスペルギルス症、Goodpasture症候群

喀痰検査

細菌総論のグラム染色を参照

咳・痰の診察

咳の継続期間から急性?慢性?
呼吸器感染症症状の有無
季節に関連した咳か?喘鳴を伴うか?
後鼻漏症状(鼻汁、頻回の咳払い、咽頭のムズムズ感)
GERD症状(胸焼け、逆流症状)の有無
発熱、痰の性状は?
関連する疾患や喫煙などのリスクファクターを持っていないか?
ACE阻害薬を服用していないか?

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